第7幕-5
趣味で書いてるので温かい目で見てね。
「Assault!《突撃!》」
「Jag ska kasta i fienden!《敵陣に突っ込むぞ!》」
「Krossa alla fiendens soldater《敵兵を一人残らず叩き潰せ》」
国防陸軍第1軍団第3軍第34装甲師団麾下第343歩兵大隊がノーベル帝国軍への警告射撃後、彼等の元へと地響きの如き足音を立てた無数の鎧姿の兵士達が殺到した。
雪原に津波の様な光景を見せながら突撃してくる青い騎士団の姿には、無数の訓練を積み警告射撃を行った帝国軍新兵達も少し驚く程だった。
「クソッ、やるってかよ野蛮人が!」
「早く次弾込めろって!」
「迫撃砲用意しろ!着弾位置は…」
「地雷原の後ろだろ!」
当然ながら、訓練のみで実戦の経験が無い帝国陸軍新兵達はノーベル帝国軍の理解出来ない言語による怒声や罵声を前に悪態をつくが、肝心の戦闘用意はぎこちなかった。
それは塹壕内の兵士達はまだ若いため、迫るノーベル帝国軍の放つ兵士のオーラに当てられて事により緊張したためであった。
「お前ら落ち着け!訓練通りだ、訓練通り!」
「第31分隊、戦闘用意!大隊本部に通信!"敵集団約3000、警告を無視して突撃。応戦許可求む"」
そんな焦りと迫る実戦の緊張で混乱する新兵達の後方から声が響くと、曹長の軍曹の階級章を付けた男が2人が前に出るのだった。
細身で軍曹の階級章を付けた男が焦る新兵全員に、少し裏返り慣れない怒鳴り声を上げて落ち着かせた。その声で悪態や覚束ない新兵達の動きに冷静さが戻ると、小太りで曹長の階級章を着た装甲服の男が分隊全員に指示を出すのだった。
「分隊長、大隊から通信。"応戦許可する。第341戦車大隊、第342歩兵大隊を応援に送る。到着まで最短20分。増援到着まで戦線を維持せよ"以上!」
「散々待たせて今更の実戦か…何としても保たせるしかない。31と24分隊で相手をするぞ!」
曹長の指示に、無線兵が背中に装備されフルフェイスヘルメットとケーブルで接続された長距離無線機による通報を報告すると、曹長は軽く独り言を呟くと小太りな見た目に似合わない軽快な動きで塹壕の上に身を乗り出すと隣の塹壕を見下ろした。
そこには、第31分隊と同様に戦闘態勢を整える白い雪上迷彩を施された装甲服姿の集団があり、小太りな曹長同様に指揮官が目視で周辺の塹壕を確認しているのだった。
「第24分隊、こちら第31分隊。戦闘用意良し、そちらはどうか?送れ」
[第31分隊、こちら第24分隊。何時でも行けるぞ。そっちのやんちゃ坊主達とは出来が違うんだ。やるぞ]
「言ったな、ノイベルト!第31分隊は敵が地雷原突入と同時に攻撃を開始する!同時攻撃を行うぞ、よろしいか?送れ」
[仕方ない、良いぞ。24分隊は31の攻撃に合わせて攻撃を開始する。終わり]
小太りな曹長が見下ろした隣の塹壕には、彼同様に周りを見回す曹長が立っていた。その男は長身に良いガタイをした男であった。
小太りの曹長からノルベルトと呼ばれた軍曹は、送られた無線に答えつつ隣の31分隊を指差しながら軽口を言うのだった。その軽口に言い返す小太りの曹長は、24分隊の指揮官であるノルベルトに指示を出すと返答を受けながら塹壕内へと滑り降りたのだった。
「ラっ、ライマー分隊長…敵は…」
「落ち着け、今まで通りの事をしっかりやれば良い。おまえ達はこんな所でやられる様な奴等か?」
「「「「違います!!」」」」
「ならば、口ばかりで仕事も出来ないろくでなしか!」
「「「「違います!!」」」」
「その意気だ。ここで俺達の力を見せるぞ!早く戦闘用意、かかれ」
「「「「かかります!!」」」」
塹壕内へと戻った小太りの曹長であるライマーは、肩に背負っていた雪上迷彩を施した自動小銃を手に持った。すると、彼はキャリングハンドル下にあるコッキングレバーを引きながらジャングルスタイルの弾倉のはまりを確認しながら薬室を覗くのだった。
そんなライマーに機関銃手の一等兵が不安の言葉を漏らしかけると、彼の元に新兵達の不安の視線が集まるのだった。フルフェイスヘルメット越し送られる視線は、彼に内戦期における新兵時代の自分を思わせるものを感じさせたのだった。
その視線にライマーは力強い口調で叱りと励ましの言葉をかけると、分隊に戦闘用意をさせるのだった。
「敵集団、地雷原まであと300m!」
「こちらまで400mか…地雷の爆発確認後に攻撃開始!機銃手、応戦用意!」
「給弾良し!射撃用意良し!」
「迫撃砲も測敵良し!」
[第31分隊、こちら第24分隊。攻撃用意良し。何時でも始めて良いぞ]
「気楽に言ってくれる…軍曹、やるぞ。30年ぶりの実戦…いや、本当の戦闘だ」
「第31分隊、攻撃用意!」
塹壕から身を乗り出し新兵達に混ざって小銃を構えるライマーに、副官の軍曹が覗いていた双眼鏡で敵との距離を測ると報告をするのだった。
その報告に、ライマーは小銃のキャリングハンドルに備付けられたスコープで敵集団を眺めた。そこには確かに無数の青い鎧姿の兵士達が雪に足をとられながらも素早く前進しているのだった。
迫る敵を前に指示を出すライマーへ、兵士達は機関銃のカバーを開き装填の確認や軽迫撃砲の最終確認、小銃の確認を行いながら彼に返事をするのだった。
「Jag kan gå! Förstör fronten!《行けるぞ!戦線を食い破れ!》」
「Krossa maggots!《蛆虫どもを叩き潰せ!》」
「敵集団、地雷原侵入まで後10秒!」
「やるぞ…総員、狙え!」
「3…2…1!」
ノーベル帝国軍の怒声が近づく中、31分隊全員は青い騎士団へと狙いを定めながら敷設された地雷原に敵が飛び込むのを見詰めるのだった。
その敵を見る軍曹が測敵しながら秒読みをすると、何も知らないノーベル帝国軍は銃口で編まれた網と殺意の埋め込まれた地雷原へと飛び込むのだった。
「撃てえぇぇええ!」
ライマーはノーベル帝国軍が地雷原に飛び込むのを確認した瞬間、有らん限りの声で号令を出した。
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