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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
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第7幕-2

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

「衛星測位装置異常なし。キームにベーネベルク、コンダム、トルヨキの上陸部隊と。現在地はここか…第4艦隊は?」


「んっ…うぅん…」


「ギラ、起きたか?」


「えぇ…んっ?あっ!すっ、すみません、私…」


「構わないよ。そりゃ朝も早くから後部座席で飛びっぱなしだもの。眠くもなるさ」


 帝国歴2445年1月9日の黄昏に染まる夕暮れをカイムは愛機の空飛ぶフライパンで飛んでいた。彼はコックピットの衛星測位システムで一度自分の位置を確認すると、帝国各都市や大規模に展開した部隊の位置から更に自分の位置を再測定させるのだった。

 衛星測位での自分の位置が正確だった事を確認したカイムが自分の合流予定である第4艦隊の位置を確認していると、機体内無線にギラの声が響くのだった。眠気の残った彼女の声はまさに今起きたと言わんばかりのものであり、その声にカイムは酸素マスクの下で反応に困ったように苦笑いを浮かべるのだった。


「艦隊は…」


「そろそろの筈だ。日が落ちる前には見付けないとな」


「着艦は苦手ですものね。秘密でやった訓練の時は肝を潰しましたよ。あぁ、だから垂直離着陸機を…」


「言うなよ、ギラ。その点、ガランド殿は本当に凄いよ。見た事も無ければ乗った事もない飛行機で航空技術の基礎を作ったんだから…」


「貴方がマヌエラさんに作らせたんでしょ?」


「まぁね…ん?」


 機体をロールさせ天地を返しながらレーダーと共に合流予定の第4艦隊を探すカイムに、ギラは海上を見渡しながら呟いた。その呟きに、機体の上下をもとに戻したカイムはコックピットのレーダーを確認しつつ焦りを漏らしたのだった。

 カイムの焦りに理由を察したギラは、励ますように声を掛けたが余計な一言を付けたした。その一言を前に、カイムは気まずい口調で話を反らそうとしたがギラに流れを戻され、気の抜けた返事をするのだった。

 そんなカイムだったが、レーダーに映る二つの味方反応を示す光点に声を漏らした。すぐに二つの大きな影が空飛ぶフライパンの横を通り過ぎ、大きく旋回してカイム達の横を並走するのだった。


[こちら第4艦隊リンドヴルム所属、第411航空隊ヒエロニムス大尉、同じくアウレール中尉です。総統閣下、お迎えに上がりました]


「出迎えありがとう。感謝する」


[勿体ないお言葉です。艦隊まで先導と護衛をします]


「よろしく頼むよ、大尉」


[お任せください!]


 カイムとギラの横を並走飛行するのは細長い胴に40°の後退翼のついた戦闘機であった。だが、その機体には尾翼というものが存在せず、ミサイルを満載した後退翼の翼端に垂直の小翼と下向きの小翼が装備された独特な形状をしていたのだった。

 その長い胴の先頭に付いたコックピットのキャノピーから、対G飛行服を纏いヘルメットに酸素マスクを装着したパイロットが敬礼と共に無線を送るのだった。その低く枯れた大尉の声にカイムは答えると、並走飛行していた大尉が先頭を切って3機は縦並びに飛ぶのだった。

 その後数十分後に、カイムとギラの眼下には駆逐艦や軽巡洋艦を外縁とする輪形陣を敷いた第4艦隊が姿を表すのだった。

 対空レーダーとCIWS、対空ミサイルを装備した無数の駆逐艦や巡洋艦の上空を通過したカイムは、20隻以上の中央にいる艦隊へと辿り着いたのだった。


「流石に空母と高速戦艦の打撃艦隊か…」


[総統閣下、ようこそ第4艦隊へ。旗艦である空母リンドヴルム艦長、イマーヌエル・レークラー大佐です]


「イマーヌエル大佐、こちらカイム・リヒトフォーフェン。艦載機による護衛に無線まで、済まない」


[何を仰っしゃりますか、総統閣下。御召艦となるのにこの程度で、むしろ申し訳無い程です。甲板でブルクハルト・ブロスフェルト提督がお待ちですので…]


「解った。出来るだけ早く着艦する。既に5分遅れたからな」


[こちらの速度が速かったのです。申し訳ありません、総統。それでは、甲板中央へと着艦下さい]


「了解した」


 蜂の巣の如く防備を固めた輪形陣の艦隊の更に中央に、四隻の戦艦に護衛された2隻の空母が航行していた。片方はアングルド・デッキに艦載機を駐機させせて三つ装備するカタパルトを持ち、もう一隻はその船より少し小型でカタパルトを二基装備していた。その二隻の空母から艦載機を発艦させる艦隊の姿は上空から見ると壮観といった光景だった

 大艦隊と呼べるその艦隊にカイムが一人呟くと、旗艦旗を上げる三基のカタパルトを持つリンドヴルムから無線が入った。その声から屈強と解りそうな厳つい男の声に、カイムもマスクでくぐもった声ながらに応答をするのだった。

 ねぎらいと感謝の言葉を漏らすカイムに、艦長は感謝と反省の混ざった言葉で通信を返した。その言葉の中に"甲板で提督が待っている"という部分でカイムが謝罪の言葉を送ると、艦長は再び謝罪をしつつカイムの無線を受けるのだった。


「まぁ…アレスティングフック(ファングハーケン)も上手く使えない奴には、甲板中央を差し出すか」


[後部座席に管制員が居ても、ここまで単機で飛ばせる総統は流石ですよ!]


