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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第5章:2444年帝国の旅
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第2幕-4

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

「U〜mi〜ha,Hiroi〜na,Okki〜na〜!」


「何です、姫様?その…呪文?魔法ですか、使えもしないのに」


「Hola chicos ... ¿gente elfa oscura? ¿Solo trajiste una mujer fluida a Fintorland?」


「Date prisa, no te preocupes, date prisa.カーリ、下手に喋るな馬鹿がバレる…アネルマ様は語学堪能なのに、お供のお前がそれでどうする?」


「なっ!私はただの馬鹿じゃ無いぞ、海峡超えの足を用意出来る馬鹿だ」


「結局は馬鹿かよ…いざとなったら、俺達護衛組は途中で脱落なんだそ?ただでさえ何度か捕まりかけたし、数日過ごしてるとは言え、この船の連中だって信用出来るのか?」


「Tsu〜…Tsu…大和語で"月"って何だっけ?」


 散々の族長会議の末、アネルマとカーリの二人を主要使節とした決死隊が全員で6人編成された。

 族長会議ではユッシがアネルマの出立に強く反対したが、結果的には最も語学に優れ総長の娘という地位も考慮された結果の選出であった。

 カーリは移動の足を密売人経由で確保し、残りは移動の時の護衛であった。


「Guten Morgen!Ich heiße Anelma・Lähteenmäki!どうよ。出立してまだ5日だけどこの成果よ!」


「凄いですよ!はぁ、前途多難って訳か…決死の覚悟で国境線超えて、必死にニーノモールの検問を潜って…ここまでで1週間半」


「護衛組と比べても、姫様は根性据わってるよ。リリアンの移動はずっと樽の中で荷物扱い。オマケにニーノモールの国境線検問で危うくバレかけて、その上もう4日も海ばかりなのに。まぁ、あの狭い箱の外に出りゃ…あらら、また駆け回っちゃって、まぁ…よく飽きないよ」


「初めての国外に、大任だろ?気丈に振る舞ってるのさ…スオミの未来を一身に受けて。俺達より20や30は下の女の子だぜ?」


「"こっからエスパルニア王国経由でポルトァ。おおよそ6日間の行程…その後、最西端の港町ポアトまで5日間。大型の帆船に転げ込んでジークフリート大陸へ何時着くか解らぬ航海"…か?何か都合の良い話だし、そもそも戦争までに間に合うのか?"帰ってみたら国も何も無い"なんて笑えんぞ?」


 族長会議はスオミ族国から直接ジークフリート大陸を目指すという手段は取らなかった。というのも、漁船による超長距離航海というとんでもない経験は彼等に無かったし、使者であるアネルマ達の到着を最優先にしたかった。その結果、カーリのフーノネン家が取引している穀物の密業グループの手引により、彼女達は大回りではあるがファンダルニア大陸を輸出品として経由し移動する事になった。

 大陸内の移動では、ニーノモール王国との国境付近の検問や移動途中の市街地で行われていた憲兵隊からの荷物検査、カーリのくしゃみをにより急遽行われた税関検査等の危機に何度も直面したアネルマ達だったが、苦難を乗り越えリリアン大陸を脱出する事に成功したのだった。

 そんなリリアン大陸とファンダルニア大陸間にあるアーラ海峡を通過する商船に紛れ込ませてもらっていたアネルマ達は薄暗い早朝の甲板で、いい加減に飽きた海を見ながら束の間の退屈を堪能していた。

 だが、その自由な振る舞いも大小様々な体格の護衛の男達4人からすれば、若干無理をしている様に感じられた。そんなアネルマを見た彼等は、甲板から迫るエスパルニア王国の港を見ながら小声で話し合うのだった。


