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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
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第6幕-1

趣味で書いてるので温かい目で見てね。

[諸君、見よ!眼下に広がる雪原を。頭上に広がる満月を!


 この空は祖国と変わらぬ空ではあるが、嘗ての我々が憎みに憎んだヒト族の…エルフの大地、リリアン大陸である!

 多くの者が、この土地やファンダルニアから押し寄せる獣達に蹂躙され、"この土地へと、いつの日か反撃を"…そう想い朽ち果てていった。この空を越えて、遥か後ろの海を越え反撃をする空想に心震わせながら!多くの兵が散っていった…


 だが!今の我ら…我ら国防空軍に向かえぬ場所は無い!あらゆる海を越え、どんな山さえ越えられる。我々の鍛え抜いた銀翼は、あらゆる万難を排して敵に帝国人民の正義の意思を体現させられるのである。

 今こそ、我らガルツ帝国の正義を!あの獣共に思い知らせる時である!


 戦友(トモ)よ、恐れるな!我らの銀翼は、我らの翼十字は決して堕ちる事を知らない。それは帝国の不滅が証明しているからである!

 戦友よ、共に進もう!この狂気の空を切り裂き、我らがかの地に取り残した同胞を救い出すのだ!]


 冷気によって晴れ渡る12月31日の夜空は、満月が大きく輝き星々を輝かせていた。寒気によって澄み切った空気の空は、まるで地表へ落ちて来るとさえ思える程の月夜であった。

 だが、満月の輝く夜空には数え切れない程の三日月に似た影の群れに満ち、覇気に満ちたロータルの声が響き渡っていた。


[父上…ノッてるなぁ…司令部で指示を飛ばすべき人が爆撃機乗って前線へだものな…]


[おいおいカミラ、お前の父ちゃんノッてるのな!俺も気持ちは解るがよ!]


[イェレミアス中佐。第3航空隊の飛行隊長の貴方が軍務無線を私語に使うんですか?]


[なら、何時までも無線を付けっぱなしするなよ。独り言が漏れてるぞ?]


[げっ!]


["げっ"てなんだ?まぁ、無線の私語は空軍士官の悪い癖だが…必要以上にばら撒くのは"お前"の悪い癖だ。気をつけろよ"少佐殿"?]


[ぬぅう…了解、中佐殿…]


 ロータルの演説通り、年も明けようとしている年末の大空を空軍は猛進していた。プロペラ機からジェットエンジンへ移行が完了した国防空軍にとっては、遥か彼方に離れたリリアン大陸へも空中給油を往復2回程度で迎える距離であった。

 無尾翼逆ガル翼の超大型6発爆撃機と後退翼にV字型の尾翼を持つ大型4発爆撃機が無数の欠けた月や歪な十字の如く夜空を彩り進む中、その周りを編隊を組んで護衛する戦闘機の狭いコックピットで思わずカミラが呟いた。レーダーや計器のディスプレイの光に照らされる彼女の視界には、左上で轟音を上げて進む爆撃機中隊の編隊が見えていたのだった。

 無数の爆撃機が上げる轟音と無線に響く父親の演説に、カミラは敬意と気恥ずかしさを混ぜて呟いた。だが、その酸素マスクでくぐもった呟きは周りの無線に流れ込み、聞いていたイェレミアスが笑い半分で話しかながら文句を付けるカミラへ指導した。

 その指導の前にはカミラも言い返す言葉なく唸ると、固いコックピットシートに寄りかかりながら下方を警戒するのだった。


[おいおい、第3飛行隊よ!隊長殿がこんなんで大丈夫かよ?]


[カミラ隊長は十二分に素晴らしいと思います!]


[何だ新米少尉殿?気の強い女が好みか!なら爆撃機乗りのゲッツをなんとかしないとな!コイツと…]


[イェレミアス!]


