魔法使いVS魔法使い
爆発の原因はアメルたちの戦いであった。
未だ両者まったくの互角である
しかし怪我や傷、激しい運動を伴わずとも
魔道士の戦いは息が上がる。
明らかに疲弊しているのはアメルの方だった
「あ、アンタ......いきなり問答無用で掛かってきて、
少しは話くらいさせなさいよ......」
「そうやって下らない会話で休むのが目的なのは分かってる」
言い終わるよりも早く、
火球が射出された。
アメルは身体を投げ出して何とか避けた
「待ちなさいって!
ハア、ハア......昔、アタシもズイっていう魔女の元にいたことがあるの!
話合えることはきっと――」
「知ってる。
あなたがアタシの姉を牢屋送りにしたことも」
「えっ?」
敵が空を引っ掻くように腕を振ると、
地面を切り刻んだ。
真空の刃が服の袖をスッパリ斬っている
術のレパートリーではアメルを凌いでいるようだ。
ただ、それよりも彼女にとって驚くべきことがあった。
考えまいとしていたことだ
「まさか、アンタの姉ちゃんって......」
「口に出すな。
お前にそんな資格はないし、ここでぶちのめす」
そう言って突き出した手の平で直接押されたかのように、
アメルは吹き飛ぶ。
そこで転がり擦りむきながらも、相手の技を理解した
「さっきからアタシの炎も爆発もアイツに届かないのは、
あの風圧のせいね......対抗呪文かなんかで威力を下げられてると思ってたけど
爆炎を強めても駄目な理由が、分かったわ」
「気付くのが遅い。
何でこんな奴を姉さんは......アタシの代わりなんかに」
馬鹿にされた声だけが短気な少女の耳に入り、
闘志を燃やす材料となった
「余裕ぶってられるのも今のうち!
アタシがぶちのめしてやるんだから!」
魔力と精神を集中させ、
辺りに徐々に上昇気流が生まれ始めた。
「また大爆発でも起こすつもり?
芸のない奴......アタシは楽に倒せないし、
アンタを楽に寝かしてやるつもりもない」
昂りと共に相手の少女の力も上がっていく。
周囲は台風でも来たかのように木々が根元から引き抜かれんばかりに
葉を揺らし、枝を揺らして悲鳴を上げている
「アンタが風魔系統が得意っていうなら、
その自信を叩き潰す!」
「競うつもり? 細切れにしてやる!」
何かもを宙に浮かびあげるだけの風圧、
全てを引き裂かんばかりの真空波が今ぶつかろうとしていた。
その時だった
「おーい!」
誰かの声が相手の魔法使いの後ろで響いた。
背後からの音に一瞬、集中が切れた
そこを見逃してやるほどアメルはフェアな女ではなかった。
「喰らえッ! 暴威よ、吹き荒れろ!!」
真っすぐに風圧の大砲が放たれた。
敵の身体はマネキンのように吹っ飛び、
声を掛けた人物どころか、周りの全てを巻き込みながら
前方見渡す限りを野ざらしにした。
惑いの痕という地に一時だけ、霧が晴れた在りのままの姿を現した。
数百メートルも飛んだ先に
失神した少女と声の主であったウィンが倒れ、
周りは災害後のような滅茶苦茶な有り様になっていた




