第5幕-4
趣味で書いてるので、温かい目で見てね。
「Todella ... Olen sellainen puhe ...《本当に...私なんかがこんな演説なんて…》」
「Se on okei. Mikä on prinsessani.《大丈夫ですよ。私の姫様ですもの》」
「Kyllä, se on totta. Okei, tee vain.《そうね、そうだよね。わかった、やるだけやってみる》」
「Koska olet parempi kuin luulet, ole varma. Onko sinulla käsikirjoitus oikein? Eikö ole hyvä tehdä jotain musikaalin kaltaista?《貴女は自分が思ってるより優秀なんですから、自信を持って。原稿はちゃんと持ってますか?ミュージカルみたいな事をやったら駄目ですよ?》」
「Muistan käsikirjoituksia enkä tee musikaaleja! Kaari, se on kunnossa, joten älä huoli.《原稿は覚えてるしミュージカルなんてやらない!カーリ、大丈夫だから安心して》」
段上へと上がりアポロニアの元へと向かうアネルマは神妙な面持ちで重い足を進めていた。
アネルマ達は事前にアポロニアと面会しており、誕生日祝賀会の出席を面と向かって本人から要請されていた。その際に"祝辞を読む可能性"についてが話題になり、彼女はアポロニアの言葉通りに祝辞を用意していたのだった。
「アネルマ、よく来た。カーリは変わらずに心配している様だが?」
「皇帝陛下、お誕生日おめでとうございます。帝国魔族の末席であるスオミ族を代表して…」
「構わん。そして、その言葉は段上から来賓の者にも聞こえる様に言わなければ意味があるまい。演説全体の1割しか祝辞ではだろうが、善きに計らえ」
「本当に…陛下、ありがとうございます」
「ほら、行きなさい…ぐずぐずしてると流れが悪くなる…」
席に座るアポロニアの元で跪くアネルマとカーリは、アポロニアの言葉を受けると祝の言葉を述べようとした。彼女の言葉はアポロニアによって遮られたが、2人はお互いに笑いあいながら話すのだった。
アポロニアの言葉にまだ感謝の言葉を述べようとしたアネルマだっだが、いい加減じれったくなったアポロニアの小声によって急かされるといそいそとマイクの元へと向かったのだった。
「Prinsessa, kysyn sinulta myöhemmin.《姫様、後は頼みます》」
「Jätä se minulle!《任せてよ!》」
背後のカーリが心配する中、アネルマはマイクに近づいた。段上から無数の視線が彼女に突き刺さる中、アネルマはスタンドに付けられたマイクの電源を入れようとした。
その途端、マイクとスピーカーは大きなハウリングを起こしアネルマが慄きながら後ろに仰け反った。更に、彼女は自身の足に躓き背中から勢い良く倒れそうになった。
「うげぇ…だっ、大丈夫…?」
「アマデウス殿…すみません…」
「いや、電源は入ってるから。まさか、僕がエルフを助けようとするとは…」
「アマデウス殿?」
「いや、何でもない!何でも…あっ!」
頭から盛大に床へ倒れかけるアネルマだったが、それを既の所で横から滑り込むようにアマデウスが受け止めた。だが、その姿は受け止めたというより腹でクッション代わりになったと言う方が適切な状態であった。
呻くアマデウスは何とかアネルマの無事を絞り出した声で確認すると、彼女も倒れた彼の顔を除き込むようにして答えた。心配するアネルマの表情を前に、アマデウスはエルフと似通いながらも美しい姿に思わず顔を赤くしたのだった。
しかし、心配するアネルマの言葉に答えたアマデウスは、自分の"エルフ"と言った事に気付くと彼女の頭を見た。そこには偽装として着けていた角がなく、更には会場が少しづつ騒がしくなっている事に彼は気付いたのだった。
