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戦乙女の黄昏  作者: いさらゆたか
9/15

2-6 それぞれの壁乗り越えて


「何故だ!? 何故こんな事をしたのかと聞いている?」


 もぅ! うるさいですね、・・別にそんなに大声で叫ばなくても、近くにいるんだから聞こえてますよ・・。


 あっ、皆さん開幕早々の見学さんの怒鳴り声、大変失礼しました。

 え? 前回の話で二人足並み揃えて頑張ろうと言う事で、仲直りしたのではなかったのか? ですか?

 はい、勿論! あれから二人で頑張って対策も練り、着実な勝利をものにし、順調に仲直りも済みましたとも。

 後残す所二カ国に勝利を収めれば、見学さんの試練は終了すると言う所まで来たので、現在私達は更に勝利を確実な物とすべく、ショップにて強化アイテムの買い出し中なんです。


 そこで新たな発見なのですが、何と二個以上の必殺シュートを合わせる事で、オリジナルシュートが作れるらしいんですよ! 

 私も作ってみたいと見学さんにせがんだ所「うむ! 良かろう、ここまで協力してくれたのだ。余った金でなら少し位自由に使ってもいいだろう」と言ってくれたんです!

 見学さんは、そのまま次の戦いに備えて休憩に入るとの事だったので、その間言われた通り自由に使わせて頂いただけなんですが・・。


「あれ? 何でしょう、このフエタの種って・・」


 一つ大変興味深いアイテムがあったので興味本位で購入、それが余りにも面白かったのでつい・・。


「ついではないぞ! 貴様! 今までコツコツと積み上げて来た我の努力を・・ この様な事をして・・この様な・・この様な・・ぐぅ・・」


 そんな、涙目になる様な事ですかね?


「折角貯めた貯金を・・、我がツィームゥンメンバァーを・・」


「だって不思議じゃないですか? それに面白かったし・・」


「そう! それだ! そのわ~い不思議不思議~何これ何これ? 面白~いのお陰で、貴様のどうしよもない好奇心のせいで、全てを・・いや、そもそも貴様なんぞに財布を渡したのが間違いであった・・」


「いや、その・・知らなかったんですよ、まさか・・」


「そうだな、知らなかったのだから仕方があるまいな・・だが・・」


 土に植えた種が人の形になったので、面白おかしく楽しんでいたら、やたら元のメンバーのどの人を選ぶか聞かれたので答えたんです。

 私にしたら、ただそれだけの事だったのですよ? それが気付いたらこの様な事に・・。

 元のチームメンバーと入れ替えで、まさか生えて来た人間が選手になるなんて誰が思いますか?


「どうするのだ! 既に最終スゥトゥエージまじかなのだぞ? こんなフエタだらけの・・我以外皆同じ顔ズラッと並べて・・貴様は・・貴様は一体何がしたかったのだ・・?」


「何がって・・何がでしょうね? ・・あっ! でも普通の選手と違って土から生えて来た選手ですし、強さだって普通じゃないかもしれませんよ?」


「貴様・・良くそのツィームゥンメンバァー表を見て見ろ、そこのLVと書いてある下の数字を・・それはそいつらの強さを表しているのだ」


 え? えーっと・・あっ、この項目ですね、出ましたよ・・お~見事に、上から下までフエタさんだらけで、・・ん~っとエルブイですね、見学さん以外1って書いてありますよ。


「凄いじゃないですか!」


「・・は? 今何て?」


「だってこれ、見学さん以外全員順位一番で同列って事ですよね?」


「違うわバカモノが! どう考えても生まれたてホヤホヤのこんな奴らが一番強い訳がなかろうが! それはルゥレヴェルだ! それが1と言う事は最弱、つまり現状我がツィームゥは全くのド素人集団に変わり果てたという事なのだ!」


「え? ・・え~またまたご冗談を、あれだけ強化したからバッチリだと言って休憩入られた訳じゃないですか~」

「その、強化されたはずのンメンバァーはどこにいるのだ? 言ってみろ女神よ」

「えっと・・見学さん・・かな? 一人だけLV36って書いてあるので」

「そうだな、確かに我自身の強化もせねばならんからな、だが・・他はどうなった?」


「同じ顔になっちゃった~! ・・なんちゃって・・」


「あぁ、なっちゃったな、綺麗さっぱり同じ顔がズラリと勢揃いしちゃったな・・」

「あっでも、これチームで戦う訳じゃないですか? これだけ同じ顔の人が揃えば、意思疎通が取り易かったりするんじゃないですかね? ・・多分」

「確かにな、実際に存在していれば、これ程頼もしいツィームゥンメイトゥもいないかもしれんな」


「ですよね? ですよね?」


「実際に存在すればの話だこの駄女神が! 見て見ろこいつらはNPC、仮想世界の住人なのであろう? ある程度の意思疎通は図れても、それ以上はないのだ! 元のンメンバァーであろうが何であろうが、そこは同じなのだ! バカモノが! これでどうしろと言うのだ・・」


「そ、そこまで言わなくてもいいじゃないですか! 私だって反省してこの状況を何とか・・、ぁあっ! そうですよ! ふっふっふっ・・私に秘策があります!」

「は? な、何!? 本当か? ふははっ! 流石女神よ! っでその秘策とは?」

「慌てなくても大丈夫ですよ、見学さん私に任せて下さい!」


 試合が始まり、見学さん率いる選手達が配置に付き始め・・今! スタートの合図が入りボールの投げ合いが始まりました。


[バカッ!]「ガッラ!」[バゴッ!]「スデっ!」[バスンッ!]「ングーーっ!」


 試合開始直後から、私の秘策炸裂によって強化されたフエタさん達の猛攻により、次々に消えて逝く選手達。


「わっ、わっ! タンマ! タンマだ! 待っ!」


 その中でもやはり際立ってご活躍を見せる見学さん・・。


[バゴン!!]「ぐっも!? ごぜーーーん!!」


 ・・のはずだったんですけど。


「おっかしいですね~」


「お、おかしいのは貴様の方だ! この脳天スッカラ女神が! 何が秘策だ? ものの開始五分で全員お空に消えて逝ったわ!」


「え~、でもいい案だと思いませんでした?」


 以前試合中に突然現れたその集団、始めにお目にかかった時は、私のツボに入り大爆笑をしてしまいましたが、その強さと来たら笑えるものではなかったんです。


「確かにな、あいつらはふざけた格好をしてても、中身ゥオールゥスターと変わらんからな、だがな女神よ・・」


 いい線いってると思ったんですよ、本当個人的には、これ以上にないとっておきの作戦だったんです。


「おパンツ被せただけでは強くはならんのだ!!」


「失敗ですか?」


「当たり前だ!! おパンツ被った位で強くなれるなら警察はいらん!」


「いえ、そこは出動なさると思いますよ」


「出動なさるな! 急に冷静になるな! このポンコツ女神が! そもそも被せるな!」


「なっ! ひ、酷い・・私だって必死になって考えたんですよ? それなのに!」


「必死になって考えた挙句の策が、おパンツ被せる・・だと? ほ、他に何かないのか? ほらこの前のクォートの四つ端に四人が配置された不思議なフオーメィションや、あー・・あれだ! 全員肩車しての相手クォートへダィビングッからの混乱に乗じてボールゥ強奪作戦等、今までだって奇抜な発想で乗り切って来たではないか?」


(なんだかんだ言っても、この女神の良くわからん指示作戦通りに動いて来たからこそ、ここまで勝ち上がって来れたのも事実、今回はたまたまだったのだ。そうたまたま・・)


「へ? あ~! あれ面白かったですよね! どうせ雪崩で皆埋まっちゃうくらいなら、そのタイミングに合わせてダイブすればボール持って帰れちゃうんじゃ? って思ったの見事に的中しましたもんね!」


「そうそう! それだ!」


「後フォーメーションですか? 四つ端の奴、ふふ・・あれですね? 私気付いちゃったんですよ、勝つ為の必勝法!」

「ぉお! あ、あの意味のわからん配置はやはり必勝法だったのか、女神よ!」

「はい! オセロやってて閃いちゃったんです! ・・あれ? これってもしかして・・、端っこ取った方が強いかもって!」


「は?」


「ですから、四つ端取れちゃったら最強なんですってば! ふふ、見学さんこれ内緒にして下さいね、秘密の必勝法なんですから」


「なん・・だと? オ、オセロの必勝法? え? 待て、待つのだ少し考える・・・・・・偶然?」


「ん?」


「いや、何故オセロの必勝法をフオーメィションなんぞにしたのだ?」

「へ? あぁ! オセロで必勝ならドッジボールでも・・」


「ならん!! まったくの別物ー!!」


「え? ですが見学さんもあれのお陰で勝てたって・・」


「あれ偶然!! たまたま楽勝だっただけーーー!!」


「で、でもオセロで必・・」


「あっ全然! 本当たまたま~!」


「あれ? あれ? で、でも?」


(な、何と言う事だーー!! 今回がたまたまだと思っていたら、今までがそうだったでござるー! そりゃこの緊急事態におパンツ被せるわー・・って言うか オセロの必勝法何故こっちで通用すると思ったし! そもそも我は何時からあのポンコツを大丈夫だと錯覚してたのだ! ドッジボールのドの字も知らんド素人ではないか! 脳天花咲か女神を信じる何て・・我のバカ!)


