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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
240/325

第7幕-4

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

「コチラヘシングンチュウノ、ショゾクフメイノグンヘツグ。ワレワレハ、クルシムタミヲスクウカイホウグンデアル。コウセンノイシハナイ。クリカエス、コウセンノイシハナイ」


「何だ、あの下手くそなノーベル語は?変な訛りがあるぞ?」


「巻き舌が多いな。オマケに語頭が強すぎる」


 アードルフ率いる2万の騎士団は、ノーベル帝国政府から1月2日に魔法による通信で帰還の命令が出ていた。その内容は"12月31日の帝国首都が奇襲攻撃を受け、殆どの建物が全焼した。その避難民の誘導と警備のため"というものであった。

 あまりにも突飛過ぎる内容はアードルフに偽の情報を予感させた。だが、ノーベル帝国政府の命令書が届くと、彼や多くの兵はその書簡に書かれた"首都への突然の奇襲攻撃や軍民の区別無く行われた無差別攻撃"に激昂し帰還命令へ反したのだった。


「なっ、何だ。"戦わない"って言うのか?」


「バカ言え、解放軍が害獣の味方って事は戦う意志があるって事だろ!全軍、突…」


「ヨーン、独断で指示を出すな!アードルフ団長、どうします?」


「構わん…何が"解放軍"だ、冗談も大概にしろと言った所だ!連中の言など知った事か、前進せよ!」


「了解。横隊、魔導盾展開!合戦用意!」


 怒りを露わにして闘志を燃やすアードルフの蒼狼騎士団だったが、彼等に向けて放たれた言葉は彼等の知る軍隊とは思えぬ交戦を避けようとする警告であった。彼等の知る軍隊は、武装して前進する軍隊を前にすれば問答無用で交戦が始まる。そうして強い軍が勝ち、弱い軍が負ける。

 国家間であっても弱肉強食が基本のファンダルニア大陸やリリアン大陸であるからこそ、突然放たれた警告に対してアードルフを含めた多くの騎士達は困惑したのだった。

 その警告を前に騎士団の上層が困惑する中、ヨーンと呼ばれた2本の闘牛の様な角を付けた兜を被る男が怒りに任せて怒鳴った。それだけに留まらず、彼は長く続く横隊の一部である彼の隊員1000人に突撃を支持しようとした。

 それを隊列を崩して突撃を掛けようとした。それをアルトゥルが兜の前面を上げてから大声でヨーンに怒鳴りつけると、アードルフへと指示を仰ぐのだった。

 そんなアルトゥルの言葉を受けたアードルフは、ヘルム下からでも解る程の怒気に溢れていたのだった。その彼が、騎士団へ向けて怒鳴るような指示を出すと、アルトゥルはがなるように号令を出すのだった。


「第1騎士隊。魔導盾、展開!」


「第2騎士隊。魔導盾、展開!」


「第3騎士隊。魔導盾、展開!」


「「「「魔導盾、展開!!!」」」」


 その号令を聞いた各騎士隊の指揮官が、青、黄色、白等の色で染められたノーベル帝国旗を高らかに掲げながら号令を出した。その号令を聞いた1200の前線兵士達は、片手の槍を後ろ手に左腕に付けた小型円形の盾を一斉に前へ構えるのだった。

 その盾は中央に大きな赤い水晶が填められ、その周りを青く塗られた木製の盾だった。多くの兵が片手で軽々と持つその盾の見た目は、大きさからも控えめに言って頼りになるとは言えなかった。

 だが、左手に握る盾のグリップに付けられたスイッチを押すと、彼等の盾に付けられた水晶が深紅に輝き光を放った。すると、ワインレッドの光の壁が盾から展開させるのだった。その光は盾構える横並びの兵達によって、まるで城壁の如く展開されると帝国陸軍へと迫った。