「あっ…あ、あれは!」
「エルフだ…エルフだぁ〜!」
「警備兵!親衛隊は何してるんだ!引っ捕えよ!陛下を御守りしろ!」
「助けて!助けてくれぇ!殺されるぅ!」
「皆逃げろ!」
「何でもあるよな、これは不味いかもしれない!」
"何でもない"と言ったアマデウスも、アネルマの一軒を知らない多くの来賓者の怯えて慌てる恐慌状態には思わず声を上げた。アマデウスの頭を見る視線や言葉を前に、アネルマは全てを察して頭のカチューシャを確認しようとした。だが、自分から離れた場所へ吹き飛ばされた角を見ると、彼女は来賓者達の恐慌状態が自分の存在によるものだと確信したのだった。
「あっ…あの…皆さん…」
「軍人達は何をしてる!早く捕えろ、でないと、また虐殺されるぞ!」
「陛下を!陛下を避難させろ!近衛軍は何をやっている!」
「頼む!ここから出してくれ!まだ死にたくない、まだやり残した事が山程あるんだぁ!」
「クソっ、軍人達が動かないなら我々が捕らえるしかない!帝国臣民の意地を…こら!警備の親衛隊が何をするか!帝国議員の私達が陛下をあの化け物から守ろうと…離さんか!」
荒れ狂う会場を前に、状況をなんとかしようよ考えたアネルマはマイクに語りかけた。だが、その言葉は会場に響く騒乱に掻き消され誰も聞く事は無かった。
それどころか、多くの来賓者達はアネルマへ嘗ての記憶から敵意や恐怖を向けていた。その恐怖は帝国におけるエルフのイメージそのものであり、あまりの恐怖から叫ぶ者も居ればアポロニアの身を守ろうとアネルマを捕らえようとする者達さえ現れたのだった。
「Tehkivätkö tontut jotain niin pelottavaa? Ja miksi teemme sen?《エルフ達は、彼らがこれほどに怯えるような事をしたのか?そして、それを私達にもしようというのか?》」
「えぇい、言わんこっちゃない…エッカルト!フンボルト殿、頼む!」
「はっ、総統閣下!静まれ小僧共、静まれぇ!総統命令だぞ!国家反逆罪で捕まりたいか!」
「はいはい、皆さん落ち着いて!総統命令を無視するのは警察官として見過ごせないですよ!エッカルト程ではないにしても、それなりの罰は…」
「総統閣下がエルフを庇う…まさか!あの獣は総統閣下に魔法を掛けたのか!卑怯な化け物め!」
「何だと!総統閣下と皇帝陛下をお救いしろ!」
「飛躍しすぎでしょう、皆さん!落ち着いて!」
「フンボルト、こうなればやむを得ない!全員逮捕だ!」
会場の混乱と自身に向けられた悪感情を前にしたアネルマは、魔族に対する同情と残した同胞達に起きているであろう事態を思って苦々しく呟いた。
そして荒れる状況を静観していたカイムも、急激な悪化に対して親衛隊のエッカルトと警察官僚であるフンボルトに鎮圧の命令を出した。その命令で即座に行動を起こした二人は、部下達へ目配せだけで指示を出すと大声で警告を出しつつ場の鎮圧へと乗り出した。
だが、2人の警告が響く中でもタカ派の議員や一部来賓者は止まる事は無かった。それどころか、突飛な思考を起こした彼等と鎮圧しようとする親衛隊や警備の警官との衝突は激しさを増していくのだった。
「アネルマさん、こうなっては収拾がつかない。ここは一度会場外に避難して下さい」
「アマデウス、その必要は無い。"会場の全員へ、皇帝である私からの勅命で…"」
「…て下さい」
「アネルマ、ここは私に任せて…」
「私の話を…聞いてくださぁああぁぁぁあい!」
カイムさえも諦めの視線をアマデウスに向けると、彼はカイムに頷きアネルマを避難させようとした。呆然とする彼女の肩を掴んだアマデウスだったが、彼はアポロニアの皇帝として発した言葉に止められたのだった。
更にアポロニアは会場へマイクを使い呼びかけようとした。だが、その途中でアネルマが小声で何かを言うと彼女はこれ以上の混乱を避ける為に彼女へ声を掛けた。その一言でアネルマの我慢に限界が来ると、彼女は会場へ向けて盛大に叫ぶのだった。
