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戦乙女の黄昏  作者: いさらゆたか
6/15

2-3 それぞれの世界 それぞれの難問


 何だか良くわからない間に、競争する事になっちゃいましたね~・・。

 本来勝負事などそんな程度の低い事、どーーーでもいいのですが、ボーナ・・いえ、使命と友情の為とあらば頑張らねばなりませんよね?

 どの道やらねばならない事なんですから、前向きに楽しんで行きましょう!

 さてと、まずは一番最初に送った湿布さんの様子でも見に行ってみましょうか。



「こんにちは~、どうですか? 進み具合は?」


「あっ! あぁ・・お、お母さ~~~ん!!」


 うわっ! なっ、何ですか?

 いきなり私を見つけるや否や、こっちに猛スピードで這い寄って来る湿布さん。


「誰がお母さんですか! ・・・・? あれ? すいません見間違いでしょうか? 上の所にワールド1-1って表示されてる気がするんですが・・」


 湿布さんが縋り付いて来ようとしたのを手で制止し、それでも涙でくしゃくしゃになった顔を近付けて来たので、困って顔をそらし、ふと目に付いたのが、青空に浮かぶ様に並んでいる白い文字で書かれた数字でした。


「う、うぅ・・」

「もしかして見間違いじゃない・・」

「うわぁぁぁぁぁあああ!! も、もう嫌だぁあ! か、帰りたい・・お、お家に・・帰りたい・・」


 ・・行く前のあの余裕な感じは一体どこへ? 微塵も残らない程の怯え様何ですが・・。


「あの~、何があったのか、よろしければ事情だけでもお話して頂けませんか?」

「じ、実は・・さ、最初はか、勝手知ったるマメオ兄弟だと思って、な、なめてたんだけど・・」


 えっと、泣きじゃくりながらなので、こちらで要約して掻い摘んで説明しますね。

 どうやら最初は意気揚々となりきっていた様子の湿布さん。出だし初めて開始数秒で敵のキノコ型モンスターポックリに出くわし、「おぉ! ポ、ポックリじゃん!」 ・・までは良かったそうなんです。


 そのポックリと言うモンスター自体はただの横歩きして来るだけで、踏んで倒せばそれで終わりらしいのですがっ・・そのポックリ、湿布さんの身長とほぼ同等の大きさを有するそうで、つまりポックリを踏む為にはご自身の身長より、最低でも頭一個分は跳ばねばならないと言う事でして、そんな事出来ないと嘆かれ、文字通り大きな壁にぶち当たってしまったと言う訳だそうです。


 馬鹿正直に私が言った事なんか守らずに、倒さず避けて通ればと提案したのですが・・。

 自分でも確認した所、横・・見えない壁がありますねこれ、私でも無理ですよこの幅・・。

 しかも良く聞いているとこの試練中々過酷ですね、そのポックリさんに触れただけで、強制的に変なポーズを取らされてそのまま落下死。

 ただ落下ならまだ怯える事はないそうなのですが、これが死ぬほど痛いそうで・・しかも諦めてこうして待っている間にもカウントされて行き、秒数がゼロになるとそれでも落下死・・。

 ただ死を繰り返す内に病んでしまった所へ、私が様子を見に現れたと言う事みたいなんです。


「つまり、この状況をどうにか打開する策、もしくは実力を付けないと永遠の苦しみとなり、ここが即席の永遠に終わる事のない地獄に変わると・・」

「そ、そうなんです! め、女神ダン何とがじて下ざい! あ、あぞごのカウンターが怖ぐで怖ぐで・・じ、じがも残機ゼロになるど、きょ、強制的にスタート地点に・・ぎ、気付いたら立たざれでで・・も、もぅ・・じ、死ぬのは嫌だ! 元の世界に戻りだふぃ・・」


 ・・・・・・これは、選択ミスですね、ちょっとお待ちを今調べてみますね、え~っと一度選択された世界以外を希望された場合と、輪廻を希望された場合・・。


「すいません。現状では変更は不可なそうです。やはりこの状況をどうにかするしかありませんね」


 そもそも輪廻から外れた者を選んでいるので、そちらを希望されても消え逝くのみなんですよね。


「しょ、しょんなぁ・・」


 さて、どうしましょう? ・・この方がこんな所でうじうじされたままで、しかも他のヴァルキリアのエインヘリャル達が続々とヴァルハラへと送られた場合・・マズイですね、ボーナス出る所かカット・・悪ければ減給? 勝負所ではありませんね、何とかしなくては・・。


「う~ん差し当って、まずは実際にそのポックリを見て見る事から始めましょうか」

「い、嫌だ! い、行きたくない!」

「行くしかないんですよ! ・・ほら立って!」

「い、嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!」


 駄々をこね、うずくまったままで膝を抱えて震えてる・・まるで小さな子ですね。

 う~~~ん! こっちはボーナスかかってるんですよ! 無理に引きずってでも・・。


「い、行くなら女神タンひ、一人でいけばいいだろ? ・・お、俺は絶対にここを動かないぞ!」

「・・そこでずっとそうしてるんですか? うなだれたままでただ繰り返す苦痛と死を待つだけの、それだけの為に生きるんですか?」

「・・・・・・」


 掴んだ手を振りほどき、再び丸くなる湿布さん。

 ・・ちょっとカチンとしちゃいましたね、動かない者を無理に動かす気はありません・・ただ。


「そうですか、わかりました・・ならせめてやれば出来るって所だけ見せて、それから去ります!」

「む、無理だよ・・で、出来る訳ないよ!」

「出来る訳がない? 私がですか? それこそなめられたものですね、一応これでも女神なんですよ? ・・ではっ!」


「・・あっ! め、女神タン・・ちょ、ちょっと待って・・い、いくら女神タンでも・・」


 私は希望の女神ではありません・・ですが、ほんの少しでもやれるって所! 見てて下さい私の華麗なる走りを!


「い、いやだから待って!」


 ポックリの一匹や二匹踏んずけて・・あなたの希望となりましょう! さぁいざ尋常に・・勝!!


[ベチーン!!]「びゃっ!? な・・何でここにも見えない壁・・がっ・・?」


「だ、だから待ってって言ったのに! しゅ、主人公はお、俺なんだから画面のスクロールもお、俺に合わさってるし・・」


 な、何で・・そう言う情報を先に・・教えてくれないんですか・・がふっ・・。


「だ、大丈夫女神タン?」


 心配そうに声を掛けてくれる湿布さん。

 でもね? せめて心配するならこっちに駆け寄って来てくれませんか? はぁ・・もぅ折角の美人が、見せてはならない顔になっちゃったじゃないですか!

 全くそれでお嫁に行けなくなったら責任・・は取らなくていいので、どうしてくれるんですか!


「で、でも・・め、女神タン見てたら、な、何だか勇気が湧いて来たみたい・・」


 あれれ? これは・・もしや・・。


「お、俺やるよ! も、もう一度、い、いや何度だって立ち向かって見せる! め、女神タンの背中がそれを教えてくれた!」


 勇者覚醒来たーーーー! やりました! 私の何かが失われた気がしますが、私の身を挺した自己犠牲が湿布さんの魂に再びやる気の炎を!


「うおぉぉぉぉおおお!! ポ、ポックリがなんぼのもんじゃぁい!」


 お、おぉお! やる気満々ですね湿布さん!! 私とすれ違い走り抜ける湿布さん!

 画面がスクロールする事で現れましたよ! ・・あ、あれがポックリ? 確かに大きい、説明通りこちらに歩いて来るだけ・・その動きは軽やか、そして何故か横歩き! 

 っは! そうか、余裕・・余裕なんですね? だからそんな・・最初から湿布さん何て目じゃないって事ですか・・つ、強い・・何やら凄みを感じますよ、あれがポックリ・・最初の障害にして最大の壁! あの貫禄・・。


「あんなのどうやって・・」


「い、いやだから、踏めばいいだけだから、とうっ!!」


 ぉお! 行った! 跳びましたよ!


「あふん! ・・ぎゃ~~~~~~~~・・・・」


 おぉ・・逝った・・飛びましたよ・・。


「も、もぅ嫌だ! あ、あんなの無理だ! お、お願いだから帰してぇ!」


 そして振出しに戻るですか、何度だって立ち上がる覚醒勇者は一体どこへ・・。


「ポックリ拝見させて頂きました。そして湿布さんの勇者としての心意気! と大した事のない走り込みとジャンプ力」

「な、何気にひ、酷い事言われてる」


 まずは本家マメオ兄弟を参照しましょうか・・。

 ・・・・・・。


「成る程、これは難しいですね、そもそもマメオさんのスペックが、湿布さんなんかより遥かに高いです」

「そ、そんなのあ、改めて言われなくてもわ、わかってるし・・」

「まずマメオさんは走り込んだ際、失速しません。そしてこの方助走無しでのジャンプ力が、既に人間のそれを遥かに凌駕していますね」

「あ、当たり前だろ! だ、だってマメオはお、俺が生まれる前からヒーローやってるんだぞ! そ、それにゲームだし・・に、人間じゃないし」

「そうですね、そうかもしれません。確かに普通の人間じゃないかもしれません。ですが、あなたはヒーローとして認め、そして彼はそこにいた。それまでは彼はこれによるとただの配管工さんですよ? 彼はこの状況に立って、そしてあなたに見られて初めてヒーローとなった。そして今、あなたは私に見られ彼と同じ境遇に立っている。湿布さん? 一緒にヒーローになりませんか?」

「い、一緒に? ・・め、女神タンと?」

「はい、その為の助言やサポートはしますよ?」

「で、でもど、どうやって・・」

「ふっふっふっ、まずはお手本を見せますよ」


 軽く伸びをし、湿布さんの様子を確認する。

 不安そうですね、まずは私がその不安を取り除いてあげます。


「いいですか? 一緒に走りながら見ていて下さいね」

「あ、は、はい! め、女神タンのせ、背中にピ、ピッタリ付いて、い、行かせてもらいます!」

「ピッタリはやめて下さい、ある程度距離とってもらっていいですか?」

「あ、は、はい・・す、すいません」

「では行きますよーー・・・・とう!」[プーン!]


