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戦乙女の黄昏  作者: いさらゆたか
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2-1 ノリ気な仕事



「あ? え? こ、ここはどこ? た、確かフォルファンの新春イベ周回してて・・み、三日位完徹して・・」


「こんにちは、いらっしゃいませ・・どうぞ、そちらのソファーにお座り下さい。あっこれ粗茶ですが・・」


「へ? あっ・・ど、ども・・」

「初めまして、私久間出シノと申します。ほんの一時の間ですが、お付き合いよろしくお願いしますね」

「あ、はい・・ズズズゥ・・はぁ・・あ? ・・え! こ、ここどこなの? ここまでの記憶が全くないんだけど・・お、応接間?」


 ふっふっふっ・・初めてのお客様ですよ! ・・じゃなかったエインヘリャル候補の方でした。


「ぜ、全体が、ま、真っ暗い薄明りだけの部屋に、い、椅子に座った女の子とふ 二人っきりとか、ど、どんなシチュエーションなのだぜ? ガラスのテーブルがみょ、妙にエロい・・」


 ちょっとちょっと興奮してきちゃいましたよ! 私は今からこの人を仮想異世界へと導き、そこで英雄として育って下さるのを見守るんですねー・・く~! 実際目の前にいらっしゃると実感がわいて来ますね!


「頑張らなくっちゃ!」


「え? 何き、君・・いきなりお、大声とか・・そ、それにそこは頑張らなくっちゃじゃなくてが、頑張るぞいじゃなくっちゃダ、ダメだと・・」


 それにしても随分と・・あ、いえ・・えーっと菅田ドモルさん25歳無職、ネットゲームのやりすぎで過労とストレスでお亡くなりになられてますね、普段からの不摂生と睡眠時間のバラつきが蓄積された結果、無理が効かなくなっちゃった為ですか・・。


「失礼しました。何分初めてでしたので・・改めまして、良くぞいらっしゃいました」

「よ、良くぞいらっしゃいましたとか、そ、その言葉の使い方そ、それであってる? あ、あのそのアイパッドみ、見た事ないんだけども、もしかしてし、新型ですか?」


「あなたは不運な死により、その一生を早々と終えてしまった可哀想な迷える子羊・・本来ならば如何なる理由があろうとも、一生を全うせずに人生を途中下車する様な行為は許されるものではありません・・」


「し、失礼だなき、君、勝手に不運とか可哀想とかき、決めつけないでほ、ほしいな、そ、それに子羊じゃなくて、お、狼だからその辺間違えないでくれよ、き、君の事も食べちゃうぞ何て・・うははっ・・な、尚し、質問には答えて頂けない模様・・」


「しかしながら昨今不幸な事故、自殺による死者が後を絶たず、年々増えているのも事実・・」


「あ・・か、完全スルーの流れですね? わかります。い、今冒頭部分の演出ですから全部言いきっちゃいたい気持ちす、凄くわかります」


「我々神々はその悲運を嘆き、また今一度好機を与えるべく、新たな制度を設けました。それが異世界へとおもむき、その場所で英雄的働きをする事でその罪を免罪とし、勇者エインヘリャルとして、ヴァルハラへと迎え入れると言うものです!」


「ヴァルハラキターーーー!! 女神タンはぁはぁ、ま、まさか漫画やアニメだ だけのは、話かと思ったら、ほ、本当の事だったのだぜ! まさにア、アニメじゃなっ・・ゲホッ! ゲホッ! こ、興奮してむせった」


 こんにちは皆さん。いきなりですいません。

 えっと説明面倒臭いのでありのままを見て下さい・・こんな感じです。

 取り敢えず、なれちゃいましたヴァルキリア。

 何を言ってるのかわからないと言う方の為にほんの少しだけ・・ンッウン!


 どんな事情があっても絶対に不合格にする事をやめなかったフレイ様、一晩の外泊だけ許され明日の早朝に帰宅する様命じられ一泊する私達・・。

 早朝になり荷物をまとめて帰る支度をしていた消沈する私達・・もうダメだ帰るしかない・・。

 しかし! そこに颯爽と現れたのは、ミスター筋肉事金槌さん元いトール様・・と眉間にしわを寄せたフレイ様。

 もうおわかりですね? そうなんです許されちゃいました! しかもトール様のお墨付きで! 

 やっぱりいい人だったんですね!

 フレイ様は不服そうな顔をしていましたが、会った時からそんな顔してたんでこの際気にしたら負けですね。

 とにかく何が言いたいかと言いますと、私達が泊ったのは女子寮だったという事、私達の救いの英雄トール様はフレイ様に耳を引っ張られて何処かへ・・。

 ありがとうございます。そしてさようならトール様、あなたの勇姿決して忘れません。

 私達の間ではあなたは永遠に変態扱いでしょう・・敬礼。


 その後、講習と質問、面接練習を経て一年後の現在に至ると言う訳です。

 え? 行き成り一年も飛ぶなよって? 授業受けてる風景何て語ってどうするんですか? 退屈するだけですよ?

 ここがどこなのかも、この際だから説明しておいちゃいましょう。


 私は今、ヴィーンゴールヴと呼ばれた宮殿内の一室にいます。

 現在この地で死んだ魂は、ギムレーと言う広場にて選定を受け、ヴァルハラに送られるか、ヘルヘイム(地獄)へとパージされ、ロンダリング後消却されるかをギルティ・オア・ノットギルティされる事になっているみたいなんです。

 ヴィーンゴールヴも昔は女神の宮殿と言われ、死んだ善良な人間を受け入れ住まわせていたそうなのですが、時代が進めばそれなりの人数になるのが当たり前で 溢れんばかりの人をヴァルハラとの二つの宮殿だけでは抱えきれず、アースガルドに居住区を設け、それが駅周辺の町だったと言う訳ですね。

 現在のヴィーンゴールヴは、その空いた居住スペースを改装し、私達の仕事場へと変り、この地だけではなく世界中から該当する魂を送られ、本来消却される魂をエインヘリャルへとすべき、二次選定の場に変貌を遂げたと言う事みたいです。


 それでですね、本日は本格始動前の第一歩、試験的に運用しその結果を見ようという事でして、採用された女神全員に、三名づつ該当する人間の魂をランダム選出であてがい、私の所にもこうして、今その一人目の方がいらっしゃったという事なのですが・・。

 こんな方が来るとは思ってませんでした・・正直イメージと違う、私的にはもっと「そこのお嬢さんハンケチを落としましたよ、今僕が拾って・・っは! ハンケチが! 危なーい!!」ドンガラガッシャン! ジョニーーー!! ・・みたいな感じのちょっとしたイケメンが良かったのですが・・。


「え? な、何? そ、そのシチュエーション。い、いないだろハンカチの為に飛び出すイケメン・・そ、それより何より、い、今時ハンケチって時代錯誤はなはだしい・・ドンガラガッシャンって何がどうなった音なの? ね、ねぇ? ジョ ジョニーはどこの誰で何人なの? い、今会ったばかり設定で、な、何で名前知ってる訳? じ、実は知人な設定?」


