2-2 ノレない勝負
お昼休憩、お腹が鳴るのを合図に、仕事部屋である自室から勢い良く扉を開け 廊下の窓から差し込む陽の光に眩しさを感じながらも、真直ぐ食堂へと歩みを進める。
途中皆との合流を果たし、混み合い並ぶ券売機と配膳前に待ち遠しさを感じるも、やっと我が下にやって来たカレーライスに舌鼓を打ち早速一口・・。
甘口でした。
押すボタン間違えて、隣の甘口カレーを選んでしまったみたいです。
・・っとその前に、何で甘口があるんですか!
甘口、辛口とポーク、ビーフ、シーフードってカレーだけでボタンどんだけ占拠してるの! 良く見たらナンとライスとか、いや、うどんから何から・・。
え? 今日だけ一台のみカレー専用の券売機? 一カ月の間にカレーの日がある? 知らないし! 通りで皆カレーばっかり食べてると思ったんですよ・・。
でも甘口は無しだと思いませんか?
え? 美味しくなかったのかって? ・・意外とこれはこれで・・ありなのかも?
あっ! いえ何でもありません! カレーは辛い物なんです! 甘いの何て、甘いの何て・・ハモ、ハムハム・・ハモ、ハムハム・・みひょめられる訳・・ゴク・・ゴク・・プッは~! ないじゃないですか!
全く誰が甘口を置こう何て考えたんですかね? こんな物! こんな物~!
はぁぁ食べた食べた・・余は満足じゃ!
・・・・まぁ一カ月に一回くらい? たまになら? 許して上げなくもないですけどね!
「だから言ったでしょ? スーツでいいのよ、巫女装束何てかえって怪しまれるだけなんだから」
「いや、スーツもどうかと思うぞ? 自由だって言うんだから、アタシみたいにもっとラフでいいじゃん動きやすいし」
「ソナエちゃんのそれは、女神としての風格や節度を守った服装に反すると思いますよ」
「うわっ! シノがまともな事言ってる。ビックリだわ、天界に嵐が来ちゃうかも」
「それは流石に酷くないですか? 私だってそれなりに気を使う所は気を使ってるんですよ?」
「あ~・・あんなぁ」
「私服がダメなんて言われなかったし、風格はどうか知らないけど、節度は守れてるだろ? 別に露出が多い訳でもド派手な訳でもないし」
「えっとなぁ・・」
「そうね・・ド派手はダメよね・・」
「私もド派手はどうかと思います・・」
誰とは言いません。いえ、とっても綺麗なんですよ、そこは間違いないです。見違える程ですから・・。
「もう、皆私無視して話進めんといて! 何か言いたい事があるなら言うてくれな、放置はあかんよ?」
「いや、扱いに困ってるだけだから! どう言っていいのかわからないのよ!」
「そうなんですよねー・・風格も節度もありだと思うんですけど・・お化粧もバッチリですよね、まるで別人の様に・・」
「そうなんよ! 今日が初日やろ? うんと気張って倭国の女神の威厳見せたろ! 思って頑張ったんよ! シノちゃんええ所見てくれてるわぁ、流石やわぁ」
あはっ、それはどうもです・・けど・・。
「あのなキョウ、大変申し上げにくい事なんだけどさ、気合入れ過ぎなんじゃないか? ・・いや別にそれが悪いとかじゃないんだけどな・・」
「なぁに? ハッキリ言ってくれな、かえって困惑してまうわ」
「ならハッキリ言わせてもらうけど、シノの巫女装束どうかと思ってたけどそれ以上なのよ! 何で舞子なの? しかもガッチガチじゃない!」
「え? これダメなん? 私の所に来た人皆、初対面で会うた瞬間、おぉっ! 言うて偉う神々しい者見る目で見てくれたんよ?」
「でしょうね、初対面じゃない私でも、おぉっ! ってなったもの」
「私も朝の集合場所に集まった時、おぉっ! ってなりましたよ」
ヴィーンゴールヴ宮殿に向かう時も例の階段があるんですが、ポックリポックリ歩くあの特殊な下駄と着物で、一段も上がれませんでしたからね、ソナエちゃんが抱っこして上がりましたよ。
それはもう抱えにくそうでしたね、キョウちゃんは妙にはしゃいでましたけど・・。
「アタシも朝ビックリして、おぉっ! って・・」
(あれ? ちょっと待て・・シノは巫女、ミキはスーツ、そしてキョウは舞子・・まともなの私だけか? いや、この場で浮いているのは寧ろアタシじゃないのか? アタシって地味? まともじゃない?)
