表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女の黄昏  作者: いさらゆたか
8/15

2-5 近況報告嵐の夜 進捗報告は誤魔化して


 さてさてそんな訳で、開始から今に至るまでその後の流れも順風にして満帆!

 何事も問題なく予定通りに進み、この調子で行けば三人共見事エインヘリャルにする事が出来るでしょう!

 まさにシノちゃん絶好調!


「どこが順風満帆なのよ? どこが、問題だらけじゃない、・・ングング・・プハァ~、オヤジビールおかわり! 後おつまみも~」


「ミ、ミキちゃん大声で何言ってるんですか? オーダーする時は呼び出しのボタン押してって、説明受けましたよね?」


「あははっ! 私もおねしゃ~す・・んふふ、シノちゃん飲んでる~? あ~何か汗ばむわ~、・・シ~ノちゃん」


「ちょちょちょっと! キョウちゃんダメですって! 何脱ごうとしてるんですか! って言うか何で三、三の六人席で四人いてこっち三人? そして何で私真ん中? 完全に狭いんですけど、そして両側うるさいんですけど、ソナエちゃん黙ってないで助けて下さいよ!」


「・・う」


 う?


「・・うわぁぁぁあああ!! アタシ何て! アタシ何て! どうせ出来ない子なんだーーー!!」


「げぇ! ソナエちゃんまで!」


 そう、彼ら三人とのやり取りが全然追い風状態に思える程のカオスが、嵐がここに・・。


「ねぇ聞いてんのシノ? 私の所ようやく一人目途が立ちそうなのよ、・・でも最後が中々進まないらしくて、何かお知恵を下さい女神様ってすぐ泣き付いて来てさ! そんなの根性で何とかしなさいよ! って言ったら、ガッツが足りないんですぅ、ガッツが足りないんですぅ、ってだからそこを指摘して・・ねぇ聞いてんのシノ? 全く・・ゴクゴク・・フハァ~」


 はいはい、シノちゃん聞いてますよ、聞いてますとも、だからそんな睨まないで下さい、後今飲んだの私のですよ、二口くらいしか口付けてなかったのに、半分なくなっちゃいましたけど・・。


「シ、ノ、ちゃん、ふふふ~なぁええやろ? ええやんな? ええって言うて~」


 え? 何が? 何を? ちょっとさっきより近い肩と胸が当たってるんですど 顔近い、息遣いが首元にはぁはぁ当たってるんですけど、色々当たってるんですけど!


「勝負事なら任せろって言っておきながら! 全然序盤で皆躓いちゃっててぇ、ここからいい感じにして行こうってぇ、挽回して行けば良くなるってぇ思あはああぁぁぁぁああ! 誠心誠意一生懸命ああぁああ! 努力すれば流れ変るへあぁぁぁぁあああ!! ごべんよアタシが一番足引っ張っちゃでであははぁあぁああああ!! ・・・・グビグビ・・くぅ~・・美味い! オヤジ! もう一杯!!」


 いやだから、それ私のだから! ソナエちゃん手前にあるでしょ? 何で取り難いこっちから取ったんですか? あ~あ私の空になっちゃいました・・はぁ・・。


 本日我々女神四人組は、ヴァルハラ繁華街にちょっとした居酒屋さんがあると言う事を小耳に挟み、仕事終わりに飲みに来ています。


 アースガルドは、グラズヘイム、ヴィーンゴールヴ、そしてヴァルハラと三つの宮殿から扇状に広がった三つの街並みに別れています。

 私達が最初に訪れたのはグラズヘイムの町、主に他国の方向けの商業街、次いで私達が生活している女子寮区のあるヴィーンゴールヴの町、主にここで暮らす方用の商業施設が並ぶ街、そして今回訪れたのがヴァルハラの町、訓練終りのエインヘリャルさん達が住む町にして、多種多様なそれぞれの故郷にちなんだお店や建物が並ぶ、ちょっと独特の雰囲気のある街です。

 噂のお店は結構地味な外装でしたがすぐに見つけられました。

 え? 噂って何かって? ん~・・どうしましょうかね~・・言ってもいいけどこれ内緒にしてくれます?

 ・・ここだけの話なんですけど、どなたかは知りませんが、何でも一級神様お墨付きのお店なんだそうですよ奥さん・・。

 でも、あんまり知られていないお店なんだそうで、つまり穴場って訳なんですよ!

 だ~か~ら~誰にも言っちゃダメですよ? 絶っ対言っちゃダメですからね? いいですね? 絶対ですよ? ・・フヒヒ。


「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」


「四名です」


「四名様ですね、座席へご案内します。 マスター! 四名様ご案内~!」


 入口を入ってすぐがカウンター席、奥が掘りごたつ式の座席部屋になっていて 全体的に洋風なお店に和風テイストを盛り込んだみたいな、一見すると全然合わない様な組み合わせなのに、落ち着いた雰囲気と相まって中々これはこれで・・。


 あっ、そうだ! 説明してませんでした! 何故この様な流れになったかと言いますと、昼食終了後、食堂でバッタリ出くわしたと言いますか、待ち伏せしていたメ~ちゃん引きるメアニ~ズに捕まり、二カ月が経過したという事でここで一度中間発表を兼ねて、お互いの進捗状況を発表し合おうと言う事になり、結果・・惨敗。


 向こうはメ~ちゃん以外の二人が一人づつ、こちらは全員合わせてキョウちゃんが一人だけ、エインヘリャルにしているのみと言う中間結果に・・。

 メ~ちゃんは高笑いを決めると、再びポンコツ呼ばわりして去って行きましたが、残された私達・・まぁ私は余りそう言うのは気にする方ではありませんが、ミキちゃん、ソナエちゃん両名は悔しさのあまりにヒートアップ。

 その勢いもあって、日頃の労いとお互いの進捗状況の報告及び、今後の対策また健闘を祈ると言う立派な口実の元、こうして飲みにやって来たのですが、まぁ表向きですよね。


 入って物の三十分も経たずに、スッカリ出来上がってしまった皆さんの愚痴大会が始まってしまい、調子に乗ってグイグイ勢い良く飲んだ挙句、その加速化が進み現在に至ると言う訳です。

 正直皆さんお酒に弱いなんて知らなかったですよ、え? 私ですか? 私は平気ですよ? 何せ良く連れまわされていましたからね、あの方に・・。


「他の二人も揃って進歩ないし・・、もう二カ月以上も経ってるのよ? このままじゃあいつらに負けちゃうじゃない! シノどうするの? ねぇどうするのシノ~!」


 ぅわぁんぅわぁんぅわぁん・・え、襟元掴んで、揺すらないで頭が揺れて気持ち悪い・・。


「シノちゃんえぇ匂いするなぁ、これ何の香り? 会う度に違う香りさせて、本当は私の事誘ってるんやろ? なぁちょちょっとだけ」


 えっと今日はイランイランだったと・・って、全然効果ないですねこのメンバー! キョ、キョウちゃん? キョウちゃん? 私の服脱がそうとするの止めてくれます?

 ミキちゃんもいい加減に揺すら、引っ張らないで! キョウちゃんも止めておへそ見えちゃう、服伸びちゃうから!


「うあぁあぁあああっぁああ!! いいんだアタシ何て何時もそうなんだーー!!」


 今度は何?


「何時も何時も・・、アタシだけのけ者にして・・、そうやって楽しそうな事やって!! アタシだって仲間だろ? アタシも混ざるーー!!」


 混ざらないでーーー!! 何時もはどうか知らないけど、これ全然楽しくないですから! 混ざっちゃダメな奴だから! い、いい加減にうぷっ・・こ、これは・・。


「シノー!!」「シノちゃ~ん」


「は、離して・・ト、トイレ・・」


 ・・・・あれ? ソナエちゃんの姿が見えっ!? い、今何か足元から視線を・・い、いえ、太ももにて、手が・・じょ、徐々に這い上がって来てるんですけど!


「シノ~・・アタシも~抱っこ~」


 抱っこじゃねーですよ! 下からとか怖っ! え? ちょっと待って下さい・・全然身動き取れないんですが、そ、そろそろ本格的におえっぷ・・マズイ・・。

 エ、エスケープせねば・・、脱出せねば・・、とんずらせねば・・、この荒波を一刻も早く脱せねば、本格的な嵐になる!


「どこ行こうっての? シノ~?」「シノちゃん逃がさへんよ~」「アタシが入るの不服だってのかシノ?」


「い、いや・・そうじゃない、そうじゃないんです!!」


 た、助け・・誰か・・っは! あ、あれは!



