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戦乙女の黄昏  作者: いさらゆたか
2/15

1-1 計算違い


「あ、あのぅ・・フレイ様、受付の準備整ったのです。本日来られる女神様は予定通り推薦12名、それと昨日の連絡で志願される方は36名の合わせて約48名だと、向こうの神様からご連絡頂きましたのです」

「えぇご苦労様、連日の受付で疲れているかもだけど、最終日の今日も引き続き頼んだわよ」

「は、はいです!」

(さて、準備は大体整ったわね・・確か今日は高天原から倭国の子達が来る予定だったはず。昨日はエジプトからだったけど、中々見所のありそうないい子達が来てくれて助かったわ。

 どうやら推薦状の効果は絶大だったみたい。狙い通りどこの高位の神々も見栄やプライドが高い者ばかり、お陰で自分の推薦が付くとなれば出してくる子は一級品・・12名は確定したも同然、今回も期待してもいいかもしれないわね、くすっ)


「お姉ちゃん~フレイお姉ちゃん~」


「ん? あらフレイアどうしたの? あなたがグラズヘイム宮殿に来るなんて珍しいわね」

「む~そんな事ないよ、フレイアは何時だってお姉ちゃんの側にいるんだから~」

「はいはい、私もあなたが好きよフレイア」


(私の双子の妹フレイア、何時も私を見つけると甘えて来る可愛い子。本当に珍しい、何時もなら「あんな堅苦しい所フレイアきら~い」何て言って宮殿に足を踏み入れる子じゃないのに・・)


「えへへへへ~お姉ちゃんの匂い、いい~匂い~頭撫でて?」

「はいはい、少しだけよ? あなたも知ってると思うけど、ここ連日各国からのヴァルキリア候補がぞくぞくと募って来ているの、今日はこれから倭国の女神達がここへ集まるのよ」

「へ~そうなんだ。ふ~ん・・それでトール様もこっちに来てたんだね~」

「・・・・・はい? 今何て?」


(聞き間違いかしら? この子今トール様って言ったのかしら?)


「ほへ? 何てって何て?」

「今あのトール様が来てるって言わなかったかしら?」

「あはっ、言ったよ~トール様ウキウキしてたんだ~それでね、何か久しぶりに帰って来たし、どんな神様がヴァルキリアになるのか見て見たいって、さっきすれ違いでお外出てっちゃったんだ~」


(やっぱり言ってた・・普段大事な会議があるからここに居てほしいってお願いしても、ジッとしていないお方がどうして?)


「フレイア、情報ありがとう」


(フレイアにトール様、同時に二人も宮殿に・・この子トール様もって言っていたわね、そうなると目的は二人共ヴァルキリア候補の女神? 成る程、面白そうを嗅ぎ付けて来たのね? くすっ、何だわかってみれば単純な事じゃない、それで様子を見にね・・・・・・ダメだ頭痛がしてきたわ・・)


「えへへ~お姉ちゃんに褒められちゃった~」


(ちょっと待ってトール様は見に行くと言って宮殿の外へ? となると女性寮区の方かしら? それとも・・・・・・どっちにしろいやな予感がするわ)




ー ヨルムンガルド特急をご利用いただきまして、ありがとうございました。 お足元お荷物のお忘れに注意してお降り下さい・・次は~ ー


「まさかほんまもんの景色やったとは、思わんかったわぁ」

「まさかは私のセリフよ、結局着くまで寝てるとか正直ビックリだわ・・」

「ごめんな~私寝てまうと何時もあんな感じで、お母ちゃんに良く布団事転がり起こされてん、寝起きも怠うて怠うてのっそりしてまうけど、ご愛敬言う事で一つ堪忍なぁ」

「別にいいわよ、誰にだって向き不向きがあるんだし、私だって人に自慢できない事の一つやつ・・・・って言うか遅い!」


「ふぇ~ん! そんな事言わずに待って下さいよ~!」


「何で一緒に降りたはずなのにこの有様なのよ」

「・・荷物が・・重いんですよ、はぁはぁ・・ちょ、ちょっと休憩を・・」

「駅降りたはいいけど、昇り階段やったからなぁ、シノちゃん荷物多いし、いきなりバテてまったみたいやな」


 お、遅れての登場すいません。到着と同時に皆さんと一緒に出たはずの私は、荷物が邪魔してエレベーターもエスカレーターも使えず、他に下車した方々にモミクチャにされ、流される様に階段を使うはめになり・・。

 今ようやく駅を出て初めての街並みを拝見・・する余裕等なく・・もうちょっとだけ待って下さいね、今息を整えますから・・はぁ・・。


 お待たせしました。一息を付き、顔を上げたそこには、駅の出口より真っ直ぐ伸びた一本の開けた大通りと、その両脇を固める様に並ぶ商店街、その後ろに広がるここで暮らす神様達のお住まい、朝の時間と言う事もあり、どことなく漂う美味しそうな匂い・・。

 それとどこかで、トントンとリズム良く金槌を叩く音が響いて来てます。

 大通りの先には、お城の様な物が三つ、多分手前の一番大きくて金ピカなお城がグラズヘイム宮殿、私達がこれから向かう場所ですね。

 ヴァルハラ宮殿は真っ白いのと淡い虹色のどっちでしょう? どの道ド派手ですね・・売ったらいくらに・・おっと、いけないいけない折角いい感じに説明してたのに、遂脱線してしまいました。


「・・ちょっと・・だけでいいから持って・・もらえませんか?」

「しょうがないな、ほらアタシが持ってやるよ」

「あ・・ありがとう・・ソナエちゃん・・助かりますよ」

「ほなら私は・・」


 二人共・・感謝ですよ、二人の優しさに、神の祝福を~それとバッグを~・・。

 さぁさぁどんどん・・持って下さい、その分だけ私は楽になるんです。

 忘れなかったらその内、多分? それなりのお礼するかもですよ? 忘れなかったらですけどね! ッププ!


「二人共甘やかしすぎ、シノあんたここに何しに来たの? お気楽気分で観光しに来たんじゃないでしょ? 私達は同僚になると同時にライバルになるのよ? それなのにこんな所で足を引っ張られるとか・・あんたとはたまたま席が隣だっただけだし、そこまで手伝う義理はないわ・・私は先行くから」


「おいおい、そこまで言う必要性ないんじゃないか? 同じ同郷の出だろ? アタシは同僚とは仲良くやっていきたいんだよ」

「そうよ? 自己紹介もしたし、楽しいお話もしたやろ? そしたら私らもう友達と違うん?」


「そうね・・友達かもね、でも皆忘れてると思うけど受付の時間あるわよ」


「「「え?」」」


 ミキちゃんがヒラヒラとさせながら、応募用紙を見せつけ、ここと言わんばかりに文字を指しています。

 あー全然見てなかった・・小さい字で当日九時まで時間厳守と書いてありましたね、えーっと今は・・八時半ですか三十分もあれば楽勝ですね。


「シノ手伝ってて間に合いませんでしたじゃ、それこそ来た意味なくなっちゃうけど、それでもいいの?」


「・・・・ちなみにその時間って・・」


「今丁度八時半だから九時までには着ければいいんじゃない? 通常は五分か十分前行動でしょうけど、そうね普通に歩けばあれだけ目立つ建物だもの迷う事もないし、二十分もあれば着けるでしょ」


「何だよ脅かすなよ・・シノ手伝って行ったって楽勝だろ? 意地悪言ってないで手伝え・・よ?」

「ミキちゃんまだ三十分もあるやないの、余裕やろ? あんなん目立つ・・・・」

「そうですよ! ミキちゃんも私を見捨てないで手伝って上げて下さい、見て下さいよこの御寮人のできた方々を、ミキちゃんにも二人の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいですよ全く・・あれ? どうしたんですか? 二人共黙っちゃって?」


 何故にそっと置くし?


「わ、悪いシノ、アタシら先行くわ」


 何故にちょっと離れたし?


「ほんま・・ごめんなシノちゃん」


 え? え? 急に雲行きが怪しくなっちゃいましたけど・・。


「二人共気付いたみたいね」


「どういう事ですか? っは! もしや二人に何やら怪しい魔法を・・」


「違うわよ! あそこ良く見なさい・・」


 あそこ? ミキちゃんの指さす方向にあるのは、我々が向かうべきグラズヘイム宮殿と思われる建物が高らかにあるだけ・・あれ? 何かおかしい・・。

 ただ大通りを真っすぐ進んで行くだけのはずなのに、何であんなに上の方にあるんでしょうか?