「そやろ? これなら間違いない! って思うて苦手な朝も早う起きて、二時間も前から準備したんよ?」
「あぁ・・そうなの・・」
「ん? どうしたんですか? ミキちゃんツッコミが疎かになっちゃってますよ 二時間もかかったのかよ! とか、早起きしたな! とか、気合の入れる方向間違っちゃってるよ! 的なものいっぱいあると思うんですけど」
「シノ・・あんた言いなさいよ、流石にツッコンだら可哀想なレベルなのよ、だって二時間よ? 寝起きの悪いキョウが、朝起きて頑張った何て言われたら無理に決まってるじゃない・・」
「成る程! 確かにその通りですね」
あっ、安心しました。ミキちゃんはご自身がツッコミ役である自覚あるみたいですね、いいでしょう。ここは!
「キョウちゃん・・」
「ん? 何? どうしたんシノちゃん?」
「朝早起きして二時間も前から無駄なこングッ!? ンンンン?」
言いにくそうだったミキちゃんの代わりを務めようと、発した私の言葉を素早く出て来た手が口元を押さえ遮ります。
え? 何で? 何やら横にいるミキちゃんから、威圧する様なオーラがヒシヒシと伝わって来るのですが・・。
「シノー! ねぇ? 何が成る程なの? 今の言葉の何をもって確かにその通りなの? 言っちゃダメでしょ? 言っちゃダメよね? 折角頑張ったのが無駄だった何て言われたらどう思・・っあ!」
「む、無駄? 無駄やったん? 無駄やったんか・・無駄やった・・無駄・・ムダ・・むだ・・む~だ~・・」
「ほら見なさいよ! 魂抜けちゃったじゃない! どうするのよ落ち込ませちゃって! 明日から抜け殻になっちゃったら、シノ責任とれるの?」
「「えっ? 責任?」」
唐突にそんな事言われても・・ってキョウちゃん復活早っ! 責任と言う単語に反応して復活しましたよこの子・・何てガメツイ子なんでしょうか。
「え? えっと・・そう、責任」
「責任! あはぁ~・・そうよ、責任問題やわ! シノちゃん聞いた? 私落ち込ました責任取らなあかんよ?」
「責任って、もう復活してるじゃないですか! 第一何要求するつもりなんですか! お金ですか? お金ならありませんよ? 本当意地汚いですね」
キョウちゃんのあの目は何かを奪おうとする・・言わば狩り人の目! 責任問題での金銭要求はセオリー通り! 汚い汚いぞ、キョウちゃん!
こんな事なら私はもっと電球とか着けてチカチカしてくればよかった! なんたる迂闊!
(友達間のやり取りで、真っ先にお金が出て来るとか、意地汚いのはあんたよシノ・・)
「良し決めた! あ、あのさ・・アタシも明日は・・」
「おーーっほっほっほっほっ! 随分と派手で騒がしく耳障りな者達がいると思いましたら、どうやら噂のおこぼれで受かった倭国の恥さらしさん達だった様ですわ!」
「メナトも大概だと思います」
「うん・・気合の入ったドレス・・露出多め」
「アンナ、アニスうるさいわよ?」
「なっ! 誰だか知らないが訂正しろ! アタシらはおこぼれかもしらないけど・・恥さらしじゃないぞ!」
「恥さらし以外の何だと言うのかしら? あなた達講習の時、随分おマヌケな目立ち方して、他の女神達から失笑を買っていたのではないかしら?」
「自分が目立とうとして、全てもって行かれたのが悔しかったんですね」
「メナト・・頑張ってた」
「そこ! さっきからうるさいですわ!」
「あれは別に、目立とうとした訳じゃ・・とにかくアタシらはそんなんじゃない! 今すぐ訂正しろ! なあ皆!」
「もういややわ~責任言うたらあれしかないやろ? うっふっふ・・シノちゃ~ん」
「なななな、何ですか! 何で近寄って来るんですか! 持ち合わせも少ないので、ご飯奢るとかも無理ですからね!」
あれって、敢て遠回しに言ってこちらから言わせる気満々とか、怖っ! 策略家だ・・こんな所に策略家がいましたよ! 一銭たりともやるものか・・こうなったら威嚇するしかない!
