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帝国再興記~Gartschlands Gloria~  作者: 陸海 空
第4章:新世界は黄昏の国
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第五幕-2

「バカな!ドレスツィヒが陥落しただと?」


「はい…大統領。主力は州庁から敵の中央を突破しようと進軍。そのまま南北から市街に侵攻していた帝国軍に包囲されると…1人残らず殲滅、ないし捕虜となりました」


 大統領府における会議は連日戦況が議題となり、共和ガルツ政府には戦争以外に手を向ける余裕が完全になかった。

 その状況において、ハト男から変わったスーツ姿の死霊族の国防大臣からもたらされたドレスツィヒの共和ガルツ軍壊滅は最悪の報告だった。


「馬鹿者共が!何で人数を圧倒している敵軍に包囲されて殲滅される!普通は逆だろ!この役立たずが!」


 会議の書類をテーブルに投げ捨てると、大統領シュペーは自分の座っていた椅子を持ち上げ有らん限りの力で床に叩き付けた。

 顔を真っ赤にしながら肩で息をするシュペーは、それでもまだ足りないと椅子を蹴り跳ばし壁へとぶつけた。


「奇跡的に脱出した補給部隊の報告では、今までは最初の一発のみだった冷やしても癒えない火傷を与える白い爆発が、街では無制限に放たれていたと。更には、まるで伝説の龍の様に火を放つ兵や鉄の馬車が仲間を焼き払った等ともあります。ドレスツィヒの戦法が良くなかったのかもしれませんな…帝国は本気で我等を潰そうとしている」


 怒りで物に八つ当たりをするシュペーを気にしない国防大臣は書類の報告を淡々と読み、自分の考えさえ付け加えた。その態度は冷静そのものであり、普段の意気地無き態度が嘘の様であった。

 その大臣の態度で冷静になったシュペーは、別の椅子を運ばせると疲れ果てた様子散らばった書類を纏めながら座った。


「この補給部隊がここに着いたのは何時だ?」


「昨日ですので、9月1日かと」


「なら…州境に張った絶対防衛線は今頃接敵している頃か?」


 大統領の質問に淡々と答えた国防大臣だったが、出席者全員が注目する中で最後の質問には口を開かなかった。その代わりに、ただ大きく頷くと壁に掛けられたフランブルク州の地図を見た。


「フランブルク州は広い。とはいえ多くは平原であり森は少ない。ゲルセン州突破をこれだけ短期間で行う帝国軍なら、最悪絶対防衛線突破を伝える伝令が向かっている最中とも…」


「トーライ!貴様それでも国防大臣か!前任のテーニゲス同様、敗北主義に身を染めたか!」


 国防大臣の言葉に激怒した数人の大臣達が立ち上がり糾弾すると、会議室に冷たく張り詰めた空気が広がった。


「元より貴殿方貴族が南の連中に煽てられ、勢いに任せて始めた革命でしょう…まして、良くも知らずに敵を侮り宣戦布告をした。その結果、我々はさながら神代の軍と戦うはめになった」


「それを倒すのが貴様ら軍人の仕事だろう!」


「そもそも、軍は常に不測の事態に対応出来るように備えるものだろう!」


「自分達が不甲斐ないのを我々の責任にするとは恥知らずな…」


 糾弾していた大臣の中で、悪魔の老人が叫んだ。その叫びは鷹派の大臣達から共感を得たのか、国防大臣への糾弾は続き謝罪を促す視線が向けられた。


「今の帝国軍はヒト族よりも遥かに強い。奴等とて街1つ吹き飛ばすのには大魔法を使っても4日はかかる。それを帝国は山脈を越えてからほぼ全ての都市へ行っている。剣も矢も届かず、まして敵と面と向かい合わずに戦闘が終わる」

「おいっ、さっきから何をブツブツ呟いてる?」


「国防…いや、トーライ。そんな事は言わんでも知っている」


 自分にしか聞こえない声量で呟くトーライに、大臣達は謝罪を聞く事を諦めた様子で腕を組んだ。それぞれがトーライの独り言に答える中、それでも彼は独り言を止めなかった。


「戦争は元来外交手段。それを支えるための経済基盤や労働基盤が必要なんだ。勝って奪えば一時的にはしのげるが、そもそも革命により全ての制度が急変したこの国で一時しのぎこそ最も愚策だ。戦うべき相手を間違えた」


 後悔や嘆きの混ざった言葉は大臣達を呆れさせた。


「勝てなくて良いんだよ。連中が外に悪意を向ければ良いんだ」


 そんな大臣達の態度の中で放たれた大統領の言葉に、テーニゲスは耐えきれなくなると握りしめた拳をテーブルに叩き付けながら怒鳴った。


「何故貴殿方そんなに悠長なのか!帝国軍は容赦を捨てた。民間人でも裸になって平伏さない限り投降出来ない!このまま連中がコンダムに辿り着けば、我々は容赦なくその場で撃たれる!連中からすれば我々は大罪人集団だ、捕まえる必要なんて無いんだぞ!」


 トーライは普段から怒鳴るような人物ではなかった事で、会議室は沈黙に包まれた。

 何よりも、彼の言葉は全員が目を背けていた事実であり、大統領を含めた全員が反論も言い訳も出来なかった。そんな空気の中で大統領さえ黙った状態の会議室で全員が誰かの発言を求めて目配せをする中、扉の向こうの廊下から慌ただしく駆けてくる音が響くと扉が勢い良く開けられた。


「会議中失礼します!緊急事態です!街の民衆が暴動を起こしました!もはや軍では対応しきれません!」

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