 まぁどんな方が来ようとも一人目は一人目・・この先色んな方と出会えばいずれ・・フヒヒ。


「あのー、もしもしき、聞いてる? そんなイケメンこ、金輪際会えないから、そ、そもそも存在しな、ね、ねぇ聞いてる? ぜ、全部口からもれちゃってるからそ、そこのお嬢さん辺りからずっと垂れ流しだから・・」

「よってあなたは、これより異世界へとおもむき、見事にその世界を救い英雄となって免罪符を手に入れて来て下さい」

「うっは~~~~!! は、話の流れ無理やり戻して来たけど、異世界転移キタコレ!! つ、遂にお、俺のか、隠された力が目覚める時がき、来た様だな、こ、こう見えてもフォルファン24では、し、漆黒の疾風の異名で呼ばれているのだぜ」


 え? しっこくのしっぷう! って何でしょう? 異名で呼ばれてる? 異名が付く事を自慢してるって事は、それなりに名が知れた方・・って事ですよね? あれ? もしかしてこの方既に勇者としての適性持ちなんじゃ・・。

 とてもそんな・・えっと四国の湿布さんでしたっけ? ん~~何だか忘れちゃいましたが、とても有名そうな方には見えませんが・・人は見た目ではありません。

 うん、この方の目間違いなく出来る人の目ですよ。

 いきなり当たりを引いちゃうなんて、私ついてますね! ラッキーです!


「それではお選び下さい、あなたが救いに行くべき世界を!」


 私が手を高らかに掲げると、湿布さんの周り一帯が光、選ぶべき世界の形があらわになって来ました。


「ま、待ってました! こ、これは異世界物お約束の例のチート選びですな? 説明を端折るとか中々女神タンもせ、せっかちですな、あ! でもでもそ、そんなめ、女神タン嫌いじゃないんだぜ? なんちゃって、あっ、あっ、冗談、冗談イッツァジョーク! デゥフフ。あー、あー、き、気を取り直してチート選びをば・・こ、ここはやはり伝説の剣・・いやいや魔法何かがだ、妥当? 盾なんか中々のツー・・あっそれとさっきの世界選び! で、出来たらめ、女神タンみたいな可愛い女の子がい、いっぱいいるハーレムエンドな世界を・・お?」


 この方・・独り言でブツブツ何を喋っているのでしょうか? 所々声が大きくなったり、変な身振りが付くので急だとビックリですよ、チートって何でしょう?

 またなんか良くわからない単語が出てきましたね、今度調べておかないと対応出来そうにありません・・。


「こ、これは一体・・何ですかな? め、女神タン」

「これ? ・・とは何でしょうか?」


 湿布さんの指さす先には、先程出て来た選ぶべき世界が私の足先の方までズラッと並び、これでもか! と言う程の選択又であり、不服そうな顔をされる様な物等一切無い様に思われますが、何故眉をひそめているのでしょうか?


「と、とぼけちゃってもダ、ダメだぞ? こ、これのどこがチートなの?」


 チート? また出て来ましたね・・。


「あの~、すみませんこちらの手違いでしたら謝ります。よろしければ、チートとは何かをお教え願えないでしょうか?」

「はれ? こ、これチート選びじゃないの?」

「え? いえ、先程も申し上げましたが、世界を選んで頂こうかと・・え? 私の話聞いてました?」

「き、聞いてましたとも! で、でもその前にチート選ぶのはお、お約束だろ? き、君は何を勉強して来たのかね? い、異世界物のじょ、常識だよ常識」


 異世界の常識・・そんなものあったんですねー・・話聞いてなかったと思って 危くちょっとキレちゃいそうになりましたよ、いけませんねウワハル様にもお前は沸点が低すぎる! もう少し我慢ってものを覚えろって良く言われましたっけ、っふ・・まぁもう遠い昔の事ですがね・・。


「えっと申し訳ありません。何分始まったばかりの制度ですので・・私自身も今日赴任したばかりでして・・」

「あーい、いるよね、は、初めてを理由に言い訳する奴、そ、そういう奴に限って何年やってもお、覚えが悪いんだ。す、少しはプ、プロ意識もったらどうなの?」


 ぁあ? この方今何て言いました? 確かに覚えはいい方じゃないかもしれませんが、私これでもあなたが生まれる前から仕事してるんですよ? この経歴見る限りあなた一回も仕事らしい仕事した事ありませんよね? アルバイトすらないじゃないですか! 何なんですか?


「あ、あの女神タン? も、もしかしてお、怒っちゃった? あ、あのご、ごめんねわ、悪気があって言った訳じゃないから・・」


 一々文句言わないと事が起こせないんですか? こっちが下手に出てる間にさっさと選んで、とっとと行けばいいんですよ・・全く、初めてを理由にして何が悪いんですか? 誰でも最初は未経験からじゃないですか・・それなのに経験が無い事がそんなに悪いんですか?


「え、えーっとどれにしようかな~・・って女神タンお、怒ってる所申し訳ありません! 一つ一番肝心なし、質問があるのですが、よ、よろしいでしょうか?」

「え? ・・何ですか? また訳のわからない変な質問だったら、速攻で帰ってもらいますよ・・」

「うわ~~・・あ、明らかに態度変わったし、や、やる気が感じられない・・」

「あ?」

「いえ! あ、ありがとうございます! こ、これってわ、わたくしめが自ら行く異世界をえ、選ぶんでオケー?」

「はぁ・・さっきからそう言ってるじゃないですか・・やっぱり聞いてくれてなかったんですね・・」


 もぅ! 慣れない中一生懸命喋ったのに、やってられませんよ、全く・・。


「い、いや聞いてましたとも! だ、だからこそ言わせてもらいます! こ、これ・・」


「お茶・・」


 いっぱい喋ったから喉乾いて来ちゃいましたよ・・。


「は?」

「お茶汲んで下さい・・ポッドと急須そっちです。お盆持って行って下さい」


 ちょっとした罰です。その位やってもらわないと・・。


「あ、はいわかりました・・あ、歩きにくいな・・あっこれ真っ黒いドアだったんですね、気付かな・・あ、ありました」


「そっちの上の棚に大福もち入ってるんで、ついで何で持って来てもらっていいですか?」


「ん? ・・・・あぁ見つけました! お、お皿はどちらに?」


「え? 見える位置にあると思いますけど? ・・見つけられ・・」


「あっ! ありました! ・・先にお茶を・・」


 確かに歩きにくいかもですね・・何かちょっと悪い気がして来ましたよ・・やり過ぎちゃいましたかね? 広げっ放しになった世界が散らばっているせいで歩きにくそうですね、何だかヨタヨタしてますよ・・心配ですね・・。


