第8幕-6
「なんでだ……なんでこうなる!どうしてこうなる!」
ユッシ・ラハテーンマキは、スオミ族国の族長であるピエリタ・ラハテーンマキの長男として生まれた。その立場上、彼は父である族長の後を継ぐ者として幼き頃から鍛錬の日々を送っていた。そのおかげか、彼はダークエルフの中でも180cmはあろう高い身長に屈強な肉体を持ち、若い頃のピエリタに似た切れ目の凛々しい顔と一つに纏めた灰色の髪をたなびかせる好青年となった。
だが、ユッシには絶大な問題があったのだった。
「くそっ、糞が!糞がぁ!途中までは良かったんだ。俺だって父上みたいに出来るって、証明できたのに!なのに……なのになんだよ、これは!」
ユッシはどれだけ体を鍛えてもどれ程に女性からの評判が良くても、父親であるピエリタという絶対に越えられない壁があった。
ピエリタはスオミ族国の族長や総長と呼ばれる程に見事に国を収めてきた。常にエルフやヒト族国家からの侵略や国境紛争、食糧不足と貧困に窮する中でも、最大限の努力と最適な判断によって困難を切り抜けてきた。
そんな父親の実力を前にすればユッシの行動は全てが父親の二番煎じであり、結果的に彼の評価は次期族長としては中途半端というものになってしまった。その評価は彼の深層心理に父親へのコンプレックスを深く刻み込み、彼の思考に父親への劣等感を刷り込んでいったのだった。
その結果、ユッシの行動は"次期族長"のものから"ユッシ・ラハテーンマキ"のものばかりへと変わっていった。
そうして、自身が父親の下位互換ではなく1人の人間として見られたいばかりに勢いしかない短絡的な行動が多くなるユッシは、効果や戦果が目に見える過激なダークエルフ優等思想や周辺国家への国境線紛争ばかりを追求していった。その結果は当然半端なものばかりであり、彼は更には劣等感を感じ悪循環へと陥っていったのだった。
「どうして……どうして俺があんな野蛮人を相手に敗北するんだよ!」
しかし、ユッシの劣等感はエフルの国であるフィントルラント精霊国からの侵攻によって大きく消失していた。
ダークエルフ達が住むリリアン大陸北部は、北極圏であり積雪の多い地帯であった。また、鬱蒼とした森林は日差しが通りにくく視界を悪くし、フィントルラント精霊国の騎士達は多いに進撃が遅くなった。更にその森林には肉食性の野生生物や近くの魔鉱山に影響され発生した魔獣が闊歩していた。魔法を行使できるといえ、薄暗い森の中で動物や魔獣の群れに遭遇したフィントルラントの軍勢はその対応に少なからず人員に負傷者が発生した。
そういった要因を利用したユッシ達スオミ族国の軍は、士気の低下したフィントルラント軍にゲリラ戦術を仕掛けることで自軍の人的損害を比較的少なく抑えつつ戦線を膠着状態にしたのだった。
その戦果によってユッシの評価はうなぎ登りとなり、国家全体に指揮を出すピエリタ以上に街や村では彼の話題ばかりとなった。
しかし、正規の訓練を受けたフィントルラントの騎士達を前に民間人の狩人を集めただけのスオミ軍は戦線を後退させ、緩やかに崩壊へと向かっていった。
「何で……なんで俺の全面攻勢は失敗して、アネルマのヤツだけ上手くいくんだよ!糞がぁ!」
スオミ族国消滅の危機に、持久戦によって旅立ったアネルマを待つというピエリタの考えに対立していたユッシは、全ての戦線にて全面攻勢を行うことを提案した。その意見は戦術的勝利に湧いていたスオミの民には受けが良く、結果的にピエリタの制止を振り切って彼等は大攻勢を仕掛けたのだった。その結果は魔術に物を言わせたフィントルラント側の一方的な攻撃により、スオミ側は多くの死傷者を出して維持していた戦線を一気に後退することになった。