[第2、第3飛行隊、私語を慎め作戦行動中だぞ!まったく…空軍士官の無線の使い方ときたら…]


[すっ、すみませんでした…ガランド閣下…]


 カミラの態度に調子を良くしたイェレミアスは、更に無線で彼女の第3飛行隊の面々に茶化す言葉を掛けた。その言葉にカミラの部下の面々は言葉に詰まっていたが、飛行隊から若い声がイェレミアスに対して反論すると、彼もそれをすぐに茶化しカミラが怒鳴るのだった。

 そんな戦闘機乗り達の無駄話に、後退翼下部にミサイルをこれでもかと装備し、水平尾翼に円形のジェットエンジンを持つ戦闘機が彼等の前方上方からロールを掛けつつ舞い降りてきたのだった。編隊の前を同高度で飛行する機体から送られるガランドの声は渋めの老人の声であったが、叱りつける声には若者に負けない覇気がありカミラ達はただ謝罪するのだった。


「お父…元帥閣下、無線で第111戦闘航空団が無断で無線を使っております。如何なさいますか?」


「今のところは警戒機の定時報告もある。無線妨害も電探妨害もないのだ。戦闘用意まであと5分程の間くらいは多めに見てやれ、ズザネ少佐」


「了解しました…元帥、第1と第2降下猟兵師団は大丈夫でしょうか?」


「クラリッサが心配か、ズザネ?心配するな、全員無事で降下した。アネルマ殿とカーリ殿も無事でな。ここで我らが戦果を上げれば、彼等のスオミ族の後退誘導も上手く行く」


 カミラやイェレミアス、ガランド達の声が響く無線を前に、飛行服を纏い無線を聞くズザネが狭い爆撃機内の中でロータルへ報告した。その言い方は呆れと小馬鹿にする様なものであったが、機長席に座るロータルの言葉はこれから敵地へと大編隊を率いて爆撃をしようと言うには平静なものだった。

 自信のあるロータルの言葉に、機体内の搭乗員全員が薄っすらと笑みを浮かべながら彼の指示にうなずいた。その中でズザネがロータルへ言葉を濁しながら姉の無事を心配すると、彼は再び自信のある言葉で返したのだった。


「何より、第1から第4航空艦隊を総動員しての先鋒なのだ。失敗は…」


[編隊長機、こちらA(アントン)-12。敵首都を確認。全機攻撃用意。繰り返すフィントルラント精霊国首都、エスペレンキを確認。全機攻撃用意せよ!]


[A-12、こちらA-1。了解した。全機!眼下を見よ!]


 ズザネへの言葉を付足そうとしたロータルだったが、彼の無線に唐突に声が響いた。その声は興奮とそれを抑えようとする冷静さの混ざる複雑な響きをしていたが、その内容には操縦を行うロータルや副操縦士も慌てて機体下方を確認するほどだった。


「閣下…本当に…」


「来たぞ…敵の灯りだ…」


「あれが…敵の首都…」


「待ちに待った時だ!」


 コックピットから広がる下方の景色には、見慣れてきた雪原と森林の中から大きな街の明かりがぼんやりと浮かんで来たのだった。レンガ造りの建物が多い光景こそ帝国の地方都市に似ていたが、背の低い建物の比率が異様に多い事が魔族の彼等にはすぐに気付けたのだった。

 その光景を前に副操縦士の男は酸素マスクを外して呟き、ロータルさえも興奮に震える声を出し叫んだのだった。


「あの異様に背の高い建物が話の精霊城と言うヤツか…」


「編隊航路良し、高度7000mです」


「電探の反応無し。迎撃機も上がってきません。対空ラケーテ(ミサイル)の反応さえない…」


「ふぅ…報告通りか…ならば問題ない!全機、攻撃用意!」


 計器を確認する搭乗員達の報告や無線に飛び交う報告の確認を聞いたロータルは、軽く息を吐くと意を決して命令を叫ぶのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔族の逆襲開始ですね。ワクワクします!
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