「はいこれお茶・・あっ! 粗茶ですが・・あちっ!!」

「キャッ! ちょ・・ちょっと! こぼれ・・指何か入れたら熱いに決まってますよね? ティッシュティッシュ・・はぁ、それに言いませんよね? 他人の家のお茶、粗茶呼ばわりなんて・・」

「・・そ、その前にきゃ、客に用意させる家もな、ないから・・そ、それにしてもキャッとかって、女神タン意外と可愛い悲鳴だった件について・・」


 ・・ぜ、前言・・撤回です! 反省の色無し、そして何で一度で持って来なかったんでしょうか? 大福取りに行きましたよ彼・・何の為のお盆何でしょうか? その為に持ってってもらったのに・・。



「っで・・何で二つ用意したんですか?」

「え? て、てっきりふ、二人で食べるのかと・・」

「百歩譲ってまぁそれでもいいですよ・・でも・・何でそっち苺大福? 別々にした意味は? そして何で自分の方ちょっといいのにしたんですか?」

「あ、あの単純にこ、こっちが好きだからで・・」

「好きとか嫌いとかで、人様の所のおやつ勝手に選んじゃっていいんですかね?」


 やらせといて何なんですが、この方の常識の基準って大丈夫なんですかね?


「・・だ、だったら自分でや、やれよ・・」

「何か言いました?」

「い、いえ何でもありません!」

「はぁ・・まぁいいですよ、折角のおやつです。頂いちゃいましょう」

「は、はい! それには大いにさ、賛成であります」


 ではでは早速、いっただきま~す!



「は、はぁ~食った食った・・な、中々いい大福だったな・・」

「ですよね! ちょっとした名物になってる奴何ですよ? いや~本当に美味しかったですね~」

「け、結局二人共、二種類とも食べた件について」

「あははっ、お陰でちょっとお腹に溜まりますね~・・」

「いや~ほ、本当本当だ、大満足・・」


「「さて」」


「そ、それじゃあか、帰らせてもらいます・・」

「はい、お帰りはそちらのドアからですよ、お気をつけてー・・」


「「って違う違う!!」」


「あ、危うくま、満足してで、出て行く所だった! こ、ここどこか、わからないんですけど!」

「いや、そこじゃないですよ! 帰っちゃダメです! って言うか帰れませんから!」

「あ、あっ、そ、そうだお、思い出した! 質問があります!」

「そう! それ、はい! 何でしょうか?」

「こ、これ! え、選ぶ世界って言ってたけど、どう見たってカ、カセットじゃねーか!」


 カセット? ・・あっそれは講習の時習いましたね・・確か・・。



「あなた達に案内してもらう仮想異世界は簡単に言ってしまうと、地上界におけるバーチャル世界、いわゆるテレビゲームと呼ばれている物になるわ」


 あー・・講習って退屈ですよね~・・。


「ちょっと・・しっかりしなさいよ、ただでさえおこぼれみたいな感じで受かったのに、あんたがダラけてたら私達まで・・」


「形状は様々な形があるけれども一般的には本体であるハードにカセット、ディスク、CD、DVD等のソフトを差し込む事でデータを読み込みプレイします」


 ミキちゃんは心配し過ぎなんですよ、受かったものは受かったものなんです。

 こう言う講習や授業何てざっと聞きでいいんですよ、完璧に聞いた所で実際にやってみない事には、本当の意味での理解なんて出来ないんですから・・。


「あなた達は訪れた人間に、その中から試練となる世界を自ら選ばせ、向かわせる事になるわ」


 退屈すぎて死にそうですね・・落書きでもしてましょう、その内終わるでしょうからね~。

 あっ、教科書にフレイ様の顔写真が・・フヒヒ。


「どのソフトがどのハードに合うのかは、全て支給されるアイパッドのマニュアルに載せてあります。今から詳しい内容の説明はしますが、わからなかったら検索をかける様に・・っとその前に、あなた達は疑問に思っているであろう事、即ち何故単純に異世界に飛ばすのではなく、仮想・・つまりバーチャル上の世界に飛ばすのか・・誰かわかる者はいるかしら?」


「「「はい」」」


「ん、そうね一番早かったあなた・・」


「冨田宮ミキです。私達の住む世界を含め、全ての異世界での一切の直接的交流を禁止している。異世界法に守られている為です」


「結構・・では何故直接的交流を禁止しているのか、その詳しい内容を答えられる者いるかしら?」


「ミキちゃん流石やんな~」

「ま、まぁね、これでも上を目指して頑張ってるし、この位当然でしょ。それに出だし最悪なんだし、こういう所で少しでも挽回しておかないと・・」

「アタシはこう言う細かいの覚えるのとか苦手なんだよな・・どっちかって言うと体動かしてる方が全然・・力になれなくて面目ない・・」

「ソナエちゃん無理は禁物ですよ、誰にだって得手不得手はあるんですから、ソナエちゃんにはきっと別で輝く所があるんですよ」

「あはっ、そうだよな? アタシにはアタシのいい所がある! その時に挽回すればいいよな?」

「その意気ですよ、だからこんなの覚えられなかったとしても、全然大丈夫です」

「おぅ、何だか自信が湧いて来たぜ!」

「気付いてソナエ・・それ軽くバカにされてるから」


「今度はそっちのあなた答えてくれる?」


「はい、全ての世界で物質、生命その他含め、総数そして質量が均一に保たれているからですわ。もし、他の世界に石ころ一つ人間の一人でも飛ばされてしまった場合その均一は崩れ、ほんの小さなきっかけで双方の世界が瓦解してしまう恐れがある為・・ですわ!」


「あっちの子も流石やね~、私もこう言うんは苦手やわぁ全然わからへんなぁ」

「ちょっと待ってこのメンバーでこれわかるの私だけ?」


 別にわからなくたって困る事ないし、直接関わる事何てないから大丈夫ですよ~、そんな事より今は、フレイ様はどんな髭が似合うか・・ですよね!


「ええその通り、ですから他の異世界との交流は間接的に、それも頻繁には行われないのが通常であり、例えばパーティを開いたとしても、透明な壁越しにそれぞれの会場で楽しむ事になるわ。会話も勿論する事が出来ないの」


「あ~でもでも、私次の来たらミキちゃんに続くよう頑張る!」

「え? ちょっとキョウあんた今わからないって・・」


「でも異例も存在するの、それが何かわかる者はいるかしら?」


「「「はい」」」「はいは~い」


「じゃあ次、そこのあなた答えてみて」


「やった私当たった! ・・・・っは! しもうた! 当たってもうた・・どないしよう・・」

「キョウ・・同質量同程度、同一人物間での交換は可能よ」

「成る程な・・えっと、同ねん? 同げつ? 同じつ? の間の観光は可能です!」

「えっ? 違っ!」

「おぉ、それならアタシも聞いた事あるかも・・あれ? でもそれって何かの誓いじゃなかったっけ?」


 ぷふっ! キョウちゃんナイスボケ! 日帰りですか? 言い切ってやったと言わんばかりのドヤ顔がじわじわきますね! 観光場所はやっぱり桃園でしょうか?