「あんたまだ気付かないの? 大通りから直通だけど途中から階段になってるでしょ? 皆が歩いてるのが見えるからわかるでしょ?」


「ほへぇ~本当だ荷物抱えてえっちらほっちら歩いてますね・・ップ、何かアリンコみたいに見えてマヌケですよ・・っえ、ちょっと待って下さい今考えますから・・ん? ん~・・ん? え? あそこですよね?」


「そやな~あそこに見える宮殿向かうんやな~」


「荷物抱えても普通に歩けば二十分位なんですよね?」


「まぁアタシの場合は荷物少ないし、あの位なら十五分もあれば着けるかな? あの様子だと荷物多い奴は大変かもなー・・」


「あはは、そうですね~駅内の昇り階段でさえ大変でしたからね~・・荷物多くてここからだと急いでどの位でしょうね?」


「んー・・まぁ・・急いで? ・・あー・・三十分? 位かな? あはっ、ほらアタシはさ、結構運動得意な方だし体力にはそこそこ自信あるから二十~・・五分もあればいけるかな? みたいな? あはははは・・」


「あはっ! ですよね~・・ねぇ? 何か司ってる物もそんな感じでしたし、こんな事言ったら失礼かもしれませんが、見た目も・・ね? 活発を絵に描いた様な感じですし・・・・背は小さいですけど」


「背は関係ねぇ~だろ! ・・・・あー、うん。そんな訳だから急いだ方がいいと思うし・・じゃあアタシ行くわ!」


「あっ、はい皆さんお気を付けて~・・」


 世の中とは世知辛く出来ている様で、私と共にでは時間に余裕が無いと見るや否や、平気で見捨てる算段をする始末・・悲しいですよね~でもここでそれを嘆いても詮無き事、ここは黙ってお見送りをし、私は私のベストを尽くしましょう・・。


「う~んでも~・・」


 な~んて・・私がそんなに聞き分けの良い子に見えますか?

 何気なく誘われる様な感じで参加した物ですが、一度自分がやるって決めた事ですよ?


「キョウ、いいから行くわよ? 行かないなら私だけでも行くからね?」


 手段がある内に諦める程、お行儀もいい方ではないので・・ここはベストを尽くす為、足掻かせてもらいますよ!


「あっ! 待って~」


 ミキちゃんに呼ばれ私から離れて行くキョウちゃん・・。

 このままではマズイ! 二人がミキちゃんの元へ・・折角の荷物持ち、逃がしてなるものか! 早速足掻かせてもらいましょうか・・。


「あっ待ってくれアタシも! っ? ・・・・なぁ?」

「はい? どうしました?」

「いや・・どうしました? じゃないだろ? 袖がっちり掴まれてるんだけど・・」


 ふふん! 二頭を追う物は一頭をも得ずですよ! この中で最も力がありそうなのはソナエちゃん!

 あなたですよ・・。


「ソナエちゃんは、優しいですね・・」

「はぁ? 何いきなり?」

「いえ、二人が行ってしまう中、残ってくれてますし、荷物まで持って下さるなんて・・」


 つまり、そんなソナエちゃんさえ捕まえておけば、私の勝利は確定何ですよ!


「まぁな、袖振り合うも多生の縁って言うしな・・って、持たねーよ! しかも行けねーよ! 袖ガッチリ掴まれちゃってるから!」

「イヤーー! それで・・何ですねっ! 袖振りまくっちゃって、今にも振り飛ばされそうですよっ!」

「あはははは・・上手い事言うっ! ねっ!」


 だから、いくら強引に振りほどこうとしても、死んでも離しまぁたたたたたたたたっ!? 私が掴んでいる腕を強引に捻じ曲げてっ!!


「あぅっ!! ・・・・痛たた・・酷い・・無理矢理振りほどく事ないのに・・」


 ゆ、指がーー!! 捻じ曲げられた瞬間に掴んでる力が緩み、その隙に思いっ切り袖を振りほどかれちゃいました。

 無理矢理振りほどかれたお陰で・・くぅ~・・やはり、力では勝てませんか・・。


「あ・・いや・・その、ごめん。アタシガサツでさ・・その大丈・・」


 隙・・見せちゃいましたね? チャ~ンス・・。


「すいませんでした~! ソナエちゃん待って! 背の事謝るから今だけ、ね? 今だけ荷物交換して下さい~! それだけで丸く収まるんです!」


 フヒヒ・・つーかまえたー。随分と引き締まったウエストしてらっしゃいますね~? 羨ましいですよ・・。

 力で勝てないなら、泣き落としですよ! しかも先程とは違って、ガッチリ抱きしめさせて頂いてますからね、相当バカな事しない限りは今度は振りほどけませんよ!


「なっ! 泣くなよ・・後味悪くなるだろ? ・・いや待て、良く聞いたら交換って何だよ! お前の要求丸出しただけで収まってねーよ!」

「お願いです~~! 後生ですから~友達じゃないですかー!!」


 っく! 意外と冷静に聞いてましたね、ですが既にあなたは私の術中の中なんですよ!


「バ、バカ野郎! ア、アタシらは確かに友だと言えなくもない、だが荷物を交換してやるほどの仲の面識ではない・・それに・・そうだ! 試練だ!」


 はい? 試練とはなんぞ?


「シノこれはお前の前に立ちはだかった第一の関門! この試練を乗り越えてこそ、真のヴァルキリアになれると言うもの、この試練は一人で乗り越えるべき代物、見事この試練を乗り越えた暁にはアタシらと共に

新しい生活を始めようじゃないか! わかったらこの手を離してくれ!」


 おぉ! 試練なら仕方が・・いやいや、嫌に決まってるじゃないですか! 離しませんよ! 何が何でも! 何が試練ですか? これが試練だと言うのなら尚の事離す訳ないじゃないですか! これが私の生存戦略なんです!


「もしも~し・・ソナエ? 茶番を見てるのも飽きたから、そろそろ私達先行くわよ? シノあんたもバカな事に体力使ってないで急ぎなさいよ、じゃあね」


「え? あ・・ミキちゃん・・うー・・ん~~・・おっ! シノちゃんほんに悪いけど私も行くわぁ、ほならな~」


 う~・・しれっと行っちゃうとか私達の友情は一体どこに・・。


「おい! ちょっと待ってくれアタシも! っく、離せシノ、男には立ち向かわなければならない、逃げちゃならない時ってのが必ずあるんだよ! お前にとって今がその時だろ!」

「しっつれいな! 女です! どこからどう見ても女でしょ? それを言うならそっちの方が、余程男の子っぽい感じじゃないですか! いいから観念して私の荷物持って下さいよ! こうしてる間にも時はどんどん過ぎて行っちゃうんですから~!」

「いい加減に観念しろよー! アタシは推薦してくれたタジカラ様の為にもヴァルキリアになって・・立派に職務全うして目をかけてくれた事、いつか恩返ししたいんだよ・・こんな事でなれませんでした何てなったら、タジカラ様の顔に泥ぬっちまう・・シノお前には悪いが何が何でもアタシはなるんだ! ・・あっコラどこ掴んでるんだ! ずれる・・って言うか見えちゃう・・はーなーせ~!」


 ・・それは私も同じです・・私だって何が何でもヴァルキリアになって、そして・・そして推薦してくれたウワハル様に・・。



[バンッ!]「頼もー! ん? おぉ! お前か、新しく俺の下に就く事になった女神ってのは? ふ~ん・・何だかパッとしないな、新人女神で若いの入って来たって言うから何人かこうして見て回ってるが・・お前一番パッとせんな! 顔も普通背も普通体型も普通服装も目立た感じがせん。

まぁ唯一褒められるのは髪が綺麗な事くらいか、神だけにプフッ! わっはっはっはっはっはっ! まぁ仲良く・・」

「せいっ!」

[ドスッ!]「ゴフッ!? ゲホッゲホッ・・オエェェェエオロオロオロオロ・・おまっ! 初対面の上司つかまえていきなりみぞおち・・っぐぅ」

「そっちこそ、初対面のレディつかまえて、何て失礼な事言ってくれちゃってるんですか! しかも折角のおニューの仕事場ゲロまみれにするとか、上司として非常識だと思いませんか?」

「えぇっ!? いやゲロはお前の・・うぇっぷエレエレエレエレ・・」

「またゲロ吐くとか・・とんだゲロ野郎ですね! ちゃんと掃除しといて下さいよ、全く・・仕事が捗どらなかったらどうしてくれるんですか・・」

「えー・・俺上司・・」



「お~いシノ~? この俺が~お前の仕事ぶり、様子見に来ましたよ~」[バンッ!]


