第2幕-2
趣味で書いてるので温かい目で見てね。
「我等スオミの民が、連中からすると目障りなのは知っているが…ここまで乱暴な手に出てくるとはな?」
「姫様、ザッキアナの時と同様です。このままではスオミは…スオミの民は再び北に追いやられます!もうどこも限界です!」
「それを私に言ってどうするの、カーリ?私は所詮小娘だぞ?」
「姫様。私が2日前の姫様の呟きを聞いていなかったと思いますか?」
ノーベル帝国からの思わぬ使者達の知らせて来た事実は、使者が去ってから遅れる事2日後に首都ホミニオの街に届いた。
その報告内容は若干の違いこそあれど、"ノーベル帝国騎士達が魔導師を引き連れて突如村を襲った"という内容に変わりは無かった。
その事実は尾鰭を付けて広がり、スオミ族国全土はノーベル帝国やハイエルフの率いるフィントルラント精霊国、更には精霊国と同盟を結ぶ様々な国の義勇軍や派兵軍との戦争に震え上がっていた。
「魔族…ジークフリート大陸に住む者達の協力を求めるというヤツか?馬鹿を言え…魔族といえば私達と同じく魔力が無いからと弾圧され、何時も負け戦をしている連中だろう。それに協力を求めてどうするのだ?」
「それこそ、国境付近の村から得た話しですが…」
「そう言う話しって眉唾物だろ?」
「いいから聞いてくださいよ、姫様…」
大規模な戦力差を前提とした戦争が起こるという未来に、首都の小さな屋敷の暖炉の前に座り込むアネルマは整った小顔に苦悶のシワを寄せていた。友達であり部下でもあるカーリの言葉を受けても、彼女の苦悶は取れるわけでもなく、黒い瞳は暖炉の燃える火をただ写していた。
アネルマ自身もこの2日間何もしていない訳ではなく、吹雪く国の各地に散っている狩人達へヒト族襲来の可能性を伝令に走ったりと忙しかった。褐色の肌を更に日に焼いた二人だったが、それが済むと彼女の属する政府中央からの支持は無く自室待機以上に出来る事が無かった。
そんなアネルマの無気力な態度に抜けた発言を受けたカーリは、膝を抱えて座り込む彼女の横に同じ姿勢で座った。
「南へ伝令に行った時に会ったエスパルニアからの穀物密売人の話では、ポルトァの艦隊がジークフリート大陸へ侵攻を掛けたらいしんですよ」
「よくある噂話でしょ?"ドコドコの艦隊が〜"とか"どっかの国が〜"とか。とにかく"魔族に戦いを挑んだ"ってのが何時ものオチでしょ?」
「だったらエスパルニアからポルトァの話が流れてこないのでは?」
「だからって…言うに事欠いて魔族って…」
「姫様!」
カーリの話にアネルマが適当に相槌を打っていると、彼女も堪らなくなったのか隣のアネルマの肩を掴み横向く彼女へ顔を寄せた。
顔立ちの整った二人の高い鼻が触れ合う程の距離で向き合うと、アネルマは褐色の頬を赤くしながら顔を背けようとした。だが、そんな彼女をカーリが頬を潰す様に両手で抑えると、お互いの額を触れ合わせた。
「いいですか姫様。我等ダークエルフの危機だというのに伝令とその内容の薄さは落胆するしかありません。しかし、ラハテーンマキの3女たる姫様が、こんな…いえ、暖炉の前で膝を抱えていて良いんですか?」
「良いも何も…父上や兄上、姉上さえも馬鹿らしいと聞きさえしなかったんだぞ?第一、魔族へ救援を求めに行くと言って誰が手伝うのだ?」
「もちろん、私ですとも!」
「ねぇ、カーリ?確かに2日前の私なら、貴女の言葉に背中を押されたかもしれない。でもね?父上からも相手にされない考えを実行使用と思う程勢いに生きてない」
「なら、この国は愚か種族の危機にアネルマともあろう女がただ指を咥えて見ていると…」
「そこまでは言ってない!」
「暖炉の前で座っていれば、何もしていないのと同じです!」
暖炉の前での口論を始めお互いの胸倉を掴みあった二人だったが、白熱する前に唸り合うと気が抜けたように雰囲気は沈静化していった。
「仮にも、私の家の暖炉の前ですべき会話じゃ無い。父上だ、何だ…せめて族長会議に出すべき考えだ」
「今の話を総長や会議がまともに聞くと?」
「せめて、"魔族"って所が"ネーデルリア"くらいなら何とかなりそうだけどね?あの国の周辺はバチバチだからなぁ」
「これも出処の同じ噂話ですけど、グイリアナ法国と大トラガリア王国の国境線がまた荒れてきたみたいです」
「本当に…政は姉上の領分だよ…」
「なら!ユッシ殿は国内、姫様は国外へ。たとえ事後報告でも、義勇軍がある無いで戦局は変わりますよ!」
自宅の暖炉の前での膝を抱えて座り込む厚着の二人は、どうしよもうもならない国の未来をどうにかしようと話した。
だが、若い女二人が話し合って結果的に魔族の助けを求めるという、アネルマやダークエルフにとって荒唐無稽な考え程度しか打開策に辿り着かない程に彼女達ダークエルフは切迫していた。
「疲れてるんだ。伝令で国中を走り回って疲れてるから、貴女も私も間抜けな妄想に縋りたがるんだよ。もう寝るよ…」
「姫様…アネルマ!」
「変な冒険活劇はこの北の大地には適してないし、込み入った諜報戦なんて出来る程に私は器用じゃ無い」
「寝て起きても自体は変わりませんよ!」
「私の思考と、外の天気くらいは晴れるよ!そうなれば、私達ダークエルフの未来も晴れる」
暖炉の前で言い切ったアネルマは、止めるカーリを無視して立ち上がると着ていた厚着を脱ぎながら寝る支度を始めた。そんな彼女を止めきれないカーリは、諦めた様に厚着を脱ぎつつ火かき棒で暖炉の薪の位置を直した。
だが、朝起きても吹雪は止む事が無く、状況は悪くなる一方だった。
「アネルマ!アネルマ、居るんだろ!カーリも、あのバカ妹を叩き起こせ!不味いぞ!」
「バカは…どっち?こんな早朝に乙女二人の居る家に殴り込み掛けてくる兄の方が…」
「ノーベル帝国が…今朝、自国領土の不当占拠に関する勧告書類を使い魔で送ってきた。"1ヶ月以内に何らかの形で返答しない限り、連中は宣戦布告する"との事だ」
晴れぬ吹雪と共に家へ舞い込んだユッシの言葉に、アネルマは言葉を失いカーリは決意の視線を彼女へ送っていた。
「ユッシ様。アネルマ様が族長会議の開催と議題の発布を求めています」
言葉を失っていたアネルマはカーリの発言を止められず、彼女はただ暖炉のうなだれる様に頷くだけだった。
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