「えっと・・あなた・・」


「はい! 濱谷キョウです!」


「・・キョウ・・座りなさい」


「はい!」


「おつかれーキョウ」

「やったよ~ソナエちゃん。ミキちゃんのお陰で答えられたわぁありがとうな、ミキちゃん」

「いや、間違ってるから!」

「あれそうだったん? ミキちゃんダメやんかぁ、友達だまくらかしたりしたら バチ当たってまうよ?」

「え? 私? 違う違うそっちは合ってたの、キョウが間違っちゃっただけで・・」


「今の正解答えられる者いるかしら?」


「よっしゃ! この波に乗らない手はない! 次はアタシがっ!」

「待って待って! この波に乗っちゃダメ! 寧ろ乗れてないから、波に攫われてサーフボードだけ浮いてる状態だから!」


 ミキちゃん止めちゃダメですよ、寧ろゴー! 周りの声を聞いて下さい、皆さんクスクスと笑ってるじゃないですか、つかみはオッケー、一気に皆さんの心を鷲掴みですよ。

 それはそうと・・中々満足のいく出来に仕上がりましたね・・ん~後一つ・・あっ、もみあげと髭を繋げて・・。


(全くあそこは・・落ち着きが・・? 妙に一人だけ静かなのがいるわね、感心感心、久間出シノだっけ? 一番の問題児になりそうだと思っていたら、意外と勉強・・!!)


「あ、あなた・・そうね、あなたに答えてもらいましょう。久間出シノ答えなさい・・」


 へ? あれ? 私ですか? 手何か上げてませんよね? おんや~同性同名の美少女が他にいらっしゃるのでしょうか?


「え? 何でシノが・・・・っげ! あんた・・よりにもよって何で・・はぁ・・」

「しまった~シノにまで先を越されるとは・・」

「シノちゃんがんばっ!」


 フレイ様、また一段と怖い顔して段々と近寄って来てますけど・・あっ教科書は閉じておきましょうね、バレたらおっかないですからね・・。


「何をキョロキョロしているのかしら? 久間出シノはあなたしかいないはずでしょ? それとも落ち着かない理由でもあるのかしら? 講習中なのだから教科書を閉じる必要もないわよね? ん? どうしたの?」


 あ、あれあれ? もしかしてバレてる? いやいくら何でもあの位置からじゃ見えないはず・・だってここ結構後ろだし、四人席の角っこですよ?


「さぁ教科書を開いて・・見せてごらんなさいシノ・・」


 あ、あぁ・・近い! そして怖い! ・・笑ってるのに・・笑ってるのに・・目、目に・・目に殺意が・・。


「あ、あのあの・・近くで見ると遠くで見てるより・・す、凄くお綺麗ですね、特におめめがチャーミングですよねー・・」

「そう、ありがとう・・私って綺麗でしょ?」

「はい、とっても! 眉間のし・・まつ毛が長くていいな~・・凛々しい眉毛もまた・・」

「シノ・・シノ! 今からでも遅くないから謝って・・」

「ん~? どうしたん? 謝らなあかん様な事、何かしたん?」

「何があったかわからないけど、すっごいピリピリとしたオーラが漂ってるぞ・・」


「そうなの、自分でも時々私って写真写りいいなって思う時があるのよ・・」


 写真!? やっぱり気付かれてるかも! ど、ど、ど、どうしよう・・何とか誤魔化さねば・・まずはこの状況を打開するんだ。

 その為には・・教科書から意識を反らさねば!


「そ、そうですかね? 実物の方が全然いいと思いますよ・・」

「知ってるかしら? この教科書にも私の写真がある事を・・」


 あばばばばばばばば・・えっと、な、何か・・何かないのか・・そ、そうだ一瞬だけでも目を反らしてもらえれば、隣のミキちゃんのと交換してしまえる・・ミキちゃん・・。

(え? 何? 何でこっち見て・・あっ! そっか教科書入れ替えれば・・) 


「え、え~? そうなんですか~? 知らないな~私・・おっかしいなー・・ちゃんと読んでたはずなのに、私のだけフレイ様のお顔の載った写真何て見つからなかった気がするなー、こんなに綺麗な方なのに見過ごすはずないし・・あっ! もしかして私のだけページ抜けちゃってるのかも・・」


「そう・・それはマズいわね・・不良品を渡していたのならこちらの責任だし・・だったら今、たった今、私が確認して・・」


 あー・・万事休す・・右手が教科書に伸びて行くのをただ見守るしか・・。


「シノちゃんのピンチや! は、早よう答えな、あれや・・どう・・どう・・なんやったかな~? ソナエちゃんわかる?」

「え? どう? どう・・あっ胴! 面、胴、小手、突き、の基本四種類は、体さばきや組み合わせ次第で技は無限です!」

「です!」


「何の質問に答えてるのあなた達!」


 しめた! ナイス二人共!

(シノ! 今よ!)

 ブックチェーーーーンジ!! ・・ささっ、さささっ! さささささっ!

(いやそんな敏捷アピールいいから早く!)



「なーんて事がありましたねー・・」

「え? そ、そこで終わるの? い、いやすっごい気になるけど・・も、物凄い中途半端にいい所でひ、引きは抜群だけど、せ、成功したのかどうか、じ、次週へ続くですね、わ、わかりますってじ、次週まで待てるか!」


 えー・・面倒臭い・・いいじゃないですか、本人のご想像に任せるで・・。


「はぁそうですね・・一つ・・そう、ただ一つだけ言わせてもらうなら・・その後一週間程、宮殿内のトイレ掃除、任されましたよ」

「お、おい失敗してるじゃねーか! か、完全にバレてるぞこの野郎! ま、任されたんじゃなくってば、罰じゃねーか!」

「さて・・無駄話はここまでにしてもらいましょうか・・」

「し、したの女神タンの方だからね! な、何気にこっちのせいにしようとしてるけど・・」

「いい加減、そろそろ決めて頂きましょうか・・エインヘリャル候補湿布さん!」

「し、湿布って誰だよ! お、俺の名は黒き漆黒の風・・そ、その名も!」

「そう言うのいいですから~はーやーくー! 後つかえてるんですよ~」

「えー・・で、でもここで言っとかないと、あ、後でずっと湿布呼ばわりに・・あっでもお、女の子にはーやーくーとか言われるのちょっと萌え・・」

「あっ、もうこれでいいですよね? えーっと・・すっぱっ! マメオ兄弟」

「え? あ、あはい。じゃ、じゃあそれで・・」


 渋々ソフトを受け取る湿布さん。まぁわかりますよ、これから世界を救え何ていきなり言われれば、そう言う顔にもなるでしょうね。

 こればっかりは、頑張ってとしか言い様がないですよ。


「じゃあ用意するんでちょっと待って下さいね・・世界は選ばれました・・あなたが救うべき世界・・それは・・・・・・」


 あれ? えー・・何でしたっけ? そう言えば、アイパッドにマニュアル入ってるから困ったら見ろって言ってましたね、では早速・・。


「え? 何? ん? な、なしてパッドタッチしてる感じ? も、もしかして女神タンい、今確認してる系? しょ、少々お待ち下さいみ、みたいな・・」


 ほうほう・・成る程・・ふむふむ・・。


「それは強大な亀の魔王ガッペによって支配されようとしている世界・・そして何と哀れな事か悲劇的にもある・・さるお城の姫君ピンチ姫が、よりにもよってその・・ガッペ? の手により攫われてしまいました・・」