(そこまで・・ケチ臭すぎでしょシノ)
動物の中には威嚇をする時己を大きく見せる為、両手を上げて立つ物がいる・・私を今にも狩ろうとしている猫の様な、しなやかなキョウちゃんのあの動きに対抗するには、これしかない!
「シャーーーー!!」
(いや、シャーはないでしょ! どっちかって言うとガオじゃないのそこ? ・・どうでもいいけど)
「わぉ! シノちゃん意外と大胆な子やったんなぁ、せやったら・・あ~れ~ケダモノに襲われる~」
自分でやっといて何なのですが・・こ、これどうやって決着着けたらいいんでしょう?
(シノちゃんとじゃれ合うんは楽しいけど、周りの迷惑なるしなぁ・・そろそろ止めてもらわな)
(えー・・何この図、私どうすればいいのかしら? 妙にこっちを二人してチラ見してる気がするんだけど・・もしかして)
「コホン・・ふ、二人共いい加減にしなさい、他の人の迷惑になるでしょ・・」
「せやな」「そうですね」
「あ、これでいいんだ・・」
「・・な、なぁ皆?」
「「「っぷ!」」」
「あはははははは! 何この子達面白すぎますわ!」
「アハハハハハハ、メナト笑い方普通になってますよ」
「ふふふっふ、ふふ、余程おかしかった・・模様」
「だからうるさいのですわ! あなた達! 私じゃなくて向こうを笑いなさい!」
「お~い皆、いい加減こっちに気付いてほしいんだけど・・じゃないとアタシ寂しさで死んじゃう・・」
「いやいや無視してた訳ではないんですよ、私は襲われていたので、そちらへの配慮する余裕がなかっただけですから」
「いややわぁ、何言うてるの? 襲ってたんはシノちゃんやろ? ソナエちゃんも座ったら? 立ってたら迷惑になるかもやし」
「あはっ! ゴメンねソナエ、こっちが強烈過ぎて・・何かしてくれてたなら、もう一度見るからもう一回やってもらえる?」
「いや、別にアタシ何もしてないし、座るわ・・」
「あっそれでな、皆何の世界に送ったん? あんな私はな・・田所さんのま・・ま? まー・・ちょっと待ってな、今思い出すわ」
「ちょ、ちょっといい度胸してますわね! 私達を無視して話題変えて話し始めるなんて・・まぁわからなくもないですわ! 何せこの二級神にしてあの世界的に有名な愛と美と豊穣、おまけに幸運の女神事、ハトホル様に目をかけられ推薦状まで賜った。そう私、メナト・アシャイ・アノクサベを相手に真っ当に面と向かって会話出来ない気持ち! 最初から各が違いますものね! おーっほっほっほっほっほっほっほっほ!」
「あはは・・、キョウ思い出したら教えて頂戴、ソナエあんたの所は?」
「え? あーアタシの所はバッドニーズとイヤンカンフーそれと、カケルくんのジャンピングヘブンスピリットヘルだったかな?」
「うわ! 良く覚えられましたね? 私何てどこ送ったかなんてもう忘れちゃいましたよ」
「忘れちゃダメでしょ! ちゃんと進捗報告書、毎回書いて提出するんだから」
「え? そうやったっけ? 良かったわぁ、私ちゃんと覚えてるんよ、ただな・・喉のこの辺まで出かかってるんやけど、そこから上に上がって来んへんのよ、おかしいわ~」
((それは覚えてないって言うんじゃ・・))
「シノ、あんたは特にキッチリとした報告書書いてここで挽回しておかないと、去年の講習中に色々やらかして、余計に目を付けられてるんだから、しっかりしてよね?」
「残念だけど、聞いてないみたいですよ」
「メナト・・名乗り損」
「うるさい! ・・ですわ」
「えー? 私何にもやらかしてませんよ? 至って平凡な一女神様でしたよ? あっ! にじみ出る美しさが目立っていたのでしたら、不可抗力ですよ?」
「「あんたのどこが平凡?」」
「あれ? 声がダブった?」