「ちょっと乱暴に戸を開けないで下さいって、何時も言ってるじゃ・・って酒臭っ!」

「・・ヒック・・おっとっと・・わはは、遊びに来ましたよ~ちゃんと仕事しとるか? どうだ? これから俺と飲みに行かないか?」

「はぁ・・遊びに来たんですか? それとも仕事の様子身に来たんですか? 朝っぱらから酔っぱらってるとかいいご身分ですね? ・・勤務中なので謹んでお断りしますよ」

「何だつれない奴だなお前は・・俺はこんなにも目をかけてやってるって言うのに・・お前わかってるのか? こんな頻度で会いに来る一級神・・他にいないって事を・・ムニャムニャ・・」

「ムニャムニャとかまた典型的な・・これだから古臭い神様は・・ほらほらそんな所で寝ちゃ風邪引きますよ? ちょっと待って下さいね、今お水持って来ますから・・」

「わははっ! お前面白い事言うな、神が風邪何か引くわけないだろ・・うぅ~ヒック・・・・・・」


「ほらお水汲んで来て上げましたよ、これでも飲んで・・ウワハル様? 何で急に静かになっちゃったんですか? 何で喉元抑えてるんですか? まさか・・また!」

「オエェェエウェウェオロロロロロ・・」

「ぎゃ~~~!! また私の仕事場がーー!! どんだけゲロ吐きたいんだよ! 吐くなら外で! ここ窓一つしかないんですよ? やっとこの前のゲロの臭い消えた所なのに、どんだけ臭い誤魔化す為にきつめの香り毎日撒いてると思ってるんですか、鼻が大事なのに鼻がバカになる! はぁ・・ほらお水ですよ、落ち着いたら飲んで下さい」

「スマン・・ありがとう・・だが、仕方ないだろ・・こっちは連日の集会で飲みっぱなしなんだ」

「いいですよね? 身分の高い神様は、集会だ会合だ何て称して飲めや歌えの大騒ぎで、絶対何時か私も一級神になって左団扇になってやりますよ」

「わははっ! そうかそうか、そいつは楽しみだ! だが道のりは厳し・・おぷっ・・エロエロエロエロ・・」

「あ~~~~だからここで吐かないで下さい! あっち! 外で、外でお願いします!」



「シノ! 元気でやってるか?」[スゥー・・パン]


「・・・・」

「おいシノ! 久しぶりに会いに来てやったって言うのに無視はないだろ? 無視は・・」

「・・・・・・」

「見事に集中してやがるな、感心感心・・」

「・・・・・・・・」

「シノ~? ・・ふん、どうやら取り込み中の様だな、スマなかったなそれじゃあまた後で来る」


「・・・・」

「本当に仕事に集中しとるのか?」

「っく! あーもうっ! 何なんですか! 今大事な所なんですよ! 今見てる子は、受験シーズンで毎日勉強ばっかりで、疲労やストレスが溜まってしまって、明日当日を前にして安眠出来るかどうか、緊張と不安も相まって中々落ち着かない状態なんです! その受験に受かるかどうかで、その後の人生を左右する大事な局面なんですよ!」

「お、おぉ・・」

「そんな時に、彼女が今頼りにしてくれているのがアロマオイルなんです! 私はそれに応えたい! 確かに運命のレールはいくつにもシナリオが用意されていますが、出来たらいい方選ばせてあげたいじゃないですか! だから私は、よりリラックス効果のあり安眠作用がある物を選ぶ事に協力し、尚且つ祈りを捧げていたのに! これで彼女失敗しちゃったらどうしてくれるんですか?」

「いや・・何かスマンな、お前がそこまで真面目に仕事しとるとは思わなかったんでついな、ほら俺しばらく出張してただろ? だからお前が寂しがってるんじゃないかと思って・・」

「あ? そんな訳ねーですよ、いない間仕事めちゃくちゃはかどりましたし、至って平穏無事でしたよ? 何より! ゲロ臭くなくなりましたし・・」

「あっ・・・・そう・・何か、本当に邪魔して悪かったな・・じゃあ・・そのこれ以上邪魔せん内に去るとするか・・」

「・・・・・・」

「・・はぁ・・折角草津行ったついでに、土産に茶饅頭買って来てやったって言うのに・・」


「・・・・じゅる・・」


「いや~本当に残念だ。この茶饅頭、ちょっとした店で買って来たんだが・・薄めの皮に黒糖、中は粒あんがぎっしりで口に入れた瞬間のあの口の中に広がる甘味は中々に・・あーいや、スマンスマン今話す事じゃなかったな、何せ今後を担う重大な局面、ここは黙ってハトの所にでも・・」


「ちょっと待った! ウワハル様・・私がそんな誘惑で動くとでも? ご冗談を・・ふん、お土産で釣ろうだなんてとんだ見下げ果てた神様ですよ! それでも一級神なんですか! ちょっとそこに直りなさい!」


「えぇ? そこって座布団? 直るって、いや説教なら後で・・」


「ダメです! 今正さずして何時正すんですか! 全く・・いいですか? ちょっと長い説教になりそうなんで喉が渇いては一大事! 今すぐにでも、お茶をお出しするので、お座りになって待ってて下さい!」


「あっ・・はい・・」


「お待たせしました! それでは早速お饅・・いえ説教を始めましょうか!」

「な~シノ? 誘った俺が言うのもなんだが、本当に良かったのか? 一人の人間に肩入れするって言う事は、それなりに人間界にとって今後影響力のある大事な存在だったんじゃないのか?」

「あーひぃんでしゅよ・・んっぐ、私が頑張った所で高々数%受かる確率が上がるだけなんですから、本来の役職の方と本人自身が、ハ~ム・・ひゃんばって・・ズズズ、ふはー・・くれますよ」

「おい汚いぞ食いながら喋るな、ハム・・くちゃくちゃ・・ズズズはぁ・・本来のって受験のか? シノ、お茶おかわり」

「・・はいどうぞ、ウワハル様の方こそ、そのくちゃくちゃ何とかなんないんですか?」

「おお、すまん・・ズズ・・くちゃくちゃ? 何の事だ? ・・本来の受験の神か、わはは、それもそうだな・・この辺りで一番の学問の神が何とか・・ってそれ俺じゃねーか!」

「あはっ、そうでしたね~、帰ってきた早々で大変ですが明日の朝も早いので頑張って下さいね、ちなみに言っておくとあの子この受験失敗すると、今のレールに再び乗せて上げるのに10年以上かかっちゃうので、強制的に変えるんだとしたらシナリオ書き直してもらいに、キッショウ様とアンヤ様に頼まないといけないんじゃないんですかね? あれあれ~そうなるとたった一人のシナリオだけ修正するだけに留まりませんね~、っと言う事は他の神様達にも迷惑かかっちゃったりするんじゃないんですかね? あはっ! 大変ですね~ウワハル様」

「ぐっ! 胃が、胃が痛くなってきた・・お、お前ちゃっかり饅頭食っといてそれはないだろ? い、今すぐにでもそのー何だ? お前の得意なお香の匂い嗅がせろ、それで何とか・・痛たたた・・シノ悪いが胃薬それと水をくれないか?」

「はぁ? 今何て言いました? お香? 全っ然違いますけど! アロマですぅ私が担当してるのはアロマなんです! お香と一緒にしないで下さい!」

「す、すまんわかった悪かった! だから今すぐ、あ痛たたたたたた・・うぷっ・・シ、シノ・・」

「いいえ、ウワハル様ここは引く訳にはいきません! 上司が、部下が何やってるのか把握してないとか、あり得ないじゃないですか! ですから今日と言う今日はキッチリご理解して頂いた上でですね」

「・・・・・・」

「えっとウワハル様? 何ですそのポーズ? 歌舞伎か何かのあいやまたれよのポーズですか? でしたらここでは場違いですよ? 今すぐにでもご自宅に戻られてですね・・」

「・・・・シ・・」

「あはは、何ですかね~? ウワハル様面白~い顔、真っ青なのにタコみたいな顔になってる~! 今度の飲み会か何かでお披露目でもしたらきっとウケますよ~・・あはっちょっと待ってて下さいね、今タコ踊りに最適な桶お持ちしますから、本当すぐお持ちしますので動かないでお待ち下さいね?」

