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屍者の誇り  作者: 狭間義人
一章
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断節 西暦 二千六十年 七月 藤沢 大翔

 今日は学校がおやすみだ。

 おやすみの日にはいつもだったら遊びにいったりするのだけど今日は無理だ。

 

 窓の外からはざぁざぁと凄い雨。テレビから聞こえてくるお姉さんの話では『今年で一番強い台風です』なんだそうだ。それ今年何回目? なんて言ったら怒られるかな。


 欠伸を一つ。

 起きたばかりで頭が眠い。せっかくのおやすみでもいまいち調子は上がらない。今日はなにをしようかな、宿題は昨日の夜に終わらせたから暇なんだけどやることが思いつかない。

 あとでお母さんから大きい端末でも借りて昔のアニメでも見ようかな。『墓守のお仕事 七色スコップ』『幕末剣豪伝 ワタシガキル』『銀河時空警察 デロリマン』なんかは最近のお気に入りだ。


 キッチンの方からはじゅうじゅうといい香り。お母さんが僕との朝ごはんを準備してくれている最中だ。


「ダイト、手伝って」


「うん」


 お母さんに言われてキッチンに向かいお盆を運ぶ。その上には二人分の朝ごはんが置かれていた。

 居間のテーブルにランチョンマットを二つ引いてごはんを並べていく。


「ありがとう。座ってて」


「うん」


 お母さんが最後の仕上げにベーコンエッグを二人分並べて朝ごはんの完成だ。


「いただきます」


「いただきます」


 お米を二口、みそ汁を一口、ベーコンをがぶり、サラダは……少し。


「サラダもちゃんと食べてね」


「うん、わかってるよ」


「偉いわね、お兄ちゃんだもんね」


 本当はあんまり食べたくない、野菜って苦いんだもん。特にこの『赤い悪魔』は大っ嫌い。じゅくじゅくした歯ざわりと強い酸味がどうしても好きになれない。これを飲みやすいようにジュースにされたところで苦手なものは苦手だ。

 でもちゃんと食べないとお母さんに迷惑がかかっちゃうから我慢して食べるんだ。大きくなるために好き嫌いはしちゃダメなんだ。

 

 僕がちゃんと言うことを聞いていればお母さんは怒られないもんね。


「ねぇお母さん、お父さんは?」


「朝早く学校に行ったわよ」


「そう」


 いつも通りだ。

 お父さんは学校の先生をやっていた。

 生徒指導だとか、教育委員会だとか、教頭だとか、よくわからない肩書の立場はころころ変わるけれど先生は先生だ。


 こうやって天気が凄く悪い時にはいつも学校に向かうんだ。


『現在一部地域では緊急避難警報が発令されており、各自治体では――』


 避難をする人がいる、そして避難を受け入れる人がいる。

 この家から車で一時間ほど離れたところにお父さんの働く学校があった。その近くに住む人は学校を頼りに訪れるのだ。

 

「雨凄いね、この辺は大丈夫かな?」


「さぁ? 大丈夫じゃないかしら、うちは今まで避難するようなことがなかったから」


「そう、だね」


 そうだ。お母さんの言う通り僕のおうちは安全なんだ。

 テレビなんかで避難をする人はみたことはあるけれど、僕は無い。だから大丈夫だ。


『ぅぁぁ……ぁぁ……』


 朝ごはんを食べ終わった頃に泣き声が聞こえた。


「あら、起きたのね」


「僕が見てくるよ!」


「お願いね、食器は片付けておくから」


 そう言い残しお母さんは片付けを始める。

 

 僕は隣の部屋へ行き小さなベッドの中を覗き込む。


「おはよう、――――」

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