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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
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第9幕-11

趣味で書いてるので温かい目で見てね。

「ぐあっ!」


「ぶふぁ!」


「なっ、何だ!何か…」


「もう撃ってきた!敵っ、敵艦隊からの砲撃です!」


「バカ!1海里切ってるとはいえ、この距離で砲火が…」


「届いてますよ!撃ってます!敵艦隊発砲!」


「なっ!冗談だろ!射程が650ヤードを越える魔導砲なんてあるものか!距離が倍はあるぞ!」


「ですか…うわっ!」


「ダっ、ダンカークに直撃!いや、ダンカーク他、5隻に!」


 先制攻撃を受けたブリタニア第2艦隊は圧倒的に離れた距離から放たれた砲撃を前に完全に混乱していた。彼等が今まで経験していた艦隊戦は、極至近距離で船と船がすれ違いざまに撃ち合い、時には船に乗り移り戦うというものであった。

 だが、ガルツ帝国海軍のからすれば彼等の戦闘の方法は遥か昔のものであり、野蛮かつ水兵の風上にもおけないものとして認識される程であった。その艦隊戦をしようとしていたブリタニア艦隊はガルツ艦隊からして見れば低速で直進してくる的でしかなかった。

 そのブリタニア艦隊に、第22水雷戦隊旗艦であるラッカー級軽巡洋艦3番艦"ザルプレー"の14cm連装砲4基とアーベントボルケン級駆逐艦やブリッツ級駆逐艦12隻の10cm砲の砲撃が降り注ぐのだった。その砲撃は高性能射撃用レーダーによって管制されており、13隻で6隻の戦列艦を狙い砲撃すると殆どの砲弾は吸い込まれるようにブリタニア戦列艦へと着弾するのだった。

 その艦隊への着弾による衝撃に水兵達が伸びている中、衝撃と振動によって床に倒れたデッカーが慌てて上体を上げて叫んだ。その声に片膝立ちで衝撃に耐えていたキャンベルは、デッカーの言葉に驚きと焦りの混ざった裏声でこたえるのだった。

 そのキャンベルの反応やそれを聞いたデッカーが怒鳴る間もガルツ海軍第22水雷戦隊の砲撃は続いており、14cm砲弾の着弾はデッカーの怒鳴りを遮りながら3等級戦列艦ダンカークを含めた大小6隻の戦列艦一撃で粉砕した。


「直撃だって!キールまで粉々にされて何が直撃だよ!」


「エっ、エドガーもやられてる!あのマストはエドガーのだ!」


「ヤーマス半壊!後部消失」


「2番目にデカイ船だぞ!そんなんの後部が一発で消失かよ!」


「もう駄目だぁ…もう駄目だぁ!」


 砲撃の雨はブリタニア第2艦隊に反撃の機会を与えぬとばかりに続き、その砲撃に戦列艦はどんどんと数を減らしていった。

 その絶望的な光景が艦隊に広がると、水兵はおろか士官たちさえ悲観の言葉を漏らし恐怖に絶叫を上げるのだった。その圧倒的な戦力を前に殲滅される敗軍の光景にはデッカーも見覚えがあった。だが、彼に覚えのある光景では立つ場所が異なり、その敗残兵の中から見つめるのではなかった。

 自分が敗残兵という自覚をその記憶から自覚させられると、デッカーは怯えた表情を浮かべながらも兵士を鼓舞するキャンベルの姿を見た。その後輩の姿に、彼はゆっくりと大きな足音を2回立てて立ち上がると大混乱する第1甲板にいる全員の視線を集めた。


「まだだ!まだ負けてない!この第2艦隊は全滅していない!俺達はまだ生きてる。生きてる以上は、俺達は水兵だ!軍艦乗りだ!海軍軍人だ!絶望しても、俺達は戦わなければならないんだ!」


