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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第6章:死にゆく者に花束を
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幕間

趣味で書いているので温かい目で見てね。

「ちっ、何が"皆さん、お待ちですから"だ!それから一週間も修道院で放置ってのは何なんだ!クソが…」


「いいじゃないですか、ジャン?食事も出て街へも自由に移動できる。その飲み食い遊びの資金も出してくれる。ちょっとした"給料の出る休暇"として愉しめばいいじゃない?」


「お前みたいな自堕落な奴とは違うんだ。まして、こんないい思いは俺以外に最もすべき奴が…」


 ポルトァの首都にあるアルコニモス修道院の来賓用の客室で、ジャンは窓の外に広がる街の景色を見つつ一人ぼやいた。その表情は眉間に深いシワが刻まれる程であり、露骨に苛立ちをあらわにしていた。

 そんなジャンの部屋に遊びに来ていたディアヌがソファーに深く腰掛けつつ紅茶を片手にジャンへと語りかけたが、薄いシャツとホットパンツという露出の多い彼女の格好に頬を赤くしながら顔を背けると、彼女の自由気ままな態度から勤勉で有能ながら不当な処遇を喰らう一人の男を思い出した。その男のことを思うジャンは、国のためとやってきたのに仕事もしないで観光や気ままな生活ばかりのディアヌに呆れつつ、現状に対して悪態をつくのだった。


「またヴィヴィアンのこと?」


「うっせぇな!黙れよ!」


「本当に歪んだ友情ですね?」


 窓の外を睨みつけるその姿と一言で、ジャンの言葉がヴィヴィアンへ向けて発せられていることに気づいたディアヌは、いたずらっぽく笑って彼へと尋ねた。その言葉に恥ずかしさで顔を真っ赤にしたジャンが彼女へ怒鳴りつけると、図星をつけたことに満足したディアヌはしたり顔で呟きつつ紅茶のカップを呷り、空になったそれへ新たにポットから注ぎ始めた。


「たくっ、何なんだマクルーハン教ってのは。人をガリアからこんな片田舎まで呼び出して待ちぼうけとか。あのクソ修道女は文句の一つや二つは…」


「わたしへの文句がなんですか?」


 鼻歌交じりに紅茶を注ぎレモンの輪切りを入れるディアヌの姿に、ジャンは乱れた前髪をかき上げながら気怠げに部屋のベッドへと歩み寄ると悪態をつけながら倒れ込んだ。その悪態は気疲れや何もないこの出張への飽きや不満が満ち溢れており、聞かされるディアヌも紅茶に口を付けながら苦笑いを浮かべるのだった。

 さらに枕へ顔を埋めるジャンだったが、そんな彼へと聞き覚えのある女の声が聞こえると、彼は勢いよくベッドの上へ立ち上がり身構えた。


「ダフネさん、おはようございます」


「おはようございます、ディアヌさん。ジャンさんも」


「ちっ、ブリタニア語は流暢に喋りやがって…」


「一応、共通語の一つでしょう?ガリア語はHの発音が苦手で」


「"ガリア語は天使の言葉"だからな」


 何時の間にかジャンの部屋の中にいたのは、修道服に身を包むダフネだった。彼女はベッドの上で身構えるジャンを無視してディアヌへ一礼すると、ソファーでくつろぐ彼女はダフネに片手を軽く上げて気楽に挨拶するのだった。

 仲よさげに挨拶を交わすダフネとディアヌの二人に、ベッドの上で一人の身構えるジャンはその状況がアホらしくなると、気怠げに頭を掻いてダフネへ八つ当たりの一言を述べるのだった。その一言になんともなしにダフネが軽口混じりに答えると、不満げなジャンは首を回しながら遠回しの皮肉を述べた。その一言は神に仕える立場のダフネからすると流石に不満や怒りを覚え、一瞬だけ眉を潜めた。