国家存亡の危機的状況に追い討ちをかけたことでユッシの評価は一気に転落し、そこに来て妹であるアネルマがガルツ帝国外務省関係者や国防軍を引き連れて現れると、彼の族国上層部での居場所はなくなった。
いつの間にか決められたダークエルフ全員の帝国への移住に反対したユッシも、カッペ鉱山周辺の港に現れる帝国海軍の大規模輸送船団や機械化され異様な程に訓練され統率の取れた陸軍、彼等の使う銃火器や戦車などといった高い科学水準を前にしては一切の反論も言えなかった。そこに彼の心にとどめを刺すように敵国首都への空爆や待ち伏せによる迎撃戦という最小限の攻撃で敵の戦線を後退させた帝国軍に国民が迎合し始めると、彼はいよいよ立場を失ったのだった。
「逃がすな、追え!」
「いと慈悲深き火神よ、我が敵に炎獄の矢を放ち給え!」
「いと慈悲深き天空神よ、我が敵に疾風の矢を放ち給え!」
「ぐぉっ、どぁあ!好き勝手に魔術を乱発しやがって……うおぁ!」
そして、ガルツ帝国軍がダークエルフ救出のための作戦を展開する中で、ユッシは少しでも汚名返上するために空軍降下猟兵達の助言を無視していない逃げ遅れを探そうとした。その結果、ユッシ達はまとめて退避が遅れ敵の包囲網の中に孤立した。
さらに、絶体絶命の状態で己の無力感と行動の空回りに苛立ったユッシは独断で3人の部下を引き連れ包囲網の穴を探そうとホミニオの街から外へと出るも、フリッツ率いる第3装甲軍の支援砲撃によって撤退中のエルフの騎士団のから逸れた部隊50人と遭遇し逃走することになったのだった。
エルフ達騎士団は帝国軍の攻撃で大損害を被っていても武器を構えながらユッシを追っていたが、防寒具を内側に着た重い鎧を纏って剣や盾、槍を持ち雪道を走るため彼等はユッシとの距離を詰められなかった。そのため、彼等は容赦なく魔術による攻撃を加え、騎士団の魔術剣士達が詠唱を終えるたびにユッシの周りには火球や不自然に緑色な突風、槍のような氷が飛び交い地面があちこち雪と土煙を上げて爆発するのたった。
詠唱から魔術の発生までは多いに時間の差があり、ユッシは上手くランダムに進路を変えたり近くの木に飛び移り、三角跳びやスライディングを加えることでなんとか攻撃を回避し続けた。その最中も持ち合わせていたボウガンで反撃するのだが、魔術の前に空中で矢が燃え上がると彼は至近距離の爆風に身を震わされ呻きながらも悪態をつきつつ必死に走り続けた。
「生き残ってやる……逃げ切ってやるぞぉ!」
「ええい、すばしっこい鼠だ!俺が足止めする、続けぇ!」
「うおっ!くそっ!こんなところでやられて……ぐぉおおぁあ!」
雪と土を巻き上げ走る騎士達となれた雪の積もる森林を軽やかに全力疾走するユッシの間には着実に距離が開き始めた。更に、エルフ達はユッシの足止めのために魔術攻撃を連発したことで疲れが見え始めていた。
散漫になってきたエルフの騎士達の攻撃に一筋の希望を見出したユッシは、少しずつ疲れを覚えだした足を鼓舞するように叫ぶと、すこしでも早く追手を巻こうと更に加速をかけ始めた。
その離れゆくユッシの背中に業を煮やした1人の騎士が怒声のような声を上げると、エルフの騎士達の隊列は気力を振り絞り彼の背中へ追いつかんと走った。その姿を後ろ目に、ユッシも負けじと走ろうとした。
「しまった、このままだと森を……うおぉあ!」
しかし、ユッシは加速のために平坦な道を選んでいったことで誤って森から広い雪原に飛び出してしまうと、彼へ向けて一斉にエルフの騎士達が放つ魔法が飛んできた。