「・・ハァハァ・・う、うわぁあ! と、跳んだ!」


「・・・・はいここでポン!」[・・・・フヨッ!]


「お、おぉ! さ、流石め、女神タン!」


「っね、簡単でしょ?」


「あーそ、そうですね~、ってで、出来るかーーー!! め、女神タン完全にマメオ以上のジャンプ力出てるし、そ、そもそも女神って、じ、時点でハイスペックじゃね?」

「えー、違いますよちゃんと見てて下さい、今度は私の足に注目して見ててくれませんか?」

「あえ? あ、は、はい喜んでバッチリみ、見させて頂きます!」

「バッチリはやめて下さい、見るのは足の裏でお願いします」

「あ、は、はい・・す、すいません」

「では、この上に浮いている四角いレンガをタッチして見せますね」

「め、女神タン、そ、それレ、レンガじゃなくてブ、ブロック」

「細かい事はいいんですよ、それじゃ行きますよ! ・・はい!」[プーン・・ボブン]


 あれ? 軽くタッチしただけなのに物凄い動いた。所で先程からずっと気になっていたのですが・・跳ぶと変な音が足元から鳴るんですが、これも仕様なんでしょうか?


「っとまあこんな感じです」

「う、うんうんうんうん。さ、さっぱりわからん」

「今ゆっくり跳んで見せたのに、それでもですか?」


 首を傾げ眉をひそめる湿布さん。

 いきなり行き詰ってしまいました。・・なんでこんな簡単な事理解してもらえないんでしょうか?


「ゆ、ゆっくりだろうが、す、素早くだろうが、あ、足の裏がど、どうかしたのかさ、さっぱり意味がわからん」

「え? 見えてないんですか? ・・・・えっと私の指先に神通力のオーラ見えません?」

「じ、神通力? オ、オーラ? ぜ、全然見えないけど・・も、もしかして今 な、何かオーラで形作ってこ、ここに何が見えるか当てて見ろって、や、奴やってたりしてるとか?」

「いえ、そんな器用な事私出来ませんから、普通に強めに纏わせる程度なんですが・・」

「あ、あそう・・で、でも待てよ・・も、もしかしてその神通力を足に溜める事によってジャ、ジャンプ力を強化し、してるとか? 他にもま、纏わせる箇所によって色々強化される的な?」


 ・・・・え? 何で湿布さんその事しってるんでしょうか? 神通力使えないんじゃないかと思って聞いたのに、説明する前に理解してません?


「あっ、あっ、そ、その神通力使える様になる為の修行をこ、これからするんですね? わ、わかります!」


 えー・・そこまで言い当てたならもう使えるでしょう?


「そ、そうですよ、何でそこまで理解してて使えないんで・・湿布さん? どうしました? お腹痛いんですか?」

「む、胸熱展開キターーーーー!!」


ビ、ビックリしたーー! いきなりうずくまったかと思ったら、急に立ち上がって大声出してどうしちゃったんですか?


「さ、早速ご教授お願いします!」


 何か・・急にやる気全開になりましたね、まぁ前向きになってくれた事は、こちらとしても喜ばしい事ですが・・。


「で、では・・と言っても実はもう使ってるんですけどね」

「は、は? な、何言ってるの女神タン? つ、使えてるならこ、こんな苦労し してないし」

「はい、多分それは実感がわいていないからですね、湿布さん人の肉体に血液が流れている事ご存じですよね?」

「え? な、何の質問? そ、それ関係なくね?」

「いいから答えて下さい」

「そ、そんなの知ってるにき、決まってる。しょ、小学校で習うレベルのも、問題ですはい」

「ですよね、じゃあそれを確かめるにはどうしたらいいですか?」

「え、え? ほ、本当に何言ってるの? め、女神タンそ、そんなの簡単手をかざして見るか、ナ、ナイフか何かで指先でもちょっと切って上げれば・・って何持ってるの! 女神タッ!」

「あぁ、これですか? 黒文字って言って和菓子食べる為の道具なんですけど、今持ち合わせこんな物しかなかったもので・・大丈夫です! 私の神通力でちょっとだけ強化されますから、切れ味も刺し心地も心配ないと思いますよ?」

「そ、そんな心配してないし! む、寧ろ今からのし、心配してる所なんですけど、ジ、ジリジリとにじり寄って来る女神タンが、こ、怖すぎ・・あっ! で、でも逆に女の子に迫られている感じがハァハァ・・な、何て言ってる場合じゃないぞバカ俺! い、痛いの嫌だしに、逃げるが勝ちーーーーーっ!!」


 痛いの嫌ですか、まぁ当たり前ですよね誰だって嫌です。でも、これは必要な事なんですよ、百聞は一見に如かずって事で体験して頂くのが手っ取り早いんで、それにしても湿布さん一目散ですね、私はしばらくこのまま動かなくても、ある程度離れれば勝手にスクロールして押してくれるので、それから歩いても遅くないし どうせ止まる事になるだろうし、のんびり行きましょうか。


「どちらへ行かれるのですかー? そちらに向かっても大丈夫ですかー? 先程動画確認しましたがその先には・・」


「ハァハァ・・あっん・・ハァ・・ふへ・・め、女神タンそ、そんな事・・行って止まった所を・・あっ! っぶな!」


(そ、そうだった・・さ、先に進むという事は・・)


 そう、そこには土管が存在する。マメオさんにとっては、ちょっとした障害物なのですが・・。


「危なかったですね~、もう少しで土管にぶつかる所でしたよ~、さぁ無駄な抵抗は止めて、プスりといきましょうか・・プスりと・・フヒヒ」


「ひぃっ! こ、このくらいのど、土管なら、の、登・・ふんっ! むっ・・あぅ、く、靴が滑っての、登れ・・」


 おぉ! 意外と根性あるんじゃないんですか? 必死にもがいて登ろうとしてますね・・ただ悲しいのは、地面スレスレ数センチの所で土管に必死にしがみついて、上がりもしない足を微妙に動かしている様にしか見えないと言うのが、何とも見ていて空しく感じちゃいますよ、私が今・・楽にして上げますからね・・フヒヒ。


「あっ、っが! ふひ・・足、あっ・・あっ・・あっ・・」


 ふっふっふ、ゆっくり歩いても追いついちゃいました。

 ・・さて、湿布さん。私は今あなたの後ろで屈んでいます。この場合私はどこを刺したらいいのか、質問するまでもありませんよね?


「必死にもがき苦しむ哀れな子羊よ・・今その苦しみから解き放って見せましょう・・プスり」


「オンギャ~~~~~!!」


 湿布さんの悲痛な叫びが、どこまでも鮮やかな青い空に悲しく響き渡り消えていきました。


「じゃないし! な、何綺麗な終わり方しようとしてるの? お~、痛て・・も もう勘弁してよね、め、女神タンお、お尻の穴はひ、一つで十分」

「あはは、すいません余りにも刺しやすかったと言いますか、寧ろここを刺さねばどこを刺すみたいな感じだったので」

「い、いやそ、そもそも、刺すなって話だから、さ、刺され損だし、な、何で刺したし・・」

「刺され損にはなってないので大丈夫ですよ? お尻を良く見て下さい」

「え? め、女神タンの?」

「いやご自分の」

「は、はい、すいませんって、うわぁ! な、なんじゃこりゃー!」


 ふっふっふ、驚かれるのも無理ありませんね、何せ湿布さんのお尻から・・ぷっ!