「・・も・・げ・・」


「はいはい、お持ちしましたよ~! 桶~桶ですよ桶~、これさえあればバッチリ! オーケーなんちゃって、あはっ! 私もウワハル様のオヤジギャグ移っちゃったかな~? あはは!」


「オロロロロロロロロロロロ」


「あ、あぁああ! た、畳はダメーーーーーー!! そっちは勘弁して下さい~~~!!」


「ぐふっ! ・・はぁはぁ・・シ、シノ・・お、俺はもう・・ここまでの様だ・・」


「ウワハル様!」


「ふぐっ! ・・くぅ・・シノ最後に最後に一つだけ頼みを聞いてくれ・・はぁはぁ」


「な、何ですか? 私が出来る事なら何でも言って下さい!」


「え? 何でもだと? だったらお前の尻をだな・・ふぐっ! 違うっ! はぁはぁ・・いいか今すぐに・・さっきの人間に・・うっ! っく・・お前の力を、がはっ!」


「ウワハル様ーー!!」


「シノーーーー!!」


「ウーワーハールー様ーー!!」


「シーノーーーー!!」


「ウーーワーーハーールーー様ーーー!! ヒョ~~~~シャオ!!」

[ドゴッ!!]「シッゲル!? んっぐはぁあ!!」

「とっととおっちんで下さいよ、その分席一席開くんで、それとゲロまみれで、とてもじゃないですけど仕事出来ませんよ・・」



 あの時の飛び蹴りは、自分でも驚くくらい綺麗に決まったんですよねー・・って! ろっくな思い出がねーですよ! やっぱり世の中信じられるのは、お金何ですよお金!

 と言う訳で私の出世の為にもこの手は離せ・・・・あれ?


「わはははははははは、悪いなシノ! お前が何か物思いにふけっている間に、抜け出させてもらったぜ! 悪く思うなよ、あばよ!」


 そう言い残してダッシュで二人の元へ駆けるソナエちゃん・・何か今のセリフ悪役っぽかったですよ・・小物の。

 ・・・・・・し、しまったーーーー!! そんな事思ってる場合じゃないです! 思わずいい思い出ないか探って回想してる間に逃げられたーーー!!

 完全に予想外ですよ、やっちゃいましたよ、万策尽きちゃいましたよ~・・。


「シノちゃん」


 あれ? この声は・・。


「キョウちゃん? ・・戻って来てくれたんですね、やっぱり持つべき者は優しい友達!」


 やりました! やりましたよ皆さん! 私は真の友情を今ゲットしたみたいです! 勝てるこれで私は後十年は戦える!


「ファイトや! 私応援してるから頑張ってな!」

「え? あ、はい・・あえ? いえそうではなく・・」

「私わかっちゃったんよ、友情・・愛あればこそ時には厳しくいかなあかん事もある・・ミキちゃんの横顔見てたらな気持ち伝わって来ててんな、何か体の内側から熱ぅなってこの気持ちどうしてもシノちゃんに聞いて欲しくってな、戻って来てしまったんよ~」

「あーそれはどうもです。でしたら戻って来たついでに・・」

「せやからな! 私本当はシノちゃん可哀想やなぁ、戻って手伝ったろ! 思ってたんやけど、見守る事にしたんよぉ」


 お~そうなんですかー・・いやいやいやいや、そこは戻って来たなら手伝いましょうよ。


「そんな訳で、ほなな~」


 えーーー! 本当に言うだけ言って行っちゃっいましたよ!

 これじゃぁただの追い打ちにしかなってませんよーーー! カムバックキョウちゃん!!

 ・・・・あ~~~~もぅ! 嘆いていても仕方がない! こうなったら開き直って行ってやりますよ!  行けばいいんでしょ? 試練でも何でもドンと来いですよ全く!




「あっはっはっはっはっはっはっはっ!! どうだい? ん~? ここかい? ここがいいのかい? この角度がいいのかい? 我が相棒ミョルニルよ、気持ちいいだろ?」[コンコン・・コンコンコンコンコンコン]

「いや~トール様助かりましたよ、昨夜突風も何もなかったはずなのに、屋根壊れちゃうんだもの。朝見てビックリ! 屋根の修理何て何年振り・・いや初めての事ですな! 偶然通りかかっただけなのに、快く修理を手伝って下さりありがとうございます」

「お役に立てたなら俺も相棒も何よりだよ、あっはっはっはっはっはっはっ!」

「所でトール様? 何か用があってお越しになっていたのではないのですかな?」

「んん? おぉ! そうだった余りにも釘を打つのが楽しくて忘れていたよ、ヴァルキリア候補がどんな者達なのか見に来たんだ」

「ぁあ! そうだったんですか、トール様も楽しみに?」

「そうさ、その話を旅先で耳にしてね、興味が湧いたんで戻って来たんだ」

「わっはっは! それはそれは」

「実はね、宮殿についさっき帰って来たばかりなんだ。どうせなら今日来る予定の者を見てやろうと思っていたんだが、ジッとしていられなくてね、どんな者が来るのか見て見たくて、駅前で出迎えようと思ってたんだが、ついつい脱線してしまったよ」

「そうだったのですか、それなら早く行かれた方がいい、既に到着して宮殿へ向かっているはずですからな」

「何? もうそんな時間なのかい? これは参った。だがまだ宮殿へ向かっている途中だと言うなら、何人か見る事は出来るだろう、悪いけどここで失敬するよ」

「あぁいえいえ、お引止めしてしまい申し訳ありませんでした。本当に助かりましたよ」

「な~に大した事じゃないさ、また何かあったら遠慮なく言ってくれよ、ではっ!」




「ただいまー」

「おぅお帰り、シノに良く捕まらなかったな」

「捕まる? おかしな事言うソナエちゃんやな? 私が行った時にはシノちゃん何か元気なくうなだれててん、せやから元気付けに一言バシッっと言って来たんよ」


(どんな事をバシッと言って来たのは知らないけど、そっかうなだれてたのか・・アタシが逃げたせい・・だよな? やっぱり・・)


「お帰りキョウ・・あんた本当にただ言って来るだけの為に行ったのね・・」

「ん? 何かおかしい所でもあった?」


「いや、おかしいでしょ」「いや、おかしいだろ」


「まぁ見捨てたアタシらの言う事じゃないけどな」

「ふっふっふ~それな、本当に見捨てたんかずっと疑問に思ってたんよ」

「ん? どう言う事だ?」

「あんなミキちゃん本当は全員で間に合わずにアウトになってまうより、一人でも早く到着して事情説明して、遅れても間に合う様に説得する気でいたんよ」

「ち、違っ! ・・ただちょっとこんなギリギリのスケジュール組んだ運営側に問題があるから、文句言ってやろうと思ってただけで・・」

「おお! 成る程! そうだったのか! ・・・・ちょっと待て、じゃあ本当に見捨てちゃったのアタシだけかよ・・ヤバイ自己嫌悪が・・」

「違うでしょ? 私が言い出さなきゃ二人共手伝ってたんだし、そのまま手伝ってても私が文句言ってる間にあんた達が間に合えばいいけど、そうじゃなければ三人共共倒れなんだし、そうなれば見捨てたのは私一人になってたし、仮に間に合っても同じでしょ?」

「確かに・・いやでも」

「ソナエちゃん、過ぎた事は悔やんでも仕方ない、なら今大事なんは今どうするか? 違う?」

「・・はぁそうだな、アタシらしくないな、だったら三人いるんだ。出来るだけギリギリに受付に行って、そんでついでに時間稼ぎに文句でも言うか!」

「そうね、それがベストでしょうね・・・・キョウ? どうしたの? 立ち止まって・・」


「あっ、あんな、あそこにシノちゃんおるやんな?」

「ん? あぁヨタヨタしながら歩いて・・」

「ちょっと待って・・隣のあいつ誰なのよ?」

「あーそれな、何か上半身裸の腰に布しか巻いてない、ムッキムキの人がシノちゃんに何か話かけてる見たいなんやけど、何か・・」


(((怪しい・・)))




 ・・・・・・。


「ん~どうだい? ほ~らここ何かいいだろ~? それともこっちがいいかな?」


 えっとどうだい? とは何でしょう? 急に笑顔で走り寄って来たと思ったら 変なポーズとり始めて感想聞いて来るこの方は一体・・。


「お気に召さなかったかな? なら後ろも見てくれないか? ほ~ら凄いだろ?」


 後ろ? え? 何か凄い物が? 至って普通なのですが? 別に何か凄い龍とか虎とかないですし・・この方何を見せたいのでしょうか?


