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魔女組の奮闘

アメル、マイの二人にとっても数日は辛いことの連続であった。

今まで鍛えようとも思わなかった肉体を、短期間で

徹底的に絞り上げるには無理が生じた。


柔軟にして回復の速い若き身体でも朝の目覚めは悲鳴から始まった。


ただ、日を追うごとに彼女達は逞しくなっていった。

身体に大きな変化があったわけではないが、

精神が強くなっていることは確かだった。


弱音を吐かなくなり、

唯一の弟子仲間との口論も少なくなった。

まだ親密になったわけではないが、

ゆっくりとだが育まれる絆があった。


そして、師匠よりも早くに起きて

ストレッチから一日がまた始まる


「はぁ、今日も走り込みかなぁ」


「マイは昨日別メニューで足使ってないんだからいいじゃない......

 アタシなんて体力上げろって散々周回を延長させられたんだから」


「ふっ、アメルはすぐバテるから......」


「そう言うアンタにはない打たれ強さがこっちにはあるのよ。

 スタミナの......代わりに」


奇妙にも二人の得意と苦手は真反対であった。


アメルは持久力が乏しい代わりに、

相手からの攻撃にダウンを取られることは少なかった。


対してマイは魔法耐性が弱いが、

自分から魔法を使う分には長時間の戦闘に強い特徴を持っている。


相手の攻撃を受けつつも強引に勝負を決められる短期決戦タイプ、

相手の攻撃を躱しつつスタミナ切れを狙って有利に進める長期戦タイプの二つが

それぞれのスタイルだった。


そのためトレーニングメニューが少し違う部分があった。

特性に合わせられた修行法にやがて、文句を垂れることもなくなったのである


「うぅん~......」


魔女がそろそろ眠りから目覚めようとしている。

それに二人ともギョッとした。


教え役としての熱意は十分に伝わり、理解し始めていたが

鬼教官が起床するとまた地獄の責め苦を受けるのだと

溜め息と恐れは隠しきれなかった



時は経って、正午ごろにズイは

各々の修練に励むアメルとマイを呼び寄せた。


「今日の昼ごはんは何ですか?」


「アメル、ランチのメニューを発表するために

 わざわざ呼びつけたと思っているのかい?」


「ホントにいつも食い意地張ってるわね」


「マイの方が最終的に食べてる量は多いでしょ」


また姉妹のような幼い喧嘩が始まる前に、

師匠の咳払いが二人の背筋を伸ばした。


「これから入るぞ」


「え......何にですか?

 ま、まさか温泉ですか!?

 水浴びで済ますのはもう懲り懲りで――」


「マイ」


「......すいません」


今度はマイが師匠の話の腰を折って怒られた。

彼女の綺麗好きを知っていても、

笑いを隠せないのが魔女に似た意地悪な魔法使いアメルである


「次の段階だ」


「「次の段階?」」


「基礎体力を上げていくのは、そろそろ終了だ。

 これから本格的に魔法の訓練に入るぞ」


それを聞いて少しの沈黙の後、歓声が響き渡った。

ズイも驚く様な二人の歓喜が共鳴していた。


しばらく魔法使いだという自覚も忘れそうになるほどの

身体づくりにうんざりしていた彼女達は、

念願の魔術強化にステップアップできることを

心から喜んだ


色々と更に厳しい訓練が待ち受けていることを匂わせる

脅し文句を考えていた魔女も、

これには呆れて失笑することしか出来なかった。


そうして始められた新トレーニングで

魔法使いたちのさっきまでの笑顔が消えるほどの

過酷さに泣き声を上げるのに、そう時間は掛からなかった

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