「もういい・・勝つのは無理だ。また一から育て直し再戦を・・」


「あ、諦めないで下さい! え、えっと・・せ、責任を取って私が選手として出ますから!」


「はぁ? 貴様何を言って、それをしてはマズいのではないのか?」


「ど、どうにかなりますよ! そもそも私だって見学さんと一緒に戦って来たメンバーの一員何ですから、参加して当然なんです!」


 明らかな違反なんですけどね、私のしてしまった失敗で見学さんが落胆なさるのはお門違いもいい所、その方が間違ってますからね、怒られるならそれは私でないと。


「め、女神よ、本気・・なのだな?」

「えぇ、本気です。私をチームメンバーに加えて下さい! お願いします!」


(め、女神が我がツィームゥンメンバァーに・・こ、これは勝てるのでは? いかなポンコツと言えど女神は女神、人でない時点でルゥレヴェルがクァンストゥしている可能性も・・)


「あっこの格好では動きにくいですね、かと言ってシャツに短パンはちょっと・・うん、ちょっとジャージに着替えてきますね~・・とうっ!」


(いや、待て我よ今までのプァターンを思い出せ、あれに過度な期待をした事で 何度痛い目に遭って来たと思っているのだ? 冷静になれ・・入った所でルゥレヴェル1、そうに違いない・・)


「ただいまで~す」


(いや待て待て、なんだ~やはりルゥレヴェル1ではないか、っとそう思わせておいて、実は・・)


「あの~? こっちの準備は整いましたので、チームに入れて欲しいのですが~?」


(いやいや待て待て待て、あれはおポンチ女神なのだぞ? 絶対何かしでかすに違いない・・だが逆に考えれば脳筋である可能性も・・いやないな、あんな華奢な体で・・)


「お~いもしも~し、準備出来てますよ~」


「えぇい! 考えていても埒が開かん! どの道最弱軍団なのだ! 死なば諸共!」



「見学さんボール貸して下さい!」

「りょ、了解した・・」


(・・・・普通に・・)


「はあああぁぁぁああああ! せい!!」


[バシュン!]「ジルッ!」[ドバシッ!]「バーシャー!!」[スパンッ!]「ッグ!!」


「どうですか? 私の作ったヘロヘロズドーン! の威力は?」

「は・・はい、とてもお強うご座います」


(・・普通に強いんだもんな~・・、ルゥレヴェル54って・・うん、強いのだ強いのだが~・・あ~返ってコメントしづらい、どうしたらいい? この微妙な気持ち・・)


「ボール取るのは怖くて見学さん任せでしたが、投げるだけなら楽勝ですね! この調子で次へですよ見学さん!」


 いよいよ次が最終ステージうちゅう、相手はテコモチームです・・いざっ!


「ちょ、ちょっと待つのだ女神よ、我は先の戦いと貴さ・・いや、色々と体力的にも精神的にも疲弊しているのだ。悪いが我は最終スゥトゥエージに備えて、英気を養う事にする。女神よ、他の二人も気になるであろう? 後でまた寄ってくれ」


 ・・とは行かず。

 私は取り敢えずの休憩を挟みたいとの見学さんの意向を汲み、部屋を後にする事に。


「女神よ! 今日中に終わらせるぞ!!」

「はい、頑張りましょう!!」


 見学さんと別れ、流行る自分の気持ちを抑えて湿布さんの所へ。

 見学さんとは一時中断ですが、この高ぶった気持ちだけは湿布さんとごくつぶしさんまで持ち越して、一気に勢いよく進めちゃいましょう!!




「め、女神タン! ず、ずっと待ってたのにお、遅いし! さ、最近来るのお、遅くない? も、もぅオコだぞ、プンプン!」


「・・・・・・はい、すみません・・」


 湿布さんの妙な気持ちの悪い動きと今の言葉で、見学さんと別れる間際まであった私の意気込みは・・、一気に萎えました。

 とは言え、湿布さんもそしてコレタさんもいよいよ大詰めであり、それを考えるともしかすると・・。

 今日中に全員終われるかもしれないですね! そうなれば・・フヒヒ。


「テンション上がってきましたね!!」


「め、女神タンあ、相変わらずのご、ご尊顔でな、なによりであります!」


 余計なお世話ですよ湿布さん。私は今気分がいいんですほっといて下さい。


「ふふ、いよいよですね・・8-4、ここがラスト何ですよね?」

「う、うん、8-2、8-3め、女神タンが助けてくれたお陰でギリギリだったけど・・こ、ここまで無事に来る事が出来たのも、み、皆女神タンがい、色々協力してくれたお、お陰」


 確かに私は手助けしましたが、湿布さんの頑張りは本物ですよ。

 あんなにクヨクヨして、あんなに怖がりだったのに、泣きじゃくりながらも、汗まみれに泥まみれになりながらも、前に進もうとしたあなたの成長は誰にも否定する事何て出来ません。


「あはは、確かにギリギリでしたよね、あんなにいっぱいの大砲の弾とハンマーが飛び交う中、良くここまで・・心なしか前より沢山走れる様になりましたよね? それに少し痩せましたか?」


「そ、そうかな? じ、自分ではわ、わからないかも、あっ、あっ、で、でも前より体軽くなった気がするし、高くジャンプ出来る様になったし・・、そ、それもこれもぜ、全部女神タンがお、俺みたいな奴でも見捨てないで最後まで、め、面倒見てくれたお陰だよ・・、あ、ありがとう・・て、照れるな、何か・・」


「湿布さん・・」


 自信を持って胸を張って下さい、ちゃんと私はあなたの背中を見て来ましたから・・。


「さて、湿布さん。しんみりするのはここまでにしましょう!」


「そ、そうだね、こ、これからい、いよいよラストだって言うのにき、気合入れなきゃだ、だよね?」

「はい! ですが、今回もいつも通りに失敗してもいいからまずは・・」

「あ、あの! ・・あの女神タン! その事で、俺の方からお願いがあるんだけど・・あのね?」


「・・・・・・あ、は、はい! わかりました! それでやってみましょう!」


 まさか、湿布さんの方から作戦の提案をされるとは思いませんでしたよ、・・立派になりましたね。


「ま、まずはいつも通りお、俺に付いて来て、と、途中で泳ぐ所があるんだけど・・い、今の俺には息継ぎなしであそこを突破するのは、き、厳しいかな・・だ、だからお願い、さ、酸素ボンベみたいな物な、ないかな?」


「成る程、それでしたら解決方法は簡単ですよ」



「え? ほん・・ヴェ、ヴェバブアババブ、ゴ、ゴボガバボゴゴボヴァボボアバボ?」

(め、女神タン、こ、これ全然解決出来てないんだけど?)


 溶岩の海が所々に点在し、熱気漂うお城の中を二人協力しながら何とか潜り抜け、空に浮かぶ土管にどうしても入りたいと、何とかしがみ付いた湿布さんを引っ張り押し込め、ようやく辿り着いた問題の場所何ですが・・。


「っぷ・・あははははははははははっ!! し、湿布さん・・そ、それ! くふっ・・あははははははははははははっ!!」


 湿布さんのあ、頭だけ・・くふふ、二倍に膨れ上がっちゃってて・・ふ、風船みたいに・・あはははははははははっ!!


