忍べず
デカい声を出されて咄嗟の判断で襲い掛かる。
これ以上集まってきたら闇に紛れて忍ぶことにも限界がある
相手が魔法陣を展開するよりも早く、
それぞれの男を手刀と当身で無力化した。
少し前であれば吹っ飛ばすことしか出来なかった男が
絶妙な芸当を可能にするようになったものだ
そんな風に自分の成長に感心していると
片方の男が呻いて上体を起こした。
まだ意識があるようだ
「あんた等の言う、小さな魔法使いの居場所は分かるか?」
落ちたランプがわずかに照らす視界に
こちらを向く男の目はぎらついているのが見えた。
「な、なんなんだてめぇは? アイツと知り合いなのか?」
「そんなところだ、行き先を教えれば
これ以上お前たちに攻撃したりはしない」
出来るだけ冷酷な声で言い放った。
脅迫などしたことがないから
実のところ、これでいいのか不安だ。
「あ、あっちだ! この先を真っすぐに行けば、そこに奴がいるはずだ」
男が指さした方向はそのまま直進の道だった。
期せずして正解の進路を辿っていたようだ
それが分かると男共に一瞥もくれずに時々ある松明などを頼りに突き進む
走り続けていると気付くのが明かりを置いている間隔の狭さ、
これだけ間が空いていると真っ暗な空間にいる方が長い。
何故こんなところにアジトを作ったのかが疑問だ
そもそも集団活動をする場所に選んだならば
もう少し明るくする工夫をするはずである。
それを極力しないようにしているところに意図がある気がして
不吉な予感が漂ってきた
潜んで生活する鼠と同然の環境下を
敢えて作っていることが不気味さを醸し出す。
一体、アメルはなんでこんな集団の仲間だったのか
彼女自身の素性にも暗い影が伸びている気がし始めた。
そうして景色も心も暗い中、
ウネウネと曲がりくねった道を言われた通り真っすぐに走り続けると
やっと大きなドアから差す光が見えた
ドアの奥からは声も聞こえる。
今更な気もするが忍び足で戸の隙間に近付いて耳を傾ける
「というわけで! ボスの有難い許しを頂いて、チビのアメルが戻ってきたぞぉ!」
その声に応じるかのように多くの人間の歓声が轟いた。
まるで猿山で聞く、咆哮の共鳴だ
大盛り上がりの歓喜が少し潜まるとガチャガチャと音が聞こえる、
大勢での食事が始まったのかもしれない。
恐る恐る中を見てみると眩しい光が差して、
目が慣れてくると
そこには何十人もの派手な恰好や
ご存知の薄着の荒くれ者ファッションのものが多数いる。
少数ではあるが中にはその様な過激な装いの女もいて
こちらが恥ずかしくなってくる。
まさかアメルもあんな服装で......?
そんな余計な予想を伴って、もっと部屋の中を見ようと
前のめりでドアに寄り掛かって顔を押し付けると
あっさりと自分の身体が転がり込むように戸が開いてしまった
それも重々しく軋む音をさせて
一斉に新しい入室者に視線が集まるのが顔を上げて見えた。
それと同時に
「こちら、放送室だ!
見張りから侵入者がいるとの情報が入ったぞ!
皆それぞれ気を付けろよ!」
タイムリーなアナウンスが広間に響き渡った。
そしてしばらく時が止まったように沈黙すると
一人の男が叫ぶ。
「あ、アイツじゃね!?」
呼応するように先ほど聞こえた幹部格の男が
「そうに違いない! やってしまえ!!」
号令を出した。
その直後に色とりどりの魔法陣が俺に向けられたのは言うまでもない




