第10幕-2
趣味で書いてるので、温かい目で見てね。
「取舵一杯。全艦砲撃用意。目標、ブリタニア沿岸湾港施設!」
「第2艦隊全艦に通達。取舵一杯、砲撃用意!目標、ブリタニア沿岸湾港施設付近の海洋」
[主砲、左舷90度。仰角30度!]
「全艦の砲撃用意完了の報告まで撃つなよ。せっかく総統閣下の御前で艦隊運用に砲戦なんだ!気張れよ!」
「はいっ!」
「よし、その意気だ!」
帝国歴2445年2月28日13時39分に、ガルツ帝国海軍第2艦隊はブリタニア大陸本島沿岸から3海里先に迫っていた。
第2艦隊は本来ならば、ダークエルフであるスオミ族の移民団を乗せた大規模輸送船団の護衛を行う予定であった。だが、ブリタニア海軍第2艦隊からの攻撃によって戦力や技術に多少の有利があると察したカイムは、護衛の命を変更しブリタニア本島への報復攻撃を命令した。
そのブリタニア本島を攻撃しようとする第2艦隊の旗艦である戦艦エアテリンゲンの艦橋では、ハイルヴィヒの命令が飛び、その命令を伝達する艦長の声が艦隊に響くのだった。
「しかし…せめてもう1艦隊と殴り合う程度で考えていましたが…」
「これは総統閣下の技術革命によるもの。最早、閣下の海軍は向かうところ敵なしですよ!」
「ハイルヴィヒ提督、帝国海軍は私ではなく皇帝陛下のものです。まして、私は何もしていない。優秀な将兵の尽力あってこそですよ」
その艦長の命令に応じた中央戦闘指揮所からの声が艦橋に響く中、艦橋で専用の席に腰を下ろすカイムは先に戦闘で壊滅させたブリタニア海軍第10艦隊及び第13艦隊の画像をタブレットで見ていた。そんな彼は約5時間前に繰り広げられた戦闘を思い出して呟いたのだった。
カイムの言葉に艦隊戦で興奮気味のハイルヴィヒは頬を赤くしながらカイムに称賛の言葉を投げかけた。だが、その言葉にカイムは苦笑いを浮かべながらタブレットの画像をスライドさせ、ハイルヴィヒへと謙遜の言葉をかけるのだった。
「本当に敵艦があんな木造戦列艦で、搭載砲が1海里以上の射程を持たないなんてな。艦載機攻撃から誘導弾攻撃まで一方的だなんて」
「今思えば、数百年前の大惨敗が嘘のように思えますよ。まぁ、艦隊戦を最後にやった頃の私は子供でしたがね?それが今となっては、3倍や4倍の数の艦艇に性能で勝利できるのですから。本当に夢のようです」
「それどころか、艦隊戦を2回もやってのけた上に一個艦隊壊滅にもう1つの艦隊の半数を沈めるとは」
「総統閣下と皇帝陛下から賜った帝国科学の粋を集めた艦隊です。この程度は造作もありません!」
「"造作もない"か…これでは艦隊戦というより洋上虐殺かな…」
「閣下、何か申されましたか?」
「いや、何も言ってないさ」
ブリタニア海軍は壊滅した第2艦隊とその艦隊の提督であるハンフリーズの捜索に第10、13艦隊出動させた。一方で、ブリタニア王国が第2艦隊の捜索に焦る中、カイムは第2艦隊をブリタニア王国本島へと南下させた。
艦隊南下の意味は、カイムとしては目的や理由は不明であれどスオミ族の移民輸送作戦の妨害に乗り出したブリタニア王国への牽制と艦隊の戦闘行動の視察視察であった。
だが、ガルツ帝国海軍第2艦隊の南下と北上するブリタニア海軍第10艦隊は予期せずして会敵したのだった。その結果はガルツ帝国海軍の圧倒的な勝利であった。敵艦隊の発見から行動までは強力な水上レーダーを持つガルツ帝国海軍が圧倒的に早く、艦隊感知から空母艦載機の全機発艦まで15分とかからなかった。
そして、ブリタニア海軍第10艦隊は突如として捜索任務が行方不明艦隊捜索から空から襲ってくる未知の敵との応戦となった。その結果は、よく訓練されたガルツ海軍航空隊の猛攻や艦隊から放たれる誘導弾の雨により、第10艦隊の壊滅に終わった。
「ですが閣下、"虐殺"と申しましてもこれは戦闘です。それに、後続の艦隊は半数程度見逃しました。これだけでも、総統閣下の温情の厚きことと思いますが?」
「なんだ、聞こえているんじゃないですか」
「触れるべきではないかとも思ったからです。しかし、総統が…」
「んっ、ゔん…この発言についてはもう止めましょう。過ぎたことをあれこれ言っても栓がないですから」
「はっ、総統閣下」
カイムの言葉に対して言ったハイルヴィヒの言葉通り、ガルツ海軍第2艦隊はブリタニア海軍第10艦隊を撃破した直後に後続として航行していたブリタニア第13艦隊とも交戦をしていた。
だが、第13艦隊との交戦においては、カイムの弾薬温存とブリタニア本島に対する砲撃を優先したことにより、壊滅までには至らない被害に留まった。それでも、ブリタニア第13艦隊は完璧に一方的な砲撃を前に敗走していた。
そのブリタニア艦隊の映像をタブレットで見るカイムは席の隣に立つハイルヴィヒの言葉に苦笑いを浮かべながら反応するのだった。その彼の言葉にハイルヴィヒが再び話そうとする中で、カイムは周りから向けられる疑念や不安の視線を感じとると、自分の物事を悪く捉える悪癖を振り払うように頭を振りながらその原因に近いタブレットの画像を消しながら彼女へ話しかけた。
ハイルヴィヒが返事をする頃には艦隊の砲撃準備も完了し、艦隊の左舷にはブリタニア本島の沿岸施設がはっきりと見えるのだった。
その沿岸施設に艦隊が砲門を向けるのを確認したカイムは、席から立ち上がると艦橋の窓辺に立ちながらその光景を目に焼き付けるのだった。
「閣下、全艦の攻撃用意が完了しました。何時でも撃てます」
「ハイルヴィヒ提督、わかった。だが、軍港ないし湾港施設のみへの砲撃を徹底させよ。これは軍や船舶管理者への報復であり、ブリタニア王国国民への報復ではないのだ」
「はっ、総統閣下。徹底させます」
「ならば提督。攻撃を始めよ」
艦橋で腰の後ろで手を組み仁王立ちするカイムの横で報告をするハイルヴィヒは、重々しい表情をするカイムと対象的に嬉々としていた。
その表情に、戦場で暗くあれこれと道徳的なことを考えるのを止めたカイムは、最後にハイルヴィヒへと攻撃対象の制限を命じた。その命令にハイルヴィヒが答えつつマイクで中央戦闘指揮所に命令を飛ばす中で、カイムは最後に攻撃の命令を出すのだった。
「よし来た、艦隊一斉射だ!撃てぇえ!」
「艦隊、撃ち方始め」
エアテリンゲンの艦橋にハイルヴィヒの嬉々とした命令が響き、艦長の砲撃命令が下ると、一糸乱れぬ第2艦隊は一斉に爆音を上げながら砲撃を開始したのだった。
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