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勇者と魔法使いと神秘の者たち・4

ハッと身構えた魔法使いの視線の先、

待ち焦がれた人物がそこには立っていた。


「僕をお探し?」


「ナーハ!!」


駆け寄ったアメルは熱い抱擁を

交わすかに思えたが、軽快な音を鳴らした。

少年の頭が叩かれる音だった


「なにカッコつけてんのよ!

 ホントにガキなんだから!」


「へへ......ごめん、遅くなった」


照れくさそうに笑うナーハの登場に

アイリスも歓喜を覚えながらも疑問をぶつける


「ここまでかなり距離があったと思いますが......」


「この森での瞬間移動くらいはお手の物だよ。

 爺さんを見返してやろうと、最初に得た術だしね」


勇者と祖父を得意げに一瞥しながら

二人の横を過ぎた。

そして障壁に触れる


「なるほど、こういう仕掛けか。

 不本意だけど......これは散々結界をバラシてやろうと磨いた

 悪戯の技術を使って協力しないとダメそうかな」


少年の視線は今まで避けてきた長に注がれた。

それに応えるように間を隔てて、

長も両手を突いた


「どういう風の吹き回しじゃ?」


目は合わせず眼前の障害を睨みつけるような厳しい顔でも、

問う声は明るい調子であった


「皆を守るための覚悟ができた、とだけ言っておくよ。

 さあ、始めよう。

 二人でやれば死ぬような反動は分散されるはずだ」


彼の胸中には、新たに成長した心があった。

友と別れたくないばかりに助力を拒否した。

一瞬の気の迷い、若気の至りで年相応の反抗をした


しかしその行為で自分の手で守れる人を、

助けられたかもしれない人を、

この危険な作戦の中で出してしまうかもしれないことを

考えた時、

目が覚める想いだった


間違っていた。

惜別をしたくないばかりに、

この戦いに参加しなければ、

もっと後悔することになることを知った。

仲間を、家族を失うかもしれない可能性を感じた


やっと、そこで俯くことを辞めて

立ち上がり、

今ここに立っている



「いくぞ、爺さん!!」


「久しぶりに血が滾るわい!!」


二人の力は共鳴し合い、

強力な魔の力の結束を歪め、

道を作った


「行ってくれ、二人とも!」


「無理はするでないぞ。

 潜入次第、待機というのも一つの手じゃ。

 ウィンとやらの青年のピンチまでは動かざるべき、

 後でワシらも全員で結界を破って突入する!」


「ありがとう、ナーハと長!

 行ってきます!」


「二人とも死ぬんじゃないわよ!」


勇者と魔法使いは突入し、

直後、退路は断たれた。


広がる景色はどこにでもあるような村ほどの規模の拠点、

何故か満ちた月の光が照らす真夜中。



そして、早速の攻撃。


「......!

 アメル、危ないッ!!」


「え」


異様な光景に気を取られていた魔法使いに

飛んできた何かをアイリスが間一髪、剣で防いだ。


落ちたのは銀の刃。


「信頼できる数少ない、

 やっと出来た仲間のもしもに賭けて......甲斐甲斐しく待ってたのに、

 随分可愛い新手が来たもんだねぇ。

 でも、油断はしないぜ?

 こっちはもうお前らが人間に化けられるのを知ってるんだからな」


口には金の輝き、

マントをはためかせて頭にバンダナを巻いた男が屋根にいた。



気付けば、

地面に刺さっていた武器が消えている

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