[ブー]「ん? マスター呼ばれたんで四番、それと六番のオーダー取りに行ってきますね」


 助けて・・。

 助けて下さい・・。

 私は、居酒屋さんの掘りごたつ式の個室に捕らえられています。

 私の名前はシノ・・。

 四人で飲みに来た女神の内、入店した最後の一人・・。

 飲みにやって来た彼女達は、酔いの力を使い、今封印の扉を開こうとしています。

 ・・・・。

 私は個室四番の中・・。

 たすけて・・。



「はい、ご注文の追加のオーダーを・・ウッホォ! あらあらあら~まぁまぁまぁ」


 て、店員さん・・たてすけ・・。


「ふふふ、しばらくして落ち着いてからもう一度お伺い致しますね~」


 え? 待って! 行かないで! もうそんな猶予ないんです! 嵐がすぐそこまで来てるんですよ! ふ、封印が・・。

 あーーーーーーーー!!



「アニス、今向こう側で何か悲鳴の様なものが聞こえませんでしたか?」

「さぁ? ・・聞こえた様な聞こえなかった様な?」

「あなた達何をコソコソお話してるのかしら? 今とても大事な話を・・」


「はい、お待たせしました。ご注文の追加のオーダーをお伺いしますね」


「ふふん、遅かったじゃないあなた・・ではこの私が直々にオーダーをして差し上げますわ! メニューをお貸しなさい!!」


「生を三つジョッキで、それとこの枝豆、だし巻き卵」

「さっきの焼き鳥串・・美味しかった」


「・・・・・・き、聞こえなかったのかしら? まぁいいわ、もう一度だけ言って差し上げますわ・・」


「そうですね、では焼き鳥串・・この塩の方でこれとこれを三本づつ・・ヤゲンってどんな感じなんでしょうか? すみませんこれも三本でお願いします」

「こっちの・・タレのネギマとつくねも三本づつ欲しいな」


「オーダーは私が直々にして差し上げますわ! 従ってメニューをここにっ!!」


「はい、畏まりました。オーダー確認しますね・・」


「あーーーーぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁーーー間に合えわたうぷっ!!」


 ・・・・・・。


「以上でよろしいですね? では失礼します・・」


「はい、お願いします」


「・・・・お客様? 大声を上げて通路を走られますと他のお客様の迷惑に・・」


「今通った子・・見た事ある様な」

「アニスもそう思いましたか、今の子は多分・・? メナト? あなたは一体何をしているのですか?」


「えぇ!? こ、これは・・」


「アンナ・・そっとしておいて上げて欲しいんだ。メナトにだって唐突にポーズ決めたくなる時くらいあるんだよ」

「あぁ、それはわかりますが、いくらメナトでも自室の鏡の前だけではなくて、こんな個室とは言え、ただ薄いあってない様な壁で仕切られただけの公衆の面前で いきなり決めポーズするでしょうか?」

「それもそう・・ねぇメナト? 何の衝動に掻き立てられてそんなポーズ取ってるの? 何か事情があるんだったらボク達が聞くよ?」


「な、何でもありませんわ! そ、そんな事よりあなた達、優位ですわ! 優勢ですわ! 優勝ですわ! おーっほっほっほっほっほっ!」


(誤魔化しましたね)(誤魔化したね)


「メナト、優位優勢はわかりますが、優勝はどうかと思いますよ?」

「メナトは、語呂合わせの為に・・、何も考えずに言っただけだよ」


「うるさいですわ! あなた達、聞きまして? 聞きましたわよね? 優勝ですわ!」


「強引に優勝押しして来ましたね、若干うざったいです」

「メナトは・・自分の間違いを認めたくないんだよ」

「あぁ、認めたくないものだな若さゆえの過ちとやら、ですね?」

「そう・・でもメナト女神だから正直若く・・」


「アニス! それ以上はタブーですわ! それにまだまだ若い方から数えた方が早いですわ!」


「まぁ我々も言えた義理ではないのですがね」

「そうだね、そもそも寿命何て存在しないし・・、年齢なんて数えるだけ悲しくなるだけだしね」


「そんなお話をする為にわざわざこんな所へ来た訳ではありませんわ! 先勝祝いですわよあなた達!」


「先んずれば勝ちですか、とは言え早過ぎませんか? まだまだ番狂わせの可能性など、大だと思われますが」

「メナトが浮かれている理由が・・ボクにはわからない」

「そうですよね、我々が二人、向こうは一人、明日にでも追い付き追い越し引っこ抜かれる可能性、ありますからね」

「走れ走れメナトだね、だって・・」


「それ以上はノンですわ! さぁ乾杯ですわよ!」


「乾杯何回目ですか? 私は肩が少し痛くなって来ましたので遠慮させて頂きます」

「もう、十回以上だよ・・、メナト自分がまだ一人も終わってないの、誤魔化す為だけに乾杯しようとするの止めよう」


「なっ! 違いますわ!」


「あっ、それで合点がいきました。先程からその単語を言おうとするタイミングで、乾杯してたのはその為ですか」

「うん、そう・・、ボク達二人はともかく、自分より格下だと思ってた三級神のあの子」

「あぁあの、のほほんとした感じの独特の喋り方をする。あの子ですね、正直私も驚きました」

「そう・・あの子に負けたと思うのが悔しいんだよ」


「・・・・ぐっ」


「メナト気持ちは痛い程わかりますよ、何せあれだけの啖呵を切って、ポンコツ呼ばわりまでした相手に、現状劣っているのですから」

「そうだね・・、あの子がポンコツなら、メナトはそれ以下って事だもんね」


「ち、違いますわ!! た、確かに私はまだ一人も終わってませんわ、でもだから何なのかしら? これはチーム戦、だったらチームのトータルが上の私達が勝っているのだから、当然私も勝っているのですわ! 文句の付け様もない正論ですわ!! おーっほっほっほっほっほっ!」


「私達何時の間にチームになったのでしょうか?」

「放って上げなよ・・メナトがそう言うんだからそうなんだよ、メナトの中ではね」


「なっ!! そ、そんな・・、私達チームだとばっかり・・、うっ・・酷いですわ・・そんなの・・、あ~ん~ま~り~ですわーー!!」



「なぁ、最近思うんだけどよ」

「何だよ?」


「ラグナロク・・マンネリ化してね? って事なんだけどよ」

「あ~・・それっ、俺も思ったわ、確かに新しいエインヘリャル増えれば、それだけ勝ち目が出るって言っても、ぶっちゃげ向こうにだって凄えのいっぱいいるしな」


「そう! そうなんだよ、昔に比べて生半可な現代人が増えた所で、大した事にはならないだろ?」

「あぁそれなぁ、いくら戦場から連れて来たって言っても、近代兵器様様になっちゃってて、本人大した事ないがいたりするからな!」


「そうそう、つっても地上とこっちじゃ勝手が違い過ぎて、それについていけないのが大半何だよな」

「あはは、向こうの常識こっちじゃ通用しないからな、何せ銃弾なんて浴びせた所で、エーテル使いこなせりゃ被弾する前に消滅出来るしな!」

「それ見て驚いてる間にーー」


「「アウト!! わははははははっ!!」」


「・・っで、俺考えた訳よ」

「でたでた、またかよ・・」


「何だよその反応・・もうちっと期待してくれよ、じゃねえと今から話そうってのに、こっちのモチベーショウまで下がっちまう・・」

「どうせくだらない事だろ? ・・っでどんな話だ?」

「何だよ興味あるんじゃねぇか、実はな・・、ず~~~~っと思ってた事あるんだけどよ」

「そう言うのいいから、とっとと言えよ」


「わかったよ、・・そろそろルール変更とかあっても良くないかって思ってよ」

「ルール? 例えばどんなだよ?」

「ぁあ? そこまでは詳しくは考えてねぇよ、ただ何時も見てて思うんだがよ ひっちゃかめっちゃかし過ぎてないか? ってな」

「どういう意味だよ? ぶっちゃげ戦争なんだから、ある程度混戦したってそりゃしょうがないだろ?」


「お前さ、バカなのか? いいか? 例えば国毎に別々に別れてそん中で誰が一番かとか見たくないか?」

「はぁ? お前こそ何バカな事言って、・・見たい・・見て見たいなそれ!」

「だろ~?」

「あぁ! あぁ! 見てえ! 確かに何時も色んな英雄が混戦してるせいで、見所見過ごしてる所あるし、気付いたらお気に入りやられてたって事、沢山あるしな!」

「そうだろ? そうだろ?」


「だったらよ、何時もお互いのどちらかのエインヘリャルが全滅するまで戦うけどよ、場所によっては籠城したり消耗戦に持ち込んだりもしちまって、何カ月も掛けて戦われた事あるだろ?」