「何よ貴方達、さっきっから甲板の端っこで?おっ!あれがエスパルニア王国?」


「カストロ・エステビア。王国でも大きい方の港町ですよ。何より1番西側にありますから」


「これでようやく半分の行程か?」


「言うな、ウント!気が遠くなるだろ…」


「わっ…悪かったよ。口が過ぎた…」


 朝日の登り輝く水面の先に港の見えたアネルマは、護衛組の屯へ飛び込みつつ甲板の柵から見える街を見た。そこには明るい色調の家や建物が建ち並ぶ華やかな都市であり、港の倉庫街さえも明るい色合いで美しさがあった。

 遠くに見えるカストロ・エステビアの街について説明するカーリに、ウントと呼ばれる細目に小柄な男が飽き飽きした口調で思わず苦言を漏らすと、護衛組のリーダー格の中肉中背の美青年から指摘を受けた。

 それにウントは指を3つに分けた手袋を外して頭を掻きつつ謝罪の言葉を述べながら頭を下げた。


「ソイニ、それぐらいで良い。ウントの気持も解らなく無いから」


「姫様…」


「¡Bienvenidos viajeros!何だかくらい空気の所悪いが、折角ここまで何とか来たんだぜお前さんら!俺の故郷であるエスパルニア王国へようこそ。アンタ等とはここで別れる訳で、俺はカーリから支払われた金の分オタク等全員を運んだ訳だ。細かい事は知らんし聞かん!が、やるからには上手くやれよ!」


「ソシモ…いきなりで五月蝿いよ。それに的外れな事をベラベラと…」


「何だカーリ、知ってるだろ?俺は暗い顔した女の子ってのは嫌なの!"カワイイ女はどんな手を使ってでも笑顔にさせる"これは男の義務だよ」


 護衛組のリーダー格であるソイニへアネルマが言葉を掛けると、使節団一向に流た暗い空気が少しだけ流れ去った。

 だが、そんな空気を流すどころか破壊するような陽気な声で男が1人語り掛けてきた。

 その男は浅黒い肌に筋肉質なガタイ、黒く切り揃えられた短髪に整った髭を持つ30代前半の男であった。

 外観から色男と呼ばれそうなソシモに対して、カーリは睨みつけアネルマを庇うように前に立った。だが、彼女のブロックを華麗にすり抜けると、ソシモはアネルマの手を取り厚手の手袋をはめたその手に軽く朝の挨拶代わりに口付けをした。


「カーリ、流石に何日も一緒だと、こういう情熱的な人にはもう慣れた。スオミの男達もこれくらい愛情表現があっても良いと思うし、エスパルニア人が皆こうじゃないのは理解してるから、安心して?」


「いえ、姫様。エスパルニアの男は大抵こんなのばかりです」


「ソイツは…俺も否定できないな…いや!愛と燃える情熱に生きる国と言わせて貰おうか!」


「えっ…あの国には、こんな暑苦しい男の人で溢れているの?それは…少し、困るな?」


 ソシモの良い意味で砕けた態度や饒舌なフィントルラント語に、使節団一向は何とか明るさを取り戻した。

 そんな中、ソシモは軽く咳払いをするとゆっくりとした演技がかった身振りでカストロ・エステビアの湾口を指差した。


「いいか、野郎共?これからこの商船"燃える情熱"号はカストロ・エステビアに入港する。その時、皆は樽から魔鉱石の敷かれた箱に入ってもらう。もちろん2重底だが、匂い消しの為に油を軽く体に塗ってもらう」


「おいおい…その格好で旅を続けろってのか?」


「安心しろ強面ヴィルヘルム。宿でのシャワーも代金の内だ。これだってカーリに免じた格安違法旅行だ。そこで目立たない格好に着替えて、アンタ等だけの旅に切り替えってやつだ。今は明け方で海上だから寒いが、街に着いたらそんな毛皮を何枚と着込んだ格好は目立つし熱くて死ねるぜ?」


「エスパルニアを出てからはどうするんだ?ポルトァには…」


「道案内"だけ"はカーリに任せりゃ大丈夫だ。それにポルトァの国境近くのノヴァ・デ・ローレって街にゃ、オレの知り合いがいる。勿論話は通してあるし、そいつに頼れば、大型帆船までは何とかなる!」


