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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
265/325

第9幕-10

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

 ガルツ帝国第1艦隊の航空攻撃と第2艦隊の対艦誘導弾攻撃によって、ブリタニア第2艦隊は満身創痍を通り越して壊滅に等しかった。対艦誘導弾は直撃すれば一瞬で1等級戦列艦出さえ1分と経たずに轟沈し、その衝撃や破片は周りの戦列艦にも損傷を与えるのだった。その結果、壊滅寸前の第2艦隊には無傷な艦が1つとして存在せず、最も無事な船でも船体には無数の小さな穴が空き、マストに張られた帆布は中央から大きく破れているのだった。

 その最も無傷である旗艦代理の4等級戦列艦"セッジムーア"では、提督代理のデッカーと総参謀長代理のキャンベルが正面から迫りくるガルツ帝国第2艦隊に戦々恐々とするのだった。


「キャンベル…お前、"海龍"って見たことあるか?」


「私は海軍魔導士であり、"カタツムリ共"の英雄みたいなことは出来ませんよ」


「"海龍退治なんて出来ない"か…だが、キャンベル…」


「退けませんよね…」


「全く…ハンフリーズ提督も、死ぬ前に"なんで第2艦隊がリリアン大陸に行くのか"とか"何と戦うのか"ぐらい教えてくれてもよかったのにな?」


「知ってたら水兵から将兵全員の乗艦拒否ですよ…"謎の翼竜騎士を引き連れた50匹の海龍退治"なんて…」


「敵はエスパルニアか合衆国か…」


 戦列艦セッジムーアの甲板後方にある操舵場で単眼鏡を覗き込むデッカーは、目の前の光景に力無く呟きながら隣に立つキャンベルへと単眼鏡を差し出した。その表情は夜通しの航空攻撃と突然の対艦誘導弾の雨を受けて完全に窶れきっていた。更に、額に出来た新しく傷を抑える包帯が血で滲み、その窶れた顔に虚しさを添えるのだった。

 その窶れた顔をするデッカーの差し出す単眼鏡は、同じく遊んで整った顔の左目元に大きな切り傷を作ったキャンベルに押し返された。というのも、キャンベルの視力でも遠くに見えるガルツ帝国海軍第2艦隊の姿ははっきりと見えるからだった。

 キャンベル達ブリタニア海軍の戦列艦はヒト族の世界でも最新鋭を誇る艦ばかりであった。だが、その最新鋭の戦列艦とは全く異なる姿をするガルツ帝国海軍の軍艦は、彼等からして見れば海龍のような異物にしか見えなかった。13cmもある連装砲や20cmもある三連装砲を艦首や艦尾に持ち、流線型の船体や甲板上に艦橋を持つ全金属製の駆逐艦や巡洋艦が先陣を切り複縦陣を構成するガルツ帝国第2艦隊は、ブリタニア海軍からすれば海龍の群れに等しかった。


「敵艦隊捕捉、距離1200。艦数、52。敵艦隊速度、8ノット」


「ウチよりか、圧倒的に遅いな。所詮は帆船か」


「提督、油断していると…」


「わかっている。第22水雷戦隊はどうか?」


[こちら戦闘指揮所。第22水雷戦隊は敵艦隊を捕捉。戦闘用意よし]


「よし…ならば」


 そのガルツ帝国海軍第2艦隊もブリタニア艦隊を補足しており、戦艦"エアテリンゲン"の艦橋でハイルヴィヒは航海要員の報告に左手を腰に当て顎を撫でながら呟いた。その口調はブリタニア艦を小馬鹿にするような響きであった。

 そのハイルヴィヒの言葉にエアテリンゲン艦長がジト目で指摘をしかけると、彼女は航海要員からマイクを受け取り戦闘指揮所に連絡を取った。その戦闘指揮所からの返答に、艦隊の戦闘を航海し露払いを受け持った第22水雷戦隊の駆逐艦や軽巡洋艦を見た。

 そのハイルヴィヒの視界には、穏やかな海面に白波を立てて駆け抜ける縦列の水雷戦隊があった。その軽快な動きや砲撃可能な砲、魚雷の状態を確認したハイルヴィヒは満足そうに呟くとその顎に当てていた右手を右上に上げ、左下に振り下ろした。