「セッキンスルショゾクフメイノグンタイヘツゲル、ワレワレニコウセンノイシハナイ。ヒキカエセ。クリカエス、ヒキカエセ」


「ふざけるな、この獣が!」


「害獣の味方なんて人間じゃねぇ!」


「人間の裁きを受けろ、クズ!」


 一定の歩幅で前進し塹壕へと迫るノーベル帝国軍に、ガルツ帝国軍か拡声器で再度の警告を行った。だが、その警告は戦闘開始を前に闘争心を高ぶらせたノーベル帝国軍にとっては侮辱に近く、前線の兵士達は周りの空気を震わせる程の大声で罵声を放ち始めるのだった。

 開けた平原から森の橋にある塹壕まで響くその侮蔑の声は、両軍の距離が近づく程に荒々しくなっていった。


「その首、たたっ斬ってやる!この化け物共が」


「貴様らの様な…んっ、何の音だ」


「はっ、音?あっ、確かに聞こえ…うわっ!」


「なっ、何だ」


「爆発か?」


 騎士団が大声罵声を浴びせる中、アルトゥルも罵声を放ちアードルフも雄叫びを出そうとした。

 その声が雪原の冷たい空気を震わせようとしたとき、アードルフはその耳に聞こえる風切り音に言葉を濁した。その言葉にアルトゥルが答える前に、兵士達が驚く程の爆発が彼等の前方に起こったのだった。


「まっ、魔術か!爆発の魔術だ!」


「詠唱を聞いた者は!誰か詠唱を聞いた者はいないか!」


「居ません!」


「6m範囲での無詠唱爆裂魔法だと!化け物かよ!」


「やっぱりブリタニア軍だ!そうでなけりゃ、フィントルラントが裏切ったんだ!」


「魔道士隊、対抗魔法を張れ!」


 雪深い雪原をその下の土ごと巻き上げる爆発は、直径6m程の深い穴を空けて爆発を起こした。兵士達はその巻き上げられた土を左腕に展開された魔術による防御壁で防ぐも、その爆発による混乱は防ぎ切れなかった。

 前衛の兵士の混乱の声にアルトゥルが大声で兵士達に問いただしたが、その言葉に帰ってきた答えで騎士団は余計に混乱し始めた。だが、アードルフがその混乱を諌める様に号令を出すのだった。

 騎士団は槍を持つ盾隊の横隊列を前衛とし、その後に剣を持つ剣騎士隊、更に弓隊の3列横隊を取っていた。だが、その3列目の中央には弓隊ではなく青と白の迷彩柄のローブを纏う魔道士達で構成された隊が並んでいたのだった。


「「「「「「"地の精よ、我等に掛かる悪意ある魔術を防ぎたまえ。風の精よ、悪しき呪術から守りたまえ。天の光よ、我らを救いたまえ"」」」」」」


 その隊がアードルフの号令に従い手に持つ長い杖を天に向けて構えると、全員が一斉にズレる事なく詠唱を始めるのだった。その声は雪原に高らかに響くと、横隊の騎士団全体を包むように青い光を放つのだった。


「妨害魔法か…助かった」


「これで爆裂魔法でも何でも防げるか!」


「よし、これなら後は腕っぷしの差だけだ!」


 その青い光がドーム状に騎士団を包むと、混乱し乱れ始めた騎士団は直ぐに立ち直ると乱れた隊列を直し始めた。その途中、兵士達は歓声や自信に溢れる声を上げて気力を取り戻すのだった。