 自慢げにシャツのはだけた厚い胸元を叩くソシモに、使節団一向は安心の表情を浮かべつつお互いに目配せをした。


「¡Pronto estaremos en la orilla!」


「Entiendo! ¡Dejaré el procedimiento de entrada al puerto!そろそろ入港する。全員準備してくれ。あと!もうその厚手の格好は脱いどいた方がいい。箱の中は蒸すから」


「ソシモさん、この度は色々とご迷惑を掛けました」


「いやっ、良いんだよ。オレは、金もらって仕事しているんだからさ。それに、礼なんか言われる立場でも無いしな。ほら、急いだ急いだ」


 商船の帆の上にある見張り台で船乗りの男がソシモに声を掛けると、彼は帆の上に大声で指示を出した。

 そんなソシモに、アネルマは深く頭を下げると彼は恥ずかしそうに頭を掻きながら頬を赤くして使節団一向を貨物室に向かうよう急かした。


「Jefe! ¡Hay una fuerza policial en el puerto!」


「Contacto del jefe, puerto.

"Entiendo todo en el informe. El contrabando de plagas es una violación de la ley. "

¡Maldita sea, alguien le dijo a la policía del reino!」


「Que!カーリ、アネルマちゃん達!待つんだ!」


 一向が貨物室に向かう為に船内へ入る中、カーリ達は慌てながらソシモに報告する船員やその報告を受けて声を裏返す彼に様に近づくと警戒しながら振り返った。

 その一向の中で、アネルマは状況を大まかに理解したのか腰に差した右手用に改造したマンゴーシュの柄に手を伸ばした。


「姫様、アイツ等は何と?」


「カーリ、貴女の家の商売相手は一枚岩では無かったようね。誰かが私達の事を密告し港に警察が居るみたい。害獣駆除として」


「なっ!いい顔をするフリして、結局はヒト族ってか!」


「オマケに害獣扱いですか…やっぱり簡単にファンダルニアへは入れませんか」


 マンゴーシュを引き抜くアネルマにそれぞれの獲物を構えた使節団一向が詰め寄ると、彼女はエスパルニア語の理解出来た範囲で全員に説明をした。

 その内容に大斧を肩に担ぐヴィルヘルムが悪態をつき、ソイニが呆れる様に呟きながら麻袋に入れていた長剣を取り出し鞘から引き抜いた。

 臨戦態勢を整える使節団一向にソシモが慌てて近寄ろうとすると、ボウガンに矢を装填したウントが全員を庇う様に彼との間に立って構えた。


「待て待て、落ち着け!そんな物騒な物をオレに向けるな!その反応から察するに、アネルマちゃんはエスパルニア語が解って部下連中に状況を説明してくれたんだな」


「おい、ソシモ!これはどういう事だ!確かに依頼はいきなりで内容も無茶苦茶だった。だが、"金が絡む以上は何でも商品だ。きちんと届ける"ってのは嘘だったのか!」


「嘘なものか!出なけりゃ北の大地からオタク等をここまで引っ張りゃしない!王国内の身内の誰かに売られたってだけだ。金積まれなきゃ、誰が警察と仲良くするもんか」


「白々しい嘘を言うな、ヒト族め!」


「おいコラチビ助!嘘ってんなら、とっくにその首たたっ斬って港の連中へ投げてるわ!とにかく、こっちも切羽詰まった。さっき話した流れはナシだ」


 ソシモの言葉に徹底して不信を向けるカーリ達だったが、彼を含めた船員全員が慌てながらも何とかしようと行動するのを目にしたアネルマは護衛組の前に出るとソシモと向き合い切っ先を彼の眉間に向けた。


「ソシモさん。貴方は私達を売った訳では無いのですね?」


「確かに、世の中にはアンタ等ダークエルフを獣だ何だと言う連中が居る。だがな、俺達は少なからずそう見てない。今思いつく言い訳はこれくらいだが、まだ何か言って欲しいかい?」


