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視通し・2

仙人は自室から出ると瞳とは対照的な蒼い眼帯で目を隠していて、

程なくしてカップに入った暖かい飲み物を出してくれた。

アメルはしきりに危険物でも嗅ぐように警戒して手で扇いでいる


「失礼な子だね......毒なんて入っちゃいないよ」


「い、いや!

 仙人様から頂いた物なので、何か凄い効能があるかと――」


「ないよ」


シュンとしたところを隣のライバルに忍び笑いされ、

肘で小突いた。


「単刀直入にお聞きしますが、もう既に

 私たちの持ちうる限りの力の鑑定が終わっているということで

 良いですね?」


あまり間を挟まず、アイリスらしく

ストレートに事は尋ねられた。

それに対して流石は仙人というべきか、

求められる事実の重みに対して軽い調子で語った


「ああ、そうだ。

 うむ......では、お前から結果を言ってやろう。

 名乗ってくれ」


「アイリスです」


名を聞くと咀嚼するかのように目を閉じて、

何度も頷いてから口は開かれた。


「アイリス、ハッキリ言うが

 残念ながら......」


固唾を飲んで次の言葉を待つ。

ただ、この展開は彼女が望むほどの力が手に入らなそうなことは

間違いなさそうだ。

仙人がお茶目で、ここから明るい診断を告げない限りは。


「お前には力がある。

 努力して、しっかり勇者としての任を果たすことだね」


想像の斜め上であった。

喜ぶべき結果だ。


だと言うのに仙人の声の調子の通り、

アイリスは元気の無い顔を見せた。


それも凄く沈んだ様子だ。


その理由は全く以て理解ができない


「で、次は......お前」


「は、はいッ!」


すぐさま次が発表され、名指しされると思ってもみなかったのであろう

アメルが背筋をピンと張って返事をした。


「お前にも見込みはある。 励め」


「え、あ、やったぁ! えっと具体的には――」


「次、隣のお前。

 名前は?」


「ちょっと、アタシの名前も聞いてくだ――」


無視されたり、手の平で制されたり

うちの魔法使いは散々な扱いである。

真面目にちゃんと視てくれているのだろうか


「ま、マイです!」


「ああ、マイ。

 お前の望みも叶うだろう。

 そもそも高い目標ではないようだからね。

 身の丈に合わせたのだろうが、

 もう少し上も目指せるかもしれないね......」


「あ、ありがとうございます!」


喜ばしい結果は一番だが、

さっきから気休めのようなことしか言っていない。

抽象的で本当がどうか分からない。


知っていたとしてもまるで詳しくは言わないようにしているような......


「俺はウィンです。

 あの、出来るだけ具体的に聞きたいのですが――」


「ああ、待ちな。

 お前には教えない。

 教えられないんだ」


「え?」


ここまで来てあんまりの一言に一瞬、怒りが沸き起こった。

何とか押し込めて問おうとするが、

テーブルについた手の勢いはつい強くなってしまった


「それは、どういうことですか......!」


「お前自身が見つけることが一番だと、

 お前の力の源が言ってるんだよ。

 覚えがないというなら......要望を聞き入れるがね」


その鋭い指摘で激情は収まった。

明らかにこの人はしっかりと把握している。


そして、あの幻のような生き物が力の源であることに

嫌な汗が出始めた

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