幕間
趣味で書いているので、温かい目で見てね。
「この艦隊戦において、ブリタニア艦隊は壊滅いたしました。以上で、カッペ鉱山演習作戦の現地における活動の報告を終わります」
「なるほど…なっ…」
「はい、皇帝陛下。我が方の損害は、作業中に発生した軽症が13人のみです」
「それはいい、ブロスフェルト提督。私が聞いているのはそこではないの」
「それは…どういうことでしょうか?」
「解・ら・な・い・の?」
第4艦隊旗艦"リンドヴルム"の提督執務室にて、ブロスフェルト提督はスクリーンの向こうで彼の話を聞くアポロニアに汗をかき苦笑いを浮かべながら作戦の明るい戦果報告を行うのだった。
だが、ブロスフェルト提督の苦し紛れに作った笑顔の頬が上がるたびに、アポロニアの表情は曇っていった。そのアポロニアがブロスフェルトに返事をすると、彼は慌てて早口でさらにほぼ無傷といえる損失を報告した。それでもアポロニアの機嫌は悪化するのみであり、ブロスフェルトに問いかけるその眉間には深く皺がつき青筋さえ浮かんでいたのだった。
アポロニアの問いかけに、後ろに控える士官達を一瞥し頷いたブロスフェルトはあえて冷や汗を流しながら恍けた一言を言った。その一言に怒りを雰囲気に滲ませたアポロニアは、言葉を区切り豪華な皇帝玉座で前のめりになりながら自分の尋ねた意味をブロスフェルトへと尋ねたのだった。
「そこの部屋には誰がいるのかしら?」
「提督の私と、参謀総長の…」
「何で!貴方が!最初に出てくるの!普通は最高位の者の名前が出なければならないでしょう!」
「それはそうなのですが…」
「つまりね、私はカイムの奴がどこに行っているのか知りたいの!私は言ったわ、"カイム本人が報告をせよ"って!なのに何でここに居ないの!ブロスフェルト提督、報告をしなさい!今まで黙っていたのは皇帝としての慈悲よ。このまま黙っていれば…解るわね?」
「しかし…」
青筋を浮かべて尋ねるアポロニアは、スクリーンの向こうでブロスフェルト提督の後ろを顎で差しながら尋ねた。その言葉に、ブロスフェルト提督は後ろを振り向きながら部屋にいる面子を高位の順から顔を合わせながら一人一人と名前を上げようとした。
だが、参謀総長の名前を上げようとした時にアポロニアは激怒の声を上げると玉座から立ち上がり怒鳴った。その声には怒りだけでなく焦りが滲み出ており、部屋の中の士官は言葉を詰まらせた。
黙る士官達の中でブロスフェルト提督はなんとか言い訳を捻りだすも、沸点を超えたアポロニアの向ける怒りの視線に反論の言葉も簡単に碎かれた。その怒りの視線はいつまでもリンドヴルムの執務室を凍らせ、士官や将校全員に言い訳の言葉を失わせるのだった。
執務室に諦めの空気が流れ参謀総長がブロスフェルト提督の後ろで姿勢を正し靴の踵を鳴らすと、彼も諦めの決心がついたのか黙って姿勢をただした。その提督の行動に、執務室の全員が姿勢を正すとスクリーンのアポロニアへと頭を下げるのだった。
「皇帝陛下、恐れながら申し上げます。総統閣下は第1、第3、第4艦隊にスオミ族の移民輸送の護衛を命ぜられました」
「そんなことは…待って第2艦隊はどうしたの?」
「それが…申し上げ難いのですが…」
「嘘…待って。まさか!」
「はい…そのまさかです」
頭を下げたブロスフェルトの旋毛を睨むアポロニアは、彼の弱々しく述べた言葉に噛みつこうとした。だが、その説明に抜けていたガルツ海軍第2艦隊の所在に疑念の言葉を漏らした。
そのアポロニアの言葉にブロスフェルト止まらない冷や汗を垂らしながら説明の言葉を紡いだ。しかし、その言葉も全てを察したアポロニアの言葉に遮られると、彼は返答しながら一枚の書類をゆっくりと読み上げるのだった。
「"総統命令。ガルツ帝国海軍第2艦隊は、カイム総統指揮の元でブリタニア北方の海岸線へと報復攻撃を行う。1時間の艦砲射撃後に、艦隊はジークフリート大陸へと帰還する。追伸。アポロニア、少し帰りが遅くなる"以上です」
「ぁんの!バァぁあああカぁぁアァああ」
艦隊に響き渡る程のアポロニアの絶叫か響く中、第4艦隊はジークフリート大陸への航海を続けた。
総統であるカイムと第2艦隊を残して。
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