迫る魔法を飛び上がり身体を捻って避けたユッシだったが、地を駆けていた足は着地と同時に突然紐で縛られたように動きを止めると、彼は一気に体勢を崩して積もった雪へと飛び込んでいったのだった。
「ぶっ!あっ、足が動かない……まさか!これは魔法か!」
「バカか、黒い獣め!これも魔術だ!あんな魔力理論の意味不明な技術と一緒にするな。そんなものを研究するのはブリタニアぐらいだ」
雪に頭を突っ込んだユッシが顔を上げ口に入った雪を吐き出すと、まるで誰かに掴まれたように急に動かなくなった足へ驚愕しつつ悪態をつきながら動かない足を叩いた。それでも彼の足は動かず、ユッシは遂にエルフの騎士達に取り囲まれた。
そのエルフ達の中からユッシの一言に対して怒りと侮蔑の声が響くと、彼を取り巻く騎士達が道を作り1人の騎士が彼の元へ歩み寄ってきた。
顔を覆うヘルムから低く野太い声が響くことからその騎士は男と解る。だが何より、白銀のアラベスク模様を施した鎧に大きな戦斧を背負う姿は周りの騎士より頭1つ以上飛び抜けており、エルフと思えぬ巨体であった。
「白エルフの騎士もどき……ヤロスオ騎士団か!」
「ヤロスオ騎士団が百人隊長エーメリ・ヴィサ・ヒューティアだ。全く、こっちは魔獣に遭遇したり大規模爆裂魔法の待ち伏せにあったってのに……今楽にしてやるからそこに倒れてろ、黒鼠め!」
雪の上でなんとか体を動かそうと見をよじらせるユッシはその鎧の肩に"剣の上に乗る小鳥"の絵を見ると、吐き捨てるように男へ吠えた。その威勢の良い声に答えるように大男も名乗りを上げると、背中に背負っていた大きな戦斧の柄を掴み勢い良く振り回しながら構え啖呵を切るのだった。
だが、百人隊長エーメリにユッシは露骨に不快そうな表情を浮かべると、腰に指していた短剣を引き抜いて指示棒のようにヘルムへと突きつけた。
「はっ……なんだ……百人隊長か!そんな雑多な雑魚相手に、この……このユッシ・ラハテーンマキが負ける訳あるかぁあ!」
足が魔術によって動かず逃走が困難という状況でも、ユッシはなんとか活路を見出そうと諦めず威勢よくエーメリへと叫んだ。その声には族国の長の息子という誇りと、わずかにエルフに虐げられたこれまでの恨みが見え隠れしていた。
だが、ユッシの雄叫びにエルフの騎士達は全く怯むことなく、むしろ彼とお互いの顔を交互に見てあ然とするのだった。
「ふっ……フフフ…」
「なんだよ、こいつか?」
「やれやれ、こんなやつが……」
沈黙するエルフの騎士達の中で、エーメリは短剣の切っ先を向けるユッシを見つめると軽く吹き出して笑いだした。その笑いに周りの騎士達もユッシを笑い出すと、各々に彼へ対する悪意ある言葉を呟きだした。
そのエルフ達の唐突な嘲笑に困惑と訳のわからないながらも侮辱されたことに対する怒りの湧き上がるユッシは、短剣を杖代わりになんとか立ち上がろうとした。
「なっ、なんだ……何が言いたい!なんだと言うんだ!」
「いやいや、こんな奴があのラハテーンマキの一族だということが可笑しくてな?」
「なっ、何だと!」
立ち上がろうとしても足が言うことを聞かないユッシは諦めて地面に突き刺した短剣に寄りかかり、笑い始めたエーメリに対して力強く立ち向かおうとした。
しかし、ユッシの言葉で更に笑うエーメリ達は含みのある言い方で侮辱をすると、言葉の意味が解らない彼はただ感情に任せた言い方で叫ぶのだった。
「いや、なに。他の連中から聞いた話だが、散り散りに逃げた連中はそこそこにのところで多勢に無勢ながらも最後まで我々に噛みついたらしい。まぁ、鼠程度が挑んだところで所詮は獣畜生、一匹残らず嬲り殺されたがな!」
