表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
221/325

幕間

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

 首都のデルンで最も大きな建物の1つに、シュトラッサー城がある。この城は大陸内の城の中でも最も敷地面積が広く、絵画などで見かける城のイメージ通りの形でもある事から、デルンの観光名所の1つでもあった。だが、シュトラッサー城が観光名所となる要因は外観やその敷地面積では無く、帝国の象徴にして主権者である皇帝アポロニアが住んでいるという事が最大の理由であった。

 更に12月24日と12月25日は先代皇帝とアポロニアの誕生日が続き年末のイベントの為に、城は夜中でもきらびやかに装飾されていた。だが、城の中は至って平常運転であり、誕生日を10日後に控えているにも関わらずアポロニアは書類仕事に追われていた。


「全く…本当に自分が情けないというか…カイムの奴がこの5倍や6倍の書類を片づけてるのに、まだ終わらないんだもの。アイツが独り言多くなるのも解るな…」


「皇帝陛下…ご報告があります。入室してもよろしいでしょうか?」


「はぁ…構わない。入りなさいな」


「それでは…失礼します」


 広いながらも装飾品が少ない執務室で、アポロニアはただ一人机に向かい積まれた書類と格闘していた。昼間に渡された年末の書類は、全てカイムやその他大臣が無数の書類を纏めた報告書であった。

 独り言を呟きつつ書類の確認作業を行っていたアポロニアは扉の向こうから掛けられたブリギッタの声で作業を止めると、掛けていた眼鏡を外し彼女へ入室するよう声をかけたのだった。


「陛下、まだ執務中でしたか?」


「そうよ…本当に遅いでしょ?これだから、カイムに負担がかかってギラの奴が脱走なんて事を企てるんでしょうね?」


「本来は帝国の主権者である皇帝陛下が、この様な雑務を行う必要などありません。私達に任せれば…」


 席に座るアポロニアは、30年の間でミディアムヘアだった銀髪が伸び、シュシュで纏められていたが外せば地面につくと思える程になっていた。額の角も髪同様に伸びており、少女の様な見た目だった彼女も立派に女性と言える様な美人へと成長していた。

 扉を開けて執務室へ入室したブリギッタは、執務机に座って書類と向き合い、原稿用紙を額から伸びる一角に突き刺すアポロニアの姿を見ると、成長しても癖の変わらない彼女へ優しく声をかけた。そんなブリギッタの言葉に、アポロニアはわざとらしく不貞腐れた態度を取りつつ、昔より角に刺さる枚数の多くなった原稿用紙へ軽く息を吹き付けた。

 揺れ動く原稿用紙の隙間から見えるブリギッタも30年の間に少しだけ身長が伸びていた。外見の変化が比較的少ない彼女であったが、服装を上半身を礼服に変え、下半身を陸軍補助隊の女性用制服を改造したスカートを着用していた。礼服も女性らしいクビレを少しだけ強調する様に改造されており、男装の様な格好をしていた彼女は劇的に変化していた。


「組織も国家も、最上から腐敗して崩れるものよ。ならばこそ、私がきちんと成すべき事をしていれば帝国の内部崩壊はありえない。本来ならば、カイムにさせてる政務も私が出来ればいいんだけどね…」


「陛下は立派に役目を果たしています…」


「まぁ、ありがたく受け取っておくわ」


 ブリギッタの言葉に持論を述べつつ自分の不甲斐なさを嘆くアポロニアだったが、励ましの言葉を受けると角に刺した原稿用紙を引き抜きつつはにかみながら立ち上がった。


「それで?帝国国防騎士になって出世した友人が、カフェ(コーヒー)を飲むためだけに訪ねてきた訳ではないのでしょう?」


「あっ…はい。アポロニア、これは国防騎士の任務状態からの推測でしかないのですが…」


「しっ、書類はいいの!後で目を通すから、口頭で説明してもらえる?」


 執務室に備え付けられた給湯設備へ向かい、置かれたコーヒーミルへ豆を入れるアポロニアは流れるように電気ケトルをつけドリップポットと共に3点を来客用テーブルまで運んできた。そんな彼女を手伝おうとしたブリギッタだったが、アポロニアの言葉を受けると彼女はかしこまった態度を少しだけ緩めて小脇に持っていた封筒から書類を取り出そうとした。

 その書類を見た途端、アポロニアは苦い表情を浮かべながらソファに座りコーヒーミルを回しながら渋い口調で呟いた。


「そっ、そうですか。では、報告しますね。国防騎士が多くて26人、現在15人が帝国ホテルに警備任務で配属されています。更には親衛隊の24時間体制の警備も付いてです。それ程の大人数を警備に付ける様な…」


「要人は私とカイムくらい…しかも親衛隊が警備に付くとなるとカイムが関係している訳ねぇ…」


「総統の悪巧み…はないでしょうが、親衛隊や国防軍に何か問題が起きているのかと」


「"私に報告したくない誰か"が来て、対応に困ってる訳か…当然ながら皇帝として聞かなくちゃならないし、誕生日も近いから丁度いいかな?」


 ブリギッタが神妙な顔を浮かべて報告をする中、アポロニアはコーヒーミルから豆の砕ける音を立てつついたずらっぽく笑った。

読んでいただきありがとうございます。

誤字や文のおかしな所ありましたら、報告をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