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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
244/325

幕間

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

 リリアン大陸のカッペ鉱山は世界有数の魔鉱石産出鉱山であった。更に、海岸沿いに鉱山が存在する事で、採掘した魔鉱石をすぐに輸出や輸送する事の出来る最高の鉱山であった。その産出量は独占さえできれば一国の軍隊を世界最強にする事のできる程であった。

 だが、リリアンはエルフが大きく幅を利かせていた事によって、鉱山を巡る争奪戦は発生する事も無かった。その結果、鉱山は世界各国の魔導技術発展の為の犠牲となり、無数にあった鉱脈は枯れ果て、周辺の自然も開発の犠牲で岩肌の向き出す荒れ地となった。


「それで…フリッツ少将。君は"あえて敵を全滅させずに逃した"と?」


[はい、総統閣下。こちらは出来る限り姿を見せず、偽装も行いました。その結果、敵はこちらを強大な魔法を使う軍隊と判別した筈です。ですので、首都爆撃後のこの長期間の間にはヒト族やエルフの再攻撃がありませんでした。連中が疑心暗鬼効果になった事の証明とも言えます]


「全滅させた方がより疑心暗鬼になったのではないかな?」


 だが、現在のカッペ鉱山周辺はただの荒れ地とは一変した光景となっていた。荒れた岩肌の彼方此方には大型の対空レーダー車両や高射砲、対空ミサイル車両陣地にガルツ帝国遠征司令部が置かれる大規模な陣地と化していた。

 更に海岸の荒廃した港には、無数の大型輸送船と海軍所属の輸送車両が行き交い、沖には空母や戦艦、無数の軍艦が港の警備に当たっているのだった。

 そのカッペ鉱山のテントにて、第4艦隊旗艦から下艦したカイムは第3軍司令のフリッツに事情聴取を行ったのだった。


[いえ、そうではなく。あえて戦闘を体験した者が"強大な軍拡をした国がある"と風潮するからこそ効果が出るのです]


「無用な戦力誇示はしたくないのだがな」


[殆どが砲兵器のみです。ヒト族ならば、強大な魔法と勘違いするでしょう。さらに、現状においては諜報員からも"帝国に関する情報はない"との事ですから]


「作戦開始から既に1月。もうスオミ族の輸送人員もわずか…気にする必要もないか…」


[ご安心下さい、総統。不覚があればこのフリッツ、全力を上げて解消します]


「そうか…ならば信じよう。職務に戻ってくれたまえ」


[はっ!帝国万歳!総統万歳!]


 巨大な演習作戦本部にて映像通信をするカイムは、リリアン大陸で起きた戦闘についての報告書を捲りながら睨むような表情で画面のフリッツを見るのだった。

 カイムの疑念の表情に対して、フリッツは自身に満ちた表情で彼に説明するのだった。その説明の内容通りに、彼等が演習作戦を開始してから既に1ヶ月が経過していた。その間にはフリッツの指揮する第3軍はおろか、どこの部隊も散発的な戦闘さえ発生する事は無かった。

 その為、カイムはフリッツの自身に満ちた表情や微動だにしない不動の姿勢に根負けすると、彼の言葉を受け入れながら通信を切るのだった。


「よろしかったので?」


「ギラ、私は起きて終わった事にあれこれ言う程に肝が小さくない。何より、スオミ族の救出はもうすぐ終わる」


「敵陣での油断は命取りなのでは?"獅子は…」


「兎を狩るにも全力を尽くす"だろ?とりあえず、今の所は順調だからな」


「確かにそうですが…」


「"今の所だけ"だろ?確かにな…」


 司令室の中で座席に深く座り込んで天井を眺めたカイムに、ギラはその後ろからコーヒーを机に置きながら尋ねるのだった。彼女の言葉に机の上の書類を手に取り振りながら気の抜けた口調で答えると、机の隅に投げるとカップを手に取るのだった。

 コーヒーをカイムが飲む姿を見ながらも彼に指摘をするギラに、カイムも顔を曇らせながら机の上の別の書類に目を向けるのだった。


「"国籍不明の船影を確認。帆船の艦隊とおもわれる"か…」


「警戒行動中の第1艦隊からの通報ですね?」


「行きは良くても帰りは怖いか…」


「帆船に負ける軍艦がありますか?」


「無い事を切に祈るよ」


 その書類には海軍の紋章が刻まれ、数枚の紙に纏められた内容には暗視カメラで撮られた写真も添付されていたのだった。


「この演習作戦の本当の主戦場は…海か…」


「失礼します、総統閣下!緊急事態でしてよ!」


「ヴァレンティーネ、上級将校ともあろう者が入室要領も…」


「ギラさん、謝罪については後でしますわ。それよりも総統、緊急事態なのです」


 写真を眺めて呟いたカイムだったが、彼は隔壁の向こう側から司令室のハッチに誰かが近づく感覚を覚えた。彼は独り言を止めてハッチを注目すると、それは勢いよく開いた。

 そこからから現れたのはヴァレンティーネであり、鬼気迫る表情に息を切らした彼女は大声でカイムに報告をするのだった。そのヴァレンティーネにギラが非難の言葉をかけようとしたが、睨みつける彼女の圧を押し返すとヴァレンティーネはカイムの前まで行くと親衛隊式敬礼と共に一枚の書類を渡すのだった。


「戦況報告か…しかも、かなりまずいものか??」


「はい、親衛軍第112戦闘師団からの報告です」


「"ホミニオに向けて侵攻していたエルフの武装集団約1個師団が前進を継続"…」


「ホミニオの一般市民の避難は完了していますが、防衛に当たり散兵戦を行っていた者達2個小隊が包囲されつつあります」


「"族長の息子であるユッシが指揮する"だと…」


 報告書を受け取ったカイムはヴァレンティーネに内容を尋ね、彼女は苦々しい表情を浮かべながら答えた。カイムはその報告書の内容を目で追い一部の内容をギラに読んで聞かせた。その報告書の内容が先に進むほどカイムの表情から笑みが消え、ヴァレンティーネの表情は険しくなり頭が下に下がってゆくのだった。

 カイムが報告書の内容の最後を読んだときには、ヴァレンティーネは謝罪を込めて頭を下げるのだった。その姿は腰から直角になる程であり、表情は今にも泣き出しそうなものであった。


「もっ…申し訳ありません。前線指揮を任されたにも関わらず、このような失態を犯しました。如何様な処分も…」


「戦勝において不足の事態は付き物だ。一度の失敗は成功で返せ。まだ損害がない以上、挽回してみせろ」


「帝国騎士を2人、お貸しください。それと、回転翼輸送機と…」


「親衛軍遠征参加部隊の指揮権は君にある。そう、"君に"だ。ついでに本国から持ってきた"アレ"も使うといい。片方は寒冷地帯で減衰率も低いだろうから、良い実戦試験になるだろう」


「解りました。直ちに対処します」


 悲壮感を漂わせるヴァレンティーネの謝罪を前にして、カイムは書類をギラに渡しつつ彼女に顔を上げさせるように手で示した。

 顔を上げるヴァレンティーネに、カイムはポケットからハンカチを取り出しつつ励ましと激励の言葉をかけた。カイムのその励ましに、ヴァレンティーネは涙を拭いながら姿勢を正した。

 そして、彼女は深呼吸すると覇気のある言葉でカイムに装備の用意を頼もうとした。そんなヴァレンティーネにカイムは机の上に置いていた書類を渡し助言をした。そのカイムの言葉に、ヴァレンティーネは礼をしながら答えると、部屋のハッチを開けて通路を駆け抜けてゆくのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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