「あっ…あの、静かにしていただいてありがとうございます。それでは始めます…」
女性の声質としては比較的低いアネルマの声だったが、叫ぶ彼女の声は会場全体へとよく響くのだった。
アネルマの存在によって大混乱を起こした会場だったが、混乱の元凶である彼女が突然に放った静粛を求める声は親衛隊や警察官達の静止より効果的であった。
自分の大声が反響しスピーカーをハウリングさせる程であると、アネルマも流石に恥ずかしかったのか顔を赤くしながら息を整えつつ話し始めたのだった。
「皆さん、お初にお目にかがります。私はアネルマ・ラハテーンマキ、スオミ族は長のピエリタ・ラハテーンマキと亡き妻ピルッコ・ラハテーンマキの娘です。
本日は皇帝陛下、御誕生日おめでとうございます。私、アネルマはこの日をこの帝国首都は陛下のお住いで迎えられ、そして陛下のお側で御祝いできる事に心から感謝いたします…」
語り出したアネルマは、自分の名を名乗りつつアポロニアへの祝辞を述べた。深々とお辞儀をする彼女の姿は、ダークエルフ指導者の娘であるが故に端々に品の良さが見え隠れしていた。
頭を上げたアネルマは、手に隠していた原稿を下目使いに確認しようとしたが、その内容に肩を落とすと作っていた固い表情を崩してはにかんだのだった。
「え〜…本当ならここで長々と生い立ちを話して正体を明かすつもりでしたが、長い前置きは省略します。ただ勘違いはして欲しくないので明言しますが、私はダークエルフないしスオミ族であってエルフではありません。
皆さんからすれば何が違うのかといったところでしょうが、私達とあの獣とは明確に異なる点があります。それは、皆様魔族と私の属するスオミ族を深く繋げる点でもあります。それは魔法が使えないという点であります。
その事で、私達は多くの敵から野獣や獣と揶揄されてきました。それは魔族の皆様と同じであり、多くの先祖が不当な差別と迫害に苦しんできました。その結果、祖父や父はエルフの国であるフィントルラント精霊国に対して抗議を起こし内戦へと発展しました」
アネルマは持っていた原稿を後ろに控えていたカーリに渡すと、彼女の着けていたカチューシャを取り苦笑いを浮かべた。アネルマの行動にカーリは驚きと焦りの表情を浮かべたが、彼女の苦笑いを前に頭を抱えながらも何も言わなかった。
カーリへ向けて数回頷くと、アネルマは再びマイクと会場へ向き合い説明を始めた。その口調は表情と同じく柔らかいものであった。たが、その内容は口調に反した重苦しさを強く感じさせるのだった。
「結論から言えば、戦場は一方的な虐殺で始り…無慈悲な敗北と逃走で…今も続いています。あの土地で起きた事は内戦で、帝国で起きた南北戦争とは異なり国家の樹立をした訳では無いので。
とはいえ、事実上の敗戦です。民族紛争による戦場には、この国にある戦争規定等も一切ありません。その後、私達はエルフやヒト族の軍隊から逃げる様に極北の地へと逃げました。
勿論、奴等には一太刀浴びせたのです。そのお陰で、奴等も本気で私達ダーク…スオミ族への殲滅にかかる事無く散発的な戦闘が繰り広げられるのみでした。
戦いが無いという点で言えば…平和と言えるのでしょうね。それでも、あの土地は…あの世界は、人が生きるのには難しい世界でした。白銀の大地は、私達を長い間拒むばかりでした。老いも若きも、飢えに耐え凌ぎながら生きる日々です。
それで…」
「それ、私達魔族にどう関係があるのです?"ダークエルフ"のアネルマさん?」
「ズザネ、そりゃ言い過ぎじゃないか?。まぁ、その通りだけど」
「カミラ姉さん…いえ、魔族は皆が甘すぎるんです。」
必死に笑顔を絶やさす明るく話し続けるアネルマは、拳を震わせながら言葉を紡ぎ続けた。その後ろ姿を見るカーリはただ歯を食いしばり見つめるだけだった。カーリ同様に大騒ぎしていた参列者達もアネルマの姿には、黙って聞いていた。彼女を見る彼等の瞳には、怒りや恐怖だけでなく多少なり同情が混ざり始めていた。