「おぉ! あったなぁ~はは、あん時は応援する側のこっちも全員疲れちゃって 決着が付いた時に会場全体が妙な一体感が出たんだよな!」

「そうそう、だからどうせ国毎に戦り合うんだったら、その分何週間も必然的に掛かるだろ? 例えば総大将決めてどっちかの総大将がやられるまでとか、制限時間設けてよ、例えば陣取り戦でA~Eまでの場所の取り合いにしちまえば、その分間延びしないから面白くなるんじゃないかって思ってよ!」

「いいね~、見たい! ルールは常に変化してくれた方が面白いよな?」


「あぁ! その通りだな! あー・・・・所で話は変るんだけどよ、この店に例の女神達、さっき来てるのチラッと目撃したんだけど、お前気付いたか?」

「気付いてたに決まってるだろ、グループは違うけど何人か来てたな、俺さ~正直新生ヴァルキリア募集のお陰で、各国から若い女神が大量に来てくれた事をさ、感謝してるんだよ、この街もよ一気にパッと華やいで・・ぐふふ、新生ヴァルキリア制度様様だよな?」

「おう! 同感だぜ、それでさ俺には密かな夢があってよ、俺さ一度でいいから倭国の女神様とお近付きになってみたいと思ってたんだよな~」


「はぁ? お前・・嫁がいるのに良く言えたな? 正直引くわ~・・でもわからなくもない!」

「だろ~? 別に浮気しようとしてる訳じゃないんだよ、ただ大和撫子って奴? 芸者ガール? そう言った感じの子と仲良くなって見たいだろ?」

「あ~わかるわ~、まぁお前と違って俺は独身だからな、その辺自由だわ、つう訳でじゃっ俺、仲良くなる為に声かけて来るわ・・」


「ちょっと待て待て待て、どこに行くって? お前が? 声かけて仲良くなるだぁあ? 無理無理無理無理、行くだけ無謀だから止めとけって!」

「何だと? そんなのやってみなくちゃ、わかんねぇだろ?」

「あ? そんなの口説く前からわかりきってるだろ・・お前じゃ高嶺の花だよ、一級神のお墨付き様達だぞ? 無理に決まってる。大人しく座っとけって」

「いや、確かにそうかもしれないが、ほんのちょこっとだけでもチャンスあるかもしれないだろ?」

「ねぇよそんなもん・・、いいから黙って飲んどけ、自分から振った話題だけどよ夢だよ夢、俺らみたいな三下は遠くから眺めてる位が丁度いいんだって・・」



「あの~ロ・・、お客様? そろそろ何かご注文を・・」

「うん、そうだね、確かにそろそろ注文した方がいいよね・・」

「あ! はい、ご注文何に致しましょうか?」


「マスターこれで失礼するよ、これからちょっと忙しくなりそうだしね」


「あっ、そうですか、本日の当店のお勧めはですね・・え? お客様? お客様ーーー!! ・・行っちまったよ、また・・何も注文してもらえなかったなぁ・・」



「「マスターネクタルおかわり~!」」


「あいよ、ただいま!」



 あー・・酷い目に遭いましたよ・・ギリギリ間に合って良かった~。もう少しでウワハルする所でした・・。

 形上とは言え、師弟揃って何て冗談じゃありませんからね全く・・それにしても、三人共酔うとあんな風になるだなんて、今度食べに行く時はアルコールのないお店にしないと、体がいくつあっても足りませんよ、それに店員のお姉さんまさかのスルーだなんて・・ん? あっメ~ちゃん達も来てたんですね。


「ああああぁああぁぁ!! 酷いですわあぁああぁああ!! あんまりですわぁぁぁあああぁ!!」

「はいはい、泣かないで下さいね、あれは冗談ですよ」

「おーヨシヨシ・・そうだよ、ボク達メナト大好きなんだから」


 うわぁ~どういう状況なんでしょうか? 三人で抱き合っちゃって・・あれ? 何か違う・・。


「でも! でも! あなだ達・・ヂームじゃないでっ! ながばじゃ・・あああぁぁぁぁぁああああ!!」

「そうですね、冗談でも言ってはいけなかったですね、私達が悪かと思いますよ」

「深く反省・・メナトは純情ナイーブだからね、日記に本日の反省とか書いちゃうくらいだもんね」


 会話の内容的にメ~ちゃんを慰めてるんでしょうけど・・何か違和感を感じる・・。


「だんでぞれじっでますのぉお? わだじのブライペードはどごにぃいいい!? あぁぁぁぁあああ!!」

「すみませんメナト、お詫びと言ってはなんですが」

「メナトが泣き止むまでこうして・・」


「抱きしめて慰めて上げるからね」「抱きしめて慰めて上げますからね」


違和感の正体わかりました!! あの二人この状況をいい事に・・!


(メナト・・柔かい)(あぁ、いい匂いがしますね)


「あなだだぢーーー!! ながばですわ! じんゆうですわ! まぶだぢですわあぁぁぁぁああああああ!!」


(役得・・)(計画通りです)


 ・・・・・・見なかった事にしましょう。

 それにしても酷い光景でしたね、こちらも言えた物ではありませんが、・・早く戻って上げないと何かとんでもない事になっていそうで・・。

 心配ですね・・。



「遅かったじゃないシノ・・」

「お前この大事な時に、どこほっつき歩いてたんだ?」

「・・・・そうよシノちゃん。・・こんな緊急事態にいなくなるなんて」


 あれ~? おかしいぞ~? さっきまで酔っぱらって・・、あれれ~? まるで酔いでも醒めてしまったかの様ですね~。

 皆難しい顔して静か~にご自分の席に着席とか、それこそまるで今まで酔っぱらってたのが嘘だったかの様ですね~・・。

 一体何が?


「ねぇシノ・・」「なぁシノ・・」「あんなシノちゃん・・」


 皆がゆっくりとこちらを・・えっ? ぇえ!? えーーー!!


「「「どうして止めてくれなかったの・・」」」


 振り返った三人の頬に綺麗にビンタされた跡が・・。

 あー・・これまた見事に真っ赤っかですね~・・皆仲良し! お揃いで何よりですよ!

 ・・・・・・。

 いや何があったの!?


「・・正直、アタシらにもわからないんだ・・」

「えぇ、そうなのよ・・気付いたら何故か服装が乱れてて・・」

「ほんで・・頬がヒリヒリなってて・・」


 どうやら、頬に走る痛みで酔いが醒めて我に返り、取り敢えず落ち着く為に着席したと見て間違いないでしょうか? 

 酔ってた時の記憶皆さんない様子ですし、ここは黙っていた方がいいのかもしれませんね。


「何か・・ごめんね、二人共」

「こっちこそごめん・・、アタシ実は酒弱いんだよ・・」

「私の方こそ堪忍な、記憶ないんやけど何や豪う事してまったみたいで・・」


 何この空気・・さっきまでと打って変わって一気にお通夜状態なんですけど・・、こ、この空気どうにかして変えねば・・。

 だがしかし・・どうやって? 生半可な話術では最早この空気を変える事は不可能・・ここは・・ここはやはり!


「ミキちゃん、ソナエちゃん、キョウちゃん・・ここは飲みましょう!!」


「は? 何言って・・」

「そうよ、飲んだせいでこうなったのに・・」

「飲んだらあかん、酒は飲んでも飲まれるな言う言葉があるんよ・・」


「はいはい! そこまでそこまで、暗いのお終いですよ、じゃんじゃん飲んでパーっとやって、忘れちゃいましょう! そんで綺麗さっぱり仲直りです!」


 そう、これでいい・・皆が仲直りするのなら・・。


「そ、それもそうね! 何時までもこんなんじゃ良くないもんね、酔って起こった事は酔って忘れましょう!!」

「お、おぅ! その通りだよな、じゃ、じゃあバンバン頼んでジャンジャン飲もうぜ!!」

「そうやな、そしたら追加も頼もうか・・ポチっとな」

「その意気ですよ皆さん!! さぁ気を取り直してー・・」


「「「「乾杯!! んっぐんっぐんぐ・・ップハ~!! あはははははははははははっ!!」」」」


 あぁ・・この空気この空間皆の笑顔、これを守る為なら私はこの体を捧げ、身を挺してこの流れに任せましょう・・、例え荒波渦巻く嵐になったとしても!

 そう、あるがままに・・。


「・・ちょっと聞いてる?」「シ~ノちゃん・・ふっふっふ」「うぅ・・アタシ何て・・」


 あーーーーーーーー!!