「オ、オナラしてないのにな、何か湯煙みたのも、漏れちゃってるんですけど、どう見てもオナラにしかみ、見えないってコラ! 何噴き出してるし!」

「あはははははははははははっ! だって、どう見てもオナラ・・ぷふっ! ダメだこうなるの・・わかってても・・あはははははははっ! ダメ面白すぎてお腹痛い!」

「お、おい! や、やっといて、そ、それはないだろ! わ、笑い噴き出してる暇あったらオ、オナラ噴き出すの何とかしろよ!」

「あははははははっ! ご、ごめんなさい、も、もう少し待って、収まったら・・話しまぷふっ! あははははははははっ!!」


 その後、半分呆れた顔をした湿布さんを尻目に、笑いのツボに入ってしまった私は散々笑い転げ・・。


「ま、まぁそうなるのがあ、当たり前だよね・・」

「お、お腹が・・い、痛い・・腹筋が・・」

「め、女神タン。そ、それは女神タンの自業自得でど、どうでもいいけど、オ、オナラみたいのし、しばらくしたら止まったのな、何で?」

「ぷふっ! あははっ!? っんぎゃ~~!! い、痛はははは!! た、助けひぃたたたはははははは・・」

「はぁ・・こ、これはしばらくお待ち下さいで、い、一端CMは、入りますの方がいいかも」

「・・・・・・すみません。今日はもうちょっと・・ここで終わりませんか?」


 お腹もう筋肉痛とか言う次元じゃないんです。


「ん、んな訳ない、つ、続きどうぞ」

「湿布さんのケチ!」

「あっ、そ、それもう一回言ってくれたらか、考え直してもい、いいかな? こ 今度はもうちょっと上目遣いでお、お願いします」

「・・・・えっとですね、あなた達人間の体は、肉体に血液が魂に神通力が、そしてその二つを繋ぎ合わせる役割として精神が存在して、一つの個として確立しているんです」

「よ、よっぽど嫌だったのかス、スルーして説明する事をせ、選択する女神タンそ、そんな君にハァハァ」

「湿布さんは既にお亡くなりになり、肉体は存在していない、今ここにいらっしゃる湿布さんは、魂を中心に神通力が記憶を基に外に出て形作り、そこに立っている状態」

「き、聞こえないフリして説明を続けているけど、嫌そうなのがちゃ、ちゃっかり顔に出てます。はい」

「つまり、そうして人の形で保ってらっしゃる事事態が、実は使いこなしていると言う事なんですね」

「ふ、ふむふむ、つ、つまりさっきのお、俺のお尻から出てたオ、オナ・・」

「ストップ! ・・そうです。湿布さんの考えてらっしゃる通り、さっきのアレが神通力その物なんです。中々察しがいいですね」


 危ない所でした。またそのワードを今聞いてしまったら、次は絶対に体がもちませんからね・・。


「ん? で、でもあれ? そ、そうなるとこの体も神通力、さ、さっきのオ、・・ゆ、湯気も神通力で同じ物と言う事は、つ、常にMP使いっぱなしって事?」


 MP? MPって何でしょう? PMの間違いでは? 常に午後を使いっぱなすって一体・・あっ! 午後の時間を目一杯練習に当てないと習得出来ない程難しいんじゃ? って事ですね?

 何だ湿布さん不安なんですね、そう言う事ならここは安心させて上げましょう。


「大丈夫ですよ安心して下さい。先程目視した事で認識し、きっかけは得ました。後はイメージとコントロールだけ、まずはさっきのオ・・湯気を手から出す練習をして見て下さい」

「こ、こっちのし、質問には答えてもらえないのは、す、既にお約束の域に達している模様」


 あれ? 答えたはずなのに? ・・? 所で何か曲調が変りましたね、何か凄く急かされる様に速いテンポに・・。


「あっ・・あっ! マ、マズイ! ま、またせ、制限時間が・・」


 制限時間? あ~あ理解しました。制限時間が迫って来ると曲調が早まるんですね~。


「め、女神タン! た、助けて! こ、このままだとま、また!」

「さて、私はそろそろ行きますね、次私が様子を見に来るまでに、出来る様に頑張ってみて下さい! 私は天へと帰りますね~」


「い、嫌だ行かないでそ、側にいて~!」


「湿布さん、大丈夫です。あなたならきっと習得する事が出来る。私はそう信じていますよ」


「ま、待ってい、行かないで! あ、後ぎゃ、逆光が遮って、じゃ、邪魔何で何とかして!」


「いい加減にして下さいねこの野郎、すがるフリして下から覗こうとするなんて 万死に値しますよこの野郎」


「あっ、ぎゃ、逆光なのに何故か、さ、蔑んだ目で見られてるのがわかるじ、自分が怖い、で、でもそれがいい! も、もっと罵って下さい!」


「あなたなら出来ます。ゆっくり自分のペースでいいので・・あっ! じっくりコトコト煮込んだスー・・・・」


「め、女神ターーーン! ・・う・・うぅ、な、何の脈略もなく、最後の締めの言葉だからって、前向きなセリフで終わるなんて・・一緒に頑張ろうって言ったのに・・あ、あんまりだ・・あんまりだよ女神タン! ・・せ、せめて最後の・・何味かだけ教えて・・個人的には、濃厚カボチャ希望」



 ふぅ~、仕事終えた後のスープは美味しいですね~、クラムチャウダーですか 中々濃厚なお味で、流石銘打ってあるだけの事はありますね、ですがこれは思ってた以上に、他の方も心配ですね・・大丈夫でしょうか?



「こんにちは~・・って、あれ? ここどこですか?」


 見渡してもコレタさんの姿はなく、それ所か人の気配がしない・・それもそのはず、私の目の前に広がるのは、青々とした山脈に綺麗な草原、澄み渡った青い空と白い雲・・。

 うう~ん、空気もおいしいし! ・・ふぁああぁ・・むぐむぐ・・ちょっと眠くなっちゃいますね、こんな所で大の字に寝転んで寝られたら、気持ちいいだろうな~・・・・おっと、いけないけない何しに来たんだ私!


 それにしても変ですね~、確か私の記憶では、試練を受けている人のすぐ側に降りる事が出来るはずだったんですけど・・。

 もう少しだけ散策してみますかね、こう言う場所なら歩いてるだけでも清々しい気分になれますしね! ・・本当は何の世界なのかわかれば、検索も出来てここがどこなのかもわかるんですけど・・、まぁ過ぎちゃった事は仕方がない! 張り切ってピクニックしましょうか!


「もう疲れた~~~!! 歩くの嫌だ休みたい~~~!! 何なんですか? このただただだだっ広い草原! そして森!」


 くぅ~~~~コレタさんは一体どこに・・ん? あれ? あそこに見えるの家じゃないですかね!?

 あのお家の方にコレタさんの行方を知らないか尋ねてみましょう!


[ガチャ! バン!]「ご~めんなさいよ~!」


 誰も・・いませんでした。

 でも、ここにお家があると言う事はこの辺りに住んでる人がいるって事ですよね? もう少しこの周辺を探してみましょうか。


「あ~つかれた・・なんだな」


 あれ? 向こうの噴水? 水飲み場? みたいな所に赤いチャイナ服? を着たおさげの女性の後ろ姿が見えますね、ふっふっふ、どうやら私の読みが当たった様ですね! 早速尋ねてみましょう。


「あ~つかれた・・なんだな」


「お~い! すいませ~ん! こちらに大柄で語尾になんだな、を付ける三十代の男の人・・あっ! そうそう丁度あなた位の身長と体格の・・」


 随分と大きな背中ですね、あれ? ん? どこかで見た様な後ろ姿・・。


「その男ってコレタって名前なんだな?」

「ええ、よくご存じですね、あっ! もしかして居場所知ってらっしゃいますか?」


 何か聞き覚えのある低い声・・。


「知ってるんだな、とても良く知ってるんだな」

「本当ですかっ!? 良かった~! その方、今どちらにいらっしゃるか教えて頂けませんかね?」

「目の前なんだな」


「え?」


 そう言いながらゆっくりと振り向くおさげの女性。


「目の前って言ったんだな、一回で聞いて欲しいんだな」


 その腹立つ言い回し・・そして顔!? ブッサッ!! 服装だけじゃなくて化粧してた! 全体的に酷いけど、特に目の回りがパンダみたいになっちゃってる! 

 どうしてこんな事に・・いえ待って下さい、まだ望みがあります。

 まだ目の前と言っただけ、彼女が本人だと決まった訳では・・。


「やっぱり堕女が・・」


「チェストー!」


[ドブッ!!]「アッギラァア!!」


 うん間違いない・・このみぞおちを殴った時の感触、コレタさんですね!


「ひ、酷いんだな! またいきなり殴ったんだな! やっぱり訴えるんだな!」

「はいはい、それはもういいですから、そんな事よりここで一体何をなさっているのですか?」


 酷いのは私より、コレタさんの顔では? いえ流石に可哀想ですね、別に本人がしたくてしてる訳じゃないんだし、でも・・直視出来ない。


「セリフを言っていたんだな、少々困った事になったんだな、そっちこそ何しに来たんだな?」

「私は様子を見に・・あっそうだ実は他に送った方の所でトラブルが発生しまして・・」


 私は先程の湿布さん側で起きた事をお話しし、コレタさんにも神通力の使い方の説明を行いました。

 そしてそれと同時にこちらで起きている困った事を聞く事になったのですが・・。

 どうやら湿布さん同様、出だしもいい所だったみたいです。

 まずこの世界はノベライズ物であり、音読する事で先に進む仕様になっているんだそうです。

 次にその場面その場面で「みる」「はなす」「とる」「いどうする」等の選択又の中から解決の糸口を探し、正解を選んで先へとシナリオを進めるルールとなっていて、特徴的なのはその選択又に「ひとかえる」と言う斬新なアイデアが存在し、一人で解決出来ない難問も別の人の視点や能力を駆使する事で切り抜ける事が出来、登場人物皆で力を合わせて目的を果たすと言う、聞いているだけでワクワクして来るお話なんですが・・。


「あ~つかれた・・なんだな」


 ・・・・・・。


「あ~つかれた・・なんだな」


 ・・・・。


「あ~つかれた・・なん」

「いや、もういいですよ! それ貸して下さい!」


 コレタさんの持っているコントローラーを奪い、コントローラー上部に表示されている文章を読み上げます。


「あ~つかれた・・」[ピロリロリ]

「あっ、上手くいったんだな」


 何か変な音が鳴ったと思ったら、いきなり部屋の中に移動しましたよ! しかもさっきまで明るかったのに外夜に!


「どうなってるんですかこれ?」

「さっき説明したんだな、こう言う仕様なんだな、だから俺は何度やっても先に進めなかったんだな」


 成る程・・言っていた意味がようやく理解出来ました。

 湿布さん以上の選択ミス・・。

 彼の特徴的な語尾が仇となって先に進めないなんて・・セリフのみ発音すれば先に進めるのに「なんだな」を付けてしまうが為に一行も進まなかっただなんて・・。


「女神様そのまま今度はみるを選択するんだな、その後はて~ぶるなんだな」

「へ? えっとみる? っでて~ぶる? あっ何か文章出ましたよ、ほんがおいてあります。だそうです」

「そこは読まなくていいんだな、読むのはキャラクターのセリフだけなんだな」

「へ~そうなんですか、今度はどれにしましょうかね、いどうで行ってみましょうか?」

「違うんだな、次はさっきの本を読むんだな」

「ほうほう、ってもしかしてコレタさんこのお話知ってるんですか?」

「知ってるんだな、子供の頃プレイして感動したんだな」


 感動? コレタさんが? ほぼ無表情に見えるコレタさんが? 何だか俄然興味が出てきましたね! どんなお話何でしょう?