「ふむ、上腕二頭筋でもなく、三角筋も後背筋も違うか・・やはりここは大殿筋を見せた方がいいかな? いやここはやはり・・アブドミナルサイ!」

「ほわぁ~凄いですね~」


 お見事なまでの六つに割れたお腹の筋肉、これが噂のシックスパックって奴なんですか? こっちの男神様達は皆こんな感じの筋肉粒々何でしょうか?

 私達の所はそれなりに何人かいらっしゃいますが、ここまでの筋肉の方はいませんね・・それどころか寧ろ別の意味でお見事なお腹してらっしゃる方の方が目立つと言うか・・。

 そう言えば・・・・ウワハル様お酒ばっか飲んでるせいか、見事なまでのビールッ腹だってご自分で笑ってましたね・・この方見習ってもう少し鍛えた方がよろしいんのでは?


「ほぅ・・そんなに食い入る様に見て、君はどうやら腹筋がお気に入りの様だね? 今度はもう少し下を見てもらっていいかな? 今から君に友好の証として、俺のとっておきの相棒を見せて上げるよ」


 相棒? 他に誰もいらっしゃらない様なのですが? 下っておへそですかね?


「そぅ、いい子だ。だけどもう少しだけ下だよ、俺の自慢の相棒なんだ。ちょっとだけ待ってくれ、彼は少し恥ずかしがり屋なんだ今出して上げるからね」


 出すって何を? ちょっと待って下さい! どこに手を入れてるんですか! 何かモゾモゾし始めちゃいましたよ、もしかして薄々気付いてはいたんですが、私変態さんに捕まっちゃのでは?


「よ~し、それじゃあ少しづつ、まずは柄の先っちょの方からゆっくり行くよ」


 きゃ~~~~~!! この人変態です! 皆さん事案が発生しちゃいましたよ! どうしましょう私怖いです~・・・・チラッ。

 う、うわ~~~~~~~~・・。



「ね、ねぇ? あれって・・ねぇ? 遠くからだし若干背中向きで良く見えないけど・・ねぇ? キョウ・・」

「そ、そやね、何か下半身をゴソゴソしてる様に見える・・ねぇ? ソナエちゃん・・」

「ん? おぉそうだな、見事な筋肉だな! だけどおしぃ! あれでもう少しおじさん顔なら・・」


「えっ!? そっち?」「えっ!? そっちじゃない!」


「ってソナエの趣味に驚いている場合じゃなかったわ! あれ完全にヤバイ人じゃない! 助けに行かないと! 荷物置いて走るわよ!」

「ソナエちゃんの趣味何てどうでもいい・・助けに行かな!」

「あっ! おい! 二人共・・どうでもいいって酷いな・・って違う違う落ち込んでる場合か! 確かにあれはおかしい、例えいい線言ってても変態は変態だ! 助けに行かないと・・待ってろよシノ今行く!」


「ほ~らほらほらどうだい? 黒くてテカテカしてて、それでいて太くて大きいだろ? 自慢の相棒なんだ。そうだ! 何だったらお近づきの印だ良かったら触ってみるかい?」


 ほわ~確かに立派な金槌、いい仕事してますね~。

 え? これ触っても平気な奴何でしょうか? 何かさっきから妙に一定間隔にまるで携帯電話の様に揺れているんですが・・。


「あっでも注意してくれよ、彼は恥ずかしがり屋な上に気難しいんだ。だからそっと優しく握って上げてくれ」


 握る・・ですか? そっと、優しく・・。


「そうそっとだよ、ゆっくりだゆっくりでいい・・・・あぁ! そうだ言い忘れてたが、握ると少しピリピリするかもだけど驚かないでほしい」


 ビックリした! 急に大きな声出されたら驚きますよ! 脅かさないで下さいよ全く・・。



「ちょっと信じられない・・あの男よりにもよって何かを握らせようとしてるんだけど・・シノもシノで何で逃げないのよ!」

「きっと怖なって動けないんよ、私の大事なシノちゃんに何晒してくれてんねん!」

「ダメだここからじゃ全力で走ったって、アタシでも間に合わないぞ・・」

「そやね・・けどこの距離なら脅し程度になら私の扇子が届く! はぁああ! 扇刃乱気!!」[シュシュシュシュシュシュシュシュ!]


 握る・・いややっぱ何か怖いですよ、ピリっとくるんですよね? しかも翌々考えてみたら、これどこから出したんだって話ですよね?

 流石に握るのはやっぱり・・それよりもどのタイミングで逃げようか考えないと・・。


「ん? どうしたんだい? 遠慮する事は・・っ!? 危ない!」[パシュパシュパシュパシュッ!]


 危ないって今更ですか? 最初からずっと危ない人でしたけど? 急に背を向けてどうしちゃっ・・っ!?

 え? 何? 今の? もの凄い勢いで沢山の何かが飛んできましたけど・・。

 あーこの人、今のから私を庇ってくれたんですね、意外といい人なのかも?

 って大丈夫何でしょうか? いくつか当たった様なのですが・・。


「ふん・・この程度・・だが、いいエーテルの籠った・・これは何だい?」


 あっ何か全然平気そうですね、全くの無傷。

 エーテル? 神通力の事でしょうか? 確かに感じましたけど・・。


「それ扇子ですね・・と言う事は・・」


 落ちているいくつかの扇子に見覚えがありますよ、これは間違いなくキョウちゃんの。


(ほうほう、これが扇子か、初めて見たが素材は竹と紙かな? 開いた紙の部分にまだほのかにエーテルの温かい感触が残ってるね、余程扇子が好きなのかな? 中々尋常じゃないエーテルの籠り方してるじゃないか、愛を感じるね! ・・だがそれ故に残念だ・・)


「ナイス! キョウ・・間に合った! クリエイト・・素材桂竹・・古刀型・・電光石火!」


(これから迷いを感じるね、武器として投げつける事にためらいが生じたのか・・お陰でエーテルが散ってしまっている。これでは遠くから投げた意味がない・・距離は・・)


「むっ!?」


 金槌さんの背中越しにソナエちゃんの声が・・。


「駆けつけダッシュからのとっときの一撃くらいな・・衝牙通!」[バスンッッ!]


 バスッ! と言う音と共に金槌さんの背中から衝撃が後ろの私にも伝わって・・うわぁあ!

 くぅ~・・あたた尻もちをついちゃいましたよ、少しは加減をですね・・。


「いい・・いいね、これもいいよ! いい一撃だ・・だが俺の筋肉には届かない・・フン!」[メキメキ・・バシャ!]


(走り込みからの鋭い突きか、身長140そこそこ・・体格的に小ぶりなこの子にはベストな選択だろね、でもやはりこっちも残念だ・・この武器は一体何だ? 素材は竹か? 何故鉱物で出来た物を使わない?  突きに特化し、先端に集中してエーテルを籠めたのだろうが、折角の一撃もこれでは殺傷力半減どころではないだろう・・。

 確か今日来るのは倭国の神だと言っていたね・・日本と言う国は皆竹で戦争していたのか? 日本と言えば刀だと思っていたんだが、彼女は司ってはいないのだろうか? 是非見て見たいよね)


「なっ! 嘘だろ? 胸の筋肉だけで、アタシの竹刀が粉々に粉砕されるとか・・お寺の銅の鐘程度なら軽く真っ二つに出来るのに・・全然無傷とか・・」


(それにしても一人捕まえたはいいが、どうやって力試しにもって行こうか迷っていた所なんだが、こうも簡単に移行出来るなんてね、俺はツイている様だね、相棒! 久しぶりに君を思い切り振るってみたいものだ)


「わっはっは! いいねいいね君達いいよ、俺も相棒も久しぶりに興奮して来たよ、お次は誰だい? もっと凄いの見せてくれないか?」


「ソナエ後ろに下がって! シノあんたもいつまでもそんな所座ってないで逃げなさい!」

「おぅ!」


 いや、座りたくて座ってた訳じゃ・・って逃げれるかい! 皆来ちゃったら逃げれ・・いやちょっと待って下さい、これってチャンスなのでは? 逃げていいと言われましたよね? つまり先に行けって事ですよね?