「か、完全にパッドチラ見な上に棒読みですね、そ、その世界観は有名なので知ってます! そ、それよりもあ、あるお城でもさるお城でも大して変わらないのに な、何故に言い直したのかの方が気になります! わ、私気になります!」

「一々細かい所を気にしなくていいんです。そう書いてあるんですから、・・さぁ今こそ勇者マメオとなって囚われの姫を救い、そして魔王ガッペを倒し世界の平和を取り戻すのです!」


 良し! 言い切ってやりましたよ!


「さて・・それではハードの方を用意・・あっその前にソフト散らばり過ぎですね・・」[パンパン!]

「あ、手二回叩くだけで引っ込むとか、べ、便利なシステム・・そ、そしてサラッと世界と言わなくなった件について・・」

「えっとハードはフレンドリーコンピューターですね、ちょっとお待ちを・・あのー、フレコンでお願いしまーす!」

「え? だ、誰に言ったし? そ、そしてそこは合図じゃなくて口頭なんですね・・ってうわぁあ・・」


 光り輝き上からゆっくり降りて来るフレコンを目にし、口をあんぐり開けている湿布さん・・上から来るなんて想定外だったみたいですね、ぷぷっ。


「さあ、そのソフトをハードに差し込んで下さい」

「そ、想定外のデカさな、なんですけど・・フ、フレコンがビ、ビリヤード台二つ分位のお、大きさ・・に対してソフトは普通のサイズって・・よ、よく見たら差し込み口は普通の大きさだから、も、物凄い不格好に見えるんですけど・・まぁ差し込めって言うんだから差し込みますけど・・あっふうふうした方がい、いいかな?」

「ふうふうが何なのかわかりませんが、とっとと上に乗って入れて下さい、スイッチ入れますから・・」

「あっも、もう入れました準備オッ・・」


「スイッチオン!」[パチッ!]


「さ、最後まで言わせてもらえない流れですね・・お、おわぁ~か、体が浮いて・・何だか小股がお、落ち着かない・・」


 湿布さんの体が光に包まれ、いよいよ旅立ちの時ですね、短い間でしたが名残惜しく思えますよ・・。


「あぁそうだ言い忘れてました・・全て倒してしまっても一向に構いませんよ? では行ってらっしゃいませ~」


「それダメなフラグ~~~~・・・・・・」


 良き旅をグッドラック! 次はもう少しまともな人が来て下さいます様に・・。


「では次の方~」




「さぁ選びなさい、あなたが向かうべき世界を!」


「うっほぉぉおおお!! やったんだな! アニメもラノベも本当だったんだな! きゃっほぉぉぉぉい!」


「あの~・・聞いてらっしゃいますか~? せーかーい選んでほしいんですけどー・・」


 木島コレタさん・・32歳・・職業、無職・・趣味はアニメ、ゲームですか・・死因は~・・首を吊っての自殺・・、ではなく自分の体重を紐が支えられなくなり抜けた事により、その勢いと当たり所が悪く・・事故死・・ですか・・。


「これで夢と希望に溢れたハーレム世界の俺つえぇ主人公として生まれ変わって 美女に囲まれたモテモテイケメンライフを満喫できるんだな! 信じる者は救われるんだな! 自己犠牲の賜物なんだな!」


 ・・・・・・自殺? ん~・・こう言っては何ですが、とても自殺を考える様な人には見えませんね、自己犠牲って何の為に自己を犠牲にしたんでしょうか?


「あんなクソでムリゲーなリアルととっととおさらばして、早く綺麗で若いお母さんと、毎朝起こしに来てくれる幼馴染の可愛い子がいる。・・そんな世界へと旅立ちたいんだな」


 もう既にとっととおさらばしてしまってるんですが、・・まぁ何はともあれ前向きな姿勢の方で大いに結構ですね、仕事が捗ります。


「では、早く旅立つ為に、どうぞお好きな世界をお選び下さい・・」


「あ? 所でお前誰なんだな?」


 いや、この人全然聞いてなかった! 最初に自己紹介した時からずっとこのテンションだから、まさかと思ったけどやっぱりでした!

 何でさっきの人といこの人とい、すんなりいかないんでしょうかね? 私が悪いんでしょうか? 何かまたムカムカしてきましたよ・・甘い物を・・。


「あれ? あれあれ? 自己紹介まだなんだな?」


 ちょっと待って下さい・・さっき私は機嫌を損ねたお陰で話が長くなっちゃいました・・ここは我慢ですよシノ・・大人になるんです。


「自分から呼んどいて選ばれし勇者であるこの俺に名乗らないとか、どうせ別の世界が困ってるから助けに行ってほしいって話なんだな」

「すみませ~ん、うっかり自己紹介するの忘れてました~。く、久間出シノ、ヴァルキリアとして勇者さんを選定する女神で~す。よろしくお願いしますね~」


 ・・さっき言いました。


「それで? 俺が行く異世界は、どんな世界観なんだな? だな?」

「えっとですね、今部屋中に散らばっている世界の中から、勇者さん候補であるお前、・・ご自身が選ばれて、行くんですよ~」


 ・・さっき・・言いました。


「今何か選ばれし勇者に向かってお前呼ば・・」

「言ってません」

「あそ・・っで、何で選ばなくちゃいけないんだな?」

「すみませ~ん。そこさっき説明したじゃないですか~? 何を聞いてらっしゃったんですか~? ・・お前」

「今確実におま・・」

「言ってません」

「・・あそ・・じゃあ選ぼっかな・・」


 ほっ、・・やっと先進みましたよ・・これで・・。


「あっ所でちょっと立ってゆっくり回ってもらっていいんだな?」


 は? え、何で?


「あのー・・何故でしょう?」

「いいから! 重要な事なんだな・・」

「えぇ!? ・・まぁ重要な事なら・・あっ三回回ってワンとか言えとかだったら本気で怒りますよ? これでも女神なんで・・」

「あ、そう言うんじゃないんだな・・」

「・・・・・・ならいいですけど・・」


 何なんでしょう? ・・さっきからずっとこの人のペースで動かされている様な・・1、2、3。


「はい、回りましたよ、これが何なんですか?」

「早いんだな! もっとゆっくりなんだな・・」

「えぇ・・んーーー・・」


ゆっくり? えっと・・1・・2・・3?