「ヴァ、ヴァビゴバッヴェブビ、ゴ、ゴヴィバゴバゴビバヴィババアボボボッヴェプップッピドゥッ!? ブボ、ボボヴィ・・」

(な、何笑ってるし、こ、こっちは真剣に息継ぎ出来なくて困ってるって言うかゴフッ!? く、苦しい・・)


「ご、ごめんなさい・・で、でもおかしくて! ・・~~・・れ、れいせプフッ! イ、イメージあははっ! お、落ち着けば出来まあはははははははっ!! やっぱり無理です。ちょ、直視出来ない・・くふふ、あははははははっ!!」


「ヴィ、ヴィブババアボボン、ヴィ、ヴィブババアボボン、ヴァンヴァンバボボボババンボバボボン・・ヴィ、ヴィブウババアボボン、ヴィヴィブババアボボン・・ヴァン、ヴァン、バボボボババンボバボボン・・ヴィヴィバボバブバベ? ボ、ヴィヴィブボン」

(い、いい加減にしろよ、お、落ち着くの、め、女神タンの方だし・・れ、冷静にってこっちはそ、それ所じゃ・・あっ! め、女神タン見てたお、俺今意外とれ、冷静じゃね? お、落ち着いてしゅ、集中・・)


 みるみるうちに顔が元通りの大きさになると、先程膨らんだ顔の大きさ位のシャボン玉が顔の回りにそのまま残り、湿布さんの顔を丁度覆う様な形になりました。


「やれば出来るじゃないですか! 神通力中々使いこなして来ましたね湿布さん!」

「で、出来た・・ぜぇぜぇ・・で、でも、な、何でだろ? ぜ、全然嬉しくないのは・・はぁはぁ」

「あっ意識はそのままにしてて下さいね、でないと無意識化では元に戻ってしまうので」


 私の提案した酸素ボンベに変るとっておきの秘策・・それは、本来体を作っている神通力を顔の回りだけ広げ、シャボン玉の様にして代用しようと言うものだったのですが、予想外の展開に、中々面白い物を見せてもらいましたね、っぷふぅ!


「そ、そうなの? ・・あっ! ほ、本当だ! 何か少し、ち、小さくなってる気がする・・ふぅふぅ」

「あっ・・いえ、それは湿布さんが吸い過ぎなんだと思いますよ、急いだ方がいいかもしれないですね、さぁ行きましょう!」

「そ、それもそうだな・・で、でもや、やっぱり釈然としないのは、た、多分め 女神タンのせい・・」


「何か言いましたか~? 行きますよ湿布さ~ん」


「は、は~い・・あっ! い、今思ったんだけど、ス、スッパキノコた、食べなくてもじ、神通力で大きくなれたんじゃ? ・・まっいっか、こ、これ結構疲れるし・・い、今行きま~す!」


 その後、イカさんと火の棒が回る水の中を泳ぎ土管へと、再び戻って来たお城、・・緊張する湿布さんの横顔を見て、私にも何となく伝わって来ました。


「この少し先にいるんだすね?」


「う、うん。ガッペはこの先にい、いる・・」

「そうなんですか・・湿布さんこんな時に何なのですが・・」

「ス、ストップ! ストップザ、女神タン! そ、それ以上は言わせないぜぇ!」


「え? いえでも今・・」


「あっ、あっ、あっ、は、初めて会った時、わ、別れ際にし、死亡フラグ立てたじょ、常習犯だからね! 女神タンこ、これが終わったらその続き聞くか、あっぶな!! い、今じ、自分で言う所だった! この土壇場で罠張るとか、め、女神タン策士すぎでしょ!」


 え? 私何も言わせてもらってないのですが・・。


「も、もう行くよ女神タン!」


「・・・・・・はい!」


「め、女神タン・・作戦通りよろしくお願いします! とう!」


 土管から飛び降りると走り出す湿布さん。

 湿布さんの考えた対最終戦、魔王ガッペ討伐作戦・・。



「め、女神タン! ガッペとの戦いなんだけど、ま、まず吊り橋の上で戦う事になるから」

「吊り橋ですか? 何でまたそんな所で・・、あっ! もしかして吊り橋効果狙ってるんですかね? こう、揺れると怖い! ってなるのを利用して・・」


「そ、そう、そんで仲良くなる・・ってバカー! マ、マメオとガッペが、な、仲良くなってどうする。そ、そうじゃなくって、た、倒す方法なんだけど、ガ、ガッペの丁度う、後ろ位にお、斧があって・・」


「わかりました! その斧を私が先に拾ってガッペに使わせない様にするんですね? そしてそのまま湿布さんにパス!」


「そ、そう! め、女神タンがぶん投げたお、斧を走りながらキャッチ! って あ、危ないしそれ! へ、下手したらこっちがそのままや、やられちゃうから・・」


「え? じゃあ・・私がそのまま後ろから・・ザクッ! っとガッペを亡き者にするんですか?」


「い、いや怖っ! こ、これそう言うゲームじゃないし、な、何で最後だけそ、そんなスプラッターな展開にしなきゃ・・って、女神タン何気に残忍な事平然と言ってない?」


「む~・・私が言ったんじゃなくって、湿布さんが言わせたんじゃないんですか・・」


「い、言わせてないし! お、俺がめ、女神タンに言わせるならもっと・・、あ~そ、それは置いておいてって言うか、こ、こっちが説明最後まで言わせてもらえてない、け、件について」


「じゃあ早く言って下さいよ、回想長いと文句言われますよ?」


「そ、それそっくりそのままめ、女神タンに返すし! と、とにかく橋落とせば勝ちだから・・」



「め、女神タン・・ふひふ・・、そ、それ今・・っはも・・思い出す所じゃな、ないし・・め、女神タンい、何時も思うけど・・すぶっ・・か、肝心な所・・何時も抜けてる~~~~!! っと!」


 ハンマーを投げる亀さんを踏んずけ、その勢いで問題の橋へと飛び降りる湿布さん。

 あ、あれが魔王ガッペ・・、納得の貫禄なのに意外とつぶらな瞳をしてらっしゃるんですね。


「ん・・はっ・・はぁはぁ・・ひぃ・・ぶひ・・」


 一心不乱に走る湿布さん。その走りに最早迷いなんてなく、そしてとても力強く・・。


「あへっ・・ふっ・・っふ・・あば・・」


 自分の四倍はあるガッペに怯む事なく突き進んでいく・・。

 もう最初の頃のビクビクしてうずくまっていた湿布さんはここにはいませんね・・。


「ひぃ・・め、めが・・そ、そろそろ・・」


 そうですね、私も急いで配置につかなければ・・。

 湿布さんを追い越し、ガッペの丁度真上に逆さになって手を広げ、振り返って湿布さんを待ちます。

 湿布さん。こちらは準備出来ましたよ・・あっ!


「湿布さんガッペが火を噴きました! 気を付けて下さい!!」


「ぶっは・・ふっ・・ひぃひぃ・・な、なんのこの位・・ふん!! うぁっちちちちちち!?」


 何とか飛び越す事で回避した湿布さんのお尻が若干・・、あー・・いえ火着いちゃってますね、大丈夫でしょうか?


「お、お尻の一つや二つーーー! め、女神タン行くよ!! ホップ、ステップ・・」


「は、はい!」


 湿布さんに向けて、弧を描く様に降り注ぐ大量のハンマーをガッペが投げつけ 私もそれに当たらない様に注意しながら、その瞬間が来るのを待ちます。


~ 「お、俺の今のジャンプ力じゃ・・ガッペを越えて斧にタッチするなんて と、とてもじゃないけど無理・・」 ~


「ジャーーーーーーンプ!!」


~ 「湿布さん・・タッチしただけじゃ橋は落ちませんよ? ちゃんと斧使って切り落とさなきゃ・・」 ~


 もうあなたは・・、あなたの姿は・・。


「め、女神ターーーーン!!」


 ヒーローそのもの・・。


「湿布さーーーーーん!!」


 誰にも文句何か言わせませんよ! その手を掴み、見事にこの橋渡し成功して見せます!!



~ 


「こ、これそう言うゲームじゃないってい、言ってるでしょ! と、とにかくめ 女神タンはサーカスの空中ブランコみたいに、さ、逆さまになってお、俺をキャッチして、そ、その勢いで振り子の様に投げてくれればいいから」


「えー・・、私逆さまになるんですか? 何か面倒臭いし、格好悪くないですか? サーカスと違ってただブラブラしてるだけですよ?」


「ブ、ブラブラとか、な、何か響きがエ、エロい・・め、女神タンもう一回こ、今度は、は、恥ずかしそうに・・」


「いい加減にしましょうね、この野郎・・湿布さん? 私その役降りてもいいんですよ? この野郎」




「あっ! あっ! せ、折角の、て、手に汗握るお、俺の見せ場が、め、女神タンが余計な所まで思い出すから~~!!」


 へ? 手に汗握る?


「やだ、気持ち悪い」


「へぁ?」


「「あっ・・」」


「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!! あだぁっ!! あ?」


 ・・・・湿布さん落ちちゃいました・・。



「いや~すみません・・つい」


「つ、遂じゃないし! め、女神タンが手を引っ込めたお陰で、ガ、ガッペの角の上に直にお、落ちたし・・、じょ、冗談抜きであ、新たなる開拓の扉開いちゃう所だったんだからね! つ、次は気をつけてよ! め、女神タン!」


「は、はい、すみません気をつけます。も、もう一度頑張りましょう!」



「・・はっはっふ・・んっあ! ひぃひぃ・・」


 再び走り出す湿布さん。私もそれに合わせて配置に付きます。


「こちらは準備オッケーですよ!」


「こ、今度は・・ぜ、絶対に・・つ、掴んでよ・・、ジャーーーーーンプ!!」


「は、はい! バッチ来いです!」


 再び跳び上がる湿布さん・・私はその手を掴む為両手を広げます。


「湿布さーーーーーん!!」


「め、女神ターーーーーーン!!」


 私はクレーンゲームのアーム・・。


「湿布さーーーーーーん!!」


「め、女神タ―――――――ン!!」


 掴んだら目的の場所まで運ぶまで離さない、アーム・・キャッチャーアームのシノ!!


