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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第6章:死にゆく者に花束を
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第1幕-3

色々忙しくて遅くなりました。

趣味で書いてるので温かい目で見てね。

 ファンダルニア大陸にあるガリアという国は、エスパルニア王国やタリアーノ王国などといった王国列強諸国の1つであった。そのガリア王国は有能な王や摂政、貴族達が民衆を良く率いたことで侵略を仕掛ける国家や国境を乱す蛮族を打倒し、多くの国家から友好関係を結びたいと思われる強力な国家であった。

 だが、平穏な時は権力を持つ上層階級の人々に余裕を生み、その余裕は王公貴族の堕落を生み出したのだった。

 その結果、民衆は自分達を搾取する権力者達に対して革命運動を起こし、その運動に王家や大貴族に対して良い感情を懐かない弱小貴族、各種の商人達が加勢した。その運動を王家が弾圧したことでガリア国内は王家派と共和派に別れて数十年に渡る大内戦を繰り広げたのだった。

 数的に有利だったガリア王国だったが、それ故に王家は共和派を逆賊と判断し、財は全て没収という弾圧を与えた。

 だが、その弾圧は貴族に委託された途端に苛烈さを増し、いつの間にか財だけでなく男は皆殺しにして女や子供は奴隷として売りさくという悍しいものになっていた。その財さえも貴族が懐に蓄え、その貴族の子弟が女性に対して無慈悲な暴力を振るったことは、王国軍兵士達さえ驚愕させたのだった。

 ガリア王国は徴兵制を建てて軍を組み立てていた結果、多くの兵は同胞への弾圧に怒りを覚える、兵士達の離反を察知した貴族達が共和派に寝返ったことで王家は一気に勢力を失い、ガリア王国は首都マリセイの決戦で敗北したのだった。


「いくら共和主義が耳触りが良くても…あれじゃ結果的に専制政治の貴族達と何が変わるんだか」


「弓の人、女の人たくさん連れてた。貴族もそうなの、ご主人?」


「貴族な…親父も祖父ちゃんさえ、"食い物以外は謙虚、倹約こそ正義"って言ったよ。だから、これからはあんな["天使だ神の御使い"好きの聖堂派変態]に近寄るなよ、オレリア」


「は〜い!」


「ねぇ、オレリア。そのスープ・ア・ロニオン、一口頂戴?」


「いいよ、お姉ちゃん!そっちのキッシュも一口ちょうだい!」


「もちろん!はいっ、交換!」


 そのマリセイの街は景観が美しいだけでなく、ランドマークとなる建物や広場を中心にいくつもの道が放射線状に広がる美的な構造からことから、"花の都"と呼ばれ人々から愛されていた。

 その花の都にある国防省から伸びる軍人通りの小さな料理店で、ヴィヴィアンはシャンタルのオレリアを連れて食事を取っていた。その料理店は小さいながらも白い煉瓦で組まれ、年季の入った立派な佇まいであった。

 その中で四角いテーブルに小さく置かれたラタトゥイユにフォークを突き刺すヴィヴィアンは、ボトルを半分空けたロゼワインで赤くなった頬を掻きながら目の前で寸胴ごとオニオングラタンスープを頬張るシャンタルや、彼女と料理を交換する隣を見ながら呟いた。その表情は仕事後のひと騒動による心的疲労がうっすらと見えていたが、


「立場が変わっただけで、人は同じ過ちを繰り返しているのですね…ヴィヴィアンさま、貴方なら…」


「止めろよ、シャンタル。これは俺が上に立った所でどうにもならない。共和政治は民衆が政治に関心を持って行動してこそ変わるんだ。今を"愚衆政治"とまで言うつもりはないが、俺があれこれ言えば"貴族政治"と変わりない」


「すみません…出過ぎた発言でした…」


「謝るなよ、悪気があった訳じゃないだろ?ほらっ、早く食べ始めないと目の前の"食欲お化け"にグラタン・ドフィノワ食べられるぞ?」


 そのヴィヴィアンの横でラム肉のオーブン焼きを切り分けていたシャンタルは、彼の説明から思ったことを真剣な眼差しで言おうとした。だが、その内容は酒に僅かに酔いながらもはっきりとしたヴィヴィアンの意見に遮られた。