「・・はい、これでいいですか?」

「ふむ・・あのさー、こっちが望んでるゆっくりじゃないんだな、もっとゆ~~~っくりにして、ほしいんだな」

「んん? これ以上って・・次最後ですからね?」


 何かやな感じですね、これで三回目ですよ全く、仏の顔も三度までですからね・・い~~ち・・に~~い・・さ~~ん?


「・・・・・・はい、もういいですよね?」

「あ、結構なんだな・・あっ次いでなんで、ワンって言ってもらいたいんだな?」

「ワン? ・・あっ」

「ぶふっ!! チョ、チョロ過ぎなんだな! きっとチョロ神様なんだな!」


 ちょ・・流石にプッチーンっときました・・もぅ我慢しなくてもいいですよね?


「いい加減に!!」


「チェンジなんだな・・」


「はえ? 今何て?」

「いや、だからチェンジなんだなって言ったんだな、一度で聞いて欲しいんだな・・」

「いえ、言ってる意味がわからないんですけど・・」

「チョロいだけじゃなくっておつむも悪いんだな、ついでに顔もスタイルも今一なんだな、だからチェ・・」


「せいっ!」


[ドゴッ!!]「ゴッ! モラァ!?」


 ・・ウワハル様と違って人なので、ムッカムカしますけど・・手加減はしましたよ・・こんな所で魂体になられちゃフレイ様にバレて私が怒られますからね。


「ぶ、ぶったんだな! め、女神が人に暴力奮ったんだな! 訴えるんだな今すぐ訴えるんだな!」

「あな・・お前は既に死んでいる・・どこに訴えるって言うんですか? それとぶったんじゃなくって殴ったんですよ・・余りにもボディがお留守だったので!」


 ただ・・褒めて上げますよ。手加減はしたとは言え、誰かと違ってみぞおちの一撃が入ってもゲロまみれにはしませんでしたからね。

 折角の新しい仕事場・・初日からまた汚されたら堪ったもんじゃありませんからね。


「何で言い直したんだな! それとやっぱりお前って言ったんだな! 数えただけで二度は言ってたんだな!」

「あぁ言いましたよ・・言って何が悪いんです? それと二度ではなく三度です! 女神にハラスメントするなんていい度胸してますね?」

「訴える! 絶対に訴えるんだな! お前が泣いて謝るまで訴えるのを止めないんだな!」

「あなた・・いや、お前は気付いてないんですね・・この場の法は私ですよ、私こそが神! 納得がいかないならかかって来るがいいじゃないですか、私が返り討ちにしてみせますよ」

「ひ、卑怯なんだな! か弱い人間相手に神の力は卑怯なんだな! お、お互い納得のいくフェ、フェアな勝負をするんだな!」


 ・・・・・・フェア?


「いいでしょう・・どんなものでも打ち負かして見せますよ!」

「その言葉に偽りはないんだな?」

「ええ! ありませんよ」

「なら・・オセロで勝負なんだな!」

「臨む所です!」

「あっ、俺持ってないんだな・・そっちは持ってるんだな?」

「ふっふっふっ・・ありますよ・・こんな事もあろうかと、このアイパッドの中にアプリこっそり入れておいたんです!」

「え? オセロが必要になる時ってあるんだな?」

「あっ、所で、ソフトもうこれでいいですよね?」

「ん? ソフト? アイパッドのアプリじゃなくて? まぁどうでもいいんだな・・出来れば文句ないんだな」

「すみませ~んリュックでお願いします!」[パンパン!]

「お、おぉ! な、何か下からバカでかいリュックシステムが出て来たんだな!」

「私達の戦いに、お誂え向きなステージだと思いませんか? さぁ昇って下さい」

「よっこいしょ・・ふぅ、確かにこれは中々乙な計らいなんだな・・それに免じて先行はそっちでいいんだな」

「そうですか、それでは・・三回勝負、いざ尋常に・・」


「「勝負!!」」


 ふっふっふっ・・、何かと思えばオセロとは・・なめられたものですね、・・私はこう見えて暇な時、一人で二役やって日夜修練を積んでいる身、この勝負負ける気がし。



「負けたーーーー!! えぇ~何で~? 三回も勝負して、一回も勝てなかったーーー!!」

「ブホッ! 弱いんだな、ただ弱いんじゃなくって弱っチョロいんだな!」

「くぅ~~~~~悔しいぃ~・・目立つ真ん中いっぱい白で制圧したのに! 何で隅っこに追いやられたたったあれっぽちの兵力で逆転されて負けるの~?」

「っふ、包囲殲滅なんだな、まぁそもそもそんな遊びじゃないんだな、ルール理解してから出直すんだな」


 私の日々の鍛錬の証が、ものの数分で瞬殺されるなんて~悔し過ぎですよー! かくなる上は・・。


「でも・・楽しかったんだな・・」

「へ?」


 急にどうしたんでしょう?


「正直誰かと面と向かって勝負する事、なかったんだな・・」

「おま・・えっとお名前・・」

「コレタなんだな・・」

「コレタさん・・」

「ナイスファイト、だったんだな・・」

「コレタさんっ!」


 よっ・・と、リュックの上意外と高かったですね。


「俺はどうやら、それが望みだったみたいなんだな・・死んでから叶うとか笑っちゃうんだな・・」


 えっと、この薄いカセット? フロッピー? リュックの正面にあるここに差し込めばいいのかな?


「コレタ・・さん・・」[カチッ]

「これでようやく成仏出来るんだな・・女神様ありがとうなんだな・・あっ、お迎え・・来たみたいなんだな・・」

「コ、コレタ・・さん・・」

「体が浮く様に軽いんだな・・でも思い残す事、一つだけ出来たんだな・・」

「コレタさん!!」

「最後に女神様のお名前聞いておきたいんだなあぁぁぁぁ・・・・・・」

「コレタさーーーーーん!! さっき言ったーーーーー!!」


 ・・はぁ、行っちゃいましたね、まぁ名残惜しくはないですけどねー・・最初はあんなにムカムカしちゃいましたけど、今はスッキリ気分爽快です! もう二度と戻って来るなこの野郎ですね。

 さて、本日次がラスト、気合を入れて行ってみましょう!

 もうあの手のタイプは来るなよ! なーんて、てへっ。




 なーんて言ってたちょっと前の自分を恨みますよ本当・・。

 確かにちょっと違うタイプ来ました・・前二人はガッチリとした・・と言うかムッチリとした感じ、そうですね、まぁ具体的な詳細を希望しなかった私が悪いんでしょう・・。


「ふははははは! ・・我は境界線上の観測者・・名を、ハロルドスティラー・・我に落とせぬ嫁などいない! そう・・それが例え二次元・・そして神であったとしてもな!」


 うん・・まぁ・・どうしましょう・・えっと・・杉上ヨウ、年齢28歳、職業は・・わぁあ! 一般企業ですが会社員さんですよ! やりました! 色んな意味で前の人達と一味違う! ちょっと痩せてる感じがしますがこの方は普通! そう、そうなんです! やっと普通の・・一般の方がいらっしゃいましたよ!


