第3幕-1
趣味で書いてるので、温かい目で見てね。
「こちらが、国土交通省からの高速道路の新築案とゾースター空港の建設報告書。こちらが農林水産省からの森林調査報告書と水産物保護調査の報告書。そして、文部科学省からの国民就学率の報告書。並びに経済産業省の国民労働者の年齢別統計です」
「なぁ、ギラ?」
「こちらが、法務省からの採用情報の確認書類。そして…こちらが財務省の予算案です」
「経済産業省って言った?」
「"財務省の予算案"です。大丈夫ですか、総統?」
朝日が差し込み振り子時計が時を刻む音を響かせる中、カイムは執務机に肘を載せ頭を抱えていた。椅子に深く腰掛けるその顔は疲れから窶れており、目の下には薄っすらとクマができていた。
そんなカイムに、同じく疲れと彼への同情による複雑な心境をそのまま表情に表すギラは、書類を運び込む部下達にそれらを山の様に積み上げさせながら説明をした。
その説明を前にカイムは頭を抱えたまま呟いたが、続くギラの説明を前に彼は絞り出す様な声で付け加えた。加えられた言葉には疲れの色が見え、ギラも不安げに執務机へ俯くカイムの表情を覗き込もうとした。
「おかしいだろ…これは全部アポロニアに回されるべきものだろ!何時から私は雑用担当になった!」
「その皇帝陛下が30年前にした"終戦宣言"と、28年前に議会で"総統大権法"が可決した時ですよ。もう何年同じ事を言うんです?いい加減飽きましたよ」
「私は親衛隊と国防軍の総統だった筈だ…戦後の自由が無くなり、魔族の総統は性に合わないよ…」
「もう仕事の多さ以外は対して気にしてないでしょう?これが終れば後は、それこそ本当の雑務だけですから」
「今年の12月上旬でこの書類の山積み…年末も憂鬱だな。自由の1つあってもいいと思わんか?」
書類を運び終わったギラの部下達が親衛隊敬礼と共に去ってゆく中、カイムは顔を上げて自分の顔を覗きこもうとするギラの角の先を左手で摘みつつ、彼らへ礼の意味を込めて手を振った。
自分を適当にあしらい去り行く部下達を優先するするカイムに、ギラは軽く頬を膨らませると不貞腐れる様に姿勢を正した。
執務机に置ききれず応接机にまで山積みにされた書類へ近づくギラは、軽く床を蹴るような足取りであった。そんな彼女の後を追うように立ち上がったカイムは、応接机の前で立ち止まるギラの横に立つと不安定な心境を吐露した。
ギラがカイムへ体を預け何気ない口調で一言づつ話すと、2人しかいない執務室には暫くの間沈黙が流れた。
「嘆いても仕方ない…やるか!」
「何ならさっきの部下達にも協力させますか?長い髪の子、好みですものねぇ?泣きぼくろが魅力的でしたか?」
「それ、さっきのオオカミ系獣人の中尉の事か?さっきのはただ労いの挨拶をしただけだ。下手な事すると、"親衛隊全ての女に睨みを効かせる鬼の秘書官"に何されるか」
「"重い女"と思ってるんですか?何なら、泣きぼくろ付けますか?」
「私が独占欲が強いの知ってるだろ?それに泣きぼくろ顔に書き込んでどうする?それとなんだ…"テオバルト教からの宗教法人税の納税書類"?こんなのまで…」
「それですか?私が財務省に持って行くのが面倒でしたので、今年からここに直接送る事にしたんです!」
寄りかかるギラの肩を掴み立たせたカイムは気の抜けた口調で彼女と話すと山積みの書類から適当に一束の書類を取った。