 だが、ダフネの不満な表情にジャンが満足気な態度をするのを見ると、彼女は彼の子供じみたその態度に若干呆れて肩を竦めたのだった。


「傲慢は人を地獄に落としますよ?」


「俺は身の程を弁えてるさ。その身の程が低いから…」


「ガリアの聖剣使い、白百合の8英雄のジャン=フランソワ・テリエが身の程が低いなんて。嫌味ですかね?」


「正しいものの見方が出来るだけだ。マティアスみたいにアホだったりクレールみたいな世間知らずだったり、サビーヌ、リシャール、レオンスみたいな間抜けなら、こんなに歪まなかったさ!」


 そんなジャンへとシスターとして説法を垂れるダフネだったが、真面目な表情をして正論をぶつける彼女にジャンは真摯に受け止め真面目に言葉を返した。

 唐突な態度の変化に驚くダフネだったが、少し前のジャンが感じるヴィヴィアンへの劣等感や歪んだ友情を悟っていたディアヌが小馬鹿にするように彼へと尋ねかけた。その言葉に眉をしかめるジャンだったが、シスターであるダフネの言葉を変に真面目に受け止めたことで正直な腹の中を僅かに見せたのだった。


「自覚あったの?」


「煩い、全部ヴィヴィアンのせいだ!アイツがあんなんだから…俺は…」


 そんなジャンの心中に驚くディアヌが思わず目を丸くしてが彼に尋ねかけると、顔を赤くしたまま恥ずかしさから目を閉じたジャンはベッドから降りて再び窓の外へと顔を向けたのだった。


「それはそうと、キュリロス司祭が二人をお呼びです。"呼んでいた皆さんが揃いました。顔合わせをしておきましょう"とのことです」


 微妙な空気が流れるジャンの客室の中で、ハッとした表情を浮かべるダフネは軽く手を合わせるとジャンとディアヌに向けて姿勢を正した。そして、シスターとしての表情を浮かべると、上司からの伝言を口真似を混ぜて伝えるのだった。

 その伝言に窓へと顔を向けながら疑問の表情を浮かべたジャンは、ダフネの方へ振り返ると彼女の元へと歩みだした。


「この前言ってた10人ってのは神父とかじゃないのか?挑むのは俺達四人じゃ…」


「何を言ってるんです。"ネーデルリアの剣聖"といえば、つい最近のポーリア内戦で革命派をまとめて血祭りに上げたトンデモ剣士ですよ?たった四人で掛かったら返り討ち確定ですよ」


「"剣士が剣士を相手に徒党を組んで"、か。糞が…」


 ダフネへと聞かされた話との齟齬を尋ねたジャンだったが、彼女からの正論を前にすると一瞬で彼は返す言葉を失った。そのダフネの表情は、明らかにシスターのものとは思えない死線を潜り抜けてきた兵士のものであり、その口調も半分以上はジャンへの呆れが見えていた。

 そんなダフネの言葉に剣士としての意地として何を言おうとしたジャンだったが、いそいそと準備のために部屋を後にしようとするディアヌの視線に言葉を失うのだった。

 最後に出た皮肉を聞き流しダフネが部屋から去ると、ジャンはガリアの英雄としてのシンプルながら金の装飾の施された青と白、赤の服装に着替え始めたのだった。


「Sacerdote, gracias por su paciencia. Traje a Jean y Dianu.《司祭様、おまたせしました。ジャン様とディアヌ様をお連れしました》」


「ダフネさん、ブリタニア語で構いませんよ。エスパルニア語やグイリア語が解らない方も多いのです。ここは皆さんとの意思疎通を重視しなければ」


 準備を終えたジャンとディアヌは、ダフネの案内の元でアルコニモス修道院の大きな円卓の部屋へと案内された。そこには既にキュリロスを含めた数人が席についており、部屋に入ってくるジャン達へと視線を向けるのだった。

 既に来ていた他の英雄女傑達に一礼するダフネは、キュリロスに対してエスパルニア語で挨拶すると後ろに立つジャン達を半身を反らして掌で指し示した。そんな彼女へキュリロスが貼り付けたような温かい笑みと共に流暢なブリタニア語で軽く諭した。