「大尉、世辞いいよ。先に着艦したまえ」


[いえ、我々はこのまま警戒任務に戻ります]


「そうか、御苦労。気を付けてな」


[総統万歳ハイル・マイン・フューラー!]


「ガルツ万歳」


 開けて物一つない甲板中央に視線を向けてカイムが呟くと、護衛の大尉は笑い声と共に明るい口調で彼へと励ます言葉を掛けた。その言葉は裏のなく純粋な励ましに聞こえたが、カイムは彼の言い方に心を折られるとつい否定するように呟いた。

 その自分の呟きに反省したカイムは、軽く旋回して飛行甲板を譲ろうと苦い口調で大尉へ指示を出した。だが、彼の言葉に大尉は課せられた命令を説明すると、カイムの労いの言葉に翼を振って答えつつ万歳を言って飛び去った。アフターバーナーを吹かせるその2機の機影に、カイムはただ呟くように無線を返すのだった。


「カイム、まだ海水浴の季節じゃないよ?」


「私だってな…こんな北の海で機体と一緒に海水浴したくはないよ。ギラも水着じゃないしさ」


「変態…」


「はいはい、変態ですよ!甲板中央確認。降下する」


「位置そのまま。降下、どうぞ」


 カイムと大尉の会話を聞いていたギラは黙っていた。だが、彼が機体を空母の飛行甲板中央上空に合わせてホバリングを始めると、カイムへそっと呟いた。

 心配するギラに対して、カイムは軽口と本音の混ざった一言をつぶやいた。その思考にはビキニ姿のギラがあり、若干上擦った声に全てを察したギラは軽く呆れる様に呟いた。

 ギラの呟きに気恥しそうに言い返したカイムだったが、甲板へと艦橋から出てくる人影を前には仕事をする口調へと戻した。その声音の変化にギラも後部座席から指示を出すと、空飛ぶフライパンはゆっくりと飛行甲板へと着陸したのだった。


「はぁ〜…我ながら良くやるもんだな。空軍や海軍の兵達には頭が上がらないよ」


「そもそも、総統がする事ではありません。第4艦隊の出港を遅らせて乗り込むなり、高速艇で合流するとか」


「それだと時間の無駄だろ?それに、"総統は口で怒鳴るだけの小物"と思う奴も少なくなるだろ?」


「そんな者、この国にはいませんよ!居れば私達が…」


「"反帝国思想で捕まえる"か?言論の自由も帝国制の前にはただの看板か…まぁ、この国に確実に一人は居るだろ?」


 垂直離着陸用のプロペラがゆっくりと動きを止めてジェットエンジンが唸りを鎮める中、カイムはヘルメットと酸素マスクを外して若干震える手を見ながら呟いた。その言葉には半日以上飛行を続けた疲れが出て来ており、後部座席のギラもヘルメットを脱ぎながら彼に心配そうに話し掛けるのだった。

 甲板の作業員が機体のコックピット横にタラップを着けると、カイムは片手を上げて礼を伝えるとギラの言葉に卑下の言葉を混ぜながら答えた。その言葉にギラも反応に困ったが、彼女の答えを聞ききる前にカイムは自分達への皮肉を述べつつ帝都で城の警備をするブリギッタを思い出しながら呟いたのだった。

 そんな会話をする二人が機体から降りて整備兵や甲板作業員達に礼を込めて片手を上げる中、二人の着艦途中で甲板に出て来た人影がカイムの元へと近付いてきた。


「カイム万歳!総統閣下、お久しぶりであります」


「ブルクハルト・ブロスフェルト提督。本当にお久しぶりです。元気そうで何よりですよ」


「総統、目の前に居るのは貴方の兵です。その様な態度は兵の前では…」


「労いは必要だろう?私は戦ってもいないのだからな?」


「軍の将が戦う戦場など、敗北の一歩手前です」


「君の今の言葉を内戦当時の敵に聞かせてやりたいよ」


「えぇ、全く…整備兵!総統閣下の機体には傷一つ作らず新品の様に整備しろよ!では総統閣下、こちらへ」


 カイムの元へと歩き、彼へと海軍敬礼と万歳をしたのはアホウドリの頭をした男だった。その男は屈強で180cm以上はある背に筋肉を蓄えた巨漢であった。そして、その男が纏う制服は海軍将校の制服であり、中将の階級章に勲章が甲板の光に照らされ煌めくのだった。