「おい、見たか?」

「あぁ、見たよ・・、ここカウンター席だからな、奥の個室から会計済ませて外出て行くまで・・ふぅ・・」

「何か・・女神って、凄いんだな・・」

「あ、あぁ・・大和撫子・・」

「・・・・なぁ?」

「・・ん?」

「俺達の夢って儚かったんだな・・」

「・・・・あぁ、飲み直そう・・」



「ほらほら、ちゃんと立って下さい」

「メナト・・ベロンベロンに酔っぱらっちゃってるね」

「なんれすの・・わらくしがよっぱらってたら、なんかもんらいでもあるんでれすの? わらくしらって・・わらくしにらって・・なきたくなることのひろつやふらつ・・」

「すみません、お会計お願いします」


「あ、は~いお会計は・・」


「メナト・・大丈夫? ろれつ廻ってないよ?」

「ろうせ・・ろうせわらくしまだひろりも・・えいんへにゃるりれきてませんよ~だ・・ろうせぽんこつらんれすの!!」


「はいこちらお釣りとレシートになりますね、ありがとうございました」


「ご馳走様でした」「大変・・、美味しゅうご座いました」


「はい! わらくしもたいへんおいしくいただかしれもられますた・・まらのごらいてんおまちしております」

「メナト、美味しく盛られるってどう言う状況ですか? さぁ私の肩に手を回して下さい」

「メナト・・、ご来店お待ちするのは店員さんの方だよ」


「わらくし・・わらくしは・・、にきゅ~しんれすの・・ぽんこつなんかれは・・~~・・・・」

「メナト? これはもしや寝てしまいましたか?」

「そうみたいだね・・、しょうがないから代わりばんこにおんぶして帰ろう」


「了解、・・よっと・・ふむ、やはり中々色々な所がボリューミーですね、・・さて、帰りましょうかアニス」

「そうだねアンナ・・、所でメナトこんな状態だし」

「えぇ、仕方がない事ですよね、この様子ではシャワーもお着替えも」

「うん・・、一人じゃ出来ないよね、だから仕方がない事なんだよね」

「はい、そもそも私達は仲間であり、親友であり、マブダチなんですからメナトを介抱するのは当たり前なんです」

「うん・・だから心配して付き添って隣に寝たって問題はないはず」


[・・・・コクリ]


((いざ、メナトの寝室へ!))


「お帰りお気をつけて~、またのご来店お待ちしておりますね」



「なぁ? 夢や幻想ってさ・・」

「ん?」

「そのまんまにしといた方がいい事もあるんだな・・」

「もういい、もういいんだ。黙って飲み直そうぜ・・」




 エインヘリャル候補進捗状況報告書、ー月ー日、候補者名四国の湿布さん。仮想異世界、すっぱっ! マメオ兄弟、天気晴れ。

 1-1、1-2と順調な運び出しで進んだ湿布さん。

 今日も元気そうでした。朝食はご飯派の湿布さん。本日のメニューは梅茶漬け三杯、昆布とお豆腐のお味噌汁、お漬物はきゅうりとナスのおしんこでした。

 お茶に茶柱が立っていたので今日はいい日になると思います。

 さて、本題ですが今日の課題は4-2を先に進ませる事です。


「え? こっちじゃないんですか? 何か今までのパターンだと、豆の木登った方がいいんじゃないのですか?」

「っふ・・そ、そっちはフェイク、そ、それを越したこっちの土管が、ち、近道正解!」


 あっ、待って下さ~い! あれ? み、見えない壁が後ろにあって、引きずられて土管との間に挟まっちゃって、身動き取れない・・。


「すみませんが、一旦戻って入り直しますね~」

「は、は~い、で、では俺はこのまま先に行って待ってるぅぅ・・」[ジュジュジュ]


 いや~、あれビックリしましたね、戻って喉乾いてたんでお茶一杯だけ飲んでから再び入り直したら、4-2にいたはずなのに8-1でしたからね、その後危ない所が何カ所かありましたけど、神通力を磨いていたお陰でギリギリのジャンプで落ちずに済み・・う~んですが、やはり4-2からいきなり8-1はマズイですね・・、良し! 誤魔化しておきましょう。えっと、なんやかんやあり順調に4-3、4-4と・・。


「湿布さーーん!!」


「め、女神ターーーン!!」


「ファイト!」


「い、いっぱーーーつ!!」


 私達は力を合わせ難無く、・・ここ書き直しましょう。


「あ・・重っ!! は、早く・・そ、そこ頑張って足上げて引っかけて下さい・・早く!!」

「わ、わかったから、ぜ、絶対に手をは、離さないでよ? め、女神タンぜ、絶対だぞ?」

「離す訳ないじゃないですか!! ここまで一緒に進んで来た仲間なんですよ!!」

「め、女神タン・・め、女神タンマ、マジ女神!!」

「そ、そう言うの・・いいので・・は、早く・・!! う、腕が・・」

「あ~・・ん! んふっ! も、もうちょっと・・もう少しであ、足が・・」[ビリッ!]


「「あっ!」」


 今・・ビリッっていいましたよね?


(う、うん・・お股裂けちゃった)


「か、かかるからあぁぁぁぁ・・女神タ~~~~~・・・・」


「湿布さーーーーーん!! ・・・・何で・・どうして何ですか!? 何で破れちゃった位で手を離しちゃったんですかーーー!! 湿布さんのバカヤローー!!」


 ちょっとしたアクシデントがあり、アフアフしながらも、湿布さんは一人の力で何とかよじ登る事に成功! その後、すんなり進む事が出来ました。


「な、何で手を離したし、な、仲間じゃねーのかよって、な、何気にこっちが離した事にして美談に仕立て様とした件について」

「そ、そんな事よりも、あそこ超える秘策がありますよ湿布さん!」


「え? ほ、本当・・って! じょ、冗談でしょ女神タン? は、離さないでよ? って言うかこ、これするならおんぶか抱っこ希望!!」


「はぁ? 嫌に決まってるでしょ? 何考えてるんですか? ここで落としますよ? 重いのに両手掴んで運んで上げてるだけ、ありがたいと思って下さい」


「は、はい、すみません・・ど、どうせ、は、羽衣使って飛ぶならお、俺に使わせてくれればいいのに・・」


「何か言いましたか?」


「は、はい! な、何も言ってませんです。はい!」


 問題なく進行中です。

 あっそうだ! 大事な事書き忘れていました。朝食終了後、ポテトチップスコンソメ味を一袋食べていました。おいしそうでした報告お終い。



 エインヘリャル候補進捗状況報告書、ー月ー日、候補者名ごつくぶしさん。仮想異世界、ナンーカ、イロンナヒトトタビスールヤツ、天気晴れ。

 本日は、湿布さんの所へ訪問する前に昨日の夜、朝食として希望されていたテリヤキバーガーセット、チキンナゲット、コーラを運ぶも発声練習に勤しんでいた様子で進展はなし、二度目の訪問としてお昼にピザが食べたいと希望だったので、シーフードピザとダブルチーズのピザそれとキノコのピザ、飲み物にやはりコーラだそうで持って行きました。

 ピザは全てワンホールだったのにも関わらず、全てあっという間にペロリと完食、私にはワンピースもくれませんでした。いいな~って思いました。


 さて、前回までの流れを少し、牢屋にて記憶を呼び覚ます謎の桃を食べて、走馬燈が過ったコレタさん事ごくつぶしさんは、猿から女の子? に変り素直な心を取り戻すと言われる小槌を探す旅に出るも、少しの辛抱を強いられ、再び猿のごくつぶしさんへとチャンジ。

 その後お風呂を覗き見したごくつぶしさんは、順調に進みクイズ大会へ、見事に全問正解を果たし、沢山の女の子をクイズから助けました。

 一方女の子? のごくつぶしさんは小槌を手に入れ、猿のごくつぶしさんをそれで殴る為の旅に出ました。


 そして現在、新しい仲間河童さんを加え、猿のごくつぶしさんはお坊さん達と一緒に船に乗ろうとしています。お金がないのにどうするのでしょうか?