「ダイ」


「ジョウ」


「「ブイ!!」」[パシッ!]


 良し掴んだ! 後はこのまま・・。


「「チチン・・ブイブあっ!?」」[ツルッ]


 あ、失敗・・。


「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!! あいだぁっ!! ああ~ん!」



「だ、だから! て、手を離しちゃダメだとあ、あれ程・・お~痛てて・・」


「湿布さん・・。今のは私の落ち度ではないです。完全に湿布さんの手汗が凄かったせいです」


「え? そ、それはお、俺の努力ではど、どうにも出来ない件について・・」

「いえ、どうにかしなければなりません。この問題を即興で解決しないと、また・・最初からです」

「お、俺にどうしろと・・」


「現状、秒数が刻一刻と進むこの状況の中、唯一可能性があるとすれば・・一つだけです」


「ゴ、ゴクリ・・そ、その方法とは・・」


 今度こそ最後にする為の、成長した湿布さんをヒーローとして、そして立派なエインヘリャルにする為の・・。


「あはははは~、うふふふふふふ~」


 この試練最後の私の秘策!! そう、それは!!


「あははばば・・うぷぷぶぶぶ・・ひぃひぃ・・め、女神タン・・こ、これ」


「もっと脇を絞めて! 気持ちを軽やかに! 出来るだけ笑顔で!」


「で、でも・・はふはふ・・こ、これ走りにくいし・・そ、そもそも・・」


「服の袖のみの吸水力のみに頼らない様にして下さい! 心頭滅却すれば火もまた涼しですよ、何事も形から気持ちから変えて行きましょう! はい、ニコ~」


「ニ、ニコ~・・ひぃひぃ・・め、女神タンこれや、やっぱりち、違う気が・・」


「何が違うんですか? 現状を打開するのにこれ以上ない策ですよ? 名付けて! 軽やかスキップで気分爽快、可憐なお嬢様走り作戦!! です!」


 この作戦は私の持てる知恵を最大限に使ったもの・・、脇を絞めれば汗が引くと何かで読んだ気がします。出来るだけ風に晒す様に手首は外側に、肘を曲げほんの少しでも下の熱気より高い位置へ手を・・。

 そして何より大事なのが笑顔! 笑顔を作る事でなんちゃらと言う物質が分泌されて、気持ちが軽やかになるそうなんです。


「か、軽やか・・む、無理が・・」


 ・・・・正直私も無理があると思っています。ですが、もう湿布さんの残り人数はゼロ・・、つまりこれが最後のチャンスなんです。


「湿布さん失速してます! 諦めないで下さい! 何の為にここまで頑張ったんですか? 私は・・、私は絶対に掴みます!! だから頑張って!!」


 ・・ですからこれが私から出来る最大限の助力、・・神通力・・クリエイト・・ダマスクローズ・・。


「ローズオットー!!」


「ぜぇぜ・・え? ふ、ふんふん・・あっ何かトロンとする様な甘い香りが・・な、何だか気分があ、明るくなってきた気が・・よ、良し! うおおおおおおぉぉぉおお!!」


「湿布さーーーーーん!!」


「め、女神ターーーーーーン!!」


[パシッ!]良し掴んだ! ・・・・今度こそ!


「行っけぇぇぇぇぇええええ!!」


 疾風の如き勢いで飛んで行く湿布さん。

 行きなさい湿布さん・・誰の為でもなく・・。


「私のボーナスの為に!!」


「と、飛べないチャーシューは、ただのチャーシュ~~~~!!」


 沈みゆくガッペ・・、終りを向かえ勝利の余韻と焦燥感を噛み締める間もなく 姫を助ける為階段を降りる湿布さん。



「何か終わっちゃうと意外とあっけない感じなんですね~・・」


 あんなに必死になって、魔王ガッペを見事に倒したと言うのに・・。


「う、うん・・そ、そうだね・・所でめ、女神タン? 一つ聞いていい?」


 何ですかね~・・、この勝利に対する物とは別の意味での焦燥感と言いますか 虚無感と言いますか・・。


「はい・・何でしょう? 答えられるものでしたら・・」


 多分、私が今思っているのと同じ事を湿布さんは思っていると思うんですけど・・。


「う、うん。あのね? ・・何で・・何で・・」

「えっと・・お気持ちはわかりますよ? 私だって多分今湿布と同じ気持ちですからね・・」

「な、何で、ピ、ピンチ姫だけドットなの? ほ、他があんなに綺麗なのに、か 肝心の姫だけむ、寧ろ再現度高い・・さ、再現度高すぎてモザイクかかるレベル・・」


 やっぱり、そう思いましたか・・、あ~ここは無理やりにでも、頑張った湿布さんを盛り上げるしか、ないですよね?


「い、いや~凄いですね! 湿布さんおめでとうございます!」


「へ? あっ! う、うん! あ、ありがとう!」


(め、女神タン俺の為に、む、無理やり盛り上げ様としてくれてる。こ、ここはい、一緒になって、も、盛り上がらないと)


「それでですね、先程の気になった事なのですが、私からも一つ質問があります」

「へ? 気になった事? あ、も、もしかしてガッペとの戦う前に言おうとしてた事? な、何? ド、ドンと聞いてよ女神タン!」

「はい、えっとですね、海を泳いでいた時に」

「ふんふん、お、泳いでたねふ、二人で」

「えぇ、その時火の棒がクルクルと回って妨害・・」

「あっ!あっ! そ、それは気にしたら負けだから! そ、そう言う仕様だからさ! め、女神タン」


「ぇえ? そ、そう言うものなんですか?」


「そ、そう言うものなの」


「・・そう言うものですか・・」


「な、何か女神タンな、納得いってない感じ?」


「あっいえ、大丈夫です」


 ・・・・・・。


((も、盛り上がらない・・))


「あー・・、あっ! 神に与えられた命を無駄に散らし、輪廻より外れた哀れなる子羊よ・・」


「え? め、女神タンい、いきなり思い出したかの様に、め、女神様モード? そ、それに子羊じゃなくってお、狼だと何度言えば・・」


「あなたはその努力と気概で試練を達成し、消え行く定めより脱する事で、見事免罪符を手に入れ、晴れて今この時より、その罪を許され・・」


「あ、相変わらずさ、最後まで言い切るまでス、スルーする定期です、はい」


「そしてその勇気ある行動を称賛し、我々神の僕として、ヴァルハラへと迎え入れる事をここに認めます」


「な、何か改まって言われると、ど、どうしていいかわからなく、お、落ち着かない感じ・・ん? い、今しもべって言った? い、今サラッと神の僕って言ったよね? 女神タン?」


「勇者湿布さん・・おめでとうございます。良く・・ここまで・・がっ・・がんば・・」

「め、めがびだん・・だ、だんが誤魔化ざれだ気がずるげど・・お、俺がんばっだよぉ!」

「は、はい・・」

「づ、づらぐでも・・ぐ、ぐるじくでも・・」

「う、うんうん・・」

「うっ・・うわああああぁあああぁぁぁああ!! め、めがびだーーーん!! あ、あれ?」


「すいませんが、抱き付こうとするの止めて下さい・・」


「あっ・・はい・・すみません」


 湿布さんこれからの活躍に期待してますからね、これからもよろしくお願いします。




「そうです。ごめんなさいミキちゃん。皆にも言っておいて下さい。今日はこのままお昼は軽く軽食を済ませ・・え? ち、違いますよ! 病気なんかじゃありませんよ!」

 

 ・・食いしん坊って酷いですね、私にどんなイメージ持ってるんですか? 私だって最低限の節度は守りますし、そんなにしょっちゅう食べてばかり・・。


「・・む~違うって言ってるじゃないですか~、私だってやる時はやるんですよ? さっきだって頑張って・・へ?」


 あ~・・メ~ちゃん相変わらずですね・・。


「言わせておいて上げて下さい、それよりソナエちゃんの方が気になりますね・・そう言うの言われて一番堪えちゃうのソナエちゃんですから、色々考え過ぎちゃう子じゃないですか・・え!? 飲みにですか? ミキちゃん・・意外と懲りてないんですね・・・・いや、飲みたいのミキちゃんでしょ? わかりましたよ、今日は無理なのでまた後日に・・えぇ、それでよろしくお願いします」