「なっ……なんだと……」
「その死体のどれかが獣の王子である"ユッシ"だと聞いていたのに、まさか必死に逃げ惑うお前みたいな腰抜けが害虫の群れの"頭取モドキ"とはな?」
「全員……殺したのか?」
「そりゃそうだろ!獣畜生の狩りをするのに、わざわざ生け捕りにするなんておかしな話だろう?」
上手く動かない足を必死に使いなんとか立とうとするユッシの情けない姿に、エーメリは楽しげに笑いつつユッシへと聞いた話を自分がしたように語って聞かせた。その言い方はまるで猟師が自分の狩った獲物について自慢するようであった。
エルフ達に追われる前に、ユッシは部下達に散り散りに逃げてホミニオまで走れと命じていた。だからこそ、エーメリの話はユッシにとって驚きの事実だった。
その事実を前にしたユッシは言葉につまり、ただ虫の羽音のような声でエーメリへと尋ねかけることしか出来なかった。その姿に更に気を良くしたエーメリは、ユッシを馬鹿にするように事実を突きつけたのだった。
「うおぉぉおおあぁ!」
「叫んだところで強くなれる訳がないだろ!」
「ぐぉ!」
泣き叫びながらも必死に抵抗する同胞を弄ぶようように殺すエルフ達の姿を想像したユッシは、湧き上がる怒りに身を任せエーメリへと怒鳴りつけながら飛びかかろうとした。
だが、彼の叫びに反して足は相変わらず上手く動かずユッシは雪原へと倒れようとした。そこへ彼の抵抗する意志の表れである雄叫びに気分を悪くしたエーメリがヘルムの下から怒声を響かせ、倒れかけるユッシの胸へと勢い良く回し蹴りを喰らわせた。その威力はユッシが一瞬呻いた瞬間、取り巻くエルフの騎士達を飛び越え数十メートル先まで吹き飛ばされる程であった。
「うぅ……げほっ……うぉぉ……」
「はっ!俺の得意魔術は身体強化魔術でな。とはいえ、魔術だけじゃなく俺は体も鍛えてる。この鎧の下はきちんと筋肉がある!エルフとはいえど、やはり筋力は大切だからな!」
「くっ……クソ、この"筋肉ダルマ"が……」
「"Daruma"?はっ!野山の野獣の言葉は訳が解らんな!」
雪原の雪にめり込みなが倒れるユッシは、寒さのため着込んでいた毛皮の服と雪ががクッションとなってなんとか無事であった。それでも、胸に生物が出せるとは思えない強烈な蹴りを受けたことで、肺の空気が一気に外へ吐き出させられ上手く呼吸が出来なかった。
ユッシがなんとか息をしようとする中、エーメリは他の騎士達を手招きしながら雪の中で蠢く彼の元へと楽しげに足を運びつつ声を張って自分の能力について自慢するのだった。その声は実に楽しそうなものだったが、それを聞くたびにユッシは怒りを湧きがらせ、なんとか息を戻しながら悪態をついてみせた。
まだ悪態のつけるユッシの状況にエーメリは楽しげに見えた足取りを少し止めると、吐き捨てるように呟いて力強く怒りを感じさせる足取りで彼の側に立った。
「まっ、まだだぁ!」
「その意気はよし、だが!」
「ぐぉっ!」
「力がなければ何にもならない!」
「ぶぅふぁ!」
「ただ吠える獣なだけだぁ!」
「ぐぁあ!」
自分を文字通り見下すエーメリの姿に、ユッシは屈辱と虚しさに顔を皺くちゃにした。その無様な姿にエーメリが肩だけで笑うと、ユッシは激しく痛む胸を忘れてなんとか彼の足を掴むと、気力を振り絞り叫んでびくともしないエーメリの足を殴りつけた。
ユッシの最後の抵抗は、騎士として武人の心得のあるエーメリにとってはいいものであった。だが、それをダークエルフにされることは人間の尊厳を傷つけられたように感じさせ彼にとっては恐ろしく不快であった。