「あはっ、そう言う事ってありますよね、偶然の一致みたいな!」
「あーわかるわかる! 全然違う別のグループの会話が偶然合わさるのな!」
「どちらさんかわかりませんけど、すいませんこっちの会話ですのでお気に召さらずに、ホホホホホ」
「・・・・・・っく」
「完全に別のグループの会話と思われ、勘違いされてしまいましたね」
「どんまいメナト・・次があるさ、ホホホホホ」
「だ、だからうるさいですわよ! あなた達!」
「随分と近い位置でダブりましたけど、まさかのミキちゃんの後ろに立ってる方達だったみたいですね」
それにしても近いですね真後ろだなんて、それに何かこっち睨んでる様な・・ まぁ気のせいでしょう。
向こうもビックリして見てるだけですよね?
「偶然って本当にあるんやなぁ、さっきはソナエちゃんが、自分が言われた思うて振り返ってまってたし」
「え? 見えてたのかよ! ・・まぁあるよな、見慣れない奴が遠くでこっちに手を振ってるから、もしかしたら覚えてないだけで知り合いかも? と思って手を振り返したら、後ろの奴に手を振ってただけだった事とかさ」
成る程、それでさっき寂しさで死んじゃうって言ってたんですね、すいません気付いて上げれなくって、何せやんごとなき事情に見舞われていましたので。
「あーあるなぁ、私それようやってまうんよ」
「気付いた時にはもう遅くって、恥ずかしさと、切なさと、心苦しさが入り混じっちゃって」
「そうそう、この上げた手と行き場のない感情どうしようみたいなの、あれ堪んないわよね」
「そこのあなた! さっき私達と会話した事なかった事にして、平然とそちらの会話に参加しているなんて、とんでもない侮辱ではないかしら? 無視し続けるのも大概にしておいてもらおうかしら!」
「いつの間にか私達も、会話に参加してる事になりましたねアニス」
「ねぇ? メナト・・今恥ずかしさと、切なさと、心苦しさ・・入り混じってるの?」
「・・・・う」
「成る程、状況的には彼女達が会話でしていたそれに近いですね、少しでも緩和しようと達を付けたという事ですか」
「心中お察しだねメナト・・後で作文用紙四百字詰めに、その感想書いて見せてほしいな」
「うるさいうるさいうるさい! しばらく黙っていなさい! 返事は?」
「んーんん」「んんっん」
(了解) (わかった)
「まぁでも、これで理解出来ましたわ。自覚がなかったのならこちらがいくら呼びかけても、無視するに決まってますわ! 自分達が落ちこぼれの恥さらしである事も、おつむで理解出来ていなかったのであれば納得ですもの・・行くわよアンナ アニス」
「んんんんんっん、んんんんーんんんんんんんんん、んんんんんんんん」
(自覚があって、一人反応してくれていた事、忘れていますね)
「んんん・・んんっんんんんんんんん、んーんんんんんんんん」
(メナト・・構ってもらえないから、挑発してるんだよ)
「アニス、アンナ・・何を言っているのかはわからないけど、うるさいですわ! ほら行きますわよ!」
「んーんん」「んんっん」
(やっと去る気になったみたいね、あー言うのは構ったら負け、悪いとは思うけどスルーして上げるのが一番・・)
「はぁあ本当、これだから出来損ないのポンコツはダメなんですわ!」
「お前らな! いっ」
「いい加減にして! さっきから何なの? 出来損ないだのポンコツだの落ちこぼれに恥さらし・・上から物言うなんて何様のつもり? こっちがスルーして上げてる間に大人しく去ってくれればいいのに、ズルズルズルズル、うっとおしい!」
(えー・・アタシのセリフ・・ってやっぱり聞こえていたんだ! なんだ良かったアタシだけかと思ってたよ!)