「だが安心しろ・・貴様は我の範囲外、命拾いをしたな、もし貴様がフィトケタもしくは最低でもトゥエンティーンまでだったら、そのハートゥ、百戦錬磨のこの俺が撃ち抜・・」


「フフフ・・あはははは・・あーっはっはっはっはっはっはっ!」


 やりました! やりましたよ! ちゃんとした人! これでようやく・・。


「ふぬっ!? き、貴様! な、何故笑うのだ? 我はまだ何も・・っは! 精神攻撃か・・我の言を聞き、ゴットゥパゥワーを用いて、我が愛すべき嫁の座にちゃっかり自らを入れようとしているのだな・・?

なんて卑劣な・・っく! ぐわぁぁぁあ! ま、負けるものかーー!!」


 は? あ? え? 私今何かしました? 何か勝手に・・ねぇ? 私今何かしましたか?

 何か物凄いオーバーリアクションでダメージを受けた感だして、片膝付きましたけど・・あっこれもしかして、新手の祈りの儀式みたいなものなんでしょうか? 違いますよねー? ・・どう見ても・・。


「・・く・・くくく・・こんな事もあろうかと・・マァイワイフィにしてソールゥシィスターでもある。魔王少女のぶなんちゃんのゥインナーシャッツェを常時肌身離さず身に着けていたのだ! 刮目して見よ! これが我がマァイワイフィにし・・」


 ・・っう・・ウガーーーーーー!!


「もういいです! あなたの上着のその下に、どんなソーセージおっちゃんが書かれたシャツ着ているのか何て、知った事ではありません!」

「へぁ? い、いやいや女神よ、ソーセージではなくゥインナーシャッツェ! それに書かれているのではなく宿って・・」

「ウインナーでもソーセージでもおっちゃんはおっちゃんじゃないですか! おっちゃん宿らせて何が楽しいんですか? そもそも何も感じませんけどね? ツクモさんいらっしゃいませんよ? いいですか? 良く聞いて下さい! あなたは、誰が何と言おうと普通です!」

「い、いやいやいやいや女神よ! 我が言に耳を傾け・・訂正を求む、我は境界線上の観測・・」

「だ、か、ら! そう言うのもう沢山なんです! マフィンとかマカロンだか ソーススター? オイスター? ソーセージおっちゃん? もう結構何です! お腹いっぱいなんですよこっちは!」

「め、が、み、よ! 全然違う! その上、お腹いっぱいとか言いながら、何気に食べる物ばかり述べているではないか? しかも食べ合わせ悪そうな組み合わせで、寧ろポンポンを壊しそうだ」

「いいですか? 個性は大事です! でも他の者にそれを押し付けてはダメなんです! いきなり初対面で意味不明な事叫んだりしちゃダメです! 時と場合、それと大丈夫な相手か判断してからやる様にして下さい!」

「いや十分お互い様な気がするのだが・・寧ろ部屋まで用意して演出している分 そちらの方が重度なのでは? 思いっ切り高笑いまで決めていたしな・・」

「これは違いますよ! こういうお仕事なんです! そこに疑問を持たれては困ります!」

「ええ? どんなお仕事? っは! ・・いや、どんな仕事だそれは! それにまだあるぞ・・名だ」

「はい? またその質問ですか? 私の名前ってそんなに覚えにくいですかね?」

「ん? 何を言っているのだ? 我はまだこの話題は初めてだが?」

「あぁ、いえあなたの前の人が・・すみません続けて下さい・・」

「ふむ、まあいいだろう。女神にも言いたくない事の一つや二つ位あるだろうからな・・」


 あれ? この方私を気遣ってくれてる? ちょっと変な所あるかもと思ったけど・・・・いい人かも! うんうん気遣いが出来る普通の人なんですよ、やっぱり!


「では・・先程の続きを言わせてもらおう・・女神よ、貴様散々人の発する言に対して否定的な事ばかり言ってきたが・・貴様とて十分な名を名乗っているではないか! 熊手シノ・・随分とファンシーなお名前ではないか、目を閉じると見える様だ。熊のコスプレをした貴様が、お~い熊手だよ~、シノだよ~、と手を振っているのが・・ん? それともこちらの方がしっくりくるのかな? ・・死の熊手、どうだ? 当たりであろう? 図星であろう? 本名だと言い張るには少々苦しい名ではないか? 貴様なんだかんだ言って、隠しているが本当はこちら側の住人なのだろう? くくくくく・・我のドゥェベルアーイの前では誤魔化されんぞ! この堕女神が!」


「・・・・・・」


「ふははははははははっ! ん? どうしたのだ? 図星突かれて返す言葉もないか? ん? ん? どうだ? 恥ずかしがらずにカミィングゥアウトゥッしてみるがいい? 我らは同志! なりきりたい気持ち十分わかるぞ? だが! 詰めが甘かった様だな・・今回だけ特別にダメ出しをしてやろう」


「・・・・」


「まず女神と言う設定を全然生かし切れていないこの部屋・・非現実的を演出したかった様だが・・まずグァラスのテイブルゥそしてソファ~、更に貴様の背に鎮座しているそのドゥエスクゥ・・ふぅ~いただけない・・あり得んな・・しかも何気に花瓶にお花まで飾っているではないか! お盆にお茶・・湯呑全て減点対象と言えよう・・」


「・・」


「まだあるぞ? 極めつけはその装いだ! 何だその格好は? こっちをなめているのか? 何故巫女服なのだ? 女神だと言うなら女神らしい服装をせんか! 言うなればもっと奇抜で、この世の者とは思えん様な・・そう、少しエッティで、スェクシィーな感じの露出のある物が好ましいだろう」


 ほ・・本名なのに・・女神なのに・・服装自由って言われたから、せめてと思っての格好なのに・・。


「そこまでやって初めて及第点をくれてやろう・・何も言わずに出直してくるのだな・・」


 いきなりで落ち着かないと思って、お茶出してるのに・・テーブルもデスクもソファーも完備されてるだけなのに・・。


「だが・・セリフは良かったぞ? さぞ練習したのだろうな・・まるで本当の女神に誘われているかの様な、あっそんな気持ちに浸る事が出来た・・総合的に言ってダメではあったが・・貴様を我が嫁として見てもいいとさえ思えた。ふっ、良く見れば合法ロリとも思えん位の体型とご尊顔ではないか・・」


 ・・少しでも和んでもらおうと思ってのお花・・全部女神としての設定と演出扱いされた上に・・ダメ出しされちゃいました。


「ふぅ~・・どうやら指摘された事によって、己の過ちに気が付いて恥じている様だな?」


 何より悲しいのは、女神って信じてもらえなかった・・立ち直れないかも・・。


「何をガックリしているのだ? んん? 失敗を恥じる必要はないのだぞ? それはつまり貴様の伸びしろがまだあるという事なのだ・・ここから、また始めれば良いだけの事、正しき女神のあり方を・・共に学び極め様ではないか!」


「見学さん・・」


 そうですよね、信じてもらえなかったのは私の実力不足、良く考えたらいきなりこんな所放り込まれれば、誰だって順応出来る訳がありません・・やはりこの方は普通! 前の二人が異様な適応能力を発揮していただけなんです。

 パニックやショックを起こされては困る為、自分が死ぬ少し前の記憶までしか所持して来ないのも事実・・あれ? そう言えばこの方何で亡くなられたんでしょう?