「やっと元気になりましたね、・・店員さん。これで生活してるはずなのに、どこかの誰かと一緒でやる気が感じられませんでしたね、まぁわからなくもないですけどね、恋もすれば胸はそれでいっぱいに・・でもあの彼女さんドストレートなまでに、言い放ちましたね、明るくて金持ちの男がいいだなんて、見る目ないんじゃないんですかね?」


「そんなのどこの女も同じなんだな、お陰でフラれたんだな、フラれてスッキリして元気になったんだな、どっかの誰かさんも同じ事言いそうなんだな」


「どこかの誰かって誰の事なんでしょうかね? ごくつぶしさん?」


「コレタなんだな! そっちこそどこの誰の事なんだな? っと言うか続き読むんだな」


「確かにこんなの徒労ですね」


 船に乗船するのには切符が必要との事、近くのお店に商品としてあった所までは良かったのですが、何と店員さん片想いの相手への想いに夢中で全然お仕事する気がなく、仕方がないので片想いの相手の好みを聞き、あわよくば成就させて上げようと言う事になり、仲介する事に・・。

 ただ残念な事に見事にフラれました。お陰で吹っ切れてくれた様で商売を再開 こちらにとっては結果的に良かったものの。

 問題はまだありますよね? 店員さん元気にした所で船の切符、お金が無いのは変らないんだから買えません・・。


「かねがないならそのすく~た~かうぜ」


 え? すく~た~ちゃん売っちゃうんですか?


「とっとと続き言うんだな」


 わかってますよ・・ちょっと気になっちゃっただけじゃないですか。


「だめだあああっ!」


 ですよね? 今までずっとお坊さん大事に乗って来た物ですからね、そう簡単に売る訳ないですよ、ね?


「こっち見るな、なんだな、話が進まないんだな」


 えっ・・だって・・わかりましたよ。


「これはただのすく~た~とちがうんだな、こいつはもともとわしがかわいがってたりゅうなんじゃ、ちょっといたずらをしたんで、おしゃかさまのおしおきでこんなすがたになっとるが、ぜったいてばなせないんだな」


 良く言いましたよ、お坊さん。オナラの時は何を言ってるんだこの人はと思いましたが、大事なすく・・えっ!? りゅう? 龍何ですかっ!?


「あ・・・・そう」


 衝撃の事実が出てきちゃいましたけど、おしゃかさまにおしおきされちゃう程のいたずらって、何しちゃったんですか? トイレ掃除じゃ済まされない程のお怒り・・考えただけでも身震いしますね、でもこの様子なら売る事はないでしょう 安心しましたよ。


「次はうる、すく~た~なんだな、そんで読み上げるんだな」


 え? うる? すく~た~・・え? まさかですよ! まさか・・。


「りゅ~きちや、すまんな、うんめいだとおもって、こらえてくれ・・・・」


 りゅ~きちをうっておかねにかえました。


「ぶぉん、ぶぉん」


 ・・お坊さん!? 速攻で売り払いましたよこの人! 旅の仲間!! 売っちゃダメですよね? りゅ~きちのぶぉんぶぉんって何? どんな気持ち何ですか? ぶぉんぶぉんまで私が言うの変じゃないですか? 


 あり得ない事が起きました。

 こともあろうに今まで大事に乗って来た旅の仲間を売り払い、船の切符に変えてしまいました。とても悲しかったです。


「次はかう、きっぷ、なんだな」


 その選択私にさせないで下さいよ!

 うっ・・、さようならりゅ~きち・・。


 ・・・・その後順調に船に乗れたごくつぶしさん一行は女の子? のごくつぶしさんと感動の対面を果たし、見事小槌を受け取る猿のごくつぶしさん。

 あれ? それで殴るんじゃなかったんですか? と疑問に思っていると突然船のオーナーだと言う男の子が現れ、生意気だと言う理由でごくつぶしさん達一行は 寄ってたかってその子をいじめました。

 泣きながら父親を呼ぶその子・・。

 遊びたい盛りのわんぱくな子なんだから、もっと寛大な気持ちで接して上げればいいのにと、内心思いながら続きを読んで行くと・・。

 何と! その子の父親! ぎゅうまおうだったんですよ! 全然似てなくてビックリでした!

 ぎゅうまおうを怒らせたごくつぶしさん一行、なすすべもなくやられてしまい あろう事か女の子? のごくつぶしさんを人質に取られてしまいました。


「何を言ってるんですか!? 今ならまだ間に合います!! その小槌を渡して下さい!!」


「ダメなんだな、これは重要アイテムなんだな、ここでは渡せないんだな、渡したらぎゅうまおう倒せなくなるんだな」


 女の子? のごくつぶしさんは最後に、小槌が絶対役に立つから取り敢えず持っとけと猿のごくつぶしさんに託し、頷く猿のごくつぶしさん。


「そんなの関係ありません! 今ここで渡さないと、女の子のごくつぶいさんが殺されちゃいますよ? 仲間を犠牲にしてまでなんて、そんなのダメです! 渡して下さい!!」


「安心するんだな、渡さなくても、・・あっ! 何するんだな? 返すんだな! 小槌どうする気なんだな?」


 ぎゅうまおうに小槌を捨てろ仲間を殺すぞと脅されましたが、頑なに捨てる事を拒否し、更に怒らせる猿のごくつぶしさん。


「これ・・、渡さないんですか?」


「そうなんだな、さっきからそう言ってるんだな、一度で聞いて欲しいんだな」


「渡さなかったら・・殺されちゃうかもなのにですか?」


「だから安心するんだな、渡さなくても・・」


「み、見損ないました! そうですか、やっぱりあなたはごくつぶしさんです!! いいですよ返しますよ、勝手にすればいいんです」


「そうなんだな、素直に返すんだな、そして続きを読むんだな」


「素直? これをあなたに返す事が? ・・ご、ごくつぶしさんの・・ごくつぶしさんの・・ごくつぶし野郎ーー!!」


「ちょ、投げたらあぶなっ!?」


 渡さなかった事で、人質として攫われる事となった女の子? のごくつぶしさん・・。

 いよいよ対峙する事になった猿のごくつぶしさんとぎゅうまおうの運命は如何に! っと言う所で前編終了。


[ポカンッ!!]「ギャンゴ!! ・・渡さなくても・・殺されないんだな・・ガク」


「え? そうなんですか? ご、ごくつぶし・・さん?」


 その後しばらくの辛抱をまた強いられたので、本日はここまでとしました。


「ごくつぶしさーーーーん!!」


 報告お終い。

 おっとまた書き忘れてしまいました。船の中でもごくつぶしさんは、飲んで食べてで正直羨ましかったです。



 エインヘリャル候補進捗状況報告書、ー月ー日、候補者名見学さん。仮想異世界、鉄板焼肉物語、天気晴れ。

 本日は夜の訪問となってしまいましたが、丁度夕食を食べている最中でした。本日の夕食はスパゲッティだった様でブオンゴレェルォッソ? と言うトマトソースを使い、アサリやムール貝の入った物で、夕飯前の私は口の中がヨダレでいっぱいになり、羨ましかったです。


「ぐぉぉぉおおおお!! 当たれーーー!! ・・あっ! と、取られ・・ちょ ちょっとタンマ! タンマ! 足場が丸太が回ってブァランスゥがとれっ わっ!?」


[バシッ!!]「マクンバー!!」


 食べながらフゥルッティ、ディンマーレェと呪文の様に唱えていましたが、あれは何だったのか未だに謎です。


「あっ・・はぁはぁはぁ、うっ・・クソ! 床が・・歯車が回って走っていないとぅあ!? あああぁぁぁぁ・・ぁぁぁぁあああーめ、目が回る~・・き、気持ちが・・うぅえ」


[バスンッ!!]「ハブラムッ!!」


 見学さんがワインを味わう時は口に含んでトゥルトゥルするんだと、やって見せてくれましたが、その顔がバカにされている様で少し腹が立ちました。

 見学さんは色々博学で勤勉な方の様で、私の知らない事でも沢山知っているので凄いなと思います。


「さささ、寒っ!! な、な、何故こ、この様な、かか環境で・・シャシャシャシャッツェにたたた短パンなのだ・・ひひひ非常識・・にも、ほっ、程があるぞ、だだだが、よっようやくブォールが我が手に、こここの最大限のチュチュチュチュチュアンスゥをいっ・・活かさねばばば! ふはっ! ふはははっ!! くく喰らうがいい!! ここれが我の最強のわっ!? なな雪崩が来ゴモゴモゴモゴモゴモゴモ・・・・・・プハッ!! ぜえぇ・・ぜぇ・・ゆゆゆ雪で足場がああ安定せん上に、うう埋もれるわ・・て、てて定期的に雪崩が起きる・・なな何故こっ、この様な場所でドゥッジィブォールなんぞ! あっ! そ、そうだ! ブ、ブォールはどこだ? ブブブォール・・あっ・・」


[ズバンッ!!]「アラムーサ!!」


 さて本題ですが、本日も強敵だった様で、見学さんのシュ! っと投げた球を何とそのままバシッ! っと蹴り返し、危く見学さんにズドンっと当たる所をフワッっとギリギリでかわし、そこですかさず見学さんの必殺技ま~いどまいど、まいどでまいど、ま~いどまいどでまいどありが炸裂!

