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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
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第8幕-4

趣味で書いているので温かい目で見てね。

「なっ!爆裂魔法だと!どこから…ゔぉあっ!」


「対防御陣形!急いで…ぶぉあ!」


「間に合わない…個人で防御魔法を敷け!"いと慈悲深き地母心よ…我を迫る災禍から守り給え…光の壁"!ばっ…」


 リリアン大陸の7割を領土とするフィントルラント精霊国であっても、首都を爆撃された被害は甚大であった。首都はおろか、都市としての機能さえ消失した瓦礫の山のエスペレンキは、精霊国各政府組織への指揮伝達機能を完全に消失させられていた。さらに最悪な事態は、国王であるサウリが急な魔力不足による昏睡状態となったことだった。

 それにより、主権者かつ命令を出す者のいなくなったフィントルラント精霊国は、指揮伝達機能だけでなく指揮そのものが消失したのだった。

 その国としての機能消失により、スオミ族国へと侵攻していたフィントルラント精霊国の各騎士団は唐突な本国との連絡途絶によって混乱していた。

 それ故に何も反応しない長距離魔導通信のための大きな鏡と装置を前にして、多くの騎士団の行動は完全に騎士団長任せとなっていた。その結果、多くの騎士団は本国の異常事態を察知して、ガルツ帝国の予想通りに後退していった。

 だが、その国王昏睡の状態でフィントルラント精霊国の姫騎士であるミリヤは、母親であるアンティア・アウネ・ウーシパイッカに政治や突然の国家の危機への対応を任せ、報復のために部下とヴァルッテリのウトリアイネン騎士団を連れてあえて出陣した。

 そしてミリヤは道中に長距離魔導通信にて連絡のついたマックール騎士団とヤロスオ騎士団と協力しトンモトの街を包囲したのだった。


「ケイモ騎士団長!団ち…ぎゃ!」


「魔導通信を!"ケイモ騎士団に爆裂魔法の直撃!団長は重症!"」


「魔導通信の大鏡なんて展開してるわけ無い…だぁろぁ!」


「くそぉ、逃げろ…逃げろぉ!」


 だが、トンモトの街を包囲したミリヤ率いる3つの騎士団は進撃を始めようとした途端に、ガルツ帝国陸軍から放たれた無数の砲弾に襲われた。その強大な爆炎を前にフィントルラントの各騎士団は対爆裂魔法の密集防御魔法陣形を組んだ。

 しかし、防御魔法では全く爆発や衝撃に耐えきれず、その密集防御陣形で多くの騎士が一挙に纏めて粉砕されるのだった。


「全軍進めぇ!止まるな!とにかく止まらずに進めぇ!」


「ミリヤ、出過ぎた!隊列を乱さず…」


「ヴァルッテリ、止まれば爆裂魔法のいい的だ!観測兵と魔導師を探しつつ、散開して突撃しろ!」


「えぇい、女だてらに度胸は男以上かよ…

"ウトリアイネン騎士団"、突撃しろ!雪原では狙い撃ちにされる!とにかく敵の防衛線に喰らいつけ!」


 初めて受ける雨のような砲撃は、数分でフィントルラントの多くの騎士団に壊滅的な一撃を与え彼等を早々に退却させたのだった。

 それでも、エスペレンキにて受けた爆撃の経験からミリヤは、ヴァルッテリや部下のウトリアイネン騎士団に突撃を命じたのだった。


「国を…エスペレンキを…お父様や皆をよくも!私の大切なものを傷つける野蛮人とブリタニアめ!このミリヤ・アンティア・ウーシパイッカが全滅させてやる!"いと慈悲深き天空神よ…離れし敵に業火と突風の刃を与え給え…爆豪の刃"!私に続けぇ!」


「うぉお!姫様に続けぇ!」


「突っ込めぇ!」


「お前ら!ミリヤもだから突っ込みすぎだ!くそっ、完全に舞い上がってやがる…"いと慈悲深き地母神よ…我の身を一時だけ隠し給え…濃灰の煙"!」


 そのミリヤの号令も、個人的な怒りから来ており、洗礼された純白の鎧を纏う彼女からは雪原を溶かすと思える熱い怒気に包まれていた。その怒気が発露したような怒声と業火の魔法を放つと、ミリヤは騎士団の誰よりも速く雪原を駆け抜けるのだった。

 ミリヤの突撃や彼女の放った魔法の爆発は、多くの騎士達が続くほどの覇気に溢れていた。

 だが、ヴァルッテリには防衛線突破のみを考えたミリヤの突撃へ不安を感じていた。そのため、一言文句をつけながらも援護の為に煙幕を防衛線があると思われる場所に展開させると、ヴァルッテリは無骨な鎧に金属音を響かせながらミリヤや騎士達の後を追うのだった。


「うぉおぉぉ…おぉ?」


「あれっ、爆裂魔法が…止んだ?」


「全員止まるな!魔導師達第一派の魔力切れだ!この空きに…」


「ミ…、…だ!」


「ひっ…ま…え…!」


「えっ…なんて言ってるの!きっ、聞こえないのよ!」


 その騎士達の突撃は雪原の雪や土、衝撃を巻き上げながら砲撃を縫うように細かく、鎧を着ているとは思えない程に素早かった。それは、騎士達が自身に魔法による筋力強化を掛けていたことによる素早さだった。それでも、騎士達の人数は着実に減っていった。