 ・・・・あはっ、そう言う事なら遠慮なく行かせてもらわないと悪いですよね? しょうがないですね~、そこまで言われては行かざるを得ない・・ですよ。


「あぁもう一人いるんだね、俺は今日ツイてるかもしれないな・・さぁ君はどんなモノを見せてくれるんだい?」


(・・さて、どの子が凄い子なのか見せてもらおうじゃないか・・)


 金槌さんはミキちゃんに集中していてこちらが見えていない様子、今の内に二人の後ろに回り込んじゃいましょう・・。


「お生憎様もう見せてるわよ、下を見なさい」


(下? 何もないが? おや? 俺の影が段々大きくなってるね)


「ふむっとすると・・っむ!? こ、これは・・」


「あぁ、ごめんなさい間違えたわ上だったわねっ!」


 丁度上を向いた瞬間に金槌さんの体に、スポッ! とバカでかいビーズがハマり、ミキちゃんが掌を握ると腕周りでハマっていたそれが、キリキリと締め上げ始めました。

 今がチャンスかな? お取込み中すいませんね~皆さん、私はその横をスルっと抜けさせてもらいますよ。


「シ、シノちゃん大丈夫? はぁはぁ・・ふ、二人共早いわ~」

「はい、お陰様で助かりました」

「ギリギリやったもんな、もう少しでけったいな物、はぁはぁ・・握らされる所 ブハァ・・ダメや疲れてもうた・・」


 キョウちゃんが息を切らしながら、ようやくご到着の様子、皆さん一度は見捨てた私何かの為に、全力で助けに来て下さりありがとうございます。

 シノはこのご恩決して忘れませんよ・・深々とお辞儀だけして、その場を速やかに後にする事にしましょう、邪魔しちゃ悪いですからね。


「やったなミキ、ちょっと惜しいけど、この変態はこのまま宮殿まで連れてっちゃおうぜ」


 どうやら決着も着いた様ですね、では荷物も多いのでお先に行かせて・・ん? あれ? 今やったなって言いました?


「えぇそうね、それなら遅れても証拠に証人両方ゲットで言い訳が立つでしょ、変態さん悪いけどこのまま一緒に来てもらうわよ」


「・・・・・・」


 何か嫌な予感がしますけど・・。


「言っておくけどそれ、素材はプラスチックだけど神通力で出来てるお陰で、そんじょそこらの手錠何かより頑じょ・・? あんた何笑ってるの?」

「ふふふふふふふ・・わっはっはっはっはっはっ!! いい! いいね君達! 面白いよ・・」


(強大なプラスチック製のおもちゃのビーズか、これまたいいエーテルの籠り方してるね、締め上げられる度に肌で感じるよ、真剣に仕事に取り組んでいた様だクリエイトの完成度が高い、それに彼女が自分で言った様にエーテルの密度が濃いね 本来の素材以上のモノをしっかり引き出してるじゃないか、生半可な者ならこれで終りだろうね・・でも)


「でもだからこそ残念だ・・いや本当に・・」[ビキビキビキビキ・・]


(あの子も、そっちの子も、そしてこの子も・・元の素材がもっといい物だったら・・いい線いってたんだけどな、なぁ相棒)


 ・・・・っは! 拘束された状態から余裕の笑みを浮かべている姿が、余りにも異質過ぎてついつい見入ってしまいましたよ、何かある前に去ってしまった方が無難・・でも。


「何だこいつ? 元から行動がおかしいけど、拘束されて余計におかしくなったか?」


 荷物多いせいで牛歩なんですよね・・早く離れたいのにっ! ・・おもっ!


「ソナエ待って、そいつに近寄らないで!」

「へ?」

「いい勘してるじゃないかそっちのお嬢さん・・運が良かったね君・・・・フン!」[ベキョッ!]


「ゲッ!?」「嘘でしょ?」「うわぁ~なんちゅう怪力なん?」


 何か後ろから壊れる様な音が・・いえいえ振り返らず行くんです。


「この程度抜けるのに力何かいらないさ・・君達の実力は大体わかったよ、いい資質をもった子ばかりじゃないか、合格だよ! 興奮させてもらった!」


(これならいいエインヘリャルを育ててくれそうだ・・楽しみだなぁ)


「だけど・・まだ一人確認出来ていない子がいるよね」


「はぁ? 何言って・・」

「危ない! 二人共避けて!」


「うわっ!」「ふっ!」


「なんとかかわせたな・・いきなりダッシュで突進して来るとか・・」

「えぇなんとか・・確認してない一人ってどう言う・・っは! いけない! シノ逃げなさい!」


「わっはっはっ! もう遅いよ! お嬢さんそんな足取りで、一人だけコソコソどこへ行こうって言うんだい?」


 あーはいはい今逃げてる最中ですよー・・てっきり一人だけ逃げるな何て言われるかと思っていたのに、まさかの催促とは・・う~ん・・このまま行ってもいいんですかね? そこまで行けって言われると逆に疑問に思えてきましたね・・。

 そう思うと、ただでさえ重たい荷物が一層重く感じますよ、気のせいなんですけどね、・・でも足が重たく感じるのは本当ですよね。

 昨日会ったばかりとは言え、友達になってくれて・・。

 その友達が体張って守ってくれてるのに私だけ逃げるなんて・・いえいえもとはと言えば手伝ってくれなかった皆が悪いんです!


[ブオンッ!]「むぐっ!? 風? 君は・・」


「シノちゃんにちょっかい出そうなんて百年早い! 私が相手したるさかい! あんじょうかかって来いや!」[ブワオゥン!]


(これは巨大な扇子かい? へ~折り畳んで棒状にも出来るのか、しかも今回は鉄で出来ているね、相変わらずの尋常じゃないエーテルの籠り方だが一層増してる・・もしかして後ろの子を守ろうとして? ・・これは面白い)


 それにですよ、元をただせば運営側に問題がある訳で、私達何にも悪くありませんし。


[ガシ・・]「ぐ・・うぅ・・掴まれてもうた・・あかん競り合いじゃ力負けしてまう・・う・・っくぅ・・」


(ふむ、素材まぁまぁ、エーテル良し完成度はギリギリ及第点かな、鉄で出来た扇子は普段余り見慣れていないのかな? 触れたりする機会も少ないと見た。もっと身近に感じ鍛錬すれば愛情は籠っているんだ。

 きっとすぐにいい出来になるだろう・・だがやはり惜しい、扇子は文句なしと言ってもいい、問題は本人だな、全力でこれか・・片手で十分相棒を出すまでもない・・こっちは落第もいい所だろうね)


「うぅ~~~~~! ・・ち、力で負けてまうなら・・」


(ん? どうするんだい? この状態から君に反撃するすべはないと思うけどな)


「ク、クリエイト解除! そんでもって高速クリエイト・・オリジナル鉄扇・・鉄美扇! せいっ!」[ファンッ!!]


「おっと・・」


(かわされてもうた! これでもダメなんか・・)


(ほぅ、これはいい物を見れた! あの速さで一端解除した物をリクリエイトするなんて)


「・・せやけどまだまだここからや! ウズメ様直伝の護身舞踊・・たんと召し上がれ! 舞踊、扇切乱舞 梅桜!」


「さっきは見事な物を見せてもらった! お陰で最初の一発は驚いてしまってつい避けてしまったが、いいよ君のその舞、全部この体で受け止めて上げよう」


 何か後ろの方で白熱してるみたいで、バシバシバシバシ体を叩く様な音が聞こえるんですが・・その度に金槌さんが、あっ、とかんふっ、とか何か小さく声を漏らしてるのが何とも言えません・・やはりここは行っちゃいましょう。


「・・はぁはぁ、な、なんちゅうけったいな体してるんや・・赤く跡がついてはるのに全然効いてる感じがせえへん」


「いや驚いたよ、中々の攻撃だった俺の体も喜んでいるね、赤あざ何て久しぶりだ・・この気持ち素直に表現したい・・抱きしめてもいいよね?」


「へ? 今何て?」


 はぁ? 今何て? 今とんでもないセリフが出てきた様な・・。


「抱きしめるんだよ君を・・嬉しくてね気持ちが抑えられないんだ。・・大丈夫手加減出来ると思うから」

「な、何言うて・・」


(あ、あかん・・無理に無理したせいで、か、体が言う事聞いてくれへん・・足がヘタってもつれてまう・・)


 何かやっぱ後ろが気になりますよ、あんなのに抱きしめられたら一溜りも無いじゃないですか、やはりここは私の出番の様ですね。


「後退りなんて、なんて意地らしいんだ! 遠慮はいらないよ、思い切り抱きしめ合おうじゃないか・・」


(・・どうやらこの子の限界はここまでみたいだね、まぁ無理もないか一旦造り出した物を無理やり解除、その後同程度の完成度の物を高速で造り出す何てそれだけでも精神的に負担が生じるんだ。

 更にエーテルのあの練り込み、そして舞による連続攻撃での体の酷使、その上一撃一撃にまでエーテルを消費何てやってのければ当然と言えば当然か・・少し萎えてしまったが、君に対する敬意と興奮するこの気持ち事態は、抑えられそうにないよ!)