 あっと言う間にポポポポ~ンっと敵を吹き飛ばして行きました。


「あ、暑い・・ジッとしていないと体力を奪われる・・だが、ジッとしていると地面に徐々に体が埋まってしまう・・皆! ここは土に埋まらん様に・・おや? そして誰もいなくなった? 

地面に埋もれてしまったか、ふむ・・待て、我が明晰かつ聡明な頭脳が今ピンっと一つの答えを導き出したぞ? 現状味方で体が出ているのは我のみ、そして球は敵が持っている・・そこから導き出される答えは、ふははっ! ぜ~んぶ丸っとどんとこい! 真実はじっちゃんと一つ! ネクストヒントはなぜベストを尽くさ・・」


[ズバシュッ!!]「アブダダーー!!」


 ですが敵だって負けてはいません。敵の投げた球がダッダーン! と次々見学さんの仲間に命中し、ボヨヨンボヨヨンと倒れ行く仲間達。



「そこは負けじと見学さんの・・・・ふ、ふふふ、あはははははははははっ!!」


(えっ!? 何? 一生懸命机に向かって書類と睨めっこなさってると思ったら いきなり大笑いですか?)


「・・・・・・」


(こ、今度は急に静かに? こ、これは早々とお掃除終えて退室した方がよろしそうですね・・)


「あーもう! 何なのこれ! ツッコミ所が多過ぎてもう何が何やら! あの子一体何を考えているの?」


(・・あの子? どちら様なのでしょうか? 危険ではありますが、掃除をするフリをしてフレイ様の後ろに回り込み、盗み見して見ましょうか・・)


「・・全くもう、報告書一つまともに書けないだなんて、今までどうやって仕事してたのあの子・・今日は何食べたかとか美味しそうだったとか、どうでもいいのよ! 悲しかった楽しかったって何? 何であの子の感想書いてある訳? 感想文? それとも日記なの? 日記書いてるのかしら? 他にもあるわ! 何なの? 四国の湿布とか、ごくつぶしとか、見学とか、名前書きなさいよ! それ本名なら親の顔見て見たいわ! おまけに異世界名も最初の一人以外、検索しても一個もヒットしないんだけど、どういう事? 何の世界で何やってるの?」


(うわ~・・かなりご立腹のご様子ですね、えっと報告者名・・・・久間出・・シノ様? ・・・・! 久間出シノ様って、あの杉上ヨウ様の所の女神様のお名前ですよね?)


「鉄板焼肉物語で何で球投げてるの? 何が行われてる訳? それとも書き間違い? もしくは、神界最先端の翻訳機を用いても翻訳ミスで解読できない様な、高度な書き方してるのかしら? 投げてるの球は球でもオタマ投げ合ってるのかしら! 球ってボールの事じゃなくってボウルだったとか? お好みやもんじゃの具でも入ってるのかしら? 私の解釈が間違っていなかった場合、シュ! とかバシッ! とかズドンやフワッもみ~んな・・ボウルの中身が飛び散っちゃって、豪い事になって会場大パニックだわ! あはははは!! 会場大パニックで私の頭も大パニックよ!!」


(・・・・もう一通りのお掃除は終了していますし、まだ仕事は残ってますし、やはりここは静かに退室してしまった方が無難ですね)


「・・何度読んでも意味不明だわ。・・理解しようとしてはいけないのかしら?」

「フレイ様、お部屋のお掃除終了致しましたので、私はこれで失礼致しますね」

「えぇ、何時もご苦労様」

「では、失礼致します」


(何とか、事なきを得て退室出来そうですね)


「・・・・あっ、ちょっと待ちなさい!」


「へ? あ、は、はい!」


「あなた確かフロント業務の他に、エインヘリャル候補の所に、食事を運んだりしてるんだったわね?」


(捕まってしまいましたね・・)


「え? ・・あっ、はい・・何かご不備がご座いましたか?」


(こうなったら正直かつ、当たり障りがない程度にとぼけてお話しましょう。その方が早く解放されるはずですからね)


「いえ、そうではないの。ただこの報告書を見る限り、どれもエインヘリャル候補の食事の事ばかり毎度書かれているから、少なからず一度や二度接触する機会もあったのではないかと、推測したのよ、・・あなた久間出シノと会った事がないかしら?」


「久間出シノ様ですか? そうですね、私もそして他の妖精達もフロントの出入りチェックの作業もしてますので、お会いするだけでよろしいのでしたら、かなりの頻度でお会いしてると思われますが?」


「確かにその通りね・・引き止めて悪かったわ、お仕事ご苦労様」


「いえいえ、フレイ様のお役に立てるのであれば私共妖精一同誉となりますので では失礼・・」


「悪いけど、少し待ってもらっていいかしら?」


「はい? まだ何か?」


「あの子に対する印象だけでもいいの、あなた自身の感想を聞かせて欲しいのよ」


(大分お疲れなのでしょうか? 顔に出ちゃってますね、どうやら気にかけているあの女神様が、問題のない方で一言大丈夫だと聞いて、安心したいご様子とお見受けしました。

 やはりここは、真摯にお答えするべきでしょうね)


「わかりました。フレイ様、私の個人的感想でよろしのでしたら、あの方のお噂は以前より小耳に挟んでおりました。そして実際に勇者様にお食事をお持ちする際にお目にかかる機会がありましたが、くすっお噂通り、大変変った女神様でいらっしゃいました」


「やっぱり、何かしでかしてたわねあの子・・」


「はい、あぁいえ、ですがそれは些細な事ではないでしょうか? まるで子供のイタズラの様な純粋な物であり、悪い方ではないと判断致します」


「些細な事・・それでも時には他者に多大な迷惑をかけ、そして傷つける事だってあるのではないかしら?」


「んー・・その通りですね、ですがあの方は大丈夫だと思いますよ」


「根拠があるなら聞かせてもらえるかしら?」


「目線ですね」


「・・・・目線?」


「はい、あの方、相対する者がどんな者であれ目線が同じなんです」


「つまり、相手を差別せず、平等に接するという事かしら?」


「はい、その通りかと、相手が人間でも妖精でもあの方の前では関係がない、そうお見受けしました。それはつまり相手の立場に立つ事も出来る。と言う事ではないでしょうか?」


「それであなたは、あの子が大丈夫だと?」


「はい、私はそう判断致しました」


「そう、もういいわ、ありがとう参考になったわ」


「お役に立てたなら光栄です。ではフレイ様失礼致しますね」


「えぇ、ご苦労様・・」


(・・・・成る程ね、何が問題なのかようやく理解出来たわ、妖精はともかく、人間と? 神が平等? あり得ないわ。あの子を見ていて妙な不安感を覚えると思ったら、そう・・そう言う事)


「まぁ、それとこれは別問題・・っふ、見学してるの? それとも出場してるのかしら? 何度見直しても訳がわからないわ・・一体何人ごくつぶしがいるのよ・・」




 飲んで飲まれて、飲まれて飲んで、数ある好敵酒達との戦いを終え、戦乙女は眠る明日への希望を託して、次回目覚めたその時残ったものは?

 ・・何て冗談ですよ、たまには格好良くスタート切りたいじゃないですか、え? 次回予告の時点でスタートじゃない?

 あははっまたまたご冗談を・・ホンマや!