 ・・・・ふぅ~、そうですか、・・メ~ちゃんも一人終ったんですね、そうなると三カ月現在、向こうはアンちゃんが二人目もでしたからこれで四人・・、それに対してこっちは私が現状湿布さんで一人目で、キョウちゃんの一人、この前ミキちゃんが一人終わって、合計で三人で結果一人分負けてますね・・う~ん、競争事態は別にどうでもいいのですが、こうなるとやはりソナエちゃんが心配ですね、負けている原因が自分のせいだと思い込まなければいいのですが・・。


 今までは私も成果ゼロだったからまだ良かったのですが、こう言うのってあからさまに浮き彫りになると、途端に弱気になっちゃう方がいますが、争う事に夢中になるあまり自分の持ち味と言いますか、いい所を自分自身で潰してしまっている事が多いんですよね。


 ソナエちゃん・・私が手を抜いてソナエちゃんが一人終わるまで、このままサボる事は簡単ですが、それをされて嬉しく思わないのは知っていますから、何より更にそれが原因でこの勝負に負けてしまったりしたら、その方が傷付くと思いますので、私はソナエちゃんや皆の為にも、何より自分自身の為にもこのまま全力で頑張りますからね。


「・・・・さてっと、頑張るにもまずは腹ごしらえを~っと、ん~どうせなら目を瞑って並べて選びますかね、・・さてさて~ど、れ、に、しようかな、天の神様の言うと、お、り! 君に決めた!」


 どれどれ~・・君の名は? ・・げっ! 激辛黒豚チャーシューとんこつラーメン・・な、何故これが? い、いえ・・好奇心で自分で購入して、何時食べ様かと思っていたので別にいいのですが・・、何故このタイミングで・・。


「え、選んじゃった物は仕方がありません! お湯を入れて三分後に食しましょう・・」


[メキメキいってる! メキメキいってますから! メキメキいってる! メキメキいってますから! メキメキいカチッ!]


 タイマーが鳴ってしまいました・・。

 ど、どうやら、三分経ってしまったみたいですね・・あ、開けますよ・・ゴクッ。

 目、目が~~~! 鼻が~~!! あ、開けただけでこの破壊力! ・・た、食べたら、どうなっちゃうんでしょうか?

 ・・えぇい! 怯んでいても仕方がありませんここは一気に! 実食!!


「そ、それじゃあいただきま~す!」


 ズゥズズズ・・あれ? 思ったほど、・・ズズッ~ズ・・・・あはっ! な~んだ食べたら意外と平ッ!?


「あっ! かっ、~~~~~~~~~~!! み、みじゅ~~~~~!!」



「ふぇ? ・・・・どふぉひちゃったんれすか? フォレタしゃん・・」


 私が到着した時、既に目の前に巨大なぎゅうまおうと思しき顔が、猿のごくつぶしさんと対峙している所でした。

 進んでる? ん~っと・・これってクライマックスまじか何じゃないですか?


「い、いやそっちの方こそどうしちゃったんだな? 唇真っ赤だし若干涙目なんだな」

「ふぁ、こ、これふぁ・・、ふぁっ!」


 し、しまったですよ~! ど、どうしよう私今・・真っ当に喋れないじゃないですかー! 

 こ、こんな状態では読む事が出来ない・・、もうコレタさんも大詰めだと言うのに、後先考えずにあんなの食べるなんて! 私って本当バカ・・。


「う~ん、何があったのか知らないけど、どうやら喋れないんだな? ならそのまま見ているんだな」


「ふぇ? フォ、フォレタしゃん・・しょ、しょれって・・」


「今まで・・本当にお世話になったんだな・・、いない間に小さい頃何でこのゲームに感動したのか、思い出してたんだな」


「フォレタしゃん?」


「俺・・最初に桃を食べた時なんだな、自分の過去を全部振り返って、本当は色んな人にお世話になって、大事にされた事思い出したんだな」


「・・フォレタしゃん」


「俺・・実は小槌を投げつけられた時なんだな、何だかずっと曇っていた空が一気に晴れた様な、そんな清々しい気持ちになってたんだな」


「・・フォレタ・・しゃん」


「俺・・ひねくれて誰かに当て付けたり諦めたりして、本当はずっと気付いていたけど自分の素直な気持ち、隠して来てたんだな」


「フォレタしゃん!」


「俺・・そんな自分の素直な気持ちすら利用して・・ここまで女神様に全部押し付けて来てしまったんだな」


「フォ、フォレタしゃん・・」


「知ってるんだな? このゲーム・・素直、がテーマなんだな・・」


「フォレタしゃん・・」


「女神様! 前も言った言葉もあるけど、今回は全部本心なんだな! 大事なセリフ・・最後くらい自分で終わらせるんだな!!」


「フォレタしゃん!!」


「だから、そこで黙って見届けるんだな!!」


「フォ、フォ~レ~タしゃ~ん!」


「コレタ!! なんだな!」


 えぇ、えぇ、見てますとも! 本当にしばらく目を離した隙にこんなにも頼もしく成長なさって・・、ど、どうせなら・・。

 どうせなら、私が見てる時に成長して欲しかったーー!! なんかこれじゃ勝手に独り立ちしたみたいじゃないですかーー!!

 ですが、嬉しい事に変わりありません。


「わひゃりまひゅたフォレタしゃん・・」


 あなたの活躍、見届けさせて頂きます・・っが! その前に。


「れしゅが、まずは今どふぉなっへるのひゃ教ひぃえて下ひゃい」

「え? え? 今何て言ったかもう一度言って欲しいんだな」


「れしゅから!! 今どんなしょうきょうれしゅか? って聞いたんれしゅよ!」


「うん、成る程全くわからないんだな、取り敢えずポンコツ女神はそこで黙って見てるんだな」


「誰が、ふぉんこちゅれしゅか!! れいせいしてくらしゃい!!」


「女神様何言ってるか全然わからない上にうるさいんだな、ついでにさっきからフンスフンス牛魔王の鼻息もうるさいんだな、無視してとっとと進めて行かないと うるさくて敵わないんだな」


 全然理解してもらえない・・。


「きさま、いつからぜいにんになりさがった。おれとくんで、このよにあくのはなをさかせるというやくそくをわすれたのか? ・・・・・・なんだな」


 そんな私を放置し、そのまま続きを読み始めるコレタさん・・。


「そんなことはおぼえていない・・・・おれはうまれかわったんだ・・・・・・なんだな」


 コレタさんが読み進める中でようやく何となく理解し始めたのですが、どうやら連れて来た二人の仲間は釜茹でにされる為吊るされ、女の子? のコレタさんは裏切者の豚さんに見張られ、味方の殆どが捕らえられた状態に・・。

 猿のごくつぶしさんが負けた時点で全滅、ぎゅうまおうを倒せば世界に平和が戻ると言う、言わば最終決戦で間違いないみたいです。


 私この状況に間に合って良かったですよ、一番いい所見逃してしまう可能性十分にありましたね、これ。

 にょいぼう、ばしょうせんと次々に繰り出すもぎゅうまおうに効かず、光る小槌を掲げるコレタさん。


「ぐわ~~~~っ! やめろ~~っ! ・・・・・・なんだな」


 苦しみだすぎゅうまおう・・ですが、ぼうさんがへをこえた。ぼうさんがへをこえたと、苦し紛れに告知しだすぎゅうまおう・・。

 何でこのタイミングでお坊さんがオナラした事バラすんですかね? って言うか何で知ってるんですか? かなり前の村でカミングアウトした情報ですよ? 

 ・・・・噂の力って怖い・・。


「あっ!? あだだだだだだだだだ!! い、痛いんだな! あ、頭がキリキリするんだな!」


 ・・・・え~~~~~っ!? え? 何で? 何でそれ言われてあなたが苦しんでるんですか? そ、そう言えば前回の時もそうだった様な・・っ! も、もしかして・・。


「フォ、フォレタしゃん! もひかひゅて、オナヒャしひゃっひゃのおしゃるしゃんの方でひゅか?」

「あだ! あだだ!! え? な、何て言ったんだな? い、今聞かなきゃいけない事なんだだだだだだ!!」


 あー・・そう言われると、良く考えたらどうでもいい情報でしたね。


「いだだだだだだだ!! も、もう無理なんだな!! こ、これ以上・・ギ、ギブ・・アッ」


 それよりも・・頭を抱え頭痛に苦しんでいるコレタさんを何とかしてあげた方が・・。

 ですが、私はこんな状態・・・・うん、せめて少しでも和らぐ様に、そして困難に打ち勝てる様に、・・神通力・・クリエイト・・ジュニパーベリー・・。


「ヒュニパー!!」


「ぐがが・・い、痛・・? な、何なんだな? こ、この香り? 何だか力が湧いて来る様な・・、どんな魔物が来てもドンと来い! みたいな気持ちになって来たんだな! こ、これなら・・い、行けそうなんだな!」


 どうやらジュニパーが一瞬でやってくれたました。・・気休め程度のつもりだったんですけど、・・それにそんなに早くは・・えぇい! この際そんなの関係ないです!

