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地下の親玉VS村人・地上戦3

大魔女は微弱な光を帯びながらズシリと重々しく着地した。

奴は自身にも浮遊の魔法の対象に出来るらしい


実力があれば様々な使い方を可能とするのだろう、

であるならば...


「そんな芸当が出来るなら、

 ちんたら上がって来ずにさっさと吹っ飛ばしちまった仲間を

 助けるべきだったんじゃないのか?」


当然の疑問をぶつけながらも

後ろに手を回して二人に掃けるように合図する。


コイツの相手は俺一人で十分だ、という意図が伝わっていると良いのだが


「仲間ぁ......?

 ハッ! あんなアタイの力に勝手に惚れ込んで弟子にしてくれだの、

 部下にしてくれだの、勝手に集まってきたゴロツキ共を助ける義理は無いねぇ!」


周りに人の気配が完全に消えるまで話を続ける


「それでも奴らはお前を慕っていた!

 お前たちの間には信頼関係があったりしたんじゃないのか?」


こちらの青臭い質問があまりに妙だったためか

ツボにハマって巨女は全身の肉を震わせて大笑いし始めた


「ハッハッハ! ガキンチョ、アンタにはそう見えたのかい!?

 アイツらが心からアタイを尊敬し、

 その心にアタイも応えようとしていたと?

 ハッ! コイツは傑作だね!!」


奴の動作に一々地面が揺れるほどの騒々しさがあったために、

アイリスや周辺の住民たちも無事に立ち退けたようだ。


これで後は目の前の悪の塊をとっちめるだけだ...!


そう全身に力が籠る頃には

大魔女の愉快な気分も収まっていた


「ハア~......

 でもまあ、手下として扱っていただけあって

 こっちが一切聞いた訳でもないのにベラベラと個人の過去のこと、

 腐った世間のことを聞かされて

 アタイが思うことが何一つ無かったわけじゃないさ......」


そう語る表情には先ほどまでのいやらしい笑みの余韻が残っていた。

今は愉快さよりも邪悪で相貌を歪ませている


「地上が平和になっちまったが故に

 更に肩身の狭い生活を送る羽目になった盗賊稼業の一族、

 前科があるってだけで戦争時には従軍の仕事くらいはあったのに

 平和になった途端に職にありつけなくなっちまった哀れな元罪人達、

 この世界に溢れる魔法という素晴らしい力を

 自由気ままに奮いたいだけだというのに

 それが平和を乱すことになるから、と言われて

 制約で雁字搦めの世の中に溜め息をつくことしか出来ないガキ共......

 そいつらは行き着く先も無く、

 仕方なくか

 憧れてか

 偶然の内に住み心地の良い地下を住まいとするアタイの元に

 集ってきたってことが分かったよ。

 ああ、そして

 この地上はクソだってこともね」


細めた目で周辺の景色を見る。

あまりにも地下暮らしが長かったためか、

どこか眩しそうに眺めているように見て取れた


「そうしてもう一つ知った、特に重要なことは......

 アタイが影で力を貯めてる間に魔王軍と人間の戦争が終わったこと、

 加えて魔王とかいう存在が大いに

 このクソみたいな世界に大打撃を与えて去ってくれたことを...」


口角を上げて舌なめずりをする姿は

より魔女の薄気味悪さを引き立たせた。


「だから思ったのさ......

 どうせ世の中が平和だなんて謳って置きながら

 辟易としている奴が多くいて、

 その世界を魔王様が頑張って後一歩まで変えようと

 踏ん張ってくれてたっていうのなら......!!」


大きく吼え声と共に

魔女が横に全開に腕を振ると辺りが

一瞬のうちに爆発が連鎖して焼け野原となってしまった



「アタイがなってやろうじゃないか......!

 魔王の後継者に!!」



爆ぜる音、焦げる臭いに


遠くに聞こえる人々の叫び声、


火に照らされて色濃い影を伴った魔女の薄ら笑いに



俺は今までに感じたこのない闘争心が湧き上がってきた


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