だが、演説の最中に上がった一声は同情や良い感情の一切ないものだった。その声の主は空軍のトゥーフロックを纏い少佐の階級章を付けた小柄な少女だった。白と黒を斑に混ぜた様な髪には小さな羽角が生え、白い肌に華奢な体と緑の瞳、眼鏡を掛けたその姿は軍人とは思えないものだった。だが、階級章の下地の色であるカーマインレッドが彼女を参謀将校であると明確に表していたのだった。
敵意を見せるズザネ・ツー・オイゲンの言葉に、すぐ側にいた姉のカミラが諌める言葉を掛けても彼女は曇った表情を変える事は無かった。それどころか、ズザネは段上のアネルマを指差しながら会場の全員に意見したのだった。
「事情はわかっています。魔族の様に魔法が使えないのも解りました。詰まる所は"同じ境遇なら助けてくれ"と言いたいのですね?」
「えっ…えぇ、そうです。私達スオミ族は…」
「なら!今まで何故、早期に国防戦争へ帝国側の陣営として蜂起をしなかった!エルフの国の住人として生活していたと言っていましたよね?ならば理由は簡単です、ヒト族やエルフの陣営下で戦争に加担していたからでしょう!」
「エルフに加担って…そんな事!」
「惚けても無駄ですよ。総統閣下や皇帝陛下にどうやって泣きついたかは知りませんが…」
「ズザネ、それまでだ。流石に総統閣下や皇帝陛下を引き合いに出すのはマズイだろ!」
ズザネの質問に対して言葉に詰まりながらも、アネルマは彼女へ答えた。だが、その返答を聞いた途端にズザネは堰を切った様にアネルマへの批判を始めたのだった。
その批判は周りの政治家や反出兵派の将校からの同意の雰囲気を吹き出させるとアネルマに面食らわせた。それでも食い下がろうとする彼女へズザネが更に付け足そうとした所で、発言の内容に慌てたカミラが睨みつける妹を焦る表情で止めた。姉の行動に怒りから冷静さを取り戻したズザネは、軽く息を整えつつ遠巻きから叱る様に睨みつける父親であるロータルや段上から睨むアポロニア、同情の視線を向けるカイムを前に黙るのだった。
「もっ…申し訳ありません…」
「申し訳ないな、アネルマ殿!娘は幾分、人より沸点が高いんだがどうもどこで爆発するか解りにくいものでな。続けてくれたまえ」
会場にズザネの謝罪と酔い潰れかけたロジーネを抱えるロータルの言葉が響くと、批判に同意の雰囲気を出し野次を投げようとした出席者全員も黙るしかなかった。
「たっ…確かに、私達スオミ族は魔族の戦争に参戦する事はありませんでした。ですが、嘗ての戦争での蜂起は私達の全滅を意味しました。
考えてもみてください、何故エルフは第3次国防戦争にのみ参加したのかを。私達の先祖とて何もしなかった訳では無かったのです。少なくとも労働放棄による戦争参加を妨害しました。あのエルフ達は肉食はあまりしなかったので、食糧は農奴とされていた先祖達に依存していました。更に労働もスオミ族にかなりの比率で押し付けていましたから。
魔族の存在は、たとえ負け戦ばかりでも私達の希望だったんです。魔法の使えない種ぞ…人種でも、差別や暴力に立ち向かえると!
ですが…それも第3次までが限界でした。第3次国防戦争の労働放棄で…虐殺が起こりました。それがキッカケとなり、スオミでの決起の気運が高まり…小さな乱闘騒ぎが大きな革命を目覚めさせました。
第4次と第5次国防戦争で、スオミ族はフィントルラント精霊国の首都であるエスペレンキで一斉蜂起し、国王であるサウリ・ヨウコ・ウーシパイッカを討とうとしました。結果は最初に言った通りの一方的な虐殺と追撃になりましたが…
怪しい事は百も承知です。確実な証拠を見せろと言われても、持ってきた書類を見せる事しか出来ません。私や父上の預かり知らぬ所で密約が無いとも…限りません…
ですが!私は危機に瀕する国を見ました。飢餓に耐える人々も、あの…化け物達の暴力の犠牲も見てきました!私はただ、同胞を差別も不当な迫害のない平和な世界へ救いたいだけなんです!