 そのヴィヴィアンの持論を前にシャンタルは反省の色を見せる表情で謝ると、彼はキツめに響いた自分の口調を前に苦笑いを浮かべると、口調を改めながらシャンタルの肩を軽く叩いて励ましながら、呆れた口調で彼女のテーブルを挟んだ前の席を指差して呟いた。


「"すまんヴィヴィアン、半分持ってかれてる"難しくてよくわからないけど、そっちのグラタンも、この料理も美味しい!"‘カスレ’だったか?"そうそれ!」


 ヴィヴィアンが指を指したテーブルの向かい側のオレリアの隣、シャンタルの前にはネーデルリア3重王国第2王女であるハル・ファン・デル・ホルストが座っていた。彼女はヴィヴィアン達の座るテーブルの7割以上を自身の料理で占領しながら、その料理達に紛れるように置かれていたシャンタルのジャガイモのグラタンを既に半分平らげいた。

 そんなハルは聖剣を床に置き、その柄を靴を脱いだ素足で触れさせることにより、意思疎通の維持を行っていた。

 そんな傍から見ると行儀と食い意地の悪い第2王女のその姿や発言に、ヴィヴィアンは1時間半前の出来事を思い出しながらラタトゥイユを頬張りつつ呆れた視線を向けるのだった。

 国防省を出たヴィヴィアン達3人は、夕食を取ろうと"軍人通り"を東へ向かいホテルや馬車駅、戦争博物館の屋上を貸し切った料理店を見て回っていた。だが、獣人故に鼻の利くシャンタルが値段と料理が釣り合わないと主張したことで、3人はなかなか店を決められなかったのだった。

 その移動の最中、オレリアが人だかりを見つけたことで野次馬をしようと近づいたところ、警邏の兵士が彼等の姿を見て助けを求めてきたのだった。


「全く…"軍人通りをフラフラする帯剣した女がいる"って警邏の兵に助けを求められたと思ったら…はぁ」


「だって検問では問題なかったもん!"そりゃ、国境付近ならネーデルリアのことを知ってる奴も多いだろうけどな"それを置いても、一応私は第2王女なんですけど?」


「俺みたいな"兵卒の成り上がり士官"ならまだしもなぁ。警邏の奴だって本物の"剣聖ハル姫"がこんなマリセイの軍人通りを外交官や警護無しでふらつくとも思えんだろ。それに、そんな流暢なガリア語を話せるともな、思わんだろ?」


「なによ、人を馬鹿みたいに言ってくれて。"まぁ全部が俺のおかげだがな?"」


「"マリセイ訛りの入ったガリア語を話せる聖剣"か?本当にお前は凄いな、聖剣。そんなに凄いなら、この結果は予想できたろ?」


「"俺が止めて、止まる女と思うか?"ネーデルリアでは、皆笑って手を振ってくれるよ?"お前の姉貴だったらを考えろ。近衛から何から山程連れてるだろ?"あれが普通なの?露店の1つも冷やかせないんじゃつまんないじゃん!"まぁ、そうだが…"」


 ラタトゥイユを飲み込んだヴィヴィアンがハルをジト目で見ながら久しぶりの友人との再開について文句や茶化しをつけると、カスレやラム肉を頬張る彼女表不服を主張するように口を曲げながらいい訳を言った。そのいい訳には彼女の口や表情を借りた聖剣も賛同したが、そのいい訳をヴィヴィアンは真っ向から否定するのだった。

 そのヴィヴィアンの呆れた口調や表情で言う批判をに、ハルは苦笑いを浮かべていい訳をするも、聖剣が手のひらを返してヴィヴィアンに組みした意見を言った。その聖剣の裏切りにハルが駄々をこねると、聖剣もまた呆れたように相槌を打つのだった。


「あの、ヴィヴィアンさま…今更尋ねるのもおかしいかもしれませんが、この方は…本当に…」 


「シャンタル、君が不思議がるのも仕方ない。だが、間違いなく目の前のこの"二重人格紛い不思議ちゃん"が、あの有名な"剣聖"、"姫騎士"、"戦場の嵐"。ハル・ファン・デル・ホルストだよ」