「・・あれ? ちょっと待って下さい、つまりコレタさんの最大の壁は・・」

「そうなんだな、なんだなを語尾に付けてしまう事なんだな」


 その位自制して下さいよ! もしかしたらどの人よりも最速でエインヘリャルになれるかもしれないのに!

 そうなれば私は鼻が高いし、あわよくばフレイ様に気に入られ、そしてそして湿布さんも見学さんもエインヘリャルになった頃には・・フ、フフフ、フヒヒ。


「気持ちの悪い笑い声が漏れてるんだな、女神の癖に下品なんだな」

「うるっさいですね! 笑い方何て人それぞれじゃないですか、そっちの顔の方がよっぽど・・いえ何でもありません」

「ん? 顔がどうかしたんだな? そう言えばさっきからずっとこっちを見ないんだな、何で顔を背けるんだな?」

「そう言いながらにじり寄って来ないで下さい! そ、そこに姿見あるんだから自分で確認してみたらいいですよ」

「鏡? 確認って何を何だな? ・・・・ブッサッ! こ、これ誰なんだな? 俺と動き一緒なんだな! ま、まさか・・俺なんだな?」


 小さく頷くと、膝をついてガックリしてしまいました。気持ちはわからなくもないですよ・・同情します。


「こ、これは酷いんだな、イケメン所かゲテメンなんだな・・ハーレム所かボッチなんだな・・可愛い幼馴染も若くて美人なお母さんもここにはいないんだな・・全くもって要望を一つも叶えてくれてない所か、あんまりな仕打ちなんだな! 運営に文句言うレベルなんだな!」


 マズイ、余計な事思い出させちゃった!

 矛先がこちらに向いて来ちゃいましたよ、どうにか誤魔化さなくては・・。


「あー・・あのコレタさん? 言い忘れていましたが、エインヘリャルとしてヴァルハラに向かい入れられれば、私クラスの美人女神達にキャーキャー言われますよ?」

「私クラス? ・・・・はぁチェンジ何だな、女神も大した事ないんだな」


 あ? 今何て言いました? 私クラスじゃ不服だって言いたいんですかね?


「あ~一気にやる気なくなっちゃったんだな、丁度ベッドもあるしもう寝るんだな、よっこいしょ・・なんだな」


 くぅ~~~~殴りたい! 叩き起こしたい! でもそんな事したら最速の夢が~! ・・・・ここは我慢、大人になるんです。

 よ、要はぐうの音も出ない程、すっごい美人な女神様がいる事を、わからせればいいんですよね?

 だったらいいですよ! ありますよそんな女神様の写真の一枚や二枚・・。


「コレタさん、ねぇ起きて? 起きてくれたら~今からすっごいの見せて上げるんだけどな~」

「騙されないんだな、どうせ生足ちょっとチラ見せする程度何だな、そんなんじゃ効かないんだな」


 見せねーですよ! 何考えてるんですか! スマホに撮ってある写真見せようとしてるだけですよ!


「違いますよ! これ見てもらっていいですか?」

「見るって何を・・っ!! こ、これは! ど、どちら様なんだなっ!?」

「フレイ様ですよ」

「フレイ? ・・フレイって男の神様なんだな、よく見たら胸平なんだな、もの凄い美人だと思って興奮して損したんだな、お休み・・」


 ・・・・・・え? 男の人? フレイ様が? 胸平・・~~~ぷふっ! あ! 痛っ!! お、お腹が・・腹筋が・・。


「いやいやいやいや、良く見て下さい女性ですから、確かにお胸は・・余りない様ですが・・女性の価値は・・ぷふぁっ! あははははははははっ、はうっ!! くぅ~う~う~・・そんな所じゃ・・ありませんよ?」

「何噴き出しといて自分で悶絶してるんだな? 説得力の欠片もないんだな、それに何言ってるんだな? フレイは男神なんだな、双子のフレイアが女神で妹なんだな、神様やってるのにそんな事も知らないんだな?」


 フレイ様は男神・・・・ぷっうっ!! ・・~~~~~~!! ・・・・お、落ち着け私、このままでは腹筋が崩壊してしまう。

 冷静になるんだ私・・平常心、平常心、スー・・ハー・・、スー・・ハー・・良し。


「やめて下さい・・性別を間違える何て失礼ですよ? フレイ様とフレイア様は双子の姉妹、よってフレイ様は女性で男神なんです!」


 ・・・・・・。


「・・・・・・え? 今何て言ったんだな? 双子の姉妹で女で男神とはこれ如何に? なんだな、もしかしてニュー・・」

「間っ違えちゃっただけですから! ちょっと流れ的にお茶目にも間違えちゃっただけですから!」

「でも男し・・」

「女神様です~! 誰がどう見たって女神様でしょ? ほらもう一度見て下さいよ! よく見て! さあ! ほら!」

「・・・・わかったんだな・・・・・・なんか言われて見るとニュー・・」

「いい加減にして下さい~! 会えばわかります~エインヘリャルになって、ヴァルハラ行けばきっと会えますから、その時ご自分の目で確認しては如何でしょうか~?」

「何でそんなに必死なんだな? もしかしてヴァルハラ行っても会えないんだな?」

「いえ、会えますよ」


 ・・多分。


「何か急に平常に戻ったのが、余計に怪しいんだな」


 冷静にならないと笑いが込み上げて来て、腹筋が限界を迎えるからですよ、明日は筋肉痛の予感しかしないからですよ、怪しんでないでそこはスルーしてほしい所なんですよ。


「そんな事ありませんよ、ほらそんな事より、このままでは現状止まりになってしまいますよ? いいんですか? こんな美人さんとお近づきになれるチャンスが目の前にあるのに」

「確かにそうなんだな、そのレベルの女神様にチヤホヤされると思ったら、俄然やる気が出て来た気がするんだな、それじゃやる気出たついでに一つ頼み事があるんだな」


 チヤホヤされるとは言ってませんよね? そしてエインヘリャルになればラグナロクに出た際に、それこそ女神も含めた神々の黄色い声援がキャーキャーするでしょうね、あなたも含めたエインヘリャルの皆さんに・・。

 私、嘘は付いていませんからね?


「はい、何でしょうか? 私に出来る範囲ででしたら、どうぞ」


 良かったベッドから起き上がってくれましたよ、餌で釣る様な形をとってしまったとは言え、これで一歩前進ですね。

 素直に従ってくれる気になった。それだけでも嬉しい気持ちでいっぱいですよ 聞ける範囲は限られていますが、好物が食べたい程度のものなら次に訪れる時に持って来ますからね。


「っち、何でもとは言ってくれなかったんだな・・まぁいいか、女神様」


 何でもって言ってたら何を願っていたか気になりますが、まぁいいでしょう。

 今はやっと着いたやる気の火種を絶やさぬ様、大事にする事が先決です。


「はい、何でしょう?」


 そう、それは回り回ってやがて私に還元されるのだから、今は清い女神であり続けましょう。・・今は・・フヒヒ。


「そのレベルの他の女神様にチェン・・」


「オラァア!!」


[ボグッ!!]「ザラブッ!!」


「おふざけはこの位にしましょうか・・お前、いい加減にしないと・・お前、地獄に捨てて来ちゃいますよ? あっ、今の冗談ですけどね、あはっ!」

「い、痛いんだな・・頬を思いっ切り殴られたんだな・・またお前って言い始めたんだな、ニコニコしてサラッと怖い冗談言ってるんだな・・でも目が笑ってないんだな奴は本気なんだな、しょ、しょうがないからここは大人しく従っておくんだな」


 ほうほう、成る程つい反射的に殴ってしまいましたが、この様子から見るに、最初から少し威圧的に接していれば、こんな苦労せずに従っていたのでは?

