幕間
趣味で書いてるので温かい目で見てね。
その小さな部屋は家具や物が少なく、白い壁に無数の金の装飾がされていた。だが、その装飾は家具の少なさを埋め合わせる為にただ豪華という訳でなく、荘厳さと宗教色を示していた。何よりも、十字架に半円のついた巨大なモニュメントがその宗教色を過剰に強くしているのだった。
「それで、聖徒よ。その"剣聖"は何処へ向かったのです?」
[考えうるに、ポルトァの港でしょう。嘗てのダークエルフもそのようにして賤しき獣の大陸へと向ったとの記録もありましたので]
「なる程、"争いが起きた理由と平和的な解決策"ですか…仮にも"聖剣を振るう騎士"とは思えぬ所業ですね。聖剣は、本来ならば法国の所持品にして、各国に下賜したもの。それを振るう人間が、獣達と話に行くなんて」
[どうしますか、大司教様。あの者か大陸を出る前に贖いをさせますか?]
その部屋の中央に唯一置かれた椅子と机には、白色のカズラを身にまとう一人の老人が座っていた。シワの深い白い肌に白髪のその老人は、穏やかな表情に凛々しさを纏う不思議な雰囲気をしていた。その老人は、机の上の光る水晶に話しかけた。その水晶からは若い一人の男の声が響いた。
老人とその若い男は、お互いに穏やかな口調で日常の何気ない会話のように話し合うが、その内容は不穏に満ちていた。若い男の報告に大司教と呼ばれた老人は微笑みながら、胸のロザリオを指遊びさせつつ、瞳を閉じた。
「いえ、大陸を出てからでもいいでしょう。それに、まだ罪を犯していない子羊を罰するのは、それこそ主に反する行為。教皇様も許さないでしょう」
[はっ、仰せのままに]
「それと、その子羊が海に出たらまた報告をしてください。こちらも聖徒や司教を送りますので。それに、各国との調整もしなければなりません。良いですね、聖徒サンス」
[主の導きのままに]
瞳を閉じたままに、大司教は水晶の向こうから連絡をしてくるサンスへと穏やかに語りかけた。その言葉に、サンスは普段の気の抜けたような喋り方ではない穏やかかつはっきりとした口調で答えるのだった。
そのサンスへと大司教が更に指示を告げると、彼は返事をした。すると、何かを置くような音を響かせると、水晶から光が消えるのだった。
「ソロンさん。キュリロス・ガヴラス司祭はいらっしゃいますか?」
「失礼します、大司教様。キュリロス司教でしたら来られております」
「ならばお呼びください。彼に要件があります」
水晶から完全に光が消えると、大司教は正面
に見える扉へと呼びかけた。すると、キャソックと短いローブをつけた司祭のソロンが顔を覗かせ、大司教に答えた。ソロンの若さあふれる笑顔を見た大司教は微笑みかけながら、彼にキュリロスと呼ばれた司教を呼びかけさせた。
ソロンが呼びに行くとすぐ、正面の扉からは一人の長身痩躯の男が現れた。彫刻のような美貌の肌は病的に白く、髪も長く刈り揃えられた白髪で、その瞳は血の色をそのまま映し深紅であった。その肌の色が、シャツ型の漆黒のキャソックと相まって彼に独特な威圧感を与えた。何より、彼は腰に聖職者に似合わない1.6mほどのレイピアを差していた。そのレイピアはヒルトの部分に深紅の宝石のような大きな石が埋め込まれており、その中を血のようなドス黒い何かが流れるように蠢くのだった。
「大司教、お呼びで?」
「知っていたろう、こうなることを。だからここにいる」
「次はどこの背教者を討てばいいので?」
キュリロス司教の無表情かつ感情の無い言葉には、不思議と強い闘争心や殺気が滲み出ていた。更には一見して前を向いているように見える視線は焦点が合っておらず、その異常な不気味さを強くするのだった。
そのキュリロスの生物的でない不気味さを前にしても大司教は全く気にせずに話しかけた。だが、呼ばれた理由を既に理解しているキュリオスはただ尋ねるのだった。
「ダフネ修道士を連れてポルトァのアルコニモス修道院に行きなさい。そこにて、邪悪と密会して帰ってきた背教者を…各国の聖者と共に討つのです」
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