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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第2章:長い午後への扉
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第二幕-1

 荒鷲の巣で行われた会談の結果、親衛隊はデルンでの拠点と皇女からの物資とギルドの木工技士3人が提供された。それにより今後の方針を話し合うために、カイムは会議室に司会進行のアマデスウとブリギッテ、マヌエラにレナートゥス、訓練生のギラとアロイスに速記係としてヴァレンティーネを呼び出したのだった。

 その会議の中で問題となったのはデルンの新拠点だった。拠点と言っても、与えられたのはデルンの街の北部にある無人地帯の廃墟であった。そこは比較的城と距離が近かったが、無駄な土地の有効利用としての側面の強い場所であった。それは住民がいないということや廃墟の民家が無駄に多いことが表しており、カイム達親衛隊はこの土地の扱いについて多い頭を悩ませたのだった。


「全部ぶっ壊して、1から全部建て直せば良いだろう?」


「私もそれには賛成です。今では人員をダース(ドゥッツェント)単位で動かせる。建設労働は増員された新隊員達の筋力鍛錬にもなりますし、首都での展開の速さは今後重要になる」


「そうだろう、そうだろう。なっ、どうだよ坊主!」


 レナートゥスは普段の小銃量産と銃器の試作という鍛冶業に飽き始め、他の作業をしたいため拠点の新設を要求した。その熱意はかなり強く、前のめりの姿勢でカイムに送る視線は輝いていた。そしてレナートゥスにアロイスが理由をつけてに賛成すると、会議は建設を強行する雰囲気となった。


「あんな廃墟の住宅街渡されてもどうしようも無いでしょう。更地にするにも時間がかかるし、 建設にも時間がかかる。これから先の様々な行動に割く時間が建設で奪われては元も子もないです。総統閣下、私はあの土地を書類上だけの存在でいいものと考えます」


「確かに…それもそうだな…」


「おいおい、坊主!そりゃねぇぜ」


 だが、レナートゥスが作った強行の雰囲気に対してギラは反対した。その彼女の意見はかなり現実性と説得力が高く、親衛隊の秘密主義を維持することや今後の忙しさを考えるとカイムにはちょうど良く感じた。

 そのためにカイムが納得して頷くと、レナートゥスは飽くまで納得できなかったようで、カイムへ野次を飛ばしつつ手元の紙に工期の概算予定を書き出した。


「ぶっ壊すのは坊主が居れば1日とかからんだろう。壊したあとは俺の出番だ。300人くらい人手が有れば、立派なのを1週間半くらいで完成させられる」


「1週間半って…レナートゥスさん冗談が過ぎますよ」


「ギラの嬢ちゃん、俺が物造りで冗談言うと思うか?こいつは概算だがな、最大でも1月以内。坊主、どうだ?」


「こんな工期で耐震性とか…いや、レナートゥスさんだし大丈夫か…」


 その予定表の内容には会議室の全員が驚いた。ギラはその予定表を前に思わず尋ね返したが、それにもレナートゥスは胸を張って答えた。その反応には不安を感じたカイムも、レナートゥスがいつの間にか荒鷲の巣の防御壁を完成させたことを思い出してた。そのことでカイムが頷くと、会議は建設を了承したのだった。

 その会議の他の議題としては、親衛隊に増えた人員は親衛隊候補生とすることなどが決定された。彼等は現在訓練中の第1期訓練生の訓練が終了すると、候補生に与えられた労働の成績で第2期訓練生とする。出来るだけ早く練兵軍曹の人員を増やすため、教官任務を1部の訓練生に高等訓練として行わせる事となった。

 今後の親衛隊は兵員増強と装備の充実を優先する方針となり会議は予想より早く終わった。そのため訓練生とブリギッテが訓練に戻る中、カイムが部屋から出ようとするとマヌエラが会議室の扉を閉めた。


「カイムよ、お前の置いてった概略図から試作品を1つ作ったぞ。お前…よくこんな酷い物使おうと思ったな」


「あぁ、それか。確かに俺も、壊れるために造るってのは好きじゃないな」


 マヌエラのカイムへ報告する中、それを聞いたレナートゥスは物造りの立場から苦い顔をしながら苦言を言った。その苦言を聞き流すマヌエラが机に置いたものは、一見金槌に見える何かだった。

 だが、先頭の金属は円筒で打ち付ける平面は上を向き、木製の持ち手の下には金属のキャップが付いていた。それを無造作に手に取ったカイムは、依頼した本人でありながら引きつった笑いを見せた。


「柄付手榴弾…こんな短期間で出来るなんて…」


「構造自体は単純だからな、こいつに部品を頼めば私でも作れる」


 マヌエラはカイムの恐ろしがりながら言う感嘆に、頭を軽く抱えながら自慢するように言った。


「でもよ。それは使ったら爆発するんだろ?壊れる物量産するのは悲しくなるぜ?たとえ威力が凄くてもよ」


「爆風で人を殺せるんだぞ…まぁ、少人数が大軍に勝つためか…仕方あるまい」


「そんなに恐ろしい物なんですか?この金槌?」


 マルエラの自慢げな発言に反して、レナートゥスはその手榴弾を渋い目で見つつ批判の言葉を漏らした。その発言にマヌエラは同意したげな発言をしながらなも効率を重視する科学者としての意見で反論するのだった。その会話を耳にしたアマデウスの不思議そうな疑問の言葉によって、会議室は少しの間静かになった。


「試験はしたんですか?」


「まだだ」


「なら耳の良い人種の為の対策をしないとな。今度の試験はマックスを連れていきましょう」


「彼奴らの為の耳栓を作れという事か。わかった。早めに作ろう」


 カイムの質問にマヌエラが答え、彼は思いついたように一言呟いた。その一言にマヌエラが答えると、その場の全員が会議は完全に終了したと判断し、仕事に戻ろうとした。


「会議中、失礼します!」


 その時、いきなり扉が叩かれ部屋の外から外から訓練生が入室許可を求めた。カイムが軽く返事をすると、ツェーザルが封筒を片手に入ってきた。その封筒の蝋封に翼の生えたイッカクの様な生物が描かれているのを見たカイムは頭を抱えた。

 その紋章をカイムは城で見た事があった為、皇女からの連絡とわかったからであった。


「総統閣下。城から届きました。出頭しろって書いてありますよきっと」


 ツェーザルの言葉通りにそこには至急に話したい事が有るため明日城へ来いとあった。

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