その不快感を払うように彼はユッシを何度も何度も蹴りつけ踏みつけた。それは顔や体の区別なく、急所も何も気にしない八つ当たりのようなものであった。その威力は身体を魔術で強化されている分凄まじく、暫くするとユッシは黙って動かなくなった。
「ふん、全く手こずらせおって」
「隊長、どうします?」
「こいつ、黒エルフの群れで偉いんでしょう?ここで首でも斬っておけば見せしめになるのではないでしょうか?」
「そうだな……まぁ、それしかこいつに価値はあるまい」
蹴りの威力から服があちこち裂け、皮膚の下から内出血し皮膚を激しく変色させ口や鼻、目から血を流し虫の息であるユッシに、エーメリは満足したように胸を張った。そんなエーメリに彼の部下2人はまるで物のようにユッシを足で蹴りつけつま先で指しながら彼の扱いをどうするか尋ねた。
部下達が続々と周りに集まる中、エーメリは死に体のユッシに唾を吐きかけつつ彼の脇腹を軽く足で突き、背負い直していた大きな戦斧の柄に再び手をかけた。
「おっ……俺は……こんなところで……」
「終わりだよ、ユッシ。貴様のような獣に魔術はもったいない。我が戦斧の錆にしてくれる!」
エーメリが勢い良く戦斧を振り回す中、死に体のユッシは彼の姿を見上げた。それは、直ぐ側に迫る死であった。
それでも、ユッシはその死を前に最後の力を振り絞りエーメリの足を掴んだ。その姿と一言に、ダークエルフというエルフにとって獣同然の存在ながらに戦士としての不屈を感じたエーメリは、いよいよ不快感が限界となって爆発すると手に握る大きな戦斧を勢い良く振り上げた。
「おいおい、ケダモノ!言い残すことはないか?」
「ほら、軽く吠えとけよ。獣なりになんか芸の1つでもしろよ!」
「おいおい、コイツは犬と違うんだぞ?」
「おっ、俺を殺したところで……まだ、厄介な連中は山程いる……せいぜい殲滅されるといい。あの世で嘲笑ってやる……」
ユッシの殺処分をエーメリの部下達が盛大に盛り上げると、広い雪原にエルフの騎士達の歓声が響いた。
その歓声の中、全身の痛みから思考が麻痺し始めたユッシがうわ言のように口止めされていた帝国軍のことを思わず呟いた。その一言は既のところで伏せたユッシによって戯言のように聞こえるが、そのうわ言は不思議とエーメリにはうわ言に済まない何かを感じさせられたのだった。
「何だ、コイツ。強く蹴られ過ぎて頭が……なんだこの音!」
ユッシのうわ言に対する己の心に発生する不安感を払い去ろうとするエーメリは、敢えて彼の言うことをうわ言と決めつけて対処しようとするととにかく振り上げた戦斧を振り下ろしてユッシの首を切り取ろうとした。
しかし、エーメリのトドメの一撃は彼等のいる雪原付近の上空から迫る羽音のような爆音によって急に止められたのだった。
「おい、あれ!……ぐぉあ!」
「なんだ、何が起きた!魔術か?魔導か?」
「まっ、魔力による攻撃だ!対魔術戦闘……ごぁあぁ!」
「Geben Sie der Rettung aller Mitglieder und VIPs höchste Priorität!《総員、要人救出を最優先にせよ!》」
「Feuerschutz!《援護射撃!》」
「てっ……敵襲うぅうぅ!」
上空から唐突に飛来してきたティルトローター機は、倒れるユッシを中心に勢い良く左旋回をかけた。その姿はエルフ達からすれば"唐突に現れた訳のわからない何か"であり、彼等は空を飛翔する鉄の塊を驚きの視線で見つめるだけだった。
そのティルトローター機は左側面の扉を開くと、中から汎用機関銃や自動小銃を構えるガルツ帝国兵が表れ彼等は容赦なく地上に対して機銃掃射をかけ始めた。