「流石に油断しすぎたか…たが、まさかエルフがダークエルフに味方するのもあり得ん。ブリタニアならばもっと詠唱が響く。ましてエスパルニアの賢者が出てくるとは思えぬ」


「ならば閣下、あの軍隊は…うっ!」


 混乱討ち払ったアードルフだったが、怒気や覇気に溢れていた鎧姿からは不信と疑念が溢れ、その不安が口から漏れ出す程だった。

 そのアードルフの不安にアルトゥルが疑問の言葉を掛けようとしたが、それを遮るように再び風切り音が響くのだった。


「対抗魔法を張ってるのにか!」


「前衛、また爆裂魔法が来るぞ!身構え…」


「違う、アルトゥル!2回来るぞ!全員伏せろ!」


 ヨーンが風切り音を爆発の前兆と理解すると、彼は大声で悪態をついた。その悪態を片耳に聞くアルトゥルは慌てて前衛に指示を飛ばそうとした。

 だが、アードルフの耳には響く2つの風切り音が重なったように聞こえ、連続の爆発を察した彼は騎士団前衛に慌てて指示を出すのだった。

 その指示に兵士達が即座に伏せようとしたとき、彼等の至近距離に2つの爆発が重なる様に起きるのだった。


「なぁぁあ!」


「うぅ…」


「ひっ、ひいぃぃ!」


 盾の魔導防壁を消して伏せようとした兵士達を襲った爆風は、最初の一発とは比べ物にならない程大きく、数人の兵士はその強力な爆風に身を後方に飛ばされるのだった。

 何とか雪原に倒れる爆風に耐える兵士達も、その爆風の威力には驚きと恐怖の悲鳴を上げるのだった。


「れっ、連続だと!」


「くぅ…これは、なんと…」


「エスパルニアの小僧じゃない!ヤツでもこんな爆裂魔法は詠唱をするはずだ!」


 隊長クラスの騎士達が驚きの声を上げ爆風に耐える中、アードルフは爆風の去った後の爆心地を見て強い口調で呟くのだった。

 その爆心地は直径10mの深く大きな穴を前に放ったアードルフの言葉には強い確信があり、無意識に放った彼の言葉は兵士達にどよめきをもたらしたのだった。


「コレガサイゴノケイコクデアル。コレイジョウノシングンヲヤメヨ。ワレニ、コウセンノイシ、ナシ。コウタイセヨ。コレイジョウノシングンヲスルノナラバ、ワガグンハショクンラヲセンメツスル!」


「Das hast dunicht verdient!《ちくしょう、クソ、くたばれ、アホ!》」


「Dumm!《馬鹿野郎が!》」


「Kehre ins Land zurück!《国に帰れ!》」


 立て続けに起こった爆発に混乱する騎士団だったが、そんな彼等に対して再び警告がもたらされた。

 その警告の内容に多くの兵士達は愕然としたが、アードルフだけはその警告ではなくその後に続く罵詈雑言に対して驚愕するのだった。


「突撃…」


「騎士団長、今何と…」


「突撃しろ!騎士団、突撃しろ!距離を詰めて魔導武器を叩き込め!」


「アードルフ騎士団長?」


「えぇい!ならば、我に続けぇ!」


 手に持っていた大斧を地面に刺し立ち尽くすアードルフは1人呟くと、アルトゥルがその言葉を聞き返した。その内容に周りの兵士達も彼を見つめたが、アードルフはすぐに怒鳴るように命令を下すのだった。

 その行動はアードルフを知る部下達からすると異常そのものであり、アルトゥルに至っては普段の冷静なアードルフとのギャップを前に思わず聞き返すのだった。

 だが、そのアルトゥルの言葉に苛立ったアードルフは、鎧を震わせると地面に差した大斧を大きく振りながら肩に担ぐと兵達を掻き分けて前線に駆けていった。


「えっ…つっ、続けぇぇえ!」


「突撃しろ!突撃!」


「突っ込めえぇ!」


 アードルフの雪原を駆け抜けるその姿には多くの者が困惑したが、アルトゥルを含めた多くの上級階級者が突撃を命令した。

 その号令に兵士達は一斉にガルツ帝国陸軍前線へと向けて突撃を開始するのだった。


「魔族が魔法…そんな事有り得るか…有り得るものかぁ!」


 兵士達の雄叫びの中でアードルフは1人叫んだが、その言葉は雄叫びに掻き消された。それでも、アードルフの突撃は誰よりも早く、一番大きなガタイで先導するその鎧姿はまるで歩く鉄塊のようであった。


「獣共が、人間を馬鹿にしおって!我らの強さを骨身に教えてやる!」

呼んでいただき、ありがとうございます。

誤字や文のおかしな所ありましたら、報告をお願いします。

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