「見学さん? いやいや違うぞ女神よ! 良~く聞くがいい・・我は境界線上の観測者、ハロルドスティラーだ! そんなちんけな名等ではないわ!」

「ちんけって・・長いし難しいし、言いにくいしで、観測ってつまり見てるって事ですよね? なら見学で問題ないはずですよ、後あなた杉上ヨウさんですよね? えっと何でしたっけ? ハーゲン・・スフレ? どこもカスっていませんけど・・って言うか何でそこだけ発音普通なんですか?」

「うるさいわ、ほっとけ! 貴様難聴か! 先程から我の発する言をことごとく食い物にしおって! しかーも! 今回は元の名に寄せる気すらないではないか! 敢て言わせてもらう・・貴様の方こそカスっていない、いやカスらせる努力すらしていないと!」


 カスカスカスカスうるさいですね・・ワザとに決まってるじゃないですか、わかりにくい。

 えっと・・死因、アニメ魔王少女のぶなんの、のぶなんちゃん限定フィギア第六天魔王覚醒バージョンプレミアムエディッション最終話「本能寺に消ゆ その時ヤスケは見た」のフィギアを買いに出かけゲットするも、帰り道で浮かれてしまい左右確認もしないまま、速足で道路を横切った所車に轢かれ死亡・・・・。

 はい! わかりました!


「突然で申し訳ありませんが、ご希望される世界はどんな世界にするかお決めになりました?」

「ほ、本当に突然だな・・世界? あぁ・・最初に説明していた異世界の事か、そうだなやはりここはフィトケタの幼女ないし、最低でも少女が溢れんばかりに沢山いる世界をご所望しよう!」


 あーはいはい、幼女や少女が沢山ですねー、・・これでいいか・・。


「あのーすいません。これ何てどうでしょう?」

「ん? 何だそれは? さっきからの非礼を詫びているのならば気にする事はない、物が欲しくて・・っ! こ、これは! 懐かしいではないか! 鉄血高校アップダウン物語クニヤ君のドッジボールだよ全員集合! とはこれを詫び品に選ぶとは、貴様わかっているではないか!」


 わかっている? これ選んだ事褒められましたね・・要望聞くフリして適当に選んだのにこれでいいだなんて、私が言うのも何なんですが要望したのと違うじゃないかって言われる所なんじゃ? ・・人って変わってますね・・。


「じゃあこれで行きますね・・すいませ~ん! スーパーフレコンお願いします!」[パンパン!]

「むっ! おぉ・・何と・・さっき無駄に派手な登場で散らばったソフト達が、足元に出て来たと思ったら今度は引っ込んで行ったぞ・・一体どんな装置を使って・・」


 不思議なのは何となくわかりますが、黙ってソファーに座っていた方が、あんまりそうやってウロウロしながら、地面に這いつくばって見ていると危ないかと・・。


「見学さん、そろそろこちらに戻られた方が・・」

「おい貴様! 何度も言っているだろう! 我は境界線上の観測者・・」


 あっ、あの本当にそろそろこちらに・・。


「ハロルドド、ド、ド、ド、ド、ド、ドワップッ!? な、何だこれは? ちょっと待てストップストップ、ストーップ!」


 私が声を掛けた事により、振り向いた見学さんの後ろから徐々に出て来たスーパーフレコンがお尻を押す様な形になり、そのまま体制を崩した見学さんは、後ろに状態を反らした様な変な体制のまま引きずられる様に前進し、小走りを強いられ・・あっ今止まりました。

 亡くなって早々にまた轢かれるとか、笑えませんね・・。


「止まったか・・っふ、詫びをしたフリをしてダメ出しの仕返しとは、この程度のトゥリックに動揺するとでも思ったのか? 女神よ! 甘い! 甘いぞっ! ・・つぁ~・・ぜぇぜぇ・・」


 その寄り掛かった体勢から指さすのやめてもらえませんかね、全然余裕そうに見えませんけど・・。


「余裕がない所申し訳ないのですが、それに乗ってもらっていいですか? 後これ差し込んで下さい」

「は? な? 差し込む? このバカでかいのにか? ちょ・・待て・・はぁはぁ・・これに? 上るのか? 高い所は・・やぶさかではないが・・ほ、ほんの少しだけ待ってはもらえんだろうか・・あっすまないが、先程のお茶を・・」

「文句ばっかり言って、こちらの忠告全然耳に入れてくれないからそう言う事になるんですよ? ・・はい、お茶です」


 ゴクゴクと喉を鳴らし一気に飲み干すと、大人しく昇ってくれました・・この方口うるさく文句言う癖に、ナンダカンダこちらの要望には応えてくれてるんですよね、気を使ってくれる所もあるし、悪い人ではないのはわかりますが・・ただ、あなたは一つ大きな過ちを犯しています。

 それは決して許される事のない、言うなればそれは罪です!


「それで上ってやったぞ? ・・あっこいつをこれに差すんだったな・・っで、この後はどうするんだ?」


 そう、この私を最後の最後まで・・。


「何か言い残す事はありますか? 今ならどんな懺悔の言葉も許されますよ? あなたにとって最後の猶予でしょう・・」

「何? やはり貴様、女神は女神でも死神と言う設定であったか! っふ、流石死の熊手・・我を脅すとは、だが貴様の脅しには屈しない、何故ならば、そう! この俺は境界線上の観測者・・名を、ハロルドスティラーくくくくく・・我に落とせぬ嫁はいない! 逆に返り討ちにしてくれよう!」

「はいはい、ではその境界線とやらの向こう側に行って、思う存分落として来て下さい」[カッチ]


「向こう側だと? んっ!? な、何だこれは! か、体が勝手に浮いて・・おい貴様!」


「見学するだけじゃなくて、たまには体験しないとですよ」


「い、一体どんなトゥリックを使って・・っは! も、もしや貴様・・いや、あなた様は本物のめがあぁぁぁぁぁ・・・・・・」


 行ってらっしゃいませ~! 良し! これで本日のノルマ終了!

 ・・・・あれ? ちょっと待って今私の事・・女神って認めて・・、見学さん最後の最後で・・。

 私はあなたを許しましょう。

 まぁ、許そうが許すまいが結果は同じなんですけどね!

 さぁ時間も時間ですし、食堂行ってお昼~お昼~。



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