 なんだこんな事なら、最初から厳しめに行けば良かったですね。

 迷える子羊が道を違わぬ様、導くのもまた神の務め、その為ならば例え可愛い信徒であっても鞭を打たねば・・。

 あー何て辛く心苦しい事なのでしょう・・ですが、ここは心を鬼にして・・やがてわかってくれるでしょうその時まで・・。


「迷える子羊辺りからダダ漏れなんだな、自分に酔いしれてて気付いてないんだな、しかもついカッとなって殴った事を正当化してるんだな、とんだ暴力女神なんだな・・」

「今何か言われましたか?」

「な、何も言ってないんだな、ただ女神様の愛情みたいの感じただけなんだな・・」


「おま・・コレタさん?」


「俺の人生あんまりいい事なかったんだな・・家族の愛情何て殆ど知らないんだな・・」


「コレタさん・・」


「それでも小さい頃は両親に大事にされていた記憶、ちゃんとあるんだな・・」


「・・コレタさん」


「何時からこんな人生になっちゃったんだな? 何時から部屋に引き篭る様になっちゃったんだな?」


「コレタ・・さん」


「本当何時から一緒に暮らしてるのに顔合わせなくなっちゃったんだな・・、何時から部屋の前に全自動でご飯来る様になっちゃったんだな・・」


「コレタさん?」


「何時からアニメ、ゲーム三昧になっちゃったんだな? いつからジャングルで欲しい物ポチると部屋の前に届く様になったんだな?」


「コ、コレタさん・・それ全部お前のせいじゃねーですか! って言うか途中から引き篭もり生活満喫してるだけの羨ま・・ドラ息子っぷり発揮してるだけだし、家族の愛情ちゃんと届いちゃってますよね? ご飯と一緒に届いてますよね? そりゃ引き篭ったら顔合わせませんから、対面した直接的な愛情なんて感じる訳ないですよ! 最初の私の気持ち返せ! ちょっと同情しちゃいそうになった私の純情返せ! このダメ息子! 働けーーー!」


「死んでからも働けとか、何と言う鬼畜仕様なんだな、そもそも社会が悪いんだな、仕事を選ぶ権利もないんだな、やりたい仕事に就けないなんて、民主主義が聞いて呆れるんだな」


 こ、この男全く反省してない・・ご両親・・報われなさすぎ・・うぅ・・不憫。


「すみません一応聞いておくんですけど、やりたい仕事に就く為の努力は当然なさったんですよね?」

「当たり前なんだな、毎日イメトレは欠かさないんだな、欠かした事がないんだな」


 イメージトレーニングッ!? それって努力って言わな・・・・っは! 待って下さい、もしかしたらそう言う事が大事な仕事に就こうとしてたのかも!

 スポーツ関連でのプロの選手は、自分が活躍している所をイメージする事でモチベーションを上げたり、また相手の動きをイメージし、かわすトレーニングをしたり等、一流であればある程、それを大事にしていると聞いた事があります!


「ちなみに、コレタさんはどんなお仕事に就きたかったんですか? 差し支えなければ教えて下さい」

「アニメ声優なんだな」

「おぉ! 作品に臨場感を与え、共感させる事によって、感動させ、驚かせ、笑わせ、そして泣かせる! 魂を吹き込む素敵なお仕事じゃないですか! イメージトレーニング確かに大事ですよね、作品の

登場人物の気持ちに同調し理解する立派な・・」


「違うんだな」


「はい?」


「違うって言ったんだな、一度で聞いて欲しいんだな」


「あーいえ、聞いてましたけど、何が違うのかな? って・・」

「俺がイメージしてたのは、なった後モテモテになる未来なんだな、一生遊べるお金もウハウハなんだな」

「えっと・・そう・・ですよね? いずれはそうなる・・かも? しれないですもんね、いずれは・・ですがそこへ辿り着く為には一言では語れない、涙ぐましい努力の過程を経てなる訳じゃないですか? その過程全部スッ飛ばしては、いくら神の加護があっても事が起きないんじゃ無理ですよね?」

「努力とかそう言う面倒臭いの流行らないんだな、神様なら努力しなくてもなれる様にして欲しいんだな」


 あっ、ダメだこの人・・行動起こしてないのに結果だけ欲しいとか・・修練なくして習得なしですよ? 神はあなたを介護してる訳ではありません。一人で歩いて下さい。

 本気で・・地獄に捨てて来ようかと検討したくなりましたよ・・。


「そんな事よりも、先に進むんだな、みるを選んでお次はほんを選ぶんだな」

「え? あっわかりました」


 そうですね、過ぎてしまった事は過ぎてしまった事、これから変わって行けばいいんです。コレタさんではなく雑念を捨ててこれからを見据えて、先へ進む事だけ考えましょう。


「えっと・・みるっでほんですね・・あっ何か文章出てきましたよ」

「それ読み上げるんだな」


 ・・ん? あれ? でも何かおかしい様な?


「れんあいしょうせつのようです。コレタカッコあ~あわたしもすてきなぼ~いふれんどがほしいなあ」

「さっきセリフ以外読まなくていいって言ったんだな、一度で聞いて欲しいんだな」

「あぁすみません・・えっと、あ~あ・・」

「あぁすみません・・えっとはいらないんだな、もう一度最初から読むんだな」

「え? わかりました。余分な事言っちゃダメなんですね、ではもう一度・・」


 こうして私とコレタさんは一致団結してこの試練に立ち向かって行ったのです。

 ・・・・んー? やはり何かおかしい様な・・。


「あの~コレタさん? あっ今はごくつぶしさんでしたね」

「主人公の名前酷いんだな、普通ごくうって付ける所なんだな、半ば当たってるから否定出来ないんだな、そんな事より早く話進めるんだな」


 あっすみません・・何か重大な事を忘れている気がするんです。それが何か思い出せませんね・・。


「この状態辛いんだな、女神様がそこにいるのに、バカでかいお釈迦様に摘ままれてるんだな、異様な光景なんだな」

「へ? そうなんですか? 私は別に日常の光景なんですが・・」

「いいから先進むんだな」


 む~ぅ、わかりましたよ・・。


「おもいだしたか?」


 ・・何で私がいつの間にか全部読み進める係に・・。


「う~ん・・・・あたまいたい・・・・」


 ・・・・あっ! 思い出しました!


「かなたへついほうしてもかえってくるとは・・・・しかたがあるまい・・・・ごぎょうざんのろうやへはいってもらおう、そなたはそんなおろかものではないはず。よくかんがえてみるがいい」


 何で私がやってるんですか! コレタさんにやらせなきゃ意味ないじゃないですか! よく考えたらおかしいんですよ!

 コレタさんさっきからお話通りに動かされているだけで、実質私が進めているじゃないですか!


「あ~っ!」[ピロリロリ]


 これは、コレタさんに課せられた試練であって私のではありません。楽させてどうするんですか!

 このままだとこの人は本当にダメな人になっちゃいます。自分でやらせねば・・。


「ん? どうしたんだな? 早く読み進めるんだな」


「コレタさん・・本日私が手助けするのはここまでです」


「いきなり何言い出すんだな? 読み進めてもらはないと先に進めないんだな」


「ご自分で読んで進めて下さい、これはあなたの試練なんですよ?」


「そんな事言わずに読み進めるんだな、何で急にそんな事言いだしたんだな? ここまで協力してやって来たんだな」


「協力・・ですか? では質問しますが、コレタさんは一体何を協力したんですか?」


「すんなり進める様に選択を選んだんだな、お陰で最短でスムーズなんだな」


 おぉ! そう言えばそうで! いやいや違う違う、また流されちゃう所でした。


「いいですか? これはコレタさんの試練であって、私はあくまでもサポートなんです。これでは私が中心となってやってるだけで、そちらはただ流されて、ほぼボーっとしてるだけじゃないですか!」


「・・っち気付かれたんだな・・チョロくておつむ悪いからこのまま最後まで行けると思ったんだな・・甘かったんだな」


「今ボソボソっと何か言いました?」


「言ってないんだな、朗読してくれてるのも立派なサポートなんだな、良く見てほしいんだな、牢屋に閉じ込められて嫌な思いしたり、場面場面で強制的に動かされる辛い役を自ら進んで実行してるんだな、役割分担ちゃんと出来てるんだな」


 確かに・・牢屋に進んで入りたい方なんて、見た事ないですもんね・・。


「わかりました。ですが一応聞いてもいいですか?」

「何でも聞いて欲しいんだな」

「それは、どの位までなら我慢できます?」

「それってどれで、我慢って何をなんだな?」

「それですよそれ」

「どれですよどれ、なんだな?」

「いやだからなんだなって付けるの、セリフを言い終わった後、どの位までなら我慢できるんですか?」

「我慢するんだな? 我慢は良くないんだな、何でそんな事聞くんだな?」

「いえ気になったので好奇心でなんですけど・・試しにそちらにコントローラー渡すので、我慢して読んでもらっていいですかね?」

「仕方ないんだな、それで納得するならやるんだな」

「では、これを」

「ん、受け取ったんだな」


 牢屋の隙間からコントローラーを渡し、それを受け取るコレタさん・・・・ふ。


「では読んで見て下さい」

「くらいよ~せまいよ~・・なんだな・・やっぱり無理だったんだな」

「すみません。もう一回今度はもうちょっとだけ我慢してみましょう。ね? 後一回だけですから」


 仕方ないと言う顔をして読み始めるコレタさん。


「くらいよ~せまいよ~・・・・・・なんだな・・あっ進んだんだな、項目出て来たんだな」


 あれ? 進んだんですか? 場面変わらないとあの音は鳴らないんですね、今知りました。


「「じゃあこれで」」


「ん? 何なんだな? 証明して見せたんだから、コントローラー受け取るんだな」

「はい、わかりました・・じゃなくって、ううん。もうこの辺でいいでしょう? あなたは少し他者を頼り過ぎです。もう少し自分の力を信じ、己の力のみで道を切り開けるよう頑張った方がいいと思うんです。ですから少しそこで自分を省みて下さい」


「言ってる意味がわからないんだな、受け取ったんだから早く続き読むんだな」


「私はあなたが少し嫌いです。幸運や奇跡も行動や努力あってこそです。その先にある幸福や至福のみを欲するは頑張る事で手に入れた人に対しても、また廻り合わせが悪く手に入れる事が出来なかった人に対しても失礼極まりません」


 家宝は寝て待てで全部手に入るなら、私だってそうしますよ、誰だって楽な方がいいに決まってますからね。


「待つんだな、その理屈はおかしいんだな、もしそうなら生まれた時に親が金持ちだったり、コネで入社したり努力や苦労しなくてもすんなり上役のポストに就いている奴らはどうなるんだな? 不公平なんだな」