 キュリロスのその笑みに不思議と違和感や悪意を感じ取ったジャンは、そんな彼と視線が合うと作られた表情で微笑みかけられた。その無機物めいた笑みに気味悪がった彼は、いそいそと席につくと態度悪く机に肘を突きながら大いに寄りかかった。


「アンタがキュリロスか?人を呼んでおいて何時までも放置とは随分な扱いだなぁ?」


「ちょっと、ジャン!」


 露骨に不機嫌さを見せつけるジャンは、待ちぼうけを喰らわせた張本人であるキュリロスへと早速突っかかっていった。それを止めようとしたディアヌだったが、彼女も彼の行動が単純な嫌味だけではなくキュリロスの見た目だけでなく雰囲気からくる腹の底に何かどす黒いものを抱えているような人物像に対する警戒と理解すると、発言を止めることをやめたのだった。


「ディアヌさん、構いませんよ。ジャンさんの言うとおりでもありますから」


 そんな二人の意図を知ってか知らずか、キュリロスは未だ貼り付けたような笑みを崩すことなく意図的に作った様な機械的な温かい言葉を発するのだった。


「この通りです。すみませんでした。仕事が忙しいというのもありまして、あなた方同胞のことをおざなりにした私の罪をお許し下さい。許せぬと言うなら…」


「おい止せよ、そんなことはしなくていい。頭を上げろ」


 キュリロスはその不気味さを維持したまま立ち上がると、不満げなジャンに対して謝罪の言葉を述べつつ深く頭を下げた。その下げ方は腰から直角に曲がった見た目だけなら深い反省を感じさせるものだった。

 だが、キュリロスが行うそれにはまるで人としての感覚を感じ取れず、まるで無機質な人形めいたものをジャンは感じるのだった。そんなキュリロスの謝罪を不気味さと早くこの場を終わらせて去りたいという感覚に駆られたジャンが適当に受け流すと、キュリロスは満面の笑みと共に顔を上げた。


「あなた方の慈悲深さ、きっと主は見ておられます。主の祝福があらん事を」


「あぁ、解ったから。顔合わせだろ、顔合わせ!」


 そんなキュリロスの不気味さに根負けしたジャンは、同じ円卓に座る今回の件の協力者を確認するのだった。その円卓の席に座る者達は男女共にいたが、全体的にその年齢層は若かった。おおよそ17歳から二十代前半までという構成に不思議と不安を感じたジャンは、手近で一番年齢の近そうな青年に視線を向けた。

 その青年は白色混じりのプラチナブロンドの短い髪に高い鼻、整った顔立ちに青い瞳とおおよそ凡人離れした青年だった。さらには、顔だけでなく細身ながらも鍛えられた体に長い手足といった戦う男としてのいい素質も見られる、いかにも伝説や伝記の類に出てきそうな騎士といった見た目だった。


「シルヴェスター・マッキントッシュ。ブリタニアで魔剣士をやっています。まぁ、あくまで騎士見習いですけど」


「ほぅ、アンタが噂の"女王の魔剣"か。若いな」


「貴方と大して年齢、変わりませんよ?」


 その青年、シルヴェスターはジャンの視線を前にすると礼儀正しく挨拶を始めた。その声は男としては高いながらもはっきりとしており、ジャンは彼に人間的な安心感を感じたのだった。

 その安心感と共に聞き覚えのあるその名前から、ジャンはシルヴェスターの通り名を呟きながら改めて観察するように彼を見つめた。その際に思わず出た本音を聞いたシルヴェスターは、ジャンへと不思議そうな視線を向けつつ彼へと笑いかけたのだった。