その内容に思わず書類の題を読み上げたカイムは、横から覗き込もうとするギラに書類を見せた。
眉をひそめて訝しむ2人だったが、背後から声が掛けられると2人は肩を落としてゆっくりと振り返った。
「アーデルハイト…また勝手に軍の施設…いや、軍の施設も今や昔。政府の施設ですよ。政教分離ですよ」
「あら、ここにいるのは事務として派遣された、ただの公務員アーデルハイトですよ。今の教皇マリウス・ゲーテ様ですもの。仮に私が教皇だとしても、神官ならば神話の英雄の再来に仕えるのが仕事ですよ」
「教皇を教皇庁から働きに出すなんて…テオバルト教上層部は何を考えて…」
「私が最上位権限です」
振り返った2人の前には、何時の間にか執務室に入っていた教皇アーデルハイトの姿があった。格好は教皇の物ではなく紺と灰のボーダーの肩出しニットに黒いズボンであり、長い銀髪をピンクのシュシュで纏めていた。
比較的動きやすい格好ではあるが、片手にコーヒーポットを持ち、腰に手を当て胸を張るアーテルバイトの公務員にしてほ気品に溢れていた。そんな彼女を前に、カイムは脱力しアーデルハイトへ反論する事を止めた。
「教皇猊下!カイムは英雄ではなく総統ですよ!いい加減にしてください!大体なんです、その格好は!公務員ならビジネススーツでしょ!」
「あら、ギラさん。事務公務員に服装規定はありませんよ?総統秘書ともあろう方が知らないなんて…辞職ものですよ?」
「胸を強調して肩を出す公務員が居るものですか!発情狼!」
「なっ…不敬ですよ、教皇に対してそこまで言いますか!恩義を恋や愛と勘違いしている小娘にあれこれ言われたくありません!」
「なっ、何だと!それを言うなら、政略を背後に行動する貴方はどうなんです!それに、貴女が議会に余計な口添えをしたせいで、総統がどれだけ書類と格闘しているか…正直、終戦から30年経っても書類の量が一向に減らないのには、私も驚きますよ!どうしてくれるんですか!」
「それは…悪いと思うけれど…でも、あのアポロニアがきちんと書類仕事が出来ると思う?戦後3年で確信たもの、あの子には"細か過ぎるかも政務"は無理。適当に署名して終わりでしょ?私は正しい事をした!それに山積みの書類は発展の証です!」
カイムの視線を受けて、アーデルハイトは微笑むとモデルの如く胸を貼り腰にクビレをもたせて立った。
その立ち姿にカイムが少し頬を赤くすると、怒りの炎を瞳に宿したギラが2人の間に割って入った。その事にアーデルハイドが一言言う前にギラが怒りの言葉を述べ、教皇と秘書官の口論は噴火の如く激しくなっていった。
「全く…何十年もよく言い合いができるな。和解とか…」
「「出来ません!」」
「喧嘩するほど…おっと内線だ」
止まらぬ言い合いにカイムがボヤきながら執務室に戻ると、息のあった反論が彼の背中に突き刺さった。
その反論に呆れるカイムの耳に、机の電話の内線ランプが光り呼び鈴が鳴った。その音やカイムの身振りでギラとアーデルハイドが静かになると、彼は受話器を取り耳に当てた。
「こちら、総統執務室」
[あっ、えっ!総統閣下!総統万歳]
「いや、畏まらんでもいい。ギラ秘書官殿は立て込んでてな。私が直接出たんだよ。要件は何だい?」
[はい、シェプフングの3博士が面会を求めています。本日会合の予定は…あっ、ちょっと!]
[総統殿!お久しぶりですな!きっと朝食もまだだと思いまして、ヨハン・ストラッセが堅苦しい場所から救いに来ましたぞ!]
