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勇者がこない! 新米魔王、受難の日々  作者: 七夜
魔王と勇者とゆかいな仲間たち
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00 勇者がこない!

 クックック。

 ごきげんよう、勤勉にして親愛なるザハトラーク王国の臣民諸君。

 妾の名はルシエル=エル=ザハトラーク。開国の祖にして、我らが偉大なる先代魔王ヴェリアルの娘である。

 本日妾が当代魔王に就任するにあたり、これまで支えてくれた諸君らへの感謝はとても言葉では言い尽くせない。

 しかしこれより名を呼ぶ三人にはあえて言葉として表すことで、より一層の感謝の意を表したいと思う。


 まずは宰相のジラル。お前が勉強を見てくれたおかげで第一級君主資格試験に滞りなく合格することができた。試験対策ドリルはすごーくぶ厚くてたまにこれ使ってぶん殴りたくなったけど、助けになったのは確かだ。だからそう神妙な顔をするな。


 次にガリアン将軍。お前は勉強漬けで運動不足気味だった妾をよく息抜きと称して外に連れ出してくれたな。息抜きにしては結構ハードな運動だったが、今思えば――って急に泣き出すなうるさい放送中だぞ恥ずかしいだろ!?


 ごほんっ。

 で、最後にメイドのミルド。お前が毎晩作ってくれた夜食や軽食は辛いときの支えだった。間違って苦手なニンニクが入ってることも度々あったが、そういうおっちょこちょいなところも……え、間違いじゃなくてわざとなの? しかもそれを今言っちゃうの?

 えぇ……。


 ごっごほん!

 ま、まあ色々とあったが、三人には特に感謝しているぞ。もちろん長きに渡り温かい目で見守ってくれた皆にもだ。この通り妾も就任して間もない若輩であるから、これからも妾を支えてくれることを切に願っている。

 そして、ここからが本題だ。

 諸君らも既に風の噂で聞いているだろうとは思うが、つい先日ロドニエ王国にて新たな勇者が女神フォルトゥナの祝福を受けて誕生した。

 しかも今回の勇者は下手をすると歴代でも最強クラスとされる凄まじいポテンシャルの持ち主らしい。先代に初めて黒星を付けた五代目勇者がロドニエ出身であったのも考えると、運命のようなものを感じずにはいられん。強敵となるのは必至だろう。


 だが案ずることはない!

 妾は来るべきときに備え、資格試験と並行してレベリングもきっちり行ってきた。努力の甲斐あって現時点での総合力は先代の最盛期に匹敵すると言っても過言ではない。

 ただ身体能力に関しては……えっと、発育が、その、ほんっっっの少しだけ悪いだけに不安を残しているが、最上位魔法すら扱える今では些末な問題だ。

 それに先代が国外の要所に建造したダンジョンも粗方起動と調整を終え、この魔王城にも最後の砦に相応しい仕掛けをごまんと用意させてもらった。万が一食らっても死にはしないだろうが、城で働いている者たちは色の違う床や石造の目線には気を付けるのだぞ。


 フフフ、もしかしたら妾の元へたどり着く前に音を上げてしまうかもしれんな。もっとも、ここまで来たところで返り討ちにしてくれるまでのことだが……

 さあ、迎え撃つ準備は万端だ! 此度の外交、我らの勝利に疑い無し!

 我がザハトラーク王国に栄光あれ!

 アーハッハッハッハ――!