「雰囲気の問題だよ。実戦は?」


「魔獣退治とかは十数回。それと翼竜退治が…」


「対人戦だよ。これから剣聖、つまり人と戦うんだ。殺し合うんだぞ?」


「それは…初めてで…」


「だから若いのさ。ガリアもガリアだが、こんなガキばかりが戦場にいるなんて。ヴィヴィアンがいたら笑って隠居を言い出すな…」


 シルヴェスターの纏う空気感はジャンのような鋭さがなく、どちらかというと温かみが溢れていた。その雰囲気に軍人というよりは冒険者や狩人といった武器を扱うだけで戦う者といった感覚を感じなかったジャンは、若干意地悪くシルヴェスターに尋ねかけた。その質問に自信たっぷりに返すシルヴェスターだったが、その高くなりかけた鼻をジャンが容赦なく折ってゆくと、彼は返答に困りながら口籠った。

 露骨に対人戦をしたことがないと主張するシルヴェスターの姿に、ジャンは呆れ返りつつ頭を掻いて皮肉を呟くのだった。


「おい、そこのおっさん。俺はクルス・メンチャカだ。そして、シルビア・チュエカとアルタ・ポルラス、フアニタ・アルメンタ。俺達四人でポルトァの勇者をやって…」


「てめぇ、ザケたこと吐かしてると舌ぁぶった斬るぞ?魔導師の一人も雇えない貧乏人が勇者とは情けないな」


「なっ!使えない魔導師を追っ払っただけだ!あんな奴の代わりなんて…」


「剣ダコもないド素人が勇者やってるってだけで事情はわかるっての!テメェらなんて、むしろそいつのオマケだ!ウザいんだ、次話しかけたらぶっ殺すぞ、クソ雑魚が!」


 今回の件を共にする仲間が早速頼りになるか怪しい状況に不機嫌になるジャンに突然の尊大な態度で話しかけたのは、彼より若い17歳程の青年だった。濃い金髪に整った顔立ちだったが、緑の瞳や目元はキツい印象を与え、尊大な態度の割には体つきも騎士や戦士からはかけ離れたものであった。そんな彼のパーティーメンバーであるシルビアは黒いボブカットに皮の鎧を身にまとう小柄な少女でアルタは長い金髪をポニーテールにした美麗な女騎士、フアニタはドリルの様なウェーブのかかった赤い髪に豊満な体つきの魔術師だった。

 勇者と言う割に彼を取り巻くパーティーメンバーが美麗な女性ばかりな点や、補助的な回復術士をしつつパーティー全体を底上げする魔導師の存在が無いことにも気になりだしたジャンは同じガリアの英雄の一人がイメージと重なり、クルスへと殺気混じりの怒気を放った。

 その怒気にすっかりやられたクルスが周りのパーティーメンバーから励まされながらも言い返そうとするも、下手をすると本気で殺しに来かねないジャンの頭を抱えた指の隙間から見える刺すような視線と神経を斬りつけるよう発言に彼はそれ以上何も言えなかった。


「ちっ…こっ、今回は見逃してやるよ」


「チビって逃げ出すの間違いだろ!こんな国の害獣対策も冒険者だ何だに頼るクソ弱小国家のバカ勇者かなんだか知らないが、次に舐めたこと言ってみろ。死にたくなるまで斬り倒す!」


「ジャン、それぐらいにして」

 

 捨て台詞を言って話を終わらせようとするクルスに、怒りが抑えきれないジャンがさらに眉間に深くシワを刻みながら追い打ちをかけると、部屋の空気はみるみると悪いものへと変わっていった。そんな氷点下の部屋の空気をまずいと察したディアヌが無理矢理に止めたことでジャンが静かになった。

 だが、ジャンの噛みつくような発言に誰もがそれ以降の発言を尻込みして、部屋には数十秒の沈黙が流れた。そんな状況にはジャンも感情的になったことを反省しつつ困ったようにディアヌへ目配せした。そんなジャンの困った表情とそれを隠そうとする手の動きに、ディアヌは彼同様に困った表情を向かいに座る男へと向けたのだった。