[バカ言え、研究の報告に来ただけだろ!総統、例の件についてヨハン・シュトラッセ、アルノルト・ディートリッヒ、並びにヴィクター・シャーブスが報告に来ました]
[そうだな…報告に来ましたな…]
カイム本人が電話に出た事で焦る若い親衛隊員の声に、カイムは戯ける様に答えた。その口調に落ち着きを取り戻した受話器の向こうだったが、要件を伝える途中で若い隊員の声が遠ざかった。
すると、受話器から老人の快活な声が響き、3人の老人の騒がしい会話が流れてくるのだった。
「あぁ、例の件についてですか。わりました、直ぐ通させますよ」
[いつも通り、警備担当付きでしょう?ここの警備は相変わらず厳重ですな]
「総統が逃走しないためですよ」
[は〜っはっはっは!なら、28年前の様な騒ぎになる前に、そちらへ向かいますよ]
[何!また総統は辞職しようと…]
事情を理解したカイムが受話器に話すと、彼同様に戯けた口調で返答が聞こえた。その内容に苦笑いを浮かべるカイムは昔を思い出しながら軽口を言った。
その軽口の内容に反応する老人達の声が受話器を置く音と共に途切れると、カイムはまるで顔に付いた苦笑いを取るように顔を片手で撫でた。
「カイムさん、今のは冗談で?」
「教皇…私も、28年間の間、これだけの警備に権力を押し付けられれば諦めますよ。おいギラ、本気にするなよ?黙って見つめないでくれよ?」
「フフフ…」
電話の内容に焦りや不安に満ちた表情を浮かべるアーデルハイドは、執務机のカイムへにじり寄るとカイムに尋ねた。
その視線から逃れるように顔を背けたカイムはため息混じりに答えたが、ジッと黙って見つめるギラの視線に気付くと彼女へ歩み寄った。
「次こそは…上手くやってみせますよ?」
「不敵に笑って不穏な事を言うなよ。後の教皇猊下が真に受けるだろ?ちょっと、猊下も慌てて携帯を取らない」
「だって…昔、本当にやったでしょう?嫌でも怪しく思えますよ」
「冗談はさておき、電話に出れなかった事は謝罪します。それで、内容は一体何だったんです?」
「その内容はすぐ来るよ」
ギラの前に立ったカイムは、人差し指を立てて彼女に注意をしようとした。だが、口を開いたカイムより先にギラが話し出すと、その内容に慌てた彼が注意しつつ背後のアーデルハイドへ振り向いた。
そこにはいそいそとズボンのポケットに入れられた携帯を取り出し、ロック画面をスライドさせて解除しようとするアーデルハイトの姿があった。
そのアーデルハイトの姿に肩をすくめて指摘したカイムは、彼女の言い分に天井を仰いで肩を揉んだ。
そんなカイムとアーデルハイトのやり取りを前に不満と嫉妬のオーラを広げるギラの謝罪と疑問の言葉に、カイムは執務室の扉を指差した。
「総統、お久しぶりですな!相変わらず両手に花で羨ましい限りですな!」
「何を言うとる。それで一時期だが、皇帝と教皇の大喧嘩で国家を揺るがしただろうに…すみませんな、総統。この馬鹿ヨハンの発言を許して頂きたい」
「そうだな…許して頂きたいな…」
「もちろん、もちろんですよ。帝国復興の影の立役者に何されたって私は許しますよ。南部の各地から収集された古文書の失われた様々な技術を復活させた元浮浪者の歴史家ヨハン・ストラッセに発明家アルノルト・ディートリッヒ、天才科学者ヴィクター・シャーブスの3博士」
カイムが扉を指差した数秒後、中折れ帽子を被り質の良いスーツに身を包んだゴブリンと犬種の獣人、悪魔の老人の3人が扉を勢い良く開けて入ってきた。シワや体毛に白髪の混ざる3人は、カイムの姿を見るとゴブリンのヨハンから順に帽子を脱いで頭を下げた。
挨拶しながらも話す3人に、カイムは握手をして書類を受け取りながら挨拶に答えた。そのカイムの言葉に、世ははほぼ剥げた頭を掻きながら横に並ぶ残り2人を見た。彼等はヨハンが薄緑の顔に浮かべる苦笑いに肩をすくめた。