 ・・・・慣れない事を無理するものではありませんね。


 本当散々な目に遭いましたよ、あの後ジャンジャン飲ませ過ぎたせいで、ハッスルフィーバーを向かえた三人を連れて、我らが女子寮へと何とか着くも、全員をそれぞれの家へ送り返す気力も体力もなく、しょうがないので一番近かったミキちゃんの部屋へと私諸共滑りこむ様にダイブ。

 三人はそのまま寝入ってしまったので放置を決め込み、せめてシャワーだけでも浴びてから寝ようと着替えになりそうな服を物色し、軽く浴びた後誰も使わないのならと一応本人許可を取った後に、ベッドにて本日の疲れを癒す為の就寝へと付きました。


 次の日起きた時には妙な温もりを感じ、目を覚ますと両手に花状態で朝を迎え どうやら私とほぼ同時に目を覚ましたであろうミキちゃんと目と目が合い、蛇に睨まれた蛙の如く硬直・・しばらくの辛抱へ。

 現状把握と脳処理が状況に追いついたであろうミキちゃんの第一声は「え? どういう事?」でしたこっちが聞きたい位ですよ、全く・・。


 その後は質問攻めでしたね、二日酔いの頭を抱えて、何故自分の部屋に皆がいるのか、何故シノが私の服を着て私のベッドで一緒に寝ていたのかと、一個づつ答えて行こうとした所、何時もなら朝寝坊が得意なはずのキョウちゃんが私の横で目を覚まし、おはようと声を掛けた所で掛け布団がスルリと落ち一糸纏わぬ芸術品を目撃、何とも羨ま・・、じゃなく再びの硬直状態・・横で小さな悲鳴が聞こえそちらを向くと、ベッドに並ぶ私達を指差し「え? どういう事? お前ら何時の間に・・」と言った所で息を呑むソナエちゃん。

 困惑する二人と一人嬉しそうにするキョウちゃんとの三人の間に挟まれ、説明が面倒になった私は何とかこの場を逃げ様と目を泳がせた所、目に入ったのが・・。


 出勤時間をとっくに過ぎた時計でした。


 大慌てで飛び出した私達は、宮殿に到着するもフレイ様にお説教されるメ~ちゃん達事メアニ~ズを目撃、バレない様にこっそり出勤表にスマホをかざしスキャンに成功・・。


「ちょっとどこへ行こうって言うのかしら? ・・あなた達」


「「「「っひ!?」」」」


 見事無事にフレイ様に捕まり、七人揃ってこっぴどく怒られちゃいました。

 何であんな所でお説教何か・・、もっと別の所でされていれば、私達は見つからなかったのに・・。

 まぁ過ぎてしまった事を何時までもクヨクヨしていても始まりませんからね、お仕事頑張りますよ!


 朝ご飯食べてから・・。



 ふぅ~満足です。こんな事もあろうかと思い、買い置きしておいたカップラーメンが役に立つなんて・・。

 あっ、言っておきますが、別に小腹が空いてしょっちゅう食べてたりする訳じゃありませんからね? 悪しからず。

 さて、気を取り直して本日最初の仕事、一番心配なごくつぶしさんの所へでも行ってみますか・・。



 ぎゅうまおうにやられ、しべりあに飛ばされ仲間とも離れ離れになってしまった猿のごくつぶしさん。

 私が到着した時には、寒さと試練の中、傷付き疲弊し倒れ、老夫婦の手厚い介護を受け、温かベッドでぬくぬく親切に甘えている最中でした。

 パクパクとおいしそうに何やら食べているごくつぶしさんの顔が、妙に腹が立ちましたが、老夫婦の手前にこやかに合流。


 私と合流したごくつぶしさんは、手厚い介護の甲斐もあり、見事に試練を突破 新たな道具きんとうんと河童さんとの再会をへて、他の地方に飛ばされてしまった二人の仲間を求めてきんとうんに乗り、はわいへ。

 そこで再び仲間との再会を果たすも・・。


「あの・・え? どう言う事ですか? お坊さんパッパラパ―になっちゃってません? それに、豚さん裏切りましたよね? 今・・」


 残念な事に豚さんはぎゅうまおうに寝返り、お坊さんはショックでおボケになられてしまった様で、折角再開を果たしたのに、ごくつぶしさんが誰だか認識出来ていない様子でした。


「女神様何を呼んでたんだな、船で襲われた時、船壊されて沈んだショックだって、ちょっと前にはっかいが言ってるんだな、一度で理解して欲しいんだな」


 相変わらず腹の立つ言い回しですよね? 


 ・・豚さんの裏切りによって、ぎゅうまおうさんの手下であるお顔の大きな女性、らせつじょさんの家来になってしまった豚さんとお坊さん。

 二人はらせつじょさんと共に、らせつじょさんの経営するホテルへと去って行きました。

 それでも会いたい気持ちを胸に、お坊さんがいると言われているホテルの十五階へ向かう猿のごくつぶしさん。

 仲間内での亀裂、乱暴者と言われた猿のごくつぶしさんの心の中の葛藤、そして今対面する事で自分の気持ちを伝え様とする猿のごくつぶしさん・・私は・・私は・・。


「早く素直な気持ち言うんだな、さんぞうに今のごくつぶしの気持ちぶつけるんだな、そうすればさんぞうは正気に・・」

「ちょっと黙ってて下さい!! 私今・・困惑してる所なんですから!! ここ ホテルの十五階なんですよね?」


「そうなんだな、早くしないとはっかいが、らせつじょ呼んで来ちゃうんだな」

「そんなのわかってますよ!」


「それなら早く・・」

「そんなのわかってますけど! でも、・・わかりました言いますね、私の素直な気持ち・・」


「え? いや、何言ってるんだな? 今のごくつぶしの素直な気持ちごめんを・・」


「誰ですかこのお爺さん! 何で床から上半身だけニョキっと出して平然と空気ぶち壊すんですか!? 今一番いい所でしたよね? この人出しゃばらなくても、今言おうとしてましたよね?」


「それ、にょいぼうくれる重要人物なんだな、さっきもちょっと会ってたんだな、あんまりその辺気にしちゃダメなんだな、だからさっさとごめんって言うんだな」


「言えませんよ! 私の込み上げた気持ちどこ持ってけばいいんですか? 何でお爺さんに見つめられて謝らなきゃいけないんですか? かえって言いにくいでしょこの状況! 私言いませんよっ!」


「はぁ・・仕方ないんだな、俺が言うんだな」


 え? 今何て?


「・・思えばここまでずっと女神様に頼りっきりだったんだな、大事な言葉くらい俺が自分で言うんだな」


 ごくつぶ・・コレタさん?


「ごめん・・・・・・なんだな」


 あ・・あぁ・・、コレタさん・・。


「思い返したら両親も含めて色んな人に助けられ、頼って来たんだな」


「コレタさん・・」


「謝ったの何て何年振りなんだな、ましてや感謝の気持ちなんて、もっと言ってないかもなんだな」


「コレタ・・さん!」


「バカな事しちゃったんだな、異世界に憧れて自殺何て・・、遺書も残してないんだな」


「・・コレ・・タ・・ざん!」


「女神様、次いでだから言っておくんだな・・、ありがとう・・・・なんだな、何か照れ臭いんだな」


「ゴベダざん!!」


「両親に何も残せなかったんだな、その分女神様これからも、よろしくなんだな」


「ええ!! えぇ・・勿論ですとも! ・・今の言葉で十分・・スン・・ご両親にも気持ちは伝わりますよ、ぐすっ・・」


 良かった! ここまで見限らなくて本当に良かった! 私の努力は今報われました・・。


「そんな訳で、これからも頼るからよろしくなんだな」


「はい! わかりました! 不詳ヴァルキリア駆け出しの三級女神ですが、ドンとお任せ下さい!!」


 猿のごくつぶしさんとお坊さんの感動の瞬間は、ニョキっと床から生えたお爺さんにぶち壊されましたが、コレタさんの素直な気持ちを聞いた私は、感動に打ち震えながらも、やっぱり心の片隅で、お爺さん邪魔だな~っと思いつつ、お爺さんの視線が気になって気になって仕方がありませんでした。


「じゃあ取り敢えず、続き読むんだな」


「わかりました!!」


 でも、良かったです。コレタさんとの気持ちが少し通じた気がしますよ、もしかしたら、この前偶然当たってしまった小槌のお陰かもしれませんね。


「やっぱりチョロイんだな・・」


「ん? 何か言いましたか?」

「ありがとうって言っただけなんだな」


「ふふっ、はい!」


 今日はいい日ですね! この後行く予定の見学さんが楽しみです!