「二人共どうしちゃったんです? いきなり大声とかそれこそ迷惑ですよ?」
「人様の迷惑行為注意したら、自分はうんと気を付けなあかんと思うんよ? しかもいきなりケンカ腰だなんて、お母ちゃんそんな子に育てた覚えないんよ?」
(本気で気付いてなかったのこの二人・・)(誰のお母ちゃんだよ!)
「ふふ・・くふふ・・おーっほっほっほっほっほっほ! ようやく気付きましたわ二人共! 戻りますわよ!」
「んーんん」「んんっん」
「んんっんんんんんんん、んんんんんんんんんんんんんん」
(良かったですねメナト、聞いてくれていたみたいですよ)
「んんっんんんんん・・ん~んんんんんんん」
(構ってもらえて・・上機嫌なメナト)
「何様ですって? あなた達より一個上の神、二級神にして、あの世界的に有名な女神様事ハトホル様に一目を置かれ、活躍を期待されている者、メナト・・メナト・アシャイ・アノクサベですわ! 以後お見知りおきを。それにしても、聞こえていたのに聞かぬフリしてやり過ごそうとするなんて、何て浅ましくて貧相な、いかにもポンコツが考えそうな猿知恵ですわ!」
「んんんんんんんんんんんんんんんんん」
(水を得た魚とはこの事ですね)
「んんんんんんんーんんんんんん・・んんんんんんんんんんんんんんんんん」
(ボクには陸上に上げられて・・ピチピチ跳ねている様に見えるけど)
「あちらのお二人、何でさっきからお口押さえてらっしゃるのでしょうか?」
「さぁ? アタシらにはわからない、高度な修行でもしてるんじゃない?」
「ん? 確かにこれではおつむが良くても理解出来ませんわよね、アニス、アンナお喋り解禁ですわ! あなた達も言っておやりなさい」
「成る程釣り上げたつもりが、自分が釣られていたと言う事ですね」
「そう・・だから口をパクパクさせてるでしょ」
「何のお話をしているのあなた達! このポンコツ集団に一言言っておやりなさい!」
「はぁ、では・・こんにちはアンナです。メナトが仲良くなるきっかけ欲しさに ついつい好きな子にちょっかい出しちゃうアレをしてしまってすいません。こんなメナトですが仲良くして上げて下さい」
「初めまして・・アニスです。こう見えてメナトは努力家なんです。いつも一人で高笑いの練習とか、自己紹介の練習してる努力家なんです。許して上げて下さいごめんなさい」
「おーっほっほっほっほっほっほっほっほ! そう私は仲良くしたかっただけ、そしてその為の努力も惜しみなく・・違う! 違う違う違う! 仲良くしたい訳じゃありませんわ! バカにしようとしただけ、ですわ! それとアニス! 何でそれ知ってますの? 部屋の鍵も掛けててこっそり練習してましたのに!」
「アハハ、甘いですね、いつから一人だと錯覚していたのですか? ちゃんとバスルームにいましたよ?」
「ボク達・・水の女神と泡の女神だからね、多少熱めでも我慢できるのさ」
「はぁ? バスルーム? そんな所には誰も・・っは!」
(そう言えば前の日流したはずのバスタブの水が次の日になると必ず満タンに・・それに一人一部屋にジャグジーが完備されているなんて流石ヴァル・・嘘・・え? つまり毎日・・)
「どうやら、気付いた様ですね」
「これで・・これからは正々堂々と一緒に・・」
「入る訳ありませんわ! 全く何を考えてますの勝手にバスルームに侵入するだなんて・・」
「そうですよね・・」「そっか・・」
(あっ・・二人共落ち込んで・・でもこれは仕方がない事ですわ! 二人がしている行為は非常識極まわりない行為、ここは心を鬼にしてでも貫き通し正して上げる事が本当の友情! ですわ!)