「はぁ・・いいですか? 子は親の財産です。親のコネもお金も子があやかるのは至極当然、それは親の努力の賜物ですから、ですがそこからは違いますよ? 二世であるという事は比べられます。実力が伴わない発言や行動は全て蔑まれ差別されますよ? それにどうやってお金持ちやコネつまり信頼を得たのか、どうやって切り抜ければいいのか苦労した経験なければ、その次の世代には全てを失う事だってありますよ? 言うなれば経験する事を剥奪された状態なんです」


「それでも楽出来てるんだな、自分の子供の事何てどうでもいいんだな、そもそも引き篭りに結婚なんて無理なんだな」


「私達神にも好き嫌いはちゃんと存在しますよ、然るべき努力をしている方には、それなりの恩恵を授けます。そうでない方には見向きもしません。その事を頭に入れて反省してみて下さい、そして行動を起こして下さい・・あなたならきっと理解してくれると信じています」


「あっ! 待つんだな! せめてここじゃない所で放置してほしいんだな! 次何時来るんだなーー!! ・・行っちゃったんだな、・・コントローラー渡したままなんだな、・・この先どうするんだな?」

「・・・・ん」

「あっ! お早いお帰りだったんだな、早速続き・・」

「・・ん!」

「コ、コントローラー受け取らないんだな、それ女神様のなんだな!」

「ん!」

「押し付けられても困っ・・あっ! ・・また行っちゃったんだな・・・・戻って来たんだな」


「やーい! お前の女装! ゲッテモノおー化けー!!」


「コレタなんだな! ・・またお前って言ったんだな・・ゲテモノ・・めっちゃ酷いんだな! 否定出来ない自分が怖いんだな、わざわざそれ言う為に戻って来たんだな、ご苦労様なんだな・・お腹空いたから、桃でも食べるんだな」



 はぁ~最後に文句言って少しスッキリしましたね・・ハァ~ムン・・ん~どうぶつビスケット中々おいしいですね! 

 さっきのはうさぎさんですかね~? でも、正直まだムカムカしてますよ・・こういう時はお菓子でも食べてストレス発散しないと・・あっパンダさ・・む~この目の周りの黒い模様が・・さっきのコレタさんを思い出させますね・・こんなビスケット何かムシャムシャですよ!

 ・・何か思い出したらまた腹立って来ちゃいました。

 しょうがない・・お菓子食べても気が晴れないみたいですし、見学さんの様子でも見に行ってみますか・・。



[ガチャ!]「すいませ~ん! 調子どうですか~?」


「う~ん美味い! 流石特上ケァルビィ・・お次はフォルモンでも・・」


 ・・・・・・。


「ハァム・・ングング・・んん~ん、フォルモンコリコリしてま~す! ・・ん? おぉ女神ではないか! どうだ?一緒に焼・・」


「肉食ってるんじゃねーですよ! 焼肉じゃなくて、クニヤやれよーーー!!」


[ゲシッ]「あだっ! こら貴様! 来て早々のローキックとはいくら何でも失礼じゃないのか? 全く貴様はカリカリし過ぎなのだ。アーむん・・ケァルシュウムが・・ゴクリ・・不足・・しているのではないか?」


 うぅ・・確かに・・今までの流れ的につい・・。


「すみません。確かにちょっとイライラしてました」

「ふん・・・・そっちの席に座ってちょっと待ってろ、今軟骨を焼いてやる。それでも食べて少し落ち着くんだな」

「はい・・」

「っで? 何か悩み事でもあるのか? あるなら話して見ろア~グ・・ふぉのによるが・・ゴクッ・・力になれるかもしれんしな・・」[ピンポ~ン]


 そう言いながら、ルームサービスの妖精さんを呼ぶ為のコールボタンを押す見学さん。


ー はい、こちらフェアリールームサービスです。235号室のお客様ですね、ご用件は何でしょうか? ー


「女神よ、貴様ルァンチはもうすませたのか?」

「へ? えぇ、食べましたが、それが何か?」

「そうか、では・・すみません。白飯のお替りと・・」

「あっ私も食べます!」


「え?」 ー え? ー


ー すみません。そちらにどちら様か、ご相席なさっている方いらっしゃるのでしょうか? ー


「あぁはい、私を担当して下さってる女神様が、現在相席なさっております。それで、先程の白飯に追加でもう一杯と特上カルビセットと・・女神よ貴様未成年か?」

「歳を聞かれたのでしたらお答えしませんよ? 私は神様ですのでお酒は寧ろドンと来いです」

「そうかでは・・オレンジジュースを・・」

「えー? 何でですか? 未成年じゃないから大丈夫だって言ってるじゃないですか!」

「良く考えたら貴様! 勤務中ではないのか? 大方ここへ様子を見に来たのであろう?」

「大丈夫ですから! 頼んで下さい! バレたりしませんから~!」


ー あ、あのー・・女神様~・・ -


「何を言うか! 何事もメリハリをつけねば、良い働きは出来んぞ!」

「何言ってるんですか! そっくりそのままお返ししますよ! 今まさにサボってる最中じゃないですか!」

「バカモノ! 我は仕様に乗っ取って純然たる当然の権利をだな!」


ー あのー! ー


「「何?」」


ー 女神様? 全部丸聞こえですよ? ー


 ・・・・・・あっ。


「あ、あの! 違うんです! 遂出来心と言うか何と言うか! えっとお酒でも飲まないとやってられない事情が!」


ー ・・・・大変なのはわかりますが・・お仕事中の飲酒はちょっと・・この事はフレイ様にご報告を・・ ー


「ぎゃ~~~待って! 待って下さい! 飲んでないです! 未遂ですから! そ、そうだ! まだ注文選んでいるだけじゃないですか~、やだな~早とちりし過ぎですよ~もう、せっかちさん!」

「いや、貴様思いっ切り注文しようとしてたではないか」


ー ・・・・やっぱりご報告しますね ー


「いやいやいやいや! 待って下さい! お願いします! また怒られちゃう! フレイ様怖いの知ってますよね? 見学さんも余分な事言わないで下さい!」

「こ、これは酷い・・神がフ、ェアリーにクォールボタン越しに頭を下げているぞ・・」


ー ・・・・はぁ・・今回だけですよ? バレたら私までお咎め受けちゃいますから・・ ー


「ありがとうございます! 恩に切ります!」


ー と言うかちゃんとお昼休憩取られたのではないのですか? 困りますよ、そちらのサービスは勇者様に唯一与えられた特権何ですから、女神様? ・・・・太りますよ -


「ゲホッ!! ふ、ふとっ! そ、そ、そ、そんな脅しを掛けて来るなんて、何て卑怯な! そんな事で屈するとでも思ってるんですか? 私も甘く見られたものですね!」

「では頼むのか? こちらは早くして欲しいのだが?」

「・・・・オ、オレンジジュースを・・あっ! メロンソーダフロートでお願いします! お肉は・・パスで・・」

「思い切り屈しているではないか・・」


ー ですが、微妙に注文を変更する辺り・・流石としか言いようがありませんね・・ ー



「ご注文は以上ですね、ではごゆっくり・・」


(あぁ・・何度見てもいい・・何ともプリッチィーにして愛らしくふつくしいお姿なのだ・・是非お近づきになりたいものだな、ふはは)


 運んで来てくれた可愛らしい妖精さんが、何か言いたそうに私を一別し去って行きましたが、最早過ぎた事です。ここは開き直って思いっ切り満喫しましょう。

 では早速・・。


「ふふふふん~あ~ん・・ん~~~~!! ふふふ!」


 美味ですね~幸せですね~、小さなスプーンでちょっとづつ食べるアイス! お口の中に広がる甘味が最高ですよ~!

 そしてまだお口の中に甘味が残っている所に、すかさずピリピリシュワシュワを注ぎ込む・・う~ん幸せです~!


「じょ、上機嫌だな女神よ・・入って来た当初が嘘だったかの様に・・満面の笑みではないか・・」


(メロンソーダでここまで幸せそうな顔をする者など、未だかつて見た事がない・・)


「ウマウマですよ! いいですね毎日こんな贅沢出来るなら私もなりたいですよ・・ハクッ・・ん~」

「そ、それは何より・・って口にアイス付けるとかお子ちゃまか! いや待て・・これは我を試しているのか? 我の守備範囲を一回りも二回りも優に超えるこの女神に・・悔しいがほんの少しだけ可愛いとさえ思ってしまった・・こんな彼女いたらとさえ・・ぐはっ! 何と言う精神汚染攻撃なのだ・・さ、流石はこんなんでも女神と言うだけの事はある!」

「うるさいですよ、折角至福の時を満喫しているのに、横やり入れないで下さい」

「女神が言うなし・・我の至福の時を思いっ切りローキックで壊した女神がどの口で言うなし・・」

「この口で言うなし! ふふふん・・ズズズズズゥ~」

「真似するなし・・そんな事より貴様何しに来たのだ? そろそろ本題に入ってもいいのではないか?」

「ん~? 本題? あっ、それそろそろひっくり返した方がいいですよ、・・何でしたっけ?」

「あぁスマン・・いやいや、何か目的があってここに来たのではないのか? 例えば言い忘れていた重大な事とか・・」

「そんなのありましたっけ?」

「あるだろう? 言わねばならなかった大事な事が!」

「ん~? んーーー・・あっ!」

「おっ思い出したか? そう、それだ!」

「もうそっちのお肉いい感じですよ」

「ズコーッ! って何させるんだ! この駄女神は、そうではないだろう? ほらこの状態・・おかしくはないのか?」


 トングをカチカチさせながら、良く見て見ろと言わんジェスチャーをする見学さん・・。

 おかしい? この状態? お肉の事ですか? そりゃこのままにしてたら片面だけ焦げちゃうから、ひっくり返さないとおかしい事になっちゃいますけど、それだったら今私が教えて上げましたよね?