  ◇


 あの高笑いから二週間経った。

「いつになったら来るんだよおおおおお!?」

 妾の魂の叫びが広大な空間に木霊する。

 魔王就任記念放送を行ったあの日から妾は毎日、勇者がいつ来てもいいように城中の罠をチェックして回り、練兵場で兵士の訓練に混ざってレベルを上げ、各ダンジョンのダンジョンマスターに労いの言葉をかけつつ近況を聞き、こうして玉座の間で父上から貰った背丈の倍はあるデカくてカッコいい王座に座ってスタンバっているのだ。

 なのに待てども暮らせども勇者は来ない。

 食事や風呂の最中に来たら事だと思ってテーブルセット一式とバスタブをわざわざここへ持って来させ、一日の半分以上を玉座の間で過ごしているのに勇者のゆの字も現れない。

 ロドニエから最も近いダンジョンマスターからの返事も要約すれば「今日は何もない素晴らしい一日だった」の一点張り。つまり奴は国を出てすらいないということなのか。

 おのれ勇者め、一体どれだけ妾を待たせるつもりなのだ!

「どうかなされましたか、魔王様」

「……む、ジラルか」

 どうやら妾の叫び声を聞きつけたらしく、玉座正面のこれまた巨大な扉の隙間から背丈の低いダークエルフの老人が心配した様子で室内へと入ってきた。

 こうして毎日顔を合わせていても、年々腰の位置が下がっているのがわかるほどジラルは老齢である。なにしろ父上が国を立ち上げる際からの側近で、その頃から既に老人だったというのだから。

 あまりにも勇者が来なさ過ぎてつい癇癪を起してしまったが、思ったよりも声が大きかったようだな。長寿で有名なエルフ族といえども、あまり老人に余計な気遣いをさせては寿命を縮めかねない。

 労いも込めて、側まで寄ってきたジラルに正直に告げる。

「大したことではない。ただ、あまりにも勇者が来ないもので、少しイライラしてた。余計な心労をかけたようだな」

「いいえ、お気になさらないでくだされ。……あの、一つよろしいでしょうか?」

「許す、申せ」

「はっ」

 発言を許可すると、ジラルは恭しくかしずく。

「魔王様は勇者殿が来ることを大変待ち遠しくお思いになられていると存じております」

「うむ。さっさとぶっ飛ばして華々しくデビュー戦を飾りたい」

 あれだけ大衆に向けて大見得切った手前、さっさと片付けないと期待やらプレッシャーやらで正直言って落ち着かないのだ。

 罠の確認だって本当は部下に任せればいいのだが、やはり自分の手で調整してこそ勇者が引っかかったときの喜びも増すというもの。なにより待ってるだけだと暇だし。

「こんなにも強く意気込んでおられる中、大変申し上げにくいのですが……」

 するとジラルはすっごい言い辛そうな顔で言った。


「恐らくですが、勇者殿はそんなすぐにはここまで到達しないと思われます」


 ……え、今こいつ何て言った?

 ここにはすぐ来ない? え、何それ聞いてない。

「ぐ、具体的には?」

「最低でも半年はかかるかと」

「はぁっ!?」

 半年!? 半年ってお前……

「一年の半分じゃないか!」

「仰る通りでございます」

「いや仰る通りじゃなくてだな、そもそも何でそんなにかかるんだ!」

「ロドニエは国を三つほど挟んだ向こう側でございますから。ダンジョンを攻略しつつ、馬車が利用できない地域もあると考えれば半年が妥当であるかと」

 取り乱す妾に、あくまでジラルは冷静かつ論理的に言い聞かせてくる。

 言われてみれば確かにそうだ。理にはかなっている。

 だけど納得できん。聞いていた話と違うじゃないか。

「本当ならもっと早く申すべきだと思ったのですが、魔王様があまりにも勇者殿が来るのを楽しみにしていただけに今の今まで言い出せず……」

「そ、それは悪かったな。けど、前回の勇者は三日で魔王城まで辿り着いたとミルドから聞いて――」


「お呼びですか?」

「うわぁぁぁぁぁぁあ!?」

 背もたれの脇からにょきりと生えて来たヘッドドレスにビビり、ジラルの方へ身を乗り出していたのも相まって妾は玉座から転落した。

「うぶ!?」

 しかも顔面からいった。

 幸い床には厚手の絨毯を敷いていたので大事には至らなかったが、もし石畳だったら鼻血不可避だぞこれ。

「大丈夫ですか魔王様!?」

「も、問題ない。でも何でミルドが玉座から?」

「トリックですよ」

「だから何の!?」

 涙目で問いかける妾に全く取りあうことなく、見慣れたすまし顔のミルドが玉座の後ろから出てくる。

 一見するとヒューマンにしか見えないが、ミルドはれっきとしたハーフドラゴンのメイドだ。妾が今より全然幼い頃からの付き合いなのだが、結構な頻度でこういった悪戯をしてくるから凄く心臓に悪い。変に畏まられるよりは気楽でいいんだけどさ。

