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蝋燭の火が揺れる部屋で

「はぁ...また、アンタと同じ部屋で寝泊りすることになるなんて......」


「お前がわざわざ出発日である今日に、悪のアジトの案内役をしてくれたおかげだな」


「うっ......」


結局、下らない...と言ってはそれまでだが、

アメルとアイリスの仲直りのために憲兵の世話になることになって

帰されたのが空が綺麗な夕日が彩る時間になってしまった。


よって敢え無く同じ宿屋に帰ってくると


「かの勇者様のご一行だった、と先ほど知りまして!

 ええ! お部屋はしっかり用意してあります!」


嬉しそうに経営者がわざわざ出迎えてくれた。


まあ、どうせ

あの世界を救った勇者が泊まった宿屋!

だとか広告に使うためだろうなぁ、と冷めた村人らしい下世話な考えで

準備された、やたら豪華な夕食を平らげた。


それも......何人分食べただろうか?



「あと言っておくけどアンタ食べ過ぎなのよ!

 いくら今日はサービスで食費は取らないって言ってたとはいえ

 10人分とか非常識よ!」


「ああ、そうそう」


丁度答えが飛んできた。

何を隠そう、その通り


この身体のせいか、激しい運動のせいか

食欲が止まらなかったのだ。


「全くそんなやつと相部屋なんて......」


「食べられちゃうんじゃないかって?」


「!!」


昼下がりに散々見させられた非力パンチが何度も振り下ろされる。

それさえも冷静に全て片腕で華麗に受けきるのだから、

この身体は我ながら恐ろしい


「そ、そういうことは軽はずみに言うんじゃないわよ! バカ!!」


「いや~ 悪い、悪い。

 気心が知れてくるとついつい......うん、お前なんかは妹に見えてさ」


「はぁ!?

 だからアンタと同じくらいの年だって言ってるでしょうがぁ!!」


激昂して大荒れのデタラメ百裂拳を捌きながら、

年齢のことに段々と心が沈み込んできた


妹どころか娘くらい歳が離れてたりするかもな......


そんな大袈裟に落ち込んだ顔になりだしたのを見てか、

いつの間にか攻撃の手は止んだ


「もう......夜ご飯を豪勢にしてくれるくらいなら、

 あと一つくらい部屋を用意して欲しかったなぁ...」


「そうだよな、部屋数をわざわざ再現してくれなくてもなぁ?」


気を取り直して

アメルの機嫌も直そうと同意を示したが

目線は冷たいままだ。



「ふん......それじゃあ今日は疲れたし、さっさと寝るわ...」


そう言って就寝する気満々のところを失礼して

一声掛ける


「その前に少しだけ聞かせてくれよ、何でわざわざあそこに戻ろうとしたのか」


それを聞くとピクッと反応して動きを止めた。

そして自分と対面する形でベッドに座る


「......分かった。

 でもその代わり...せっかくアタシが話してあげるんだから、

 もし姉さまに同じようなことをアタシが聞かれるようなことがあったら......

 アンタが答えて、良い?」


「え、なんで?」


無駄に生意気なことが気になって

意地悪な質問をしてしまった。


「そ、それは......その...」


口を尖がらせて下を向く。

帽子を脱いでいる状態だと

ランプに照らされて見える顔の紅潮は、

彼女の髪と同じような綺麗な桜色に映った


「なんか、恥ずかしいから...」


「え、なんて?」


「も、もう! これ以上イジワルすると言わないわよ!!」



そう子供っぽく怒るのを宥めて、



今日の事件の発端がようやく明かされ始めた

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