「やはりバスタブは非常識でしたね」
「そうだね・・これからはちょっと狭いけどトイレと洗濯機に・・」
「そう言う問題じゃありませんわ! いえ、余計に非常識度が上がってますわ!」
「メナトは注文が多いですね、あっ! こんな時で申し訳ありませんが、あのスケスケのネグリジェはどうかと・・」
「何言い出してますの? 本当にこんな時に言う事じゃないですわ!」
「ぉお! そうだ・・メナトそれで思い出したんだけど、どこの引き出しとは言わないけど、一度も使われる事がなく大切にしまわれているあの凄い奴いつ・・」
「シャラーーーップ!! そ、それ! ほほ本当にどーでもいいですわ! 今! ここで! その話題はどーーーでもいいですわ! そんな事よりも・・」
「何か・・大変そうだな・・」
「そうね、そこに関しては同情するわ・・こっちも他人事じゃない所あるし・・」
「ん? 何故こっちを見てらっしゃるので?」
大変そう? お風呂一緒に入る程仲がいいだなんていい事じゃないんですか? それにわかりますよ、自分だけの大切な宝物って大事に保管していて、たまにそれを眺めて懐かしい思い出に浸るんですよねー、私もハトちゃんが始めて作った麦わら帽子 今でも家のタンスの引き出しに・・・・持って来れば良かった。
「もしかして二人共、本当は着物着たかったん?」
「あのね、二人共状況わかってる?」
「上京?」「嬢狂?」
「アタシら、あのメナトって奴に・・」
「バカにされたのよ!」「バカにしなさいって言ってますのよ!」
「「「「な、なんだってーーー!!」」」」
・・・・・・。
「メナト常識的に考えて下さい、先程自己紹介したばかりの初対面の相手をバカにする何て、私には出来ませんよ」
「あれ? 今の発言は・・自分をバカにしてって、お願いじゃないの?」
「あぁ、しまった。これはうっかりしてましたね、アニスありがとうございます。それとメナト、時と場所を選んで発言して下さい、あなたの発言はどちらに転んでも非常識ですよ」
「メナト・・とんだドM発言」
「ちっがいますわ! さっきまでとんでもない所に潜んでいた話を、カミングアウトした非常識達に言われたくありませんわ!」
「バカに何てされてましたっけ?」
「もしかしてさっきの、あんたのどこが平凡? っが被ってもうた所?」
「え? あれ? 言われたの私だし言ったのミキちゃんですよ? もしかしてダブッっちゃっただけで? ・・ミキちゃんもソナエちゃんも沸点低すぎませんか?」
(ちげーよ、そこじゃない! もっと前から言われ放題なんだよ!)
(特にあんた達がバカにされてるって言うのに、当の本人達のほほんとしてるとか、本当にこの子達は・・でも・・)
「友達バカにされて」「黙って見過ごせる程アタシら白状じゃないんでね」
「ぷっ! 急に格好付けて何言っちゃってるんですかね? 私見捨てて逃げたご寮人が」
「シノちゃんそれ言わない約束やない、それにあれも本当はシノちゃんの為やし 助けにも行ったやんか」
「そうですね、何せ気が強そうに見えて二人共以外にナイーブですもんね」
「そうよそうよ、ここ来てからの何日間か気にしてたの忘れたん?」
「気にする位なら、最初から手伝ってくれれば良かったんですよ」
「それもそうやんな」
「「あははははははははは!!」」
(後で説教ね)(ん、アタシは止めないぞ)
「ふふ、おーっほっほっほっほっほっほ! 見なさいあなた達、愛くるしい程のポンコツ愛ですわ!」
「ポンコツじゃないって言ってるだろ? 撤回しろよ」
「謝る気無しと取っていいのかしら?」
「撤回する気も謝る気もさらさらありませんわ。ポンコツと同じレベルだと思われたくありませんの。でもチャンスを上げようと思いまして、お声を掛けさせて頂きましたわ」
「チャンス?」
「そう、チャンス・・あなた達がポンコツじゃないと証明する為のチャンス」
「いいわ聞くだけ聞いてあげる」
「ふふ、いい心掛けですわね、ずばり勝負ですわ! 今回の三人の人間達、どちらが先に全てを育て上げるか・・人数の多さはハンデとしてそのままに、次のラグナロクが開催される前日までのトータルの多い方が勝ち・・もしあなた達が万が一にも勝つ事があれば、その時は素直に負けを認め、何べんだって謝って差し上げますわ! おーっほっほっほっほっほっほ!」
「本題に入るまで長い道のりでしたがやっと言えましたね、最初から勝負内容決めていた位、スラスラ言えましたねメナト」
(誰のせいだと思ってますの!)
