世界の終わり
世界に殺人ウイルスが蔓延し人類は滅んだ。
地球上を占拠していた『人間』はもういない。
人が歩くことをやめた海岸線、目を逸らしたくなる太陽光。肌は焼け、肉は腐り、血は渇く。
白い砂浜を腐臭が歩く。さざ波は屍の足元をくぐり抜け、引いていく。
「オ……アア……ナ……」
陸と海の境界線にあるのはきっとどこにでもある風景。青い海、白い砂浜、枯れた流木、歩く亡者。
歩き続ける亡者を阻む者はいない。彼は自由を求め彷徨い続けた。
「アア……ズ……アア……ス…………アア……」
亡者の渇いた頭上から聞こえるのは飛翔音。何かを捕えんとする動きを見せる機械物は八つのプロペラを回し、緩やかに爪を開いていく。
彼は進む。海へ、山へ、街へ。彼はもう自由を手にしたのだから。
飛来してきた機械物はゆっくりと亡者の頭上で静止する。ゲームセンターなどで見られていた景品を掴もうとするような動きで、四つの爪は亡者の頭部を目掛け降りていく。
「グシャリ」
持ち上がる。頭部と身体は引き離されゆっくりと機械物は上昇を始め空を駆ける。
ここは人間が滅んだ新世界。
伝達
新生歴 九年七月一日 十一時十六分
人型個体一体ノ回収ヲ完了 第三百七十八番転生処置施設ヘ輸送中
第三百七十八番転生処置施設へ受ケ入レ準備ヲ要請ス