決戦に向けて・8
近くで起きた爆発音でマイは跳ね起きた。
「なっ、なに......!?」
目の前では濛々と黒煙が上がっている。
やがて草原を拭き渡る風が黒を払うと、
そこには大の字で倒れているアメルの姿があった
唐突なことにライバルの無様な姿を笑う余裕もない。
犯人は明らかにズイである
それも普段は見せない固い表情だ。
マイは気を失っている間に何があったのか、
まるで予想がつかなかった。
とりあえず、師匠が不機嫌で一人しかいない弟子仲間を痛めつけたと
あっては次に白羽の矢が立つのは当然自分しかいない。
すぐさま状況確認と共に、己の保全のために魔女の元へ奔った
「ず、ズイ様?
一体、あの女が何をしでかしたというのでしょうか?」
問いかけると硬直していた表情はパッと解かれ、
いつものヘラヘラした感じに戻った。
「別に?
アイツが手合わせしたいっていうから、ちょっと
付き合ってやったのさ」
爽やかにズイは応えたつもりだったが、
笑みの裏にどんな怒りが隠れているのだろうと
未だマイは訝った。
「み、身の程知らずの奴ですね......ホントに」
遊ばれた魔法使いの方に目線を向けて
見ていると、急に煙を吐いた。
そして、ガバッと勢いよくアメルは上体を起こすのだった
「しぶとい奴でもある様ですね......」
「そうだねぇ......精神力なんかも申し分ないんだが......」
ズイは言いかけて呆然とする弟子の近くに歩み寄った。
「どうだい?
お望みの結果は得られたかな?」
「......いや、まったく」
「でも、これでよく分かっただろう」
「......逆らわない方がいいってこと?」
完全に先ほどまでの勢いを消沈させてしまっているアメルに対し、
師匠は首を振った。
腰に手を付き、堂々と語った
「敗因が分からなかったなら、それが今後のお前の課題だ。
アタイは別に従順な部下も手下も、弟子もいらない。
反抗してもらっても構わないし、何なら骨のあるって証拠さ。
その代わり、我流でもいいから学んでもらうよ?
お前たち若いのを教え、強くする役を担っている以上
アタイも義理は果たしたい。
二人とも訓練をすると共に独自な方針を固めることだね......
自分らしくもなく基礎固めっていう着実な方法で
お前たちを強くする気ではいる。
でも、大きな成長っていうのは己で見つけ出し、
己で形にしていかなきゃ、達成できるものではないんだよ。
それが出来ないとなると......
まあ、あの仙人とアタイの期待を裏切ることにはなるだろうね」
今まで一番の意地悪そうな笑顔をズイは浮かべた。
しかし、それは同時に一番
彼女達のやる気を起こさせる言葉を与えられた瞬間でもあった。
力の差を思い知り、
失いかけていた瞳に宿る光が
アメルに戻った。
姉からの付き合いで、顔色ばかり窺っていた後ろ向きな修行は
自分のためにならないとマイは反省した。
両者が自分の道、掲げたい目標のために
歩き出す決意が胸に灯るのであった




