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勇者組の奮闘・3

チェックポイントまでの競争が何日に渡って繰り返された。

勝ち越すこともあれば、アイリスに追い上げられることもあり

総合戦績は前日で遂に並んでしまった。


同点というこの正念場で、あと一回のトライで頂点までの

到達もあり得る標高になってきていたのであった。


「このままの勢いで勝たせて貰います」


「そうはさせませんよ」


互いに微笑を浮かべてスタートした。


今回はどちらかが先を譲るということはなく、

これが最後だという心持ちもあって

スピードに乗った並走がしばらく続いた。


「アイリスもかなり体力がついてきましたね」


「褒め称えている余裕も今の内ですよ」


闘争心をぶつけ合う様に狭い道幅でデットヒートを繰り広げていると、

前から当然のように背丈を超える岩が転がり込んで来る。


貫き通るには助走が必要だ。

そういった思考に一瞬走りに遅れが出たその内に、

彼女はここで前のめりに速度を増して

巨大な障害に向かって行く


剣を引き抜いた一閃そのままに岩を一刀両断。

素晴らしい剣さばきを証するように、

綺麗な断面を見せて真っ二つとなったものが崖から落ちていく。

確かな実力の向上を見せつけられたと共に

リードを許してしまった


負けられないという意地が、全身に力を漲らせていく。



変わらずアイリスに差をキープされたまま、

大きな曲がり角に差し掛かると思わぬ者が飛び出して来た。


トビのようでありながら、かなりの巨大種が現れた。

かなり低い場所から見えた怪鳥の巣の主が、

今目の前に登場したのだと察する


完全に鋭い瞳は殺気に満ちている。

珍しく登ってきた大型の餌にとても興奮している様子だ。


厄介な邪魔者を前にアイリスがこちらに刹那、

目を向けた。

サインはそれだけで十分だった


人間の首であれば簡単に刈り取れるであろうサイズの鉤爪が

彼女を襲う。

しかし、その恐ろしい刃が勇者の肉を裂くことはなく

空を掻いた


限界まで引き付けてバク宙で躱したのだ。

その空いたスペースを詰め、鳥類にしては

殴りがいのある胴体に軽く突き上げる拳を喰らわした。


思わず下がる化け物鳥の頭、

それに伴って自分も頭を下げる。

そして後ろから横にアイリスの攻撃が振られ、

剣の腹で頭部を直撃された空のハンターは哀れ、

地面に落ちていくのであった


「これで登山客が困ることはありませんね」


「今後、誰かが通るかも怪しいですけどね」


軽い冗談に彼女も乗ってきた。

そしてまた並走が始まる


それぞれ個々に鍛え上げてきたようで、

連携は今まで以上に取れている。


この試練を通して、自分たちの結束も強固となっていたのだった。


そうした門番もくぐり抜けて、

山頂が迫って来る。

すると、分かれ道が見えてきた


選ぶ道は互いにいる位置が既に決めてくれていた。


「では、頂点で会いましょう」


「先に行って待ってますよ」


こちらの挑発には余裕の笑顔で返し、

アイリスと別れた。


これから孤独な戦いが始まるが、

きっと今まで道のりに比べればずっと短いものだ。

同じことを彼女も感じているだろう


そしてもう自分達は相手の身を心配することはなかった。


そんな必要もないほどに接戦になることを分かっていた。

成長した実力を認め合っているからだ。


吹雪のように吹き付ける風の冷たさも

今灯る熱い気持ちを冷ますことは出来ない


ゴールは思っているよりも、ずっともうすぐに着くことになるだろう。


己の答えも見つかり始めているのだから。

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