 仁王立ちで傷の開いた血まみれの体でデッカーは最大の声量を出して言い切ると、操舵輪にしがみついて操舵を放棄した水兵を押しのけて取手を掴んだ。


「キャンベル!操舵をやれ!俺は第2甲板で艦首砲の指揮を取る!」


「はっ、はい!」


「各艦に魔導通信。駄目なら手旗でもなんでもいいから伝えろ!"特装砲の使用許可を出す。責任はデッカーが取る"とな」


 奪い取った操舵輪を近くで立っていたキャンベルに荒い口調で押し付けると、デッカーは下の甲板に降りるために床板を開いた。


「提督代理!あの大口径砲は秘匿兵器です!それに、射程も全く…」


「黙れ、2等水兵!やるって言ったらやるんだよ!ここで反撃の一つも、敵艦隊を前にして何もしなけりゃ…海軍の恥だ!俺達が倒してきた敵に対する冒涜だ!」


「ですか…」


「とにかくやるんだよ!それとも降伏するか!どこの国とも解らんあの艦隊に!俺は下に降りる」


 下に降りかけるデッカーに一人の水兵が開いた床板を掴みながら引き止めた。腰まで降りかけたデッカーだったが、激情に荒れた言葉で恐怖と混乱で引きつった水兵の言葉を遮った。そのまま彼は幼さの残る水兵の最後の一言を胸ぐらを掴んで黙らせると吐き捨てるように甲板を去った。


「流石に俺の部下達だ。特装砲は?」


「撃てますが…魔道士4人の運用をこの艦は3人。さっき走ってた魔導通信士は"他は少なくて2人とか"って言ってましたよ?」


「2番砲もか?」


「魔導師がもう少し生き残ってくれれば良かったんですがね。魔導師とは言わずとも、魔力がからっきしなのばかりですから」


「言ってもしょうがないだろ。とにかく今はぶっ放せ!」


「了解!目標、"謎の巨大不明艦隊"」


 セッジムーアの艦首まで走ったデッカーは、艦首の大きな外板を開ひらかせ既に外へと引き出された巨大な2門の砲に向き合った。

 その巨大な砲は戦列艦に搭載されていた魔導砲とは大きく異なっていた。それはサイズであり、通常の魔導砲が人の腰まで大きさであった。だが、デッカーが特装砲と言った砲は高さが2mはある巨大な砲だった。

 その砲のすぐ横では3人の水兵が作業をしており、デッカーが話しかけるとこんな最古参の水兵が答えるのだった。だが、その男も日に焼けた浅黒い顔には苦笑いが浮かんでいた。

 それでも、気丈に振る舞い闘志を残す瞳の最古参水兵の言葉にデッカーも答えると、彼は覚悟を決めた表情を浮かべると砲を操作する水兵達に号令を出し、彼等もそれを復唱するだった。


「撃てぇ!」


 デッカーの号令に水兵達は砲の後部にある水晶を掌で握りこむと、それらは青白く光るのだった。その青白い光を確認した最古参水兵は、その魔導砲の発射レバーを引くのだった。

 すると、セッジムーア艦首左側の砲が猛烈な白い閃光を放ち白い光弾を放った。その砲撃に続くように、ブリタニア第2艦隊は無数の光弾を放ち砲撃を開始した。その光弾は白い霧のような尾を引きながら直進すると高速で大海を縦隊を組み真横を向いて全ての砲門を向けるガルツ海軍第22水雷戦隊へと突き進んだ。

 だが、その光弾も水雷戦隊まであともう少しで半分の距離と言った所で海面へと力無く落下し、大きな水柱を上げるのだった。


「敵艦の発砲を確認!」


「全艦回頭完了。戦術情報通信、感度良好」


「ようやっとその気になったか!これで艦隊戦らしくなってきた!」


「第3次国防戦争の逆ですな」


「突っ込む側がヒト族か。ならば、あの時のカリだ。タコ殴りの一千万倍返しにしてやる!全艦砲撃用意!」


「了解、艦隊全砲門開け。エアテリンゲン、1番から4番砲塔砲撃用意。弾種、対艦榴弾」


 その水柱の彼方では、第22水雷戦隊に遅れてガルツ帝国海軍第2艦隊が回頭を終えていた。その艦隊のエアテリンゲン艦橋見張りが叫ぶと、その報告に続くように航海長がハイルヴィヒに艦隊の状況を報告したのだった。

 その2つの報告を前に、ハイルヴィヒはまるでプレゼントを貰う前の子供のような笑みを浮かべると、届かない砲撃を続けるブリタニア艦隊に向けて叫んだ。その叫びにエアテリンゲン艦長が一言呟くと、彼女は雄叫びのように命令を出し艦長は中央戦闘指揮所へと命令を出すのだった。


「さて…こっちも本気でおっ始めようじゃないか?」


 戦闘開始に湧き上がる艦隊の中で、ハイルヴィヒは砲撃前の甲板への警報を聞きながら呟くのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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