一枚岩の壁
アメルが外に出ると、魔女は帰ってきていた。
その傍らには、もう一人の人物を伴っている
「え、なんでアンタが!?」
「勝ったつもり?
あんなの限りない引き分けよ」
そこにはマイがいた。
服は焼損が酷く、アメルと良い勝負だ
「何しに来たのよ」
「目的は同じだと思うけど?」
そう言ってアメルのすぐ横を通り過ぎた。
すんなりと仙人の家に入っていった
「ちょっと、お師匠さん?
一人だけじゃなかったの?
この高みに来れるのは」
「ほぼ引き分けだったろ。
先着順みたいなもんだ」
「自分で作ったルールを曲げたわね」
「生まれてこの方、ルールと法を守ったことの方が少ないからね」
自慢げにいう魔女を見て、先生役としては
実に反面教師の不適合者だと感じた。
「で、どんなアドバイス貰えたんだい?」
「え、あ、うーんと......それよりも!
さっきの話の続きしてよ!」
「んあ? 何のことだい?」
「二人の関係性よ、マイが出てくるまで話聞かせてよ」
嘘が苦手なアメルにしては上手く、話を逸らした。
仙人から貰った指標を明かすことなど、
特にズイには出来るわけがない
そして、思いの外
魔女がその気になって語る長話に集中していると
マイはスッキリした面持ちで、早めに出てきた。
「あれ、もう出たのかい?」
「ええ、まあ」
「そうだ、アメル。
お前もマイも教えなよ。
一体どういう風に言われたんだ?
ここからのプランは、あの婆さんから聞いてないから
お前たちが聞いたことを伝えて貰わんと、
トレーニングは考えられないんだぞ」
「いいえ、あなた様がメニューを組む必要はないですよ」
言いながらマイは不敵な笑みをアメルに向けた。
その瞬間、単純な魔法使いにも意図が理解できた。
共に苦難を乗り越えた絆はアイコンタクトによる意志の疎通も可能とした
「どういうことだ?」
「「こういうこと!!」」
二人の魔法使いが魔女に攻撃を繰り出したのは全く一緒だった。
咄嗟に身を守ろうとしたズイも堪らず吹き飛んで、宙に浮かびながら
驚いた顔で体勢を直した
「告白してやりなよ、マイ。
これからアタシ達がすべきこと。
越えるべき人物が誰かってことを」
「なんのつもりだお前ら!
危なかったじゃないか!」
「ええ、そうね......この時を待っていた」
大きく息を吸い込んで気持ちを整えると、
大きな声を吐き出した。
毎晩アメルと共に不平不満を叫んだ時とほぼ変わらない、
どこまでも響きそうな力強い発声だ
「あなたをぶっ潰すことが最終試練なんですよ!」
「アタシもそうよ!
二人掛りで来られるのが嫌なら、今の内に言っといてくれる?」
彼女の分かりやすい挑発に、時間を置いてから魔女は激昂した。
魔力を最大限高めた後、負けないくらいの大声が返って来る
「上等だッ!
二匹まとめて掛かって来い!!」
仙人の居住区の近くだということも忘れて、
魔法使いたちの空中戦が始まった。
怒って仙人が出てくるまで戦いは繰り広げられ、
その後も空に満天の星が輝いても
その光に負けないくらい三人の魔法が煌めき、
火を吹き続けるのであった