「ふんふふんふ~んっと、こんにちは~お久しぶりの~お邪魔しますね~見学さん、ふふふ聞いて下さいよ、何とですね~遂に! コレタさんが改心してくれたんですよ~、もう嬉しくて嬉しくて~・・・・」


「ぁあ・・女神か・・、本日の勤めもご苦労だな・・」


 れれれ~? 何でしょうね? 物凄く暗い・・、まるでお酒を飲んだ次の日の二日酔いしたミキちゃん達くらい暗い・・。


「もぅ、どうしちゃったんですかぁ? 何時もみたいな何か偉そうな感じに、ふはははは! 良く来たな女神よ、みたいな感じの奴今日はないんですかぁ? ふふふ、それでですね~聞いて下さいよ、何と! 遂にですね、コレタさんが改心してくれたんですよ~もう、嬉しくて嬉しくて~私感動で涙がぁ・・・・」


「あっ、うん・・それは良かったな・・、さっき聞いたぞ・・それ」


 おろろろろ? これはもしかしてもしかしちゃうかなぁ? あー・・。

 止めましょう、何か浮かれてる場合じゃない様子ですね。


「どうしたんですか? 見学さんこの前来た時は、神通力で自分固有の能力発揮する為にやる気になって燃えてたじゃないですか?」


「・・ぁあ・・それか・・無理だったんだ・・」


「無理って・・まだ初めてたったの一カ月程度ですよ?」

「一カ月程度? 何を言っているんだ貴様・・、我以外の者は一日や三日で覚えた様な奴ら何だろ? 今回だってそのペースで覚えられてしまう可能性だって重々あるではないか? それなのに・・、我は前回にも増して時間を掛けても一向に兆しすら見えんのだぞ!? 他の二人はどうなんだ? ・・どうせまたすぐ覚えてしまったのではないか?」


「そ、それは・・」


 言えないですね、一生懸命頑張ってる見学さんに対して、二人が三日坊主で飽きて何もしていないなんて・・。


「ほらなやっぱり・・、なぁ? 貴様は前にも増して・・俺の所には来なくなったな・・、それはつまり・・才能がない奴の所には見向きもせんと言う事ではないのか?」


「ち、違いまっ・・」


 顔を両手で多い塞ぎ込む見学さん・・。

 あぁ・・これは・・私の過ちだ・・。


「何が違うものか! 現実の会社の上司と変わらんではないか!! 自分達の都合のいい使える者でなければ相手にもせんだろ!」


「・・見学さん」


 見学さんは大丈夫だ。見学さんは安心だと、勝手に決めつけて、適当にに手が掛からないからと放置してしまった報いだ・・。


「何度やっても! 何べんやっても! ・・無理だったんだよ、・・俺には才能何て・・なかったんだ!」


 一人にしてしまった事で余計に苦しみ、解決策を見いだせないままズルズルと悩んでしまった・・本当はそんな事ないのに・・。


「・・ドッジボールだってそうだ・・少し進んだだけでとっくの昔に詰っている・・」


「何時からですか?」


「・・・・・・一カ月以上前からずっとだ」


 一カ月以上? ・・あの頃にはもう・・。


「見学さん・・ごめんなさい、放置してしまった事、そして私が愚痴をこぼしたりぶつけてしまった事、そのせいで言い出せなくなってしまったんですね? 本当にごめんなさい」


「・・・・・・もういい頭を上げろ、貴様が悪い訳ではない・・、貴様の助言を聞き入れなかった我も悪い」


「・・見学さん? 元通り、仲直りをする機会を私にくれませんか?」


「機会? はは、仲直りする機会なら、いくらでもくれてやる・・だが、現状は変わらん・・我はまだ序盤もいい所だ。能力だってまだ・・」


「大丈夫です。自信を持って下さい! あなたはここまで一人で戦えたんですよ? あなたは・・見学さんは自分が思っている以上に優秀なんです! 目に見えた実績として現れていないだけで、あなたは着実に成長しています。その事実まで無理だった無駄だったの言葉でなかった事にしないで下さい、胸を張るべきです」


 過ぎてしまった事は私にはどうする事も出来ない・・でも、ここから仕切り直して新たにスタートを切る事なら、見学さんの優しさに甘えてしまった未熟な私をここから・・。


「だが・・実質上どうすると言うのだ? 我の実力では到底・・」


「為せば成る為さねばならぬ何事も、ですよ? 前向いて行きましょう! 今までの罪滅ぼしと言う訳ではありませんが、私が背中を支えます! っと言う訳で、まずはどこで躓いちゃってるか見せて下さい」


「貴様に見せずとも我は何べんも! ・・っふ、いや・・そうだな、クヨクヨしていても仕方がない、女神の言う通りだ・・よかろう、貴様の言に乗ってやる。まずは現状把握と言う訳だな?」


「そう言う事です。さぁ! 行きましょう!」


 ここから変えるんだ!

 見学さんとの本当の二人三脚、今までちぐはぐだったその歩みを今、一歩踏み出したばかりです。


「ええっ!? これがドッジボール!? 全然違うじゃないですか!」


「何!? 今更だと? あっ!?」


[バシュン!]「ヤッ! ジロウ!!」


 ・・今、一歩踏み出したばかりです。



「め、女神タン遅いなー・・い、何時もならも、もうとっくに来てる頃なのに・・お、お腹空いたし、ば、晩ご飯何にしよう・・あっ! オ、オムライスがた、食べたくなっちゃった・・も、もう今日はま、待ってても来ないし、いいにしよう・・」


ー はい、こちらフェアリールー・・ ー


「あっ、も、もしもし、オ、オムライス食べたいんですけど、で、出来るだけ大盛でお、お願いします! はぁはぁ」


ー ・・え、えっと・・、オムライス大盛ですね? かし・・ ー


「あっ! あっ、そ、それとケ、ケチャップはこっちに来てから、よ、妖精タンがじ、直にかけてもらっていいですか? ふぅふぅ」


ー ・・・・か、畏まりました。ではご注文を確・・ ー


「あっ、あの! よ、妖精タン! ケ、ケチャップなんだけど・・はぁはぁ、お 俺の目を見て、あ、愛情タップリ籠めた字でドモルさん大好きって・・」


ー ガチャ! ー


「あ、あれ? も、もしもし? よ、妖精タン? ・・・・き、切れちゃった」



[コンコン・・]


「え? あ、は、早っ! は、はい! あ、開いてますよど、どうぞ」


[ガチャ]「・・失礼します」


「ま、待ってました! ず、随分とは、早かったですね、ま、まるで疾風の如くでお、俺とお揃い、な、なんちゃって」


「オムライス、こちらに置かせて頂きますね、先程は内の従業員が突然連絡を切ってしまい、大変申し訳ありませんでした」


「い、いえいえべ、別にき、気にしてないって、あ、あれ? い、何時もの子は・・」


「あぁ・・彼女ですか? 先程の連絡の最中に突然体調不良を起こしてしまったらしく、泣き出してしまったので・・、そんな姿をお客様にお見せする訳にも参りませんので、私が代わりに参りました次第です」


「え? だ、大丈夫なの? し、心配・・あっ、お大事にって言っておいて下さい」


「はい、ご心配の程大変恐縮且つ痛み入ります。彼女に変ってこの場は私が代弁させて頂きますね、それと大変申し上げにくい事なのですが、あなた様を担当する者をしば・・ゴホゴホ・・変えさせて頂きますがよろしいでしょうか?」


「そ、そんなの全然オッケ、あ、あの子に会えなくなるのは、ざ、残念だけど体調治るまでのし、辛抱だし」

「寛大なご判断ありがとうございます。カノジョも大変喜ばれると思いますよ」

「・・え? よ、喜ばれる? な、何で?」


「それでは私は失礼致しますね、また何かあれば遠慮なくお申し付け下さい・・」


「あっは、はい、ご、ご苦労様です」


「あぁ・・いけない・・、私とした事が大事なお役目を忘れていました・・。私彼女の代役を務めねばならなかったのに・・」


「へ? だ、代役?」


「はい・・これ、忘れていました・・ふふふ」


「あ、ケ、ケチャップ! も、もぅ! よ、妖精タンのうっかりさん」


「・・はい、うっかりさんでしたね、うふふ・・ではかけさせて頂きますね・・」


「は、はい! お、お願いします!」

「確認ですが、確か・・ケチャップはあなた様の目を見て、直にかけるんでしたね?」

「は、はい! そ、その通り! あ、愛情タップリにドモルさん大好きってお、お願いします!」


「はい・・畏まりました。では失礼しますね・・私共の気持ちを籠めた思いを・・直に・・」


「へ? え? ちょ、ちょっ、ち違っ! じ、直にってそう言う意味じゃ! あ あっ! み、見下されてる! ひ、人を人とも思わない蔑んだ目で、み、見下さいれてる・・で、出来たらみ、見上げる感じにう、上目遣いき、希望・・で、でもこ、これはこれで・・あっ、あっ! そ、そうじゃないだろお、俺! あ・・あああ! ああぁぁぁああああ!!」


[ブチュルチュル! ブチュ! チュルチュルチュル・・ブピッ!]


「・・それでは失礼しますね」[カ・・チャン]


 その後、シバルノスキニコフさんと言う男の妖精さんが、湿布さんの担当に付きました。


「これから私目が、あなた様のパートナーとして二人三脚を務めさせて頂きます。ご要望ご用達があれば何なりと・・ムフ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