「第2艦隊、取舵(と〜りかーじ)いっぱ〜い!」


 そのハイルヴィヒの身振りに合わせ、エアテリンゲン艦長は操舵長に命令を出しつつ、マイクで通信室へと号令を出したのだった。

 そのハイルヴィヒの号令に従い、複縦陣を取る第2艦隊は先陣を切る第22水雷戦隊から順に大きく取舵で回頭を始めるのだった。


「てっ、敵…敵艦?敵海龍?」


「敵艦でいい!」


「敵艦左へ急速回頭!」


「何だと!この局面で回頭するだって!」


「何を考えているんだ?」


「敵を前にして回頭なんて、自殺行為だろうに」


 その取舵回頭を始めたガルツ帝国第2艦隊を前に、多くの見張り員の水兵達は困惑した。その中で、セッジムーアの水兵が名称の報告に困る中でデッカーは大きく怒鳴りつけるのだった。

 そのデッカーの怒鳴り声に水兵が改めて報告すると、単眼鏡にてガルツ帝国第2艦隊の動きを確認するのだった。その横でキャンベルもその艦隊運動に驚きを隠せず言葉を漏らすと、甲板にいたすべての士官や水兵が口々に驚きと疑念の言葉を漏らしたのだった。


「デッカー提督代理、敵は艦隊で回頭中です!」


「今なら一斉に砲撃してある程度の損害を与えられるはずです!」


「キャンベル、勝てると思うのか?」


「やるだけやるべきでしょう?」


「お前がそういうのなら…やるか!」


「はいっ!全艦に通達!"艦手魔導砲門開け!艦隊砲撃戦用意!"」


「復唱します、"艦手魔導砲門開け!艦隊砲撃戦用意!"」


「かかれ!」


「かかります!"艦手魔導砲門開け!艦隊砲撃戦用意!"」


 驚く水兵達からの報告に、デッカーはセッジムーアの甲板で何度もガルツ帝国海軍第2艦隊を見直すのだった。覗き込む単眼鏡に映るその光景は何度見ても艦隊が回頭を始め、先頭集団が止まっているように見えるような動きをするのだった。

 その敵艦隊の姿に消えかけた闘志を燃やす水兵の言葉に、デッカーは覚悟を決めた一言をキャンベルに投げかけた。その言葉にキャンベルも賛同の言葉を静かかつ力強く答えると、デッカーも力強く決意を表した。

 その決意を聞いたキャンベルは伝令の水兵に命令を伝え、復唱を確認すると闘志に満ちた瞳で命令を出すのだった。

 その命令がブリタニア第2艦隊に響き、ラッパが戦闘用意を響かせると、艦隊所属の戦列艦達が一斉に砲門用の外板を上げた。その外板の隙間から無数の魔導砲の砲門が現れると、艦隊は慌ただしく戦闘態勢を取るのだった。


[敵艦隊に動きあり、砲門を開いたようです]


「なる程な…正面切って殴り合う気になったか。その根性は良し!"スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り"って奴だな」


「流石に余裕ですな」


「そうでなければ、艦隊戦なぞできはせん」


「第22水雷戦隊、回頭を終えます」


「ならば、先に撃ってやれ。第2艦隊の技術と訓練の成果を見せつけろ!」


「"第22水雷戦隊へ、こちら艦隊旗艦。撃ち方用意"」


 ブリタニア第2艦隊の動きを察知した見張りが即座に報告を出すと、それを聞いたハイルヴィヒはその迅速な対応に関心の言葉を述べた。だが、その言い方は明らかに自分より相手を下に見た言い方であった。

 そのハイルヴィヒへ警告するようにエアテリンゲン艦長が一言呟くのだった。その言葉の真に気付いているのか、ハイルヴィヒは気まずそうに頭を掻くと開き直って持論を言い放つのだった。

 そのハイルヴィヒの持論が終わると、エアテリンゲン艦橋に彼女の声だけでなく航海士官の報告が響いた。その内容に彼女は空かさず命令を飛ばすと、艦長はマイクを取って通信室へと送るべき命令の内容を伝達すのだった。

 その旗艦からの命令に、第22水雷戦隊はその砲塔を大きく右へと旋回させ、全ての砲門をブリタニア艦隊へと向けるのだった。


「やはり船か。どこの国が隠し持ってたんだ、あんなもの」


「それよりデッカー提督代理。この距離で回頭を掛けてるんです。敵艦隊が攻撃体勢を整えるまえに…」


「わかってる。全艦、最大戦速!敵の艦隊に突っ込む…」


 ガルツ帝国第2艦隊の艦影を見ると、デッカーは敵があくまで軍艦であることを理解し、その異様な姿に驚いて呟くのだった。その呟きは慌ただしい艦隊の中で響くことはなく、側にいたキャンベルさえも攻撃の指示を伺うだけだった。

 キャンベルの急かしを受けたデッカーも、その助言に艦隊を一気に加速させようと命令を出そうとした。

 だが、その言葉は広大な海洋を激震させる轟音によって掻き消されるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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