「まぁ、復活させただけですがな」
「何を言う、1度は失われた技術なんだ。わし等復活させたわし等の力だろう?いや、魔族の技術か?」
「そうだな…魔族の技術だな…」
「ヴィクター、お前もたまにはもっと何か言わんか!ヨハンもこいつに何か言ってやれ!」
「まぁまぁ…しかし本当に、ザクセン=ラウエンブルク卿があれだけの古い書物だ歴史書を収集していたとは…シェプフングの人員拡大の為の研究者まで集めていたのに。本当に彼こそ真の愛国者ですよ」
3博士の言葉に、カイムは苦笑いを浮かべる3人の気まずい雰囲気を紛らわす為にその場で思い付いた話題を口にした。
だが、その場しのぎにしては余りにも暗い話題であり、ギラのフォローも間に合わず気まずい空気が執務室に広がり始めた。
「あの…総統…」
「そう、人材と言えば!さっきから知り合いが扉の前で1人放置されているんですが…」
「おぉ、そうだったわいな。忘れとったわ」
「おいおい!"忘れとった"はかわいそうだろ!シェプフングの誇る12人目の…総統やギラ嬢を合わせれば14人目の強化施術適合者だぞ!」
「そうだな…適合者だな…」
部屋の空気の変化に頭を悩ませたカイムだったが、困った彼に執務室の入り口から声がかけられた。
そこには頭にウサギの様な長い耳を生やし、長いくカールの掛かった後れ毛と肩で切り揃えられた白い髪、眠たそうなタレ目の比較的小柄な女が立っていた。
ウサギの女はカイムに声をかけられると、長い耳を垂れさせ赤いタレ目を嬉しそうに細めつつ親衛隊敬礼をした。そんな彼女に3博士は話がからカイムと共に手招きするとウサギの女は入室してカイムの前まで歩み寄った。
「ドロテーア・シュヴェンクフェルト親衛隊特佐…強化施術と帝国国防騎士の訓練を終えて帰還しました…」
「おかえり、ドロテーア。ゴスプスヴェーデンはどうだった?」
「あまり…変わりませんでした…デルンの斜め下の都市ですし…ここが1番です…」
「いい所だと思うがなぁ…内地で海は無いが、山と小川が沢山あって涼しい、食事も美味い。広い草原だとか河原で、趣味のハーモニカも自由に吹けるだろ?」
「それ…わざと言ってます?…」
「こんな監獄のどこがいいんだよ…」
「良いんです…ここが…」
カイムの目の前で姿勢を正すと、ドロテーアは眠たそうな目を精一杯に開き、垂れた耳を立たせると改めて親衛隊敬礼と共に帰還の報告を彼にした。そんな彼女の小動物の様な身振りや舌足らずの言葉に、気付くとカイムはドロテーアを頭を撫でていた。撫でられるドロテーアも嫌がる素振りを見せず、立っていた耳を垂れさせた。
カイムは優秀な部下であるドロテーアと軽く会話をするつもりだったが、予想以上の返答に言葉を詰まらせると彼女から視線を顔を反らした。
だが、その反らした先には嫉妬のドス黒いオーラを纏うギラの姿があった。
「ゔんっ…んん…シェプフングから計画書が届き、志願したヴァレンティーネを必死に止めて、強行した彼女に私やギラも付き合ったが…超能力開発紛いの怪しい技術の被験者がこれで30人か」
「そうですね。それどころか私より先に実験に参加するんですよ。総統自らですよ。それで何かあって死んでたら、どうするおつもりだったんですか?」
「ギラさん、嫉妬で言葉の抑揚が無くなってますよ。それより、カイムさん!あの時は私ほんとうに焦ったんですからね!今でも忘れませんよ。怪しい手術台に固定されて、赤とか青に黄色や緑で変な怪しい注射を全身に打たれる貴方の姿…もし死んてしまったって思ったら…」
「まぁ、実際生きてますし。見た目も全く変わらないで念力みたいな能力とか、教皇猊下の未来予知よりは劣りますが十数秒先の予知とか?色々出来る様になりましたし。本当にどっかの"フォース"みたいだ…」