 その突撃の途中、覇気から叫んでいた1人の騎士が疑問の声を上げて歩みを止めた。その1人の騎士が周りを気にして伺う姿で、更に1人が足を止め周りを伺いその理由に気付いたのだった。

 砲撃が止み始めたことで騎士達の動きが緩慢になると、ミリヤは彼等へ振り返りつつ先に進むよう促そうとした。だが、冷静さを欠いているだけでなく爆発で耳が一時的に遠くなっていた為に他の騎士達やヴァルッテリがかける声が解らず、その足を止めて聞き返したのだった


「ミリ…上…!」


「上っ!」


 ようやく聴力を取り戻し始めたミリヤは、ヴァルッテリが言っている言葉を察して上を向いた。ミリヤの視界には曇り空が広がっていたが、その視界の端に小さな黒点が見えた。


「鳥…じゃない!」


「龍か!」


「龍でもない…こっちに来るぞ!」


 その小さな黒点がみるみると大きくなると、ミリヤはその黒点が鳥などといったものではないと解り、その大きさに驚きの声を上げた。そして、その黒点に驚くヴァルッテリが声を上げ、周りの騎士達も驚きの言葉を漏らしたのだった。


「くっ、来るぞ!伏せろ!」


「急いで伏せろ!」


「ミリヤ!」


「ヴァルッテリ!」


 黒点は左右の翼に巨大な1機のプロペラを持つティルトローター機であった。その機体は素早く騎士達の方向へ姿勢を制御すると、爆音を響かせながら彼らのもとへ迫った。

 その巨大な機影にミリヤやヴァルッテリ、騎士達は空かさず地に伏せるのだった。


「なんだあれ!なんなんなだ!」


「バカ、上体を上げ…」


「トゥオモ!くそ、"岩穴の祖たる"…ごあ!」


「チクショウ!"いと慈悲深き天空神よ…"だぉあ!」


「皆、体を上げるな!身を晒すな!とにかく伏せろ!」


「空を飛んで爆裂魔法だと…翼竜の炎より質が悪い…」


 ミリヤ達の上空へティルトローター機が迫ると、機首や機体側面についた機銃とロケットランチャーを地表の彼等へ向けて乱射しつつ通過するのだった。

 その掃射と爆発を前にミリヤやヴァルッテリ達騎士の全員は空かさず伏せるも、数発のロケット弾の着弾で多くの騎士達は四肢を吹き飛ばしながら宙に舞い、機銃掃射は伏せる騎士達の命を刈り取るのだった。それに怒りを覚えた騎士たちが反撃のため魔法を唱えようとするものの、詠唱の終わりを待つことなく攻撃は続き、目立った者は即座に機銃の餌食となっていった

 その上空を飛ぶティルトローター機からの一方的な攻撃は生き残る騎士達へ恐怖と混乱も巻き起こした。その混乱の中でもミリヤはめげずに騎士達へ指示を出したが、爆発と轟音の中では上手く通らなかった。そのミリヤのから回る指示に、ヴァルッテリは悠々と飛び去る機体を睨みつけながら呟いた。


「えぇい、負傷者は…」


「何か降りてくるぞ!」


 上空を過ぎ去るティルトローター機の姿から、ミリヤは部下の状況を掌握しようとした。

 だが、ミリヤの指示も上空40mほどを通過するティルトローター機の後部ハッチからは3つの影が飛び降りてくると、地に伏せる騎士達は不気味な焦りに浮足立った。

 その影は騎士達の戦列の最前線と中央、最後尾に勢いよく落下してくるのだった


「なっ…何が…」


 機銃掃射とロケット弾の着弾によって土を多いに浴びたミリヤは、爆風で伸びかけながらも目の前に落ちてきた何かに驚き呻いた。

 ミリヤの視界の先には、雪と土煙の靄がかかっていた。その靄の向こうには、輪郭の薄い人影がゆっくりと余裕を見せながら立ち上がった。更にその影か突然に赤く光ると、その光が土煙を切り裂いた。その中から漆黒の軍服を纏い、不気味に光る赤い1つ目の仮面を付けた姫カットの長い黒髪の誰かが立っていた。


「Schmerzlich…Immerhin ist es unvernünftig, aus 40m Höhe abzuspringen. Ich werde niedergeschlagen sein《痛たたた…やっぱり、40mから飛び降りるなんて無茶ですよ。捻挫しちゃいますよ》」


「ブリタニア語…か?おっ…お前は…誰だ?」


「Ich verstehe nicht, was du sagst, aber du bist anscheinend eine großartige Person.《何を言ってるのか理解出来ないけど、貴女は見たところ偉い人なのね》」


「何を…お前ら…ブリタニア人なのか?」


「Britannia? Ich kenne den Namen des Landes. Es hat keinen Sinn mehr zu reden.《ブリタニア?国名くらいは解るけど。これ以上話すのは無駄ね》」


 その人影は、ミリヤの問いかけに小首をかしげながら地面に伏せる彼女を前に一言呟いた。だが、その言葉はダークエルフに味方をしているのがブリタニアだと思っていたミリヤには理解できないものであった。

 そして、ミリヤ同様に彼女の言葉も理解できない仮面の軍人は一言呟くと、腰を深く落として剣を右手のみで持ち、左手の人差し指と共に刀身を地面と水平に保ちながら先端をミリヤに向けて構えるのだった。


「ハジメマシテ…ソシテ…シネ!」


 仮面の軍人はカタコトのフィントルラント語でミリヤに短歌を切りつつ、彼女へと突撃するのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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