 ここで友達を見捨てたとなっては女が廃ります! ヒーローは遅れて来るもんだと言う言葉があるんですよ!

 よいしょ・・っと、荷物を置いて・・ふぅ~~~・・。


「さぁ今度は私が相手に・・」


「ちょっとそこの変態!」「そんな事アタシらが許す訳ないだろ?」


 え?


「クリエイトガラスビーズ・・クレイジースプラッシュ!」


 空の上の方から何かキラキラした物が沢山・・。[キラキラキラキラ・・]


「えっ!? あわわ、ソナエちゃん?」


 キョウちゃんを抱き抱えて素早く逃げるソナエちゃん・・あれ~? これって・・この位置・・。


「むっ!? おぉ! わっはっはっはっはっはっ! おいおいせっかちさんだね、順番を守ってくれないかな? モテる男はつらいよ」[パリン! パリン! パリッ! パリン! パリッ!]


 えっ!? ちょっと、わ! あっ! うそっ! あっぶな! やっぱりですか! ちょっとこっちにいる事計算して放ってくれませんかね!

 範囲広すぎじゃありませんか? 危く私に当たる所でしたよ・・傷物になったらどうしてくれるんですか! もうちょっと離れた所に避難しますよ、全く・・私の出番なくなっちゃったし・・。

 まぁ出たから何だって話ですけどね。


「大丈夫かキョウ? 大分無茶したなお前」

「・・ソナエちゃんこれって・・お姫様抱っこやんな?」

「ん? あぁ残念だったなアタシで、素敵な半裸マッチョに抱きしめられる方が良かったか?」

「うんにゃ、私はソナエちゃんでええよ」

「・・・・何かそれはそれで、も、もうこの辺でいいだろ、キョウお前のお陰で時間かけて竹刀作れたからな、じゃあ行って来る!」


「あっ、もうちょっと・・いけずやな」


「今度はガラス製か・・」


「えぇ、お気に召したかしら? あんたの為にわざわざピンクのハート型にしてあげたわこの変態色欲魔!」


(物凄い反復横跳びみたいな動きで笑いながら全弾回避とか・・この変態一体何者なの?)


 ぷふっ真顔で何旨い事言った感出してるんですかね。


「ああ気に入ったよ、もしかして君、素材も形も大きさも自由自在なのかい?」


(だが気になるね、随分と即席で作った様じゃないか、雨の様に降らせて来た数は大したものだが、出来が今一だ。最初に見せたプラスチックの奴とは違い、愛を感じないじゃないか・・あれだけ時間があったのにこれが本気なら、ガッカリを通り越して拍子抜けだ・・だけど、フェイントを使って来る様なタイプの子だ。まだ何かあると見て間違いないね)


「えぇまあね、それが売りでもあるのよ、所で私に見とれてていいのかしら?」


「おっとそうだねもう一人の子は・・」


(さっきから妙に隠してる右手の方が気になるけど・・確かに彼女の言う通りもう一人の子はどこだい? まさか避難させて終りなんて事はないよね?)


「アタシにだって飛び技くらいあるんだぜ・・!」


(おっとそこか・・飛び技か楽しみだなぁ)


「壱牙通・・銃実!」[ドッ! ゴゥー!!]


「あはっ、これは避けておこうかな・・っお?」[ジャリ]


(足元に砕けたガラス片・・これはこれは、成る程その為のガラスか・・なら)


「上に避けるまで・・とうっ!」


(突きの一撃で衝撃を弾丸の様に飛ばすか・・面白い、でも簡単に避けられたのでは意味がない、さっきのガラスと違って範囲が狭すぎるんじゃないかい? もう少しひねりがほしいね)


 地面に散らばるガラスの破片やりますねこれなら・・あっ・・良く見たら私のリュックにいくつか刺さってる・・。

 逃がさない為に、クリエイト意図的に解除しなかったんでしょうが、いや解除した所で小さな穴に・・私のリュックが傷物に・・中無事なんでしょうか?


「甘いなお前・・あれで終りな訳ないだろ?」


(なっ!? これは驚いた自負する訳ではないけど、この高さまで届くなんて中々いい足してるじゃないか・・)


「上に跳んだのが運のつきだったな、逃げ道はないぜ? ・・覚悟はいいよな!!」


(先端に集中したエーテルが熱を帯びて発火している・・これは流石にガードしないとマズいかな?)


「素手でガードした程度で防げるかよ! くらいな! 衝牙通・・参牙丹散!!」[チッチチ・・ズガガガッ!!]


 おお! ここまで響くいい音。

 空中で逃げ場を失い腕をクロスにして防いだ金槌さんは、攻撃の衝撃で後ろへ吹き飛ばされ、流石に着地は少々よろめいてしまった様子、着地と同時にパキパキと音を立てて足元のガラスが割れ・・えげつない・・が正直な感想ですね。

 何かこっちまで足の裏が痛く感じちゃいますよ・・。


「ソナエそのまま降りて来なさい!」


(ソナエの着地周辺だけ・・部分解除)


「おぅ・・・・よっと・・サンキュミキ、作戦通り上手くいったな」

「そうね・・でも油断しちゃダメみたいよ」

「え? 流石にあれじゃ懲りただろ?」


「ふ・・ふふふふふ・・・・わーっはっはっはっはっはっはっ!! いいねこれ! この痛み! たまらないよ!」


(作戦か、成る程いい連携だった。足元の割れたガラスのお陰で跳ぶと言う選択に絞らされ、まんまと逃げ場のない空へと誘導されちゃった訳か・・)


「っげ!? 嘘だろ? 笑ってるぞあいつ、気持ちワルッ!」


「今度の竹刀は壊れなかったね、時間をかけて丁寧に作り上げた・・違うかい? それに見てくれよ、これ君の攻撃を防いだ前腕のこの部分、青あざ所か軽く火傷になってるじゃないか、まだ少し焦げ臭いよ、大したものだよ君!」


(本当に大したものだ・・一度目の攻撃であれで俺にダメージを与えるのが無理だと判断、走り込みにジャンプをプラスする事で勢いをつけ、更に同じ箇所への連続三連突き・・ん? 

 あれは・・俺を拘束したのと同じタイプの大きなビーズがガラスの散らばる地面に潰れて横たわっているね・・あの場所は彼女が飛んで来た位置の足元・・成る程そう言う事か、あれを使い捨てのバネに空にいる俺に追いついたのか、あっちの子の汎用性は目を見張るものがあるね・・)


「ん? あんたわかってるじゃないか! そうなんだよ結構丹念に作ったんだぜ? 技のキレも良かっただろ? タジカラ様に物は作るだけじゃなく使用してみる事で始めてそれがどんな物なのか理解出来るもんだ。だから鍛錬し精進せよって、だからアタシは毎日・・」


「抱きしめたいね・・」


「「は?」」「また?」


 また何か爆弾発言してますよ、金槌さんは発言する度に危なさが目立っていきますね・・っあ、皆さん忘れないで下さいねシノはここにいますよ。

 と言うか今更ですが・・バトルものだったんですか? 何か普通に技名叫んでましたけど、私も何か言った方がいいんですかね? 善処しておきましょう。


「君もそしてそっちの君達も良く頑張って来たんだね、素晴らしいよ! 今日は収穫日和みたいだ・・噂を聞いて帰って来た甲斐があったってものだ」


 ハイハイハ~イ! ここにも素晴らしい頑張り屋さんがいますよー・・皆がいる向こうに回り込みましょう。


「さぁ誰から抱擁して上げ様か・・君かい? それとも君がいいかい?」


「ちょっと冗談じゃない・・あいつ化物かよ・・正直こっちは竹刀が消えない様にするので精一杯だって言うのに・・」


(・・ソナエもキョウもこれ以上は無理そうね・・あれ? そう言えばシノはどこに? 荷物置きっぱなしだし、さっきまで向こうに・・まぁいいわ今は目の前の現状に集中しないと・・でもどうする? 隙さえ作ってくれれば何とか・・)


[パリンッ!]「あたっ!? 痛たたたた・・くぅ~膝小僧擦り剥いちゃいました・・あっ・・あーーー!! 私の大事なブルガリアンローズちゃんがーーー!!」


 お気に入りなのに・・こんな事に・・まだ使ってすらいなかったのに・・せ、せめて今一時だけでも香りを! クンクン・・あクンクン・・いい香り~フヒヒ。


 ・・・・・・。


「シノちゃん・・」「お前何やってるんだ?」


(何やってるのあの子・・全く! 逃げる訳でもなく、こっちに加勢する訳でもないのに勝手にコケて注目を・・あれ? これってチャンス!)