(さっきからずっと焼肉に目がいってるが、余程食べたかったのだろうか? 頼むから覗き込むのはいいが、肉にヨダレは落とさないでくれよ)


 それが違うとなると? 部屋の中でしょうか?


「・・・・? 別に? ルームサービスは行き届いていて、文句何てつけ様がない程綺麗清潔ですし、何か不備でもあったんですか? あったのなら・・」


「違うわバカモノ! 貴様の目は節穴か! 良く見ろ! 今この時! まさに! 目にしているこの状態、貴様こんな重大な事も教えずに我を解き放ちおって!」


 さっきから何が言いたいんですかね? さっぱり要領が掴めませんよ・・ズズ・・ズズズゥ~。


「飲んどる場合か! 貴様ここへ来る為の方法教えずに送ったではないか! 何故口頭でプッシュストップを唱えるとコンフィング画面が表示される事、教えなかったのだ! お陰でこちらはあのまま行けばいずれ餓死していたぞ! ・・まぁ偶然にも、球が当たりそうになった瞬間に、我の機転が効いたお陰でこうしてここにいるのだがな、我のとっさの機転に感服するがいい! ふははははははっ!」


 どうせ、慌ててて偶然言えちゃったんですよね? 機転も何も昔遊んでたゲーム感覚で唱えちゃっただけじゃないですか・・。


「え~? そうでしたっけ? 見学さんの勘違いでは? 私はちゃんと・・・・ぁあっ! ・・・・見学さんの勘違いじゃないんですか?」


 しまった完全に忘れていましたよ・・あれ? っと言う事は他の二人・・、まぁニ~三日食べずとも生きて行けるでしょう。・・皮下脂肪で・・ぷっ!


「何で二回言ったのだ? 二回言うのは大事な事だけだぞ? 今の完全に忘れたの誤魔化す為に言っただろう?」


 それに湿布さんはともかく、コレタさんは反省の意味でもあのままでいいんです。


「そ、そんな事ありませんよ、大事な事だから二回言ったんです」


 ・・ん? ここへ来た言わねばならない重大な事?


「嘘を付くな! 貴様今ぁ・・」


「あっ! 思い出した!」


「うわっ! いきなり大声を出すな! ビックリするだろう! 何なんださっきから、女神が来てからこちらはおちおち食事も出来んぞ・・ハァム・・モグモグ・・」

「そうなんです! 私見学さんの様子を見に来たんですよ! 他の方の所でトラブルが生じていたので、こちらでもないかとお聞きしようかと、それと神通力のお話を・・」

「・・ほぅそれはご苦労だなアム・・ンムンム・・・・じ、神通力? 神通力だとぉお!! 何だそれは? 詳しく聞こうじゃないか!」


「き、汚ったな! ご飯粒飛んで来たじゃないですか! 噴き出さないで下さいよ! ・・全く、汚いなーもぅ・・、はぁ・・それがですね・・」


 顔に付いたご飯粒を取りながら、予想外の誘惑・・ではなく、出来事があったせいで、すっかり忘れていた事を見学さんにお話ししました。

 それと同時に、やっぱりこちらで今起きている問題点を聞く事に・・。

 まず見学さんの選んだえ~っと・・鉄血高校アップダウン物語クニヤ君のドッジボールだよ全員集合! ・・タイトル長いですねー・・う~ん以下、血! クニヤ君ドジッたよ全員集合で行きましょうか? これでもまだ長い気が・・まぁいいでしょう。

 その、血! くにや君ドジッたよ全員集合・・やっぱり長い! う~ん・・あっもういいや、鉄板焼肉物語で、覚えやすいし何より美味しそうですしね。

 とにかくこちらで起きている問題点と言うのは、湿布さん同様ご自身の身体能力が追い付かず。

 ボールを避ける事も、キャッチする事も、ましてやジャンプ力もシュートもパスも・・まぁ言ったら全部らしいのですが・・。

 致命的にして早急に問題解決しないとならないのは、体力と必殺シュートだそうです。


 この世界の人々はと言うか、ドッジボールのルールそのものが特殊な様で、通常のドッジボールの場合、内野の選手はボールを一度当てられれば顔面でない限りは、内野を離れ外野の選手として役割が変り、味方内野若しくは、敵内野の選手が全て外野へと移動し、相手の内野陣が誰もいなくなった時点で、ゲームの勝敗が決まると言うのが一通りの流れなんだそうです。

 それで何が違うのかと言うと、簡単に言ってしまえば、ボールを当てられても外野に行く事はありません。味方か敵、どちらかの内野にいる選手が誰もいなくなれば終了だそうです。

 何も変わってないじゃないと言う方の為にもう一度、味方か敵内野の選手が残らず消え去れば終了です。

 もうわかりましたね? 文字通り昇天なさったら勝敗が決まる。まさにスポーツでありながら熱い死闘を繰り広げるとんでも仕様となっているみたいなんです。

 あっ、でも補足で聞いたのですが、試合終わると生き返る謎な現象が起きるらしいので、それ聞いてちょっとホッとしました。


 ここまでお話して来ましたが、お恥ずかしながら私ドッジボールを拝見した事はなく、残念ながら内野、外野と言う単語が出た時点で頭の中がお神輿ワッショイし始めて、理解するのにちょっと時間が掛かっちゃいました。

 ですが安心して下さい、何度か聞き返した甲斐あってルールは完璧ですよ!

 その証拠に見学さんに「外野の人は、味方の内野の人に当てない様に敵に当てるの大変そうですね」と言ったら、もうお前に教える事はないと言わんばかりに、小さく何度も頷いていましたからね、ぐうの音も出ないとはこの事です。

 それにしても、バッチリ覚えられちゃう所、シノちゃんはやっぱり天才肌なんですかね~。


 まぁとにかく、そんな過酷な試合環境であるにも関わらず。

 残念ながら見学さんの体力はそれに見合ったものではなく、どんなシュートを受けても一撃死、俗に言うワンパンと言う辛い現実・・、加えて必殺シュートを打とうにも打てず。いるだけでチームのお荷物に・・。

 偶然この部屋に来る方法を知った見学さんは、お昼休憩をしながらどうやってこの状況を打開するか、

どうやって勝とうかと言うより、どうやって生き残ろうかを考え作戦を練っている所へ、私が現れたという事みたいです。


 「最初から安全な外野にいてはどうですか?」と提案した所、既に実行済みでそれで勝っても勝利した事にならないらしく、残念ながら内野一択となっているみたいですよ、抜け目のない仕様ですね、この世界を作る時、どなたが監修したのか・・性格がにじみ出ていますよ、誰様とは言いませんが・・。

 体力に並ぶもう一つの問題点必殺シュートなんですが、一定の条件を満たすと打てる様になっているみたいで、例えばコート内を走り込み一定歩数を得た所で シュートを放つと強力な必殺技になるそうなのです。

 見学さんはどんな必殺技だったのか興味があり聞いた所「・・・・ない」と小声で言われてしまい、良く聞こえなかったので聞き返したら怒られてしまいましたよ・・。


 必殺シュートと言うのはこの世界では当たり前に、一人に一つ存在している物だそうで、また試合に勝利したお金でショップで購入する事が出来、より強い必殺シュートを付け替える事が出来るみたいなんですよ! 必殺技がお金で買えるんですよ? 夢見たいですよね! 

 やっぱり世の中お金は大事なんですよ! 次いでなので私も一つ必殺シュート購入しておきたいですね、そうすればフレイ様に日頃の・・フヒヒ。

 コホン・・ですが可哀想な見学さん・・誰もが所持している世界で持っていないなんて・・。

 そこで天才シノちゃん「ないなら購入しては?」とナイス提案! ・・したのですが、必殺シュート事態は持っているそうなんです。


「え? 先程・・・・ないと言っていたではないですか、所持していなくて使えないなら・・」

「バカモノ! 我は所持していない等と言ってはいない! 使えないと言ったのだ! 何を聞いていたのだ貴様は!」


 ですよ? 酷くないですか? 最初からハッキリ言って欲しかったですよ! これじゃ私が的を外した提案したみたいで、恥ずかしいじゃないですか!

 ん~まぁ、要するに見学さんの走り込みが一定条件を満たしたと判定されないせいで、いくらやっても出ないと言う現状なんですね。


「ふむふむです。大体理解しましたよ、先程説明した神通力を覚えれば、こちらも問題なく進みそうで安心しましたよ、身体能力底上げされますからね」

「女神よ、その神通力に関して一つ質問があるのだが、よろしいか?」

「はい? 何でしょう? 答えられる範囲でならどうぞ」


 よろしいか? 先程までと口調が微妙に変わりましたね・・そう言えば口調で思い出しましたが、何でこの方妖精さんには普通に話ていたのに、私にはそんなに偉そうな感じの話し方なんでしょう? 

 別に気にしませんが、理由だけ知りたいですよ、ろくでもない理由な気がしますけどね。


「うむ、その理屈で言うと、現世においても我々人間は意識しさえすれば、誰でも超常的な・・つまりゥエスプァーやゥイザードゥといった者達が使う様な不思議な力、奇跡等々・・そう! 能力を使いこなす事が出来るという事になるのだが? 如何か?」


 ん? ん? 相変わらずですね・・一々そのう~んな単語挟まないとダメなんですかね? 要は地上で使えるのかって事ですよね?