「いえ。それより、この状況を打破できる策を言って欲しいですね。これも料金の内ですよ」


「いや、寧ろこれは賠償物だよ。少なくとも市街地までの安全を保証してに運ぶのが仕事なんだからな。だが、しかし…」


 鋭い目付きで睨むアネルマの一言を前に、ソシモは焦りを垣間見せながらも笑顔と共に持論を述べた。

 その言葉に納得したアネルマは、マンゴーシュを下げると迫る港と桟橋を指差しながら溜め息をついた。既に商船は港の中に入っており、船の周りにはタグボートが接して桟橋へ誘導されていた。

 その状況を前に、ソシモは困り果てた様に隊列を組み盾と剣、槍を構える鎧姿の警察隊を見た。隊列は40人程であり、後方には杖を手に持つ魔導師達4人程を引き連れているかなりの規模だった。


「湾岸警備隊は精鋭だし、魔導師の援護もある。いざとなればこの船を焼けば全部収まるしな。しっかし、何でダークエルフの密入国程度に魔導師まで出てくるんだ?ニーノモールの無駄に厳しい警備もそうだが、アンタ等は一体何やったんだ?」


「そうですね…私達ではなく、スオミの民全員が咎人というか?エルフの込み入った事情ですよ」


「姫様、説明している場合じゃないですよ!どうします?ここまで来て、最後は害獣扱いで駆除なんて最悪のオチですよ!」


「白エルフ連中め…魔法が使えるからっていい気になりやがって!」


「暴れるにしてもな…桟橋なんて狭い所で戦うのは不利だぞ?まして桟橋1つに魔導師の援護を受けた兵士達が殺到するんだ、勝ち目有るのか?」


「泣き言を言うな、ニーロ!口を動かす暇があったら…姫様?」


 船から迫る桟橋を見つつ、ソシモはアネルマに尋ね彼女も困った表情を浮かべながらも答えた。

 そんな二人のやり取りを前に、カーリが悲鳴の様な声を上げ護衛組は武器を用意しながら戦闘に備えた。その中で、高身長に痩せた体躯のニーロと呼ばれた男の泣き言を聞いたアネルマは、船の柵で身を庇いつつ桟橋を観察した。

 桟橋は比較的広い造りになっていたが、鎧を身に纏った重装の兵士達が4人も並ぶと完全に封鎖される様な幅であった。


「姫様、何かしら策が思いついたのですか?」


「そうね…ソシモさん!この船の乗組員は一体何人です?」


「20は居るはずだ!だが、武器なんて殆ど無いし、戦えるヤツは殆ど…」


「いえ、逃げて貰えれば構いません。後は私達だけで何とか出来ます。それより、ポルトァの船は大丈夫なんですよね?」


「それは大丈夫だ。オレの悪友が用意してるからな!だが、そんな事よりオレ達に逃げろってのはどういう事だよ?アンタ等だけじゃ湾岸警備隊からは逃げられないぞ?」


 こっそりと柵から桟橋を覗くカーリがアネルマに尋ねると、彼女は身を隠す様に移動してソシモに尋ねた。その内容に、ソシモは驚きながらもしっかりと答えた。

 その言葉にアネルマは食い気味で指示を出すと、ソシモもその内容に慌てた。だが、そんな彼を気にしないアネルマは、護衛組の男達の元に駆け寄りただ静かに頷いた。


「いえ…あの連中が私達を害獣呼ばわりするなら、害獣らしくひと暴れして乗組員を追い回してやろうと思うだけですよ?一斉に船から逃げ出したいくらいに…ね?」


「成る程な…わかった、全員に伝える。武術もろくな魔法も使えない俺達からすれば、アンタ等密輸入動物は手に余った訳だな!」


 混乱するソシモに、アネルマはただ静かにマンゴーシュを構えつつ説明すると、その含みの有る説明で大まかに理解した彼は驚いた様に納得しつつ乗組員達を甲板に集める為に走り出した。

読んていただきありがとうございます。

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