「普通・・ケンカ売られた側が勝負持ち出すよね?」
「そうですね、最初からそれが狙いでしたし、やはり単純に仲良くしたいだけでは?」
「張り合う・・相手が欲しかっただけかも」
「そこの二人お黙りなさい!」
「んーんん」「んんっん」
「さて、この話のるのかしら? のらないのかしら?」
「そんなもん決まってる!」「ええ! その勝負・・」
「のりませんよ!」
「「「「「「え?」」」」」」
「シノちゃん、シノちゃん? あんな、流石に私も話の流れ理解したんよ? ポンコツ言われて勝負言われたら、ここはのっとかなあかんと・・」
「そうよ! ここで逃げたら、ここでの生活一生ポンコツ扱いになっちゃうでしょ?」
「いえいえ、勝負にのらないと言ってるだけですよ、さっきから見ていると向こうは一枚岩ではない様子、ならば私達が叩かねばならない方はそちらにいらっしゃるメ~ちゃんのみ・・二級神とは言え四対一で、はたして無事で済みますかね? フヒヒ」
((((((とても女神とは思えない発言・・))))))
「んんんんん、んんんんんんんんんんんんんんんんんん」
(向こうの子、中々いい所に目を付けましたね)
「んんんん・・んんんんんんん」
(鋭い・・ナイス判断)
「ひ、卑怯者ですわ! 数の暴力反対ですわ! ここは穏便にフェアーな勝負で決めるのがセオリー、あ、あなた達も何か言っておやりなさい!」
「んんっんんんんんんーんんん? んんんんんんんんんんんんんんんんーんん?」
(言うって何をでしょうかね? この場合相手を褒めるべきでしょうか?)
「んんんんんんんんんん・・んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっんんっんんんんんんっんんんん?」
(メナトが言いたいのは・・多分ボク達も入るから四対三だって言って欲しいんじゃないかな?)
「何言ってるか全然わかりませんわ!」
「勝負にのって上げてもいいですよ?」
「え? 本当?」
(何だおかしい子だと思っていましたけど、結局こちらの勝負にのってくれるいい子じゃありませんの。ホッとしましたわ)
「えぇ、ただ・・そっちが負けたら三カ月分のお給料頂くと言う条件付きでね」
(うわっ! がめつい)(それってアタシら負けたら・・)(流石シノちゃんやわぁ)
(何だその程度ですの。三カ月分位こちらは痛くも痒くもありませんわ。寧ろその方が盛り上がると言う物、こちらだけが提示するなんて不公平、なら私の答えは決まってますわ)
「ふふん、その条件飲んであげてもよろしいですわ。でもそうなると、そちらが負けた場合も同じ条件と言う事になりましてよ? よろしくて?」
「何言ってるんですか? なる訳ないじゃないですか?」
「「「「「「は?」」」」」」
「だってこっちは、のらなくていい勝負にのって上げるだけじゃなくて、散々言われたい放題だった訳ですよね? 暴言は暴力と同じ、訴えればお金が発生するんですよ? つまり、既にそちらは前借をしている借金の状態にあるんです。だからあなたが勝った場合はそれが帳消しになるだけ、わかりましたか?」
(前言撤回ですわ! 何この子おかしい子だと思っていたけど黒! うちのアンナといい勝負かそれ以上ですわ! 私の全神経がこの子と張り合ってはダメだと告げてますわ!)