「あー君、すっかり忘れていたよ、そこにいたんだね、う~ん・・いい香りだねちょっと待っていておくれ、この子達を抱擁したら君の力も見て上げるからね・・っ!?」[ジャラジャラジャラジャラ・・バシッ!!]


(何だ? 体に巻き付いて・・これはダイヤモンド? の鞭?) 


「ふふっナイスよシノ! お陰で捕まえたわ!」


「ほへ?」


「おぉ! ミキナイス! ・・え? シノナイスなの?」 

「何か知らんけどシノちゃんナイスやわ!」


「え? 私? ・・・・そ、そうです! 私ナイスなんですよ!」


 何がナイスなのかわからないけど、褒められて損はないです! 大いに褒めて下さい! 私褒められて伸びる子なんですから!


「ふふっ、変態さん今度のはそう簡単には千切れないわよ・・ギリギリまでずっと練り込んだ特製品なんだから!」


「成る程、これが君の隠し玉って訳か・・」


(右手を隠していたのは、ずっとこれを作る為だったのか・・)


「ええそうよ、あなたの為に丹精込めて作った一級品・・豪華特別版ダイヤモンドビーズネックレスって所ね」


「まんまやな・・」

「ん? まぁそうだな・・」


「ちょっ! そこうるさいわよ! ネーミング何てどうだっていいでしょ? 要は凄いがわかればいいのよ、あいつみたいに!」


「シノちゃんがどうかしたん? ・・シノちゃん」「あはは、シノお前も言ってやれよもっと格好良い名前付けろって・・シノッ!?」


 ダ、ダダダダ、ダイヤモンドーー!! え? それ、え? 凄いですミキちゃん! ほ、っほ、ほっ、本物ーーー!!

 お、お金に今すぐお金に換金して来ましょう! えっとひーふーみーよー・・数えるの面倒臭い! とにかく沢山! その大きさなら、一個いくらになるんですかね?

 あっあれ? もしかして左団扇叶っちゃった? もう叶っちゃった? こんな簡単に? 持つべきものはやっぱり友達ですよね!


「ね? 単純でいいのよ・・」

「あー・・完全に目がお金になってる・・」

「シノちゃん~戻っておいで~なんぼ凄くてもあれ、ミキちゃんの能力で出来てるから、用が済んだら消えてまうんよ?」


 ・・・・・・っえ!? あっ! そう・・でした。あは、あはははは・・私ったらついはしゃいじゃって、もうダメですね~落ち着いて考えれば、すぐにわかる事じゃないですか、シノのうっかりさん・・。


「シノの奴今度は、何か笑いながら泣いてるぞ・・」

「私もな、気持ちはわかるから、今はそっとしといたげて・・」

「あっ、うん・・実は、アタシもだ」


「どうっ! かしら? 締まり心地は、もう少しきつめにもっ! 出来るけどっ!」


「いや丁度いいよ、どうせすぐに抜け出すんだ」


「へ~、やれるものならっ! やってみたらっ!」


「ダイヤモンド・・確かに素材として申し分ないね、時間も掛けただけの事があって、完成度もエーテルの濃度も高い・・でも数珠繋ぎにしてるって言う事は・・ふん! ぐっ・・っく!?」


「させる訳無いでしょ! 何の為に持ってると思ってるの? 自分の弱点くらい熟知してるわよ!」

「おぉ! やったな! あいつの筋肉でも今回は引き千切れない」

「褒めなくていい・・褒めなくていいから・・今の内に誰か呼んで来て・・」


(何て力なの・・予想以上だった・・これじゃもたない・・)


「わかった私がひとっ走りして・・」


「行かなくていいよ! どの道間に合わない!」


「なっ! 何だと? 掴まってる分際で良く言えたな!」

「そいつの・・言う事なんて・・聞かなくていいから早くっ!」


「君ちょっと聞いてもいいかな? その握っている紐なんだけど素材は何だい?」


「チェ、チェーンよ・・それがどうかしたの?」


「うんうん、そうか成る程、もう一つ聞いていいかな? 何で握ってなきゃいけないんだい? 単純に考えれば俺が抜け出そうとするのに合わせて、エーテルを流し込む強弱をつける為と考えるのが妥当何だろうけど・・」


「わ、わかってるじゃない! だ、だったら・・無駄な抵抗は止めて・・大人しくしてなさいよ!」


「随分と辛そうだね? 無理してるんじゃないのかな? 息が荒くなってきてるじゃないか、・・もしかしてチェーンは君、管轄外なんじゃないのかな?」


「・・だ、だったら何なの? 欠陥品とでもいいたいのかしら?」


(・・あの目は・・バレてる。私が掴んでないと、チェーンが消えてしまう・・まだ未完成だって事が・・)


「・・優勢のはずのミキちゃんの方が、余裕無い辛そうな顔してるな」

「どういう事だ?」

「・・多分やけど神通力の消費が激しいんとちゃうかな?」


「言わないさ! 逆だよ素晴らしい! 自分の司る物を突き詰めて行けば、やがてそれ以外の関連した物にまで興味が行きつく、だが大抵の神はそこで行き詰ってしまう・・余程の探究心や熱意がないと、二つ目三つ目を習得し、次の階級へ上がる事は不可能だからね、そういう意味では君は三級神であるなら、二級神に上がる資格があるって事さ・・まぁ習得していればの話だけどね」


(残念ながら入口を叩いた程度だろうね・・今の段階でこれをとっておきにするには、弱点が多すぎる・・チェーンを維持するのに掴んでなければいけない、完成させるのに時間がかかったのは、単純にダイヤモンドとチェーンを作るのに、それだけの時間が掛かってしまうから・・。

 そして一番の問題点はエーテルの消費が激しすぎる点だね、俺が引き千切ろうとすれば、それに合わせて強く流し込まなければならない、相手次第で何分ももたない、現に今にも消えてしまいそうなくらい弱々しく不安定になってるし、何より彼女が倒れるのが先だろうね)


「・・っくぅ・・」


(も、もうもたない・・頭がクラクラする・・地面が・・揺れて波紋みたいに・・何? この匂い? そっか、さっきあの子ドジってこぼしたんだった・・戦いに集中してて・・気付かなかったけど・・いい香り・・)


「もぅいいですよ」


(・・シノ?)


「無理しなくていいです。解いちゃって下さい」


「シノ?」「シノちゃん?」


「二人共、ミキちゃん連れて私の荷物の所まで避難して下さい」


(何言ってるの? ・・この子・・三人がかりで勝てなかった相手・・)


「お、おぅ、それは構わないけど・・」

「避難ってどう言う事?」

「そんなの簡単ですよ・・これからここが本当の戦場に変わるからですよ・・」


(何格好つけてるのよ・・)


「やっと君も見せてくれる気になったんだね、嬉しいよ・・」


「そうですか、お待たせしちゃって申し訳ありません・・何分準備が必要だったもので、ではいざ尋常に・・あっ、その前に握手いいですか?」

「あぁ構わないよ、正々堂々行こうじゃないか・・」


(あんたが勝てる訳ないじゃない・・私達以上に戦闘向けじゃないんだから・・)


 二人はミキちゃんを抱えて避難中・・さて私は・・。


「さあ! 楽しもうじゃないか!」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1話が長くてもったいないです。短い文で投稿回数を増やした方がたくさんの人の目に留まりやすいのでは。
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