「カイムさん、フォースって?」
「いや、昔に聞いたおとぎ話に似た力があったって話さ…おっと特佐、すまないな女性にだいぶ失礼な事をした」
ギラの嫉妬のオーラを受けたカイムは、そのオーラを払う様に咳払いすると肩をすくめて昔を思い出した。彼の言葉に嫉妬のオーラを解かないギラが早口かつ感情の無い言葉を並べたが、空かさず指摘したアーデルハイトの言葉を受けるとオーラを消して彼女と睨み合った。
再び喧嘩をする2人を見ながら、アーデルハイトの言葉に遥か昔の記憶を呼び覚ましたカイムは思わず呟いた。その内容はしっかりとアーデルハイトに聞かれており、彼女は直ぐにカイムへ尋ねた
アーデルハイトではなく"教皇"の視線を感じたカイムは軽口の様に言って誤魔化すと、ドロテーアの頭に手を置き続けていた事へ謝罪をした。だが、彼女はカイムの謝罪を受けても俯向いて気にしていないとばかりに首を横に振っていた。
「カイム!いえっ…総統。そろそろ本日分の執務を始めないと、今晩のご予定に間に合わなくなりますよ?」
「あぁ!そうだ今日だったか、マヌエラさん達との飲み…いや、会食。毎年12月末にやってるから忘れてた。すみません御三方、私はそろそろ執務に戻ります」
「あの、総統…執務、頑張ってください…それでは、本官は原隊復帰します!失礼しました!」
「さて、それなら、アルノルト、ヴィクター。わし等も家に帰るかな。総統、それではこれで失礼しました」
「ヨハン、違うだろ。研究所に帰るんだよ、高速道路を2時間すっ飛ばしてな!それでは総統、また近々きますから。あぁ、それと、お土産のチーズを預けてありますので、宜しければ晩酌にでも。それでは、失礼しました」
「そうだな…失礼しました…」
カイムとドロテーアのやり取りに我慢できなくなったギラは、嫉妬の勢いで思わず声を荒げた。だが、頭を抱えるカイムや呆れる視線を向けたドロテーアとアーデルハイトを前に、彼女は口調を正すと予定の書かれた手帳を開きカイムの側へ立った。そのままカイムへ手帳の内容を見せながら、ギラはカイムに体重を預けた。
カイムさえ露骨と思うギラの行為を前に、ドロテーアは気にする素振りもなくカイムへ笑顔と応援の言葉を掛けた。その後、再び親衛隊隊員として敬礼するとドロテーアは、カイムへ柔らかく微笑んでから部屋を去った。
ドロテーアに続き3博士もそれぞれがカイムへ挨拶をすると、扉の前で何度も手を振ってから廊下へと姿を消していった。
「さて…朝の良い眠気覚ましでしたね、カイム?」
「今更ぶりっ子したところで遅いと思いますよ。あら、淹れてたコーヒーも冷めてしまいましたね。淹れ直してきますね」
「ゆっくりでいいですよ、猊…いえ、アーデルハイト。急いだ所で、この書類の山は早々消えませんから。まぁ、戦争よりはこの山の踏破の方がマシだよね…」
少し顔に掛かった髪を払いながら微笑むギラの一言に、アーデルハイトは皮肉るように彼女へ笑って呟いた。ジト目で見つめるギラにいたずらっぽく笑ったアーデルハイトは、ポットに少し触れコーヒーの温度を確かめると片手に持って給湯室へ歩いていった。
そんなアーデルハイトの後ろ姿に、執務机へ戻ったカイムは独り言を言いながら山のように積み上げられた書類に手を伸ばした。
「出来れば、年が明けるまでは平穏な日々であってほしいな…」
仕事を始めるギラやアーデルハイトの姿を見たカイムは、窓の外に広がる近代的に発展したデルンの街を見ながら思わず呟いた。
読んでいただきありがとうございます。
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