「正確には誰でも使えます」

「ほう・・正確には? では何故使えん? 目視する事が出来ないからか?」

「いえ、そうではなくですね、厳密には使えているけど規模が小さいです」

「規模が小さい? もう少し詳しく教えてくれないか?」

「はい、見学さんは言霊って知ってますか?」

「それならわかるぞ、人の発する言葉には力が宿り良い言葉を発すれば良い事が 悪い言葉を発すれば悪い事が起きるだったか? まさかそれがそうだと言うんじゃあるまいな?」

「え? それがそうなんですが・・大抵は弱すぎて途中で消えてしまう事が多いですけどね、後無意識に感情として・・」

「そんな情報はどうでもいいのだ! こちらで使える様になるのに、何故同じ事が出来ないのかと聞いている!」


 そんな風にすごまれても・・何でそんなに必死なんですかね? 最早関係ない話だと思うのですが・・。


「答えは簡単ですよ、肉体が邪魔なんです」

「成る程、肉体は魂の牢獄だったか? 精神の檻とも言うんだったか?」

「はぁその話は良くわかりませんが、意図して使おうとする際に、神通力は魂から精神を介し肉体の内側へと流れ、そして排出される事になるんです」

「っふ読めたぞ、つまりその工程で物凄くエネルギーを消費してしまい、実際には何も起こらんと言う訳だな?」

「そうですね、経由する箇所が多く大量に消費してしまう上に、実際は感情と同様発散と言う形でお空に上がってしまうんですよ」

「ぐっ・・成る程理解した」


(何と言う事だ! だからあんなに練習しても使えなかったのか・・ジィーサスゥ)


「ん? 今何か別の神様呼びました?」

「いや、気にしないでくれ」

「とにかく、さっき教えた方法でやれば問題解決すると思うので、しばらく練習して見て下さい。私は定期的にこうして見に来ますので・・」

「何だ女神よ、もう行くのか? 随分と忙しないではないか? 我の方の現状を見て行かんで良いのか? それこそ見学をな!」

「ん? 他の方ならともかく、あなたはご自分で問題定義を何とかしようとする姿勢が見られたので、ここを離れても問題ないと判断しましたが?」

「随分と信頼されたものだな、まぁ偏に我が人格のなせる技だな! ふははははははははははっ!」

「はいその通りです。見学さんは他のお二方と違って普通なので問題ないかと・・」

「はーははははははは? 今何と? ふ、ふつ・・普通・・だと? ・・我がその二人に劣って・・普通だと? ちょ、ちょっと待つのだ女神よ!」


「はい、あなたは普通誰が何と言おうとも普通・・普通こそが安寧であり癒し、個性にその優劣はありません。普通何ていい響きなんでしょう・・あなたは普通、心にその事を言い聞かせご自身に自信を持って下さい」


「め、女神よ! ま、待つのだ! 天へ帰る前に色々訂正をーーー!」


「あはははは、それは無理な相談です。では・・」


「女神ーーーーーー!!」


「まっ[ゴン!!]痛だぁーーーーっ!?」


 くぅ~~~~~・・あ、頭が・・目の前がチカチカ~・・うぅ~~~~。


「め、女神? どうしたのだ? 天へと帰るのではなかったのか? 思い切り天井に頭をゴッチンした様に見えるのだが? 大丈夫か? のたうち回っている様に見えるのだが?」

「ぎ、気にじないでぐだざい・・だ、だぶん・・ぐすっ・・ごごがアースガルドの建物内だんだど・・思いばず」


 通りでここ来る時だけ、見慣れた建物の外に降り立ったんですよ・・変だと思いながらフロントの妖精さんにここの部屋番号聞いて、あれ? 何で妖精さんがいるんでしょうか? 何て思っちゃいましたけど、そう言えば講習受けてる時に、そんな様な注意事項言ってましたっけね、すっかり忘れてましたよ・・。


「そ、そうなのか・・てっきりワープに失敗したのかと・・本当に大丈夫か? 結構強めにぶつかった様に見えたのだが・・と言うか物凄い涙目なのだが・・」


 お陰で、頭が・・うぅふ・・。

 降り立った時、近くにヴィーンゴールヴ宮殿が見えたので、多分ここが選定される人間の仮の住居グリンカムビですね、ヴァルハラにいる金色の鶏冠が特徴の鳥の名前から取って付けたそうなんですが・・。

 うぅ・・頭が・・。


「だ、大丈夫でず・・ど、扉がら出で行ぎまずね・・ずびっ・・」[ガチャ]

「何か・・その・・お大事にな・・」

「ありがどうございばず。失礼じまじだ・・」[カッ・・チャ]


「あれでは・・訂正しろ等と強く言えないではないか・・取り敢えず確実に定着しつつある見学さんだけでも、どうにかしてもらえんだろうか・・」


(まぁいいか・・今日は良い情報を手に入れる事が出来たのだ! くくくくく・・では早速)


 あっ! しまった大事な事を言い忘れていました! これを言わずに去るなんて、私とした事が戻りましょう。


「長年・・そう長き時を掛け、我はこの時を待ち望んでいた・・ふふふふふふふ・・ついに・・ついに! あれを撃てる時が来たのだ! 幼少期あれに憧れ大人となった今でも! まだ諦めきれずに何度も何度も何度も何度も練習に練習を重ね、それでも果たす事が出来なかった己の夢を! 今! この時・・習得する時が来たのだ・・我が心の師よ! 見ていて頂こう! これより我が念願を成就するその瞬間を! スー・・ハー・・・・では! かーーーー・・」


「あの~・・すみません一つ重大な事を言い忘れてまして・・」[ガチャ!]


「はあぁぁぁぁぁあああああーーーーー!!」


 ・・・・・・。


「し、失礼しました・・」[カチャ]


 ななな、何か変なポーズ取ってたーーーー!! 何あれ? え? あんなの教えた覚えがないですよ? もしかしてあれが必殺シュート? 見学さんは形から入る方の人だったんでしょうか? 

 それに何で上半身裸に? 何か見てはいけない物を見てしまった気分に・・お陰で頭のズキズキがどこかへ飛んで行ってしまいましたよ。


「・・・・・・い、いや~~~~~~!! ま、ま、待ってくれ!」[ガチャ!]

「ひっ!? す、すみませんでしたー! 私何も見てませんから! ただ・・何も見てませんから!!」


 閉めなくては! 見学さんの名誉の為にも、いえ今後のお付き合いの為にもここは見なかった事に!


「い、いやいやいやいや! し、閉め様とするな! 誤解だあれは誤解なのだ女神よ! だから・・あだっ!? あ、足ーーー!! 足足足足足ーーー!! 開け閉めするの止めろ! わざとかっ!」

「すみません・・すみませんでした! 何も見てませんから! 許して下さい!! 勘弁して下さい!」


(何か廊下が騒がしいですね・・? あそこにいらっしゃるのは先程の女神様・・何を? ・・!!)


「待つのだ! 誤解だと言っているだろう! え~い・・開け閉めを止めんか!」


 そう言って、さっきまで足だけで私が閉めるのを遮っていた扉から、体半分を乗り出し、私の腕を掴み中へと引きずり込もうとして来ました! 

 こ、これはいよいよもって身の危険を感じますよ! 何としてもこの扉は封印せねば!!


「ぎゃ~~~腕掴まないで下さい! ごめんなさい! 謝りますから! あなたは普通ではありませんでした! 認めますから腕離して下さい! 閉めますからー!」

「ちょ、ちょっと待て! このタイミングで・・っぐ認められても・・むぐっ嬉しくないのだが・・色々と誤解が・・」


「この変態!! 女神様を離しなさい! 無礼者!!」


(ふ、普通を大きく振りかぶって、変態まで通り越してったーーー!! ・・ショック)


 あっ! 今だ! 手が緩んだ!

 妖精さんの声に驚いた見学さんの手を振りほどき、後ずさりしながらへたり込む私、緊張が解かれ頭の痛みが蘇って来たのと同時に再び涙が溢れ出して来ました。


「うわぁぁあああ・・怖かったですよ~・・」


 妖精さんに抱き付き、気持ちが落ち着き安心した所で、ちょっと冷静になって振り返ってみると、今見学さん別に襲おうとしたんじゃなくって・・あれ? もしかして私を止めようとしただけじゃ・・。


「お~よしよし・・」

「あだっ!?」

「え? す、すみませ? ・・これは! こんな所に大きなコブが・・まさかあなた・・ぼ」


「え? ち、違う! 誤解だ! それは女神が帰ろうとした際に出来たコブで・・」


「うわぁぁああああ! ・・見学さんが強引に引き止めてそれでーーー! ・・あああぁああ!!」


 すみません見学さん。そうじゃないのは理解しましたが、流れ的に次いで何で罪を被って下さい、まさかちゃんと講習受けた私が忘れていて天井に頭ぶつけたなんて・・恥ずかしくて言えませんからね。


「汚ったな! 貴様女神の癖に嘘を付くとは・・」


 己を犠牲に他者を助ける・・何て素晴らしいお人何でしょう・・見学さん? 女神の罪を被るその勇敢たる姿決して忘れませんよ。


「汚いのはあなたです! ・・このゲスが!」


「待ってくれ! 我にとってこの女神は守備範囲外なのだ! 寧ろきさ・・あなたの方が好みなのだ!」


「め、女神様だけじゃ飽き足らず・・よ、妖精である私まで・・」

「こ、こいつとんでもねー奴ですよ! 物凄い勢いで鞍替えしやがったですよ!」


「え? あっ! 違う! 誤解だ! 誤解なんだーーー!!」


 その後見学さんは、何度誤解と言っても聞いてもらえず。サービスのランクを落とされ、妖精内のブラックリスト行きになりました。



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