 頭痛に苦しみ、うめきながらも必死に読み進めるコレタさん・・頑張って下さい! 私にはこれくらいしかして上げられませんが、どうか諦めずにこの試練乗り越えて下さい! どうか・・。



 ・・何とか読み切り、人を変えるコレタさん。

 人を変え女の子? のコレタさんになるも、その顔は真っ赤なゆでだこの様になり脂汗と厚化粧で・・。


「フォレタしゃんぷっしゃ!!」

「ぜぇぜぇ・・い、今何て言ったのか・・な、何となくわかったんだな、・・はぁはぁ・・よ、余計なお世話なんだな!」


 捕らえられ、ロープで縛られた状態のコレタさんとそれを見張る裏切者の豚さん。

 そう言えば、良く考えたら何でお猿さんと女の子? だけ人変ってもずっとコレタさんのまま何でしょう? 他の方は変れば元通りなのに・・。

 モニターの画面に映し出されたぎゅうまおうに苦しめられるごくつぶしさん、それを見て裏切者の豚さんを説得する女の子? コレタさん。


「ぶっさ!! これ酷いんだな!! 汗で化粧が垂れて黒い涙になっちゃってるんだな、・・ブサメンレベルが上がって、ブサ力が増してしまったんだな」


 あっ、どうやらひとかえるで豚さんに変って改めて女の子? を見つめてしまった様ですね、・・どうやら自分の顔がバケ・・すみません。かける言葉がありません。

 説得に応じ女の子? を縛っていたロープを外す豚さん。

 ごくつぶしさんを助けに向かう二人、一足早く決着が付き、その場に倒れ込むごくつぶしさん。

 形勢はふり、駆け付けた二人、勝利を確信したぎゅまおう・・。

 倒れたごくつぶしさんを見て、覚悟を決め馬鍬を握りしめる豚さん。


 「よ~~し! いっちょうなにわのどこんじょ、みせたろかい!」


 ぎゅうまおう目掛けて馬鍬を振り回し勇ましく戦う豚さん・・その隙にごくつぶしさんへと駆け寄るバケモ・・女の子? コレタさん。

 ごくつぶしさんへと人を変え、再開を喜ぶコレタさん達・・。


 絵面がヤバイですね・・。


 その瞬間、ごくつぶしさんの頭の中に直におしゃかさまより、ありがたいお言葉が告げられました。


「さあ、ごくつぶしよ、いまこそ、おまえのすなおなきもちをこれたにはなすがよい、こころにうかんでいることばを、そのままくちにだすのだ・・・・・・なんだな」


 くぅ~~~! 何でしょうね? 心配かけてごめんねとか、ありがとうとか 後々・・ん~とにかく感動の名シーンなんじゃないですかね?

 過去少年コレタ君が感動した場面を今、私も見ているんですね~そう考えると何だか・・、ちょっとくすぐったい気持ちになりますよ。


「すき・・・・・・なんだな」


 ん? あ、あれ? 今何て?

 今・・この最終決戦のどさくさに紛れて、愛の告白をしませんでしたか? このお猿さん・・。

 豚さんが必死に戦ってくれてる間に何を言っちゃってるんですか!! ぎゅうまおうそっちのけで、そんな言葉正解な訳・・ねぇ? おしゃかさま?


 ごくつぶしのあたまをしめつけていたきんのわが、ついにはずれた・・。


 ・・・・ん? どう言う事なんですか? 何で外れたんです? もしかして愛の力? おしゃかさま~? 無言? スルーですか? 

 完全に今この二人空気読めてない感じでしたよ~?

 ・・・・もしかして、おしゃかさまが空気読んだ感じですか? 正解じゃないけど場の空気読んだから無言で外したんです? 

 豚さんも何か言ってやって下さいよ~、豚さん!?


 はっかいがやられた! 


 ・・・・やられてるーー!! 結果的に弱点のきんのわ外れたからいいけど、その間に豚さんやられちゃってるーー!

 二人掛かりで戦うチャンス逃しちゃってますよ! ぎゅうまおうに「なかなかやる」なんて言わせた程の実力者だったのに・・。

 豚さん・・裏切者扱いして腹を立ててすみませんでした。・・そんなになるまで必死に戦ってくれた事、私忘れませんからね・・うぅ・・。


「女神様、感動の再開シーンでお涙する気持ちは凄くわかるんだな、だけど今は堪えて手伝って欲しいんだな」


「フォレタしゃん?」


「俺はあいつを倒すんだな、だけどコントローラ握りながら動き回るのは、難しいんだな、だから・・コントローラー女神様に渡すんだな」


「・・フォレタしゃん?」


 大事な所は自分でやるって・・。


「このゲームと女神様が教えてくれたんだな、信じる気持ち・・とっても大切なんだな」


「フォレタしゃん・・」


「ミスは許されないんだな、これからとても大事な局面を迎えるんだな、これは女神様だから託すんだな」


「フォレタしゃん!」


 あんなに軽かったコントローラーが、今はズッシリと重たいですね。


「ぎゅうまおうの顔に丁度攻撃出来る様に、コントローラーを動かしてほしいんだな!」


 ・・スーハー・・こんな私ですが、頼られた以上やる時はやる所見せましょう!!


「準備はいいんだな?」


「はい!」


「それじゃあ読み上げるんだな」


「「まけるもんか!」・・・・・・なんだな!」


 その言葉を合図に雲の塊りの様な物になるコレタさん。

 成る程この十字のボタンを使ってコレタさんを自由に動かし、エーボタンをタイミング良く押す事で、豚さんの時みたいに棒をピロピロするんですね? 任せて下さい。

 もう慣れた物ですよって、・・何ですか? 同じ様な雲の塊りがぎゅうまおうからいくつも飛んで弾けて跳ね返って・・。


「あれに当たらない様に避けながら、ぎゅうまおうの顔の前まで俺を動かすんだな!」


 む、無茶苦茶な事言いますねコレタさん・・これ、ほっ、よっ、それ! 結構難しいですよ? あ、あれ? ・・え、え~っと、どれがコレタさん?


「め、女神様、コントローラー持って体を動かすんじゃなくって、ボタンを操作して欲しいんだな!」


 そ、そんなのわかって・・え、えっと声がしたのあれですよね?


「あっ! 当たっ! う、うぁああ!」


 あっ良かった正解でしたよ、あれを動かして行けばいいんですね。


「か、間一髪避けたんだな、向こうの方が早いから、先読みして動かさないと当たるんだな!」


 そ、そんな事言ったって・・うぅ~・・あっ! でも今チャンスなんじゃ! えい!


[ズン!]「ぐぐっ・・、やるな・・」


 あはっ、当たりましたよ! 見ましたかコレタさん? 私だってやる時はやるんです!


「やったんだな、その調子で後七回攻撃を当てるんだな! も、もう次来てるんだな!」


 え、え~~~~~!? う、嘘ですよね? あんなの後七回も・・・・、ん~~~~もぅ! こうなったらヤケクソですよ! やってやりますよ! 

 やってやりますとも! 豚さんの敵! ついでに世界平和の為にーーー!!



「ぐぎゃああ~~~っ!」


 ヤケクソになった甲斐もあり、何度か危くなるもどうにか倒す事に成功・・つ 疲れた~コントローラー握る手が緊張したせいで汗が、それに腕が強張ってしまって、若干手が震えてますよ・・。

 正直ぎゅうまおうとの戦いは二度とやりたくないですね・・。


「良くあれを初めてでノーミスでやれたんだな、見直したんだな」

「え? ノーミスって・・コレタさんミスは許されないって言ったじゃないですか! ・・だから」


「ん? あぁ、ボス戦で失敗したらやり直しになるから言っただけなんだな、多少ミスしても大丈夫なんだな、常識的に考えるんだな、八回もダメージ与えなきゃいけない相手に、こっちは一回もミスしちゃいけない何て、あり得ないんだな」


