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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
226/325

幕間

趣味で書いてるので温かい目で見てね。

 帝国歴2444年12月20日の早朝、ダークエルフ特使であるアネルマ・ラハテーンマキは不安と絶望の中にいた。


「朝の情報番組にも、ダークエルフとかリリアン大陸の話が1つもない…やはり見捨てられたんだ…私達はこのままここで…」


「姫様、何を言いますか!寝起きで気分が落ちるは解りますが、今は遥か彼方の同胞達のためにも…」


「その同胞が今…今、戦火の中で戦ってるのに…要請等、ヒト族なら出してニ三日で決まるんでしょう?それなのに、もう10日も経っている」


「今は耐えましょう。姫様も言っていたではないですか"この国はどこの国とも違う"と」


 紆余曲折を経て帝国に移民受け入れを求めたアネルマとカーリがホテルに事実上軟禁されて9日が経とうとしていた。その間、彼女達が出来る事はテレビを見る事と食事をする事や突然会談を要請された際の原稿を書きながら覚える事だけであった。

 カイムとの会談後は、角の付いた仮装用カチューシャと銀に装飾された腕輪を着けてならホテル内の移動を許可されていた。だが、カチューシャや腕輪には発信器が取り付けられており、国防騎士達の常駐を含めれば軟禁範囲が広がっただけに過ぎなかった。


「えぇ、そうね。小さな箱…携帯電話で何時でも何処でも遥か遠くと連絡出来て、TVで正確な情報を得られる。車に電車、飛行機が行き交い機械がそれを統制する…ここはお伽話の世界なのは解ってる…それでも…」


「大丈夫ですよ。貴女のお父様も兄上様も、皆強者ばかりなのです。二三ヶ月遅れた所で無事ですとも!それに、このレストランで食事が取れて売店や色々な施設に行けるだけでも伸展ですよ」


「そう思いたいけど…何時までも皇帝との拝謁も叶わないし…」


「悪く考えては駄目ですよ、姫様!今の私達は誰もが出来ないと思っていた事をやってのけているのですから!」


 暗い顔でバイキングから取ってきたソーセージやオムレツをフォークで突くアネルマの言葉に、頬や口周りにケチャップを付けたカーリが励ました。アネルマより大人びた見た目のカーリの見せる子供っぽい仕草や明るく前向きな口調、レストランに流れる明るいタンゴの様な曲に陰の気を払われたアネルマは、ただ笑顔を見せて料理を頬張るのだった。


「アネルマさん、カーリさん。おはようございます。と言っても、もう10時ですけどね」


「ティアナさん…まだ居たんですか?お仕事の方は大丈夫なんです?」


「嫌だな、カーリさん。これが私の仕事ですよ〜。ガルツの中でもフィント…スオミ語を喋れる人は少ないんですよ。適材適所って奴ですね。相手の意思をきちんと理解出来て、尚かつ護衛も出来る」


「はぁ…そうですか」


 母国語で話すアネルマとカーリは周りから目立たない様に小声で話していた。それは不用意に目立たないためであり、魔族にエルフが殺したい程憎い存在であると理解した上での配慮であった。

 それを無視するように話しかけてきた私服姿のティアナは堂々とスオミ語で話しかけてきた。

 白いニットに灰色のジャケット、足のラインがはっきり解るスキニージーンズに高いヒールのブーツと言う格好のティアナは、小柄な見た目に反し大人びたカジュアルな格好であった。サングラスまでかけた彼女の姿は明らかに護衛に不向きなものであり、ティアナの"護衛"との言葉にアネルマは疑念を込めて相槌を打つのだった。


「そして、護衛以外にも"伝言や伝達"も私の役目なんですよ」


「その言い方だと、何か帝国政府から連絡があったんですか!」


「えぇ、そうです。それにあたって、アネルマさんとカーリさん。kleider…いえ、ドレスって持ってますよね?会談の時のドレスは少しだけかっちりし過ぎてるので23日には良いんですけど、24日にはもう少し華やかな物が有るとありがたいんですが…」


「華やかなドレス…ですか?」


「22日とか24日とかって…ティアナさん、どういう事です?」


 アネルマ達と同様に食事を取るティアナが2人に一部言葉を強調して役職の説明をした。その強調に何かを察したアネルマだっが、ティアナから言われる言葉の内容には面くらい、カーリもドレスについて尋ねるカーリの事を理解できないといった表情を浮かべていた。


「それが…デスね…24日の件は総統からの命令ですので…その…まぁ、親衛隊所属の私としては甚だ不服なんですが、勅命ですしね」


「あの…要領を得ないんですが?」


「はっきりと言ってください!」


 言葉を選びながら話を濁すティアナの表情は明確に何かあった事を表していた。彼女のはっきりしない態度に、アネルマは飽くまで冷静に尋ねだが、カーリは若干イラつきながら、彼女へテーブル越しに顔を寄せた。

 2人の視線に意を決したティアナは、軽く咳払いすると姿勢を正し軍人の表情に変えた。


「2日後の12月22日の12:00に、皇帝陛下から会食を兼ねた会談の申込みがありました。更には、24日の皇帝誕生日の式典や祝賀会への参加も…その為、御二人には私と数名の同行付きで外出許可が出ています。さしあたって、本日中に祝賀会用のドレスの採寸等を行います。よろしいですね?」


 突然の報告に、アネルマとカーリは呆然とした。ただ、訳も解らず彼女達は静かに頷くのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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