 そんなブルクハルトの言葉に海軍敬礼で返したカイムは、彼へと握手の手を差し伸べた。その彼の態度や口調は軍の総指揮官と言うには腰が低く、ブルクハルトは手を取り固く握手をしながらも困った様にカイムへと言うのだった。そんなブルクハルトの言葉にはカイムも一瞬言葉に迷ったが、すぐに一言呟くと自分への皮肉も言うのだった。

 その皮肉に眉をしかめたブルクハルトは、カイムに端的かつはっきりと自分の意見を述べた。その言葉には、カイムも安心したように過去を思い出した様に呟いた。その表情は物悲しさがあり、彼に相槌を打つブルクハルトは無理矢理に整備兵へと気迫のある大声で指示を出す形で陰の空気を払うと、カイムを艦内へと誘導するのだった。

 ブルクハルトが不器用な人間と理解していたカイムは彼の大声の意図を理解しており、艦内への移動の道中に周りから隠すように小さく頭を下げるのだった。


「キームからこっち飛びっぱなしだが…早速仕事をしなければな。ブルクハルト提督、悪いが適当に一室貸してくれ。代理の指揮所とする」


「しかしカイ…総統閣下。少しお休みになられた方がよろしいかと。飛行機の操縦だって久しぶりだったでしょう?」


「だが、私がここにいる以上この船が最高司令部となる。仕事をしなければな兵が危機に陥る。兵の後ろには子や親、妻や恋人が居るんだ。死んでるからでは手遅れだから…"戦没者慰霊会なんて二度と起こさせない"くらいの気迫は必要だろう」


 カイムとギラ、ブルクハルトと副官や警護の兵達が艦内を移動する中、カイムはブルクハルトへと軽く話しかけた。だが、その内容は気軽な口調とは反するものであり、一日の殆どを操縦席で過ごした人間とは思えない気軽さがあった。

 カイムの一言には流石の提督を含めた海軍の全員が言葉を詰まらせたが、ギラは一瞬だけプライベートを見せかけつつ慌てて訂正するとカイムへ意見した。だが、彼女の言葉に帰ってきたカイムの言葉は、重々しい口調であった。その言葉は嘗ての経験から来ている事を理解するとギラは何も言えずただ黙ってカイムの後を付いて行った。

 その重い空気の中、ブルクハルトは副官のアジのような頭の魚人の男が小脇に持つ書類を一枚取ると、カイムにそれとなく渡したのだった。


「それはそうと、総統閣下。陸軍から至急の報告が上がりました。国防省には伝えてありますが、何分事が事でしたので、迂闊に無線ではお伝えできませんでした」


「なっ…まさか交戦が始まったのか!大規模の敵が来たのか!連中、首都を焼かれてまだ戦う気とは呆れた根性…死傷者は?被害は!魔道士とか言うのとまともに戦えば被害も出る筈だ!」


「総統閣下、落ち着いてください。まぁ、その報告書を見れば気分が荒波の如く変わりますよ」


 ブルクハルトが書類を渡し、その気軽さに一瞬小首を傾げたカイムだった。だが、彼の口から飛び出した気軽な口調の報告に、カイムは顔を青くすると細かい事情を問い詰め用とした。

 血相を変えるカイムの表情に慄くブルクハルトだったが、彼はひたすらに書類を指差すと冷静にカイムへと説明するのだった。彼の言葉に、カイムも自分の取り乱した姿へ気付くと軽く咳払いしてから、止まった歩を進めつつ書類へと視線を落とした。


「"発、帝国陸軍第1軍団本部。宛、帝国国防省及びカイム・リヒトホーフェン総統閣下。戦闘記録報告書?我がガルツ帝国国防陸軍第1軍団第3軍第34装甲師団麾下第343歩兵大隊が帝国暦2445年1月9日午後0時37分頃、国籍不明のヒト族の武装集団約3000を防衛線付近で発見。同大隊の再三に渡る警告や退却呼び掛けに応じず、武装集団は防衛線への突撃を開始。午後0時47分頃、同隊はこれを攻撃行動と判断し応戦。午後0時55分頃、同隊は周辺部隊に応援を求める。その後、同隊を含めた第341戦車大隊、第342歩兵大隊と共に武装集団を包囲撃滅した。以降詳しい過程説明を記す"…包囲…撃滅…はぁ!"包囲撃滅した"だと!」


 最初こそ黙って歩きながら読んでいたカイムだったが、頭で理解するにつれてその内容が口に溢れ出すと最後には声を大にして驚愕したのだった。

読んでいただきありがとうございます。

後日や文のおかしな所ありましたら、報告お願いします。

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