「そ、そんな・・だから必死に・・」

「女神様そう言えば、いつの間にかちゃんと喋れる様になってるんだな、これで安心なんだな」

「へ? あー・・そう言えば・・そうですね」


「じゃあ続き読むんだな」


「は、はい? 今何て言いました?」

「続き読むんだなって言ったんだな、一度で聞いて欲しいんだな」

「い、いえいえいえいえ、何言っちゃてるんですか! 大事なセリフや最後くらい自分で終わらせると、自分で言ったじゃないですか?」


「大事なセリフ? もう言ったんだな」


「え? ど、どこでですか?」


「すきって言ったんだな」


「え? あっ、あれですか? じゃ、じゃあ最後くらいって言ってた方は? まだ最後まで読んでないので終わってませんよね?」

「最後って最後の戦いの事言ってたんだな、そのくらいわかって欲しんだな」

「い、いやでも・・素直な気持ちで、えっと心が晴れた様なとか・・」

「ん? あぁそんな事言ったんだな、何か考えてる事がそのまま口に出ちゃう様になっちゃったみたいなんだな、ぎゅうまおう倒したせいで、ちょっと疲れたんだな、後は任せたんだな」


 嘘付けなくなっただけって事ですか? それじゃ今までと殆ど変わらないんじゃ・・。


「ま、任されても私も今ので腕がですね!」

「女神様、ここからが大事な局面なんだな、コントローラー託して、女神様それ受け取って頷いたんだな、女神が嘘付いてもいいんだな? 信用ガタ落ちなんだな」


「う、嘘だなんて! あ、あれはだって・・ううぅ~~ぁあ! もうわかりましたよ! ヤケクソ継続でやってやりますよ!」


 コレタさんは、素直になってもごくつぶしでした。


「ありがとう・・なんだな」


「むぅ~・・今何か言いました?」

「ありがとうって言ったんだな、一度で聞いて欲しいんだな」

「またそうやって私が調子に乗ると思ってお礼言ったフリして・・もぅいいですよ、ごくつぶしさんは黙って見てればいいんですよ・・・・・・も~~っ!」

「今ちょっとオオカミ少年の気持ちわかった気がするんだな、ここからは寧ろ、今まで協力してくれた女神様だからこそ読んでほしかった所なんだな」

「ところで、おっちゃんとごじょうは・・・・?」


 もやもやした気持ちを抱えて読み進める文章、やっぱり腕がちょっと厳しいですね・・。

 どうやら豚さん無事だったみたいです・・そう言えば釜茹での二人は・・。



「よがっだ~~~~!! みだざん無事でしだ~~~!!」


「うんうん、その気持ち良くわかるんだな、お約束で砦壊れたけど、小槌のお陰で皆無事脱出出来たんだな、めでたしめでたし、なんだな」


 てっきりきんとうんで脱出するのかと思いきや「それ、女神様いない間に壊れちゃったんだな」と言われ曇って壊れるんだ~と疑問に思った以上に、後からふと冷静になって思い返して、こづちが以外にもかなり万能だった事に少々驚きました。


「ずぐ~だ~!! りゅうぎぢ~無事で本当によがっだ~~~!! 勝手に抜げ出じだのは~、詐欺だけど~再開出来で本当によがっだでずね~~~!!」


「え? そっちなんだな? 女神様前から思ってけど、ちょっとズレてるんだな」


 平和になったお陰で暗雲立ち込め禍々しかった景色が、見る見るうちに綺麗な青々とした平原に、花咲き乱れる景色へと変って行きました。

 私の心の暗雲だけ残して・・すこしのしんぼうじゃだそうです。


「ローディング入る度に少しの辛抱するんだな、皆何もかもが懐かしいんだな」


 私は納得がいきません! ここからがいい所なんじゃないんですか? それなのに・・、フローリングの張替えの為に少し辛抱するってそれを懐かしむコレタさんの気持ちがわかりませんよ!


 ・・でもふと見たコレタさんの横顔は、何だか何時もより優しい目をしている様な気がして、私にはわからない何か大切な物がそこにあるんだと、ほんの少しだけ理解出来た様な・・気がします。




[ガ・・チャ]「・・・・こんばんは~・・」


「ん? お、ぉお! め、女神か! 待っていたのだ! 貴様に見せたいものが! あー・・そうだった余りにも来るのが遅くて・・め、女神? どうしたのだその顔? 泣き腫らした様に目の回り真っ赤だぞ? 塩素たっぷりのプールででも泳いでいたのか? 待っていろ、今子供ソフトな例の目薬を持って来てやろう」


 ・・・・・・。


「ほ、ほら、これを差せ、そうすれば、あら不思議どんなに真っ赤だったお目々も真っ白にー・・め、女神?」


「う、うわああああぁぁぁぁあああ!! 再開出来て良かったですぅよぉお!! これからは一緒に・・一緒に暮らせる・・どうか、どうか末永くお幸せに・・ぐすっ・・おしゃかさまのバカ~~~!! でもいい仕事してました~~!!」


「わっ! わっ! な、泣くな女神よ! き、貴様が泣き出すと我はロクな目に遭っていないのだ!」


(れ、冷静になるのだ! お、落ち着け・・大丈夫だ何時もはドア周辺で災難に見舞われているが、現状を見て見ろ、完全に部屋の中ではないか、ここなら妖精も来る事はない、・・ゆっくり泣き止んでから理由を聞いても遅くはない、そうではないか?)


「女神よ、何があったのかは知らないが、取り敢えず落ち着くのだ。何だったら目薬を我直々にあっ、差してやってもいいのだぞ?」


(何か、泣いている者に目薬を差すのは少し違う気がするが、この際落ち着いてもらえるならば何でもいいだろう・・)


「ぞれば、げっごうでず・・っどいいだいのでずが・・ズビッ・・私苦手なのでお願いじまず・・」

「ふははっ、そうかそうか、女神よ、差すか! ならばそこの席に座るがいい、貴様の目に目薬をポンチョポンチョと差す! その大役この境界線上の観測者に あっ、まっかされろ~」


[コンコン・・ガチャ]「失礼します。ご注文頂いた夕食をお持ち・・・・致しました・・」


「んっでは失礼! ・・・・して・・」


「「あっ・・」」「あっ! ようぜいざん!」


 ノックして静かに入って来た妖精さんは、キュルキュルと配膳カートを押し、こちらに歩いてくる途中で見学さんと目が合い立ち止まってしまいました。

 夕食って言ってましたね? 涙で目が滲んで何が乗っているのか見えませんが、・・クンクン・・ズビビッ・・鼻が詰って匂いも嗅げませんね、あれ何なんでしょうか? 

 お鍋の様に見えますが・・。


(し、しまった~~~!! 女神が来るの遅かったから、待っている間にドゥウィナーでもと頼んだのスッカリ忘れていたー!!)


「め、女神様! どうされたのですか? 何故泣いておられ・・それにあなた様は、それは何をしようと? ・・まさかあなた様は、また・・・・」


「ち、違うのだ! 我は何もしていない! ぜ、前回のも誤解! その前のも誤解だったではないか! せ、説明と弁明をさせてくれ!」


「それは! ・・確かにそうですね、わかりました。では何故そのような状態になったのかご説明願えますか?」

「そ、それが我にもわからんのだ! こちらへ来た途端突然泣き出し、それで目が真っ赤だったので、目薬を差そうとさっきの状態になったと言う訳なのだ」


「はい? ・・・・・・女神様? 本当ですか?」


「はい・・本当ですよ、ぐすっ、私目薬差すの苦手なので頼みました・・」

「はぁ・・どうやら本当の様ですね、ですが何故目薬を? 普通涙を拭く物を渡されませんか?」


「そう言われると・・何故ですか?」


 確かに、あの状況で目薬っておかしいですね・・何故なんでしょうか?


「え? さ、さぁ? それは我にも・・・・っは!」


(ちょ、ちょっと待て、何故二人してそんな目で我を見る! こ、これはもしや我の返答次第によっては一気に心象が悪くなり、立場が危うくなるあれではないのか? 返答は慎重に選ばねば・・どれだ! どれを選べば・・)


「黙っているのが怪しいですね、あなた実は別の目的があって、その様な行動に及んだのではありませんか?」

「べ、別の目的って何ですか?」


(しまったー! タイム制だったか! 慎重に返答選んでいる間に沈黙ルート入ってしまうとは・・)


「そ、それはその・・、目薬を差すフリをしてですね、こうガバッと! 抱きしめてそしてこう耳元で囁くんです。・・俺が君を慰めて上げるよ」


「ええっ! な、何・・」


「いや! 行かないから! そんなルラヴゥでクォメディーな展開にはならんから!」


「そうですか、でしたら・・忘れさせてやるよ! っとヨウ様。女神様が、え? って驚き意表をつかれたその瞬間いきなり唇を! 強引に奪われながらも身を任せてしまう女神様・・、心の中では夫を思い複雑な気持ちに・・ですが、夫が出張でいなく寂しい心の隙間を埋めてくれる彼に今だけはと・・」


「えええっ! 私って何時の間に結婚・・」


「それもない! 絶対ない! そんなお昼でドゥラマティックな展開ありえんから! 確実にドロドロする奴! お昼に母親が見ていて、ねぇママあれって何してる所なの? って子供に言われちゃうあれ!」


「う~ん・・それでしたら、日頃酷い目に遭わされている女神様に対しての恨みで、用意していたロープで後ろから・・グッ!! その現場を偶然目撃してしまった私!」


「ええぇえっ! ってそれは無いですよいくらなんでも、こう見えて私行いはいい方なんですよ? 他者に恨まれる様なそんな事は・・」


(何時の間にか夫がいた方があり得ないんじゃ・・)


「そうだ! それも絶対ない! そんなスァスペンスでドゥラマティックな展開・・いや、あるかもしれん」


「「えっ? あるんですか!?」」


「無いと思っていたのか二人共! よ~く自分の胸に手を当てて聞いてみろ!」


(それにしても、何時も澄ました顔している妖精さんが、女神の事となると何時も若干取り乱すのは何故だ? この女神に関してだけか? それとも他の神に対しても同じ対応なのか? 