「サンス・ソリス・バルビエーリだ。"ガリアさん"なら知ってるだろ」


「エスパルニアのやつまでいるのか?」


「ここじゃ、一旦そういうの忘れましょうよ、敵の敵は味方ってことで。ねぇ、ディアヌさん?」


「魔道士同士、仲良くってことですね。なら、技術の探り合いはなしということで」


「もちろんですよ、美しいお嬢さん」


 そんなディアヌの陽性に答えたサンスが気さくにジャンへと軽口混じりに話しかけると、先程の険悪な雰囲気を出来るだけだ崩そうとジャンもそれに応じて気さくに笑いかけた。ガリアとエスパルニアという長年国境で紛争を起こす大国の英雄と魔導師の対話は周りに不安と心配をもたらしたが、ディアヌも含めた3人の会話は至って平静に進んだのだった。


「アンヤ・スカンツェ。ノーベル帝国」


「トドールです。そして、彼女はユリア。ブルギア王国でゴーレム乗りをやってます」


 ようやく氷点下の空気が和らぐと、残りの面々がそれぞれ自己紹介を始めた。

 アンヤと名乗った女は、雪のように真っ白い肌に灰色の瞳、白い髪を地面につくほど伸ばしたポニーテール麗人であった。歳はジャンより上に見える彼女は、革鎧という比較的軽装でありながら動きやすさを最優先した装備であった。

 アンヤの次に自己紹介を始めたトドールとユリアは、褐色の肌に黒い髪をした好青年と美女であり、ジャンにも解る程度に似た顔立をした兄妹であった。


「そんで、俺はガリアから来たジャンだ。隣の彼女はディアヌ。で、ここにいるのじゃ一人足りないんじゃないか?そこそこのヤツが揃ってるってことは、ひょっとしたらタリアーノの"竜騎士"ってヤツか?」


「いえ、タリアーノ王国は王子が婚約者を新しい方に変えたとかのゴタゴタが酷いらしく、ご遠慮していただきました。その代わりに来ていただいたのですが、彼女はこの各国精鋭の中でも特に高貴な方なので」


「"高貴な方なので"?どういうことだ?」


「まっ、まさか!キュリロス司祭、貴方が連れてきた人は!」


「おぉ、ディアヌさん。察しがいいですね。いえ、高位の魔道士故の共鳴と言うやつですかね?まぁ、彼の国は自国の姫の失態を自国の者でなんとかしたいと思っているようですからね」


 一通りの自己紹介が終わった中で、ジャンは人数の不足を怪しんでキュリロスへ露骨に嫌な顔をしながら尋ねかけた。思いつく人物を出して尋ねたジャンの言葉に、キュリロスは律儀にタリアーノ王国の現状を説明しながら答えた。

 その発言から何かを察したディアヌが驚愕の表情を浮かべながらジャンへと目配せした。その視線が礼儀正しさや敬意を求めるものと察したジャンが身構える中、キュリロスは彼女の姿に感心したように頷いて説明をすると部屋の奥にあった別の扉を指さした。


「では、第一王女陛下。皆に挨拶をばお願いします」


 今まで気づかなかった扉の存在に驚くジャンだったが、キュリロスの一言はさらに彼を驚かせた。キュリロスの説明や"第一王女陛下"という言葉から、流石のジャンも扉の向こう側の人物が誰なのかを察すると背筋を正し、扉の向こうから部屋に入ってこようとする人物へ経緯を払おうとしたのだった。

 開いた扉から現れた人物は、シックな黒いドレスに身を包んた女だった。歳は25くらいであり、艶のある長い上品なウェーブのかかった茶髪にアンヤの白い肌にも負けぬ肌はまるでガラス細工のようだった。その体つきから雰囲気まで、まるでガラス細工の様な美しさをもつその女は、翠の瞳をゆっくり閉じて恭しくお辞儀をすると、控えめな胸元に手を当てて自己紹介をしようとするのだった。


「ティネケ・ファン・デル・ホルスト。ネーデルリア三重王国の国王、エデュアルト・ファン・デル・ホルストの娘にして、王国の王位継承者です」

読んでいただきありがとうございます。

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