「いい加減にしなさい、脅かすのも程々にしないと、どっちがケンカ売られた側かわからないじゃない、見て見なさいよあのメナトって子、涙目になっちゃってるじゃない!」
(そうだよな、それが正論だよな、でも正直良く言ったシノと思てしまったアタシって、ダメな奴なんだろうか?)
「と、とにかく勝負ですわ! 私の言った条件で勝負ですわ! お金も物も賭け事はダメですわ!」
「だからその条ッ!? ングング?」
「はいはい、黙ろうなシノ」
何するんですか? ソナエちゃん優位な立場に折角立っているのに、今ここで一歩も引かない意思を見せておけば、最悪負けても向こうはもう関わろうとしませんよ?
「ええいいわ! その勝負のるわ!」
あっ終わった・・。
「いいお返事です事、それでは要件はそれだけなので、これにて失礼しますわ! ほら行きますわよあなた達!」
「んーんん」「んんっん」
「ちょっと待って、まだこっちが負けた時の条件聞いてないんだけど?」
「ありませんわ! しいて言うならポンコツである事を認める事ですわ! おーっほっほっほっほっほっほっほっほ!」
行っちゃいましたね・・あ~あ勿体無い、最初に無理な条件さえ突き付けておけば、その後の条件は通りやすいのに・・。
「んんんんんっ!」
「あぁ悪い!」
「ん~もう! 折角好条件で勝負出来る所だったのに何で邪魔するんですか!」
「あんたがあくど過ぎるからでしょうが、いくら何でもやり過ぎ!」
あくどいなんて人聞きが悪いですね、私は正当なあるべき条件を提案しただけですよ・・それなのに・・。
「皆格好良かったよ? 私何もせんとただボーっと眺めてるだけになってまったけど、惚れ直したわぁ」
((え? 皆? シノのあれを見ても格好良く思ったの?))
「まぁとにかく、こっちは四人いるんだから、まずは二人づつを目指してやって行きましょう」
「おぅ、そうだな、どんな形でも勝負ならアタシは負けない! アタシが一番最初に三人ともちゃんとしたエインヘリャルにしてやるぜ!」
何か面倒臭い事になっちゃいましたね、お金絡んでないならモチベーションも上がりませんし・・三人が頑張れば適当でいいですよね?
「シノ、あんたの事だから適当にやろうとしてるかもだけど、一応念押ししておくわ。一番最初に三人共エインヘリャルに何かしたら、フレイ様に認められて、ボーナスが出るかもしれないわよ?」
(・・出る訳ないけど)
ボーナス!! ・・あぁ何ていい響きなんでしょうか! そうだ。そうでした。私スッカリ忘れていましたよ、いいえ心が曇り汚れていたんです。
今私の心のステンドガラスは、曇りや汚れが綺麗に拭い落ち、日の光に照らされ、色鮮やかに美しく映し出されている・・様な感覚に!
争い何て良くありません。ましてそれにモチベーションを求めるなど、あってはならないのです。
我欲を捨て己が使命に一身に邁進する。それこそが今私達に求められている事 そしてその過程として友人と共に切磋琢磨する為勝負する事もまた試練なのです。
「ミキちゃん・・私がボーナス何かに釣られると思ったら大間違いですよ! さぁ、こうしちゃいられません! 何してるんですか! 負けたら一生ポンコツなんですよ? 急いで戻って助言しなければ! ボ~ナッスボ~ナッス! ビ~ナスビ~ナス! ナスビーナスビー!!」
「思いっ切り釣られてるじゃない・・くすっ、ちょっと待ちなさい! そんなに急いでも逃げたりしないわよ?」
「現金な奴と言うか・・欲望に忠実と言うか・・」
「そこがシノちゃんの可愛い所やないのぉ、・・所でソナエちゃん。握手しようか?」
「ん~? あぁそうだな、お互いの健闘を祈ってって奴だな、いいぜ・・」
「そっちの手は違うな、左手よ?」
「へ? あっ悪い、キョウ左利きだっけか?」
「うんにゃ、違うよ? そっちの手やろ? シノちゃんのお口抑えた手」
「・・・・・・おぅ・・欲望に忠実だな・・」
使命・・それ即ち、ボーナスを手にする事!!