 ふむ、考えてもわからんな・・だが、これだけは言える。この妖精さん・・ドゥラマ大好きっ子でまず間違いないだろう。わかりやすい程目付きが変ったからな・・あー二人共? 考える時間少々長くないか?)


「「・・・・・・?」」


「おい、二人揃って首傾げちゃったよ! え~? 本当に無いのか? ほら、あるだろう・・我に対する数々の・・ほら!」


「「・・・・・・?」」


「えっ無いの!? その方がビックリなのだが! いや、ビックリ以前にショック・・」


(えぇい、このまま進んでは心象が悪くなる一方、この流れを変える何か・・何かないのか? ・・・・そうだ!)


「め、女神よ大夫落ち着いた様だし、我を怪しむ前に言う事があるのではないか?」


 え? 言う事? ・・・・あっ!


(そう! それだ! そのあっ! を我ら二人に言うのだ)


「すみません。私・・」


(うんうん。いいぞ、言ってやるのだ女神よ! そもそも何故泣いていたのかを・・)


「さっきから、見学さんが今日の夕飯何頼んだのか気になっていたんです。教えてもらっていいですか?」


「そうそう、我の頼んだ夕飯が気になって目からヨダレが・・って違う!」


「え? あぁ、本日は特上牛しゃぶしゃぶをとの事でしたので、具材、タレ、コンロ等お持ち致しましたのですが・・それが?」

「はい、満足です! ちなみにそちらのジャーには、何が入っているのでしょうか?」

「えぇ? えっと・・炊き込みご飯です」

「・・・・っふ、ちなみに・・具は?」

「・・・・五目・・です」


「良し! ならば結構! ありがとうございました!」


「いや、全然ちがーう! そんなの聞いてほしかったのではないわ! この食いしん坊さんが! そうではなくて・・」


「あっ、申し訳ありません・・炊き込みご飯とだけお聞しておりましたので、五目はお気に召さなかったのでしょうか? 急いでお取替えを・・」


「それもちがーう! 全然申し分ない! 寧ろならば結構! そこではなーい!」


「わかりましたよ! 見学さんが聞きたかったのはズバリ! だしの種類の事でしょう!」

「成る程、それでしたら四種類ご用意させて・・」


「ん~~・・惜しいっくない! 食べ物からいい加減離れてくれんか? そうではなくて、我が言いたいのは・・」


「はい! わかり・・あっ! ピンポ~ン!」


「何で早押しクイズみたいになっているのか知らんが、女神君の答え!」


「・・ドンド・・」

「言わせるか! はい、ブ~!!」 


「食べ物から離れる・・っ! わかりました。ぁ・・ピ、ピンポーン・・」


「んーそのちょっと恥じらいが感じられるピンポン、妖精さんグッドですよ! グッド! では、妖精君の答え!」


「このカセットコンロの使い方の事でしょうか? それでしたら・・」


「んん~~確かに食べ物から離れたけど、それも違う! っと言うかいい加減言わせろ二人共!」


「くすっ、冗談です。言わなくてもわかっていますよ、女神様? 何故お泣きになられていたのですか? その部分が不明瞭だとこの話はどこまで行っても平行線ですよ?」

「へ? あぁ、それでしたら・・」



 ぎゅうまおうを倒し世界に平和を取り戻したごくつぶしさん一行は、崩れる砦から万能小槌で飛んで脱出、その後おしゃかさまにより、世界を救ったご褒美として猿のごくつぶしさんは、天界の役人として出世し、仲間達もそれぞれバラバラに解散・・。


 そしてそこから一年が経ち、猿のごくつぶしさんは、地上の仲間特に女の子? の事が常に気にかかっていました。

 おしゃかさまは、そんな様子を見て地上界を映すテレビを特別に見る事を許可し、それに食い入る様に見る。そんなごくつぶしさん。

 且つての仲間の姿を、そして一人物寂しく溜息を付く女の子? の姿に懐かしく、そして切なく思うごくつぶしさん。

 そんな姿を見かね、おしゃかさまはそっとまじっくいんきをごくつぶしさんの足元へと置くんです!


 もうわかりますよね? そうなんです! わざと自分の顔に落書きさせる事によって破門にし、出て行く様に促したんですよ!

 ごくつぶしさんは走ります! 行く先は言うまでもない・・言うまでもないです! 早く行って上げて下さい!


「ここで少しの辛抱なんだな」


 何でだーーーー!! 一番のクライマックス少しの辛抱強いられちゃいましたよ!! 辛抱堪る訳ねーですよ!!



「っと言う訳なんです! いや~、あの絶妙なタイミングで、まさか辛抱させるとは思いませんでしたよ・・ですが、最後の最後に出世を捨て、好きになった女の子の下へ走り再開する! 今までの流れあってこその感動でしたぁ! めげずに頑張って本当に良かったです!」


「何となく話は理解出来たが、泣く理由がどこにも・・あの妖精さん? 今の説明だけで感動出来・・妖精さん!?」


「し、仕事より愛する女性の下へ走る! あぁ、何て素敵なお話なのでしょうか・・」


(妖精さんドゥストラァイクゥ! 感動の共有出来ちゃったよ! 話的にはいい話なのは理解出来るが、涙する程の物なのかがさっぱり、確かに最後のニュアンスだけ聞くと・・いや、ダメだやはり理解できん・・もしや理解できん我の方が乏しいのか?

  そもそも結局タイトルはなんだったのだ? 猿、お坊さん・・そして豚にぎゅうまおう・・その面子が揃うなら間違いなく西遊記物だと思うのだが・・)


「め、女神よ、その話河童は出てこなかったか? と言うかタイトルは?」

「おぉ! 良くわかりましたね、はい! 河童さん出てきますよ、仲間の一人なんです。タイトル? ・・・・すく~た~に乗ってどこまでもです」


 そう言えば、最後まで何だったのかわからずに終わってしまいましたね、いいお話だったので知りたい気持ちはありますが・・まぁ今更わかっても、もう適当な名前で報告書提出しちゃってますし、後の祭りですよね?


「・・絶対違うだろ?」


「え? な、何を証拠に、ふ、ふぃ~ふぃ~」


「それ口笛のつもりか? 完全に誤魔化しているではないか!」


「女神様? いい加減その辺りしっかりなさらないと、フレイ様この前報告書ご覧になって、困惑なさってましたよ?」


「っげ! う、嘘ですよね? だって完璧に誤魔化せてたはずなんです・・あっ」


「はぁ・・自白なさいましたね女神様、今日中にお調べになって、ちゃんとした物を提出なさった方がよろしいかと、でないとちゃんとした所まで疑われてしまって、正しい評価して頂けなくなってしまいますよ? それでもよろしいのですか?」


「えっ! それは困りますよ! 私頑張って二人もエインヘリャルにしたんですよ? しっかり評価してもらわないとボーナスが・・出世が・・左団扇が・・」


「そう思われるのでしたら、ちゃんとした物をご提出を、よろしいですね?」

「・・・・はい、そうさせて頂きます」


 完璧だったはずなのに、一体どこでバレちゃったんでしょうか? フレイ様に理解力がなかっただけなんじゃないんですか?


「何はともあれ、これで泣いていた原因は明らかになったのだ。これで我に対する疑いも晴れたはず・・」


「待った!」


(え?)


「それはおかしいですね、現状わかったのは泣いていた原因があなた様ではなかった。と言う事だけで・・」

「そうですね、目薬を差そうとした動機、と言うか理由には結びつかないですよね?」


「その辺り・・」


「はっきりと・・」


「「説明して下さい!」」


「そ、それは・・決して下心など無くだな、じゅ、純粋に・・そ、そもそも我にとってそこの女神はた、対象外なのだ!」


(女神はともかく、妖精さんの前で晒すのは気が引けるが・・最早無実を証明する為にはこれしかない!)


「その証拠に・・その証拠にこれを見よ!!」


「「え? えぇぇええ!! あぁー・・」」


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