手放しで信用できないと言うなら、私を対価として出しましょう。スオミ族も憎いと言うなら、その憎しみは私一人だけに向けて下さい。手足をもいで市中引き回しでも、縛り上げて石を投げ付けるでも、どんな罰も受けましょう…
ですから!…」
「おい嬢ちゃん!そいつは本気で言ってんのか?」
「えっと…貴方は?」
「さっきの癇癪起こしてたズザネ嬢と同じ空軍のイェレミアス・ハッシャー、階級は中佐だ。んな事はどうでもいいんだよ、さっきの話だ。嬢ちゃん1人でさっきっからデカイ事言ってるが、本気かよ?いくら種族だ何だと言っても、見ず知らずの会った事もない赤の他人だらけの30万に自分の命張るのか?」
「おっ…おかしいんですか…誰かの為に命を賭けるのが」
ズザネの避難に対して言い訳の様な発言をしたアネルマだったが、その悲痛な言葉や身振りには演技と思えない程の悲痛さに溢れていた。彼女の演説は言えない悲痛な叫びは、批判する発言を使用としたズザネさえ困惑させるものだった。
その中で、再びアネルマの演説を中断させる声が上がったのだった。その声はサメの頭を持つ魚人の男であり、人の頭にサメの顔面を付けたような独特な頭の男だったイェレミアス・ハッシャーと名乗った空軍中佐は呆れた様な口調で手を上げると、段上で熱くなるアネルマへと声をかけたのだった。
ハッシャーの言葉で冷静さを取り戻し始めたアネルマは、更に彼の続けた言葉で自分の話た事の重大さに気が付いた。とはいえ、引っ込みが付かなくなったアネルマは顔を緊張と今後の自分の扱いに恐怖して顔を曇らせながら啖呵を切るのだった。
「なる程な。俺の爺さんは漁師だったが、"たとえ自分の身が危険になるとしても、助けを求める船は何としても救え"ってヤツだな」
「まったく…国防軍は黙って話を聞けないのかアネルマ、もう良い。勅命だ、下がれ」
「えっ…はい…」
言い切ったアネルマにハッシャーは鼻先を数回掻くと天井を仰ぎながら呟いた。そんな彼の言葉で話の進まなさに痺れを切らしたアポロニアの一声でアネルマの出番は切られてしまった。
「聴いての通りである。まぁ、少なからず話が遮られたり突発的な騒乱も起きた。差し当たって、皇帝の国防軍への出動要請のための帝国緊急議会を今月27日に開催する事、そして私自らが議題を呈する事を命ずる。これは勅命である!」
混乱と困惑に満ちた式典はアネルマの登場により乱れ、アポロニアの行動で慌ただしくなり、収拾が付かなくなりながら彼女の一喝で終わった。
「"来賓者の騒ぎと空軍士官たちの野次を黙らせなかった"って事は、野次だ何だは全部仕込んでたものなのか?」
「予想以上に険悪になって混乱し、予想より遥かに早く幕引きできた。ロジーネさんには泥酔させて悪いと思うけど…陸軍は本当にヒト族嫌いが多すぎるから、こうして丸め込むしかなかったの」
「自作自演か…自ら仕込んで荒れ狂わせて、最後に勅命で締める。これで誰にも意見されずに勅命だらけの茶番劇特別議会か?」
「ならばこの騒動だって茶番劇でしょう?半分以上の出席者がアネルマの事を知ってて、この結果なら全てが八百長でしょうよ」
祝賀ムードの消え去ったりさながら通夜のような会場で、カイムがアポロニアへひっそりと語り掛けた。その言葉に苦い表情のアポロニアは不快感の混ざる口調で呟いた。
慌ただしく去った24日の3日後、緊急開催された議会によって帝国軍の出兵が可決され皇帝の勅命が統帥権を有するカイムに下されたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
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