「そうだよ、シャンタルちゃん!私が、ネーデルリア三重王国第2王女、ハル・ファン・デル・ホルストだよ!"まぁ、信じられんかもしれんが信じてやってくれ。それと、俺はコイツの別人格とかじゃなく、足元に転がってる聖剣だ。よろしくな。それとハル、一応は聖剣だぞ?扱いはちゃんとしろ!"だって、肌に触れてればいいんでしょ?楽じゃん!"そういう問題じゃない!"」


「はぁ…"剣聖"のハル姫ですか。聞いたことはありますけど」


「まぁ、確かに疑いたくもなるよな。俺も初めて軍学校で会った時は大いに疑ったよ。あの頃は聖剣も口だけしか使えなかったが、今じゃ表情も付くから尚の事不気味だよな」


「ちょっと十数年ぶりなのに酷くない!"まぁ、不気味ではあるな"聖剣までそんなこと言うの!」


「お姉ちゃん、変なのぉ!ハハハ!」


「まぁ、面白がられる方が疑われるよりマシだけどね!"お前は、本当に変に明るいよな"」


 ハルとヴィヴィアンの会話する距離感は友人としても近いものであった。その距離感や路上での慌ただしい再会から今までの空気感で尋ねられなかったことをシャンタルはヴィヴィアンに尋ねた。すると、彼は同情するような口調でハルを手で差しながら説明をするのだった。

 そのヴィヴィアンのかしこまった説明口調の紹介に、ハルは胸を張り口にトマトソースを付けながら勇ましく答えた。その格好のまま冷静な聖剣がヴィヴィアンの説明に訂正を入れながらハルへと非難を行いつつ自己紹介をするのだった。

 その説明の異色さにはシャンタルもまるで犬が警戒するように毛を逆立たせながら疑念の表情を浮かべた。その疑念を察したヴィヴィアンは、ハルと聖剣で変化する表情に対して慣れた口調で茶化したのだった。その茶化しにハルと聖剣が笑みを浮かべながら言い返すと、そのコントのようなやり取りにオレリアは幼さの残る顔に笑顔を浮かべるのだった。

 そんなオレリアの一言はハルにも笑顔を与え、彼女と聖剣は穏やかな笑顔ととも仲良く話した。その明るい雰囲気を前にしたシャンタルは疑念に逆立てた毛並みを戻し、納得したような表情を浮かべるとただ静かに頷くのだった。


「そもそもヴィヴィアン様、一体どういう経緯で一国の第2王女様とお知り合いに?」


「昔、私はガリアの学校に留学してたんだよ!あの頃はフスターフも一緒だったけど。よく3人でいたずらとか悪さしたよね!"おおよそ国立の学校の生徒がするような事じゃなかったよな"」


「学生…ですか?ヴィヴィアン様って昔から軍人だったんじゃ?」


「そんなことないよぉ、ヴィヴィアンも学校に通ってた時期があったんだよ。"まぁ、こいつが留学して一年半で軍に志願したから、昔から軍人ってのは間違いないな"そうだよ、なんで軍に志願したのさ?共和国軍はろくでもないって言ってたじゃん?」


「人には色々あんだよ。それより、ネーデルリアのお姫様がなんでいきなりガリアに来てんだ?」


ほうほう(そうそう)ほれはへ(それがね)…」


「口に食べ物入れて話すな!食うか喋るかどちらかにしろ…全く変わんないな」


 その納得した表情のシャンタルも、満面の笑みを浮かべて料理を頬張るハルに今まで言えなかった根本的な質問をすると、ハルと聖剣はステーキを切り分けながら話し始めるのだった。そのハルと聖剣の説明は昔を懐かしむような響きであり、その過去で気になった点を眉をひそめながら茶化すようにヴィヴィアンに尋ねたのだった。

 そのハルからの質問をはぐらかすようにヴィヴィアンはグラスのロゼワインを飲み干すと、その勢いのでハルへと逆に質問を返したのだった。その質問がされたとき、ハルはステーキ肉を口に入れていた。だが、彼女は思い出したように聞き取りにくい言い方で話し始めるのだった。

 そのハルの言葉に、ヴィヴィアンが昔を懐かしみながら注意すると、テーブルの上の料理が半分になるまで食器の音以外響かなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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