「ミルド……おぬしはまた魔王様にいい加減な情報をお渡ししたのか」

 彼女の茶目っ気はもはや手が付けられないと早々に改善を諦めたらしいジラルが、それでも呆れた様子を隠すことなく問いかける。

 対するミルドは、咎められた理由がわからない様子で首を傾げた。

「はて。私の記憶が正しければ、七代目の勇者様は確かに三日ほどで魔王城へは辿り着いたはずですが」

「あれは彼が隣国の、それも王都出身だったからじゃ。ろくにレベリングもせず来たばかりに、罠だか何かにかかって城内へ入る間もなく戦闘不能になったそうじゃが」

「そういうことでしたか……すみませんルシエル様、前の勇者様があまりに愚にも付かない雑魚様なばかりに誤った情報を伝えてしまいました」

「あ、ああ」

 見事に誤情報の責任を押し付けられた上に物凄い罵られ方をしてる勇者がかわいそうに思えたが、一応頭を下げて来たのでひとまず許すことにした。

 ていうか許さないと何をされるかわからない。ミルド恐い。

「しかし、ともするとジラルの言った通りなのだな……」

 飛び乗るように玉座へと座り直し、はたと考える。

 国を三つも挟んだ向こう側から勇者が来るまで約半年。

 確か奴が女神の祝福を受けたのは妾が魔王に就任する三日前だったはず。

 十日経った今、奴はどこで何をしているのだろうか。

 妾と同じように、打倒魔王を掲げて日々精進しているのだろうか。

「気になりますか?」

「いや、まだ妾なにも言ってないんだけど」

「長い付き合いですから。顔を見ればわかりますよ」

「……そうか、わかってしまうのか」

「ええ」

 正面に立つミルドは優しく微笑みながら。


「この玉座、微妙に前に傾いてますよね」

「全っ然わかってないじゃん!? 返せよ妾の神妙な気持ち!」


 あ、でも言われてみたら確かに傾いてる気がする。何これ落ち着かない!

 一度意識したら気になって仕方がないんだけど、どーしてくれるんだよこいつ!

「ふふっ。冗談はさておき、勇者様の近況をお知りになりたいのですね」

「今度は本当に心読まれたー!?」

「ご希望でしたら、フォルトゥナにお問い合わせしてみましょう。私は彼女と連絡印を交換していますので」

 しかも何事もなく話を進めてるー!?

 ……嗚呼、もういいや。ミルドすげーってことにしておこう。

 しかし、女神に連絡か。

 確かに女神なら契約の関係上、勇者の動向くらい容易く知ることができるだろう。

 でも魔王が女神に「勇者今何してる?」とか聞くのって体裁的にどうなんだ?

「フォルトゥナ殿に聞けば確実じゃろうが……こちらから連絡を取るのはいかがなものかな? 一応、相手方のトップであらせられるぞ」

 妾と同様の疑問を抱いたらしいジラルが難色を示すが、ミルドは淀みなく言い放つ。

「ご心配なく。連絡印はプライベート用ですから」

「どうしてお前が女神のプライベートな連絡先を知っているのかは気になるが……まあいい。使えるものは使わせてもらうとしよう」

 ちょっとずるいかもしれないけど、この際つまらないプライドは一時的に置いておく。勇者の苦労話が少しでも聞ければ、多少は無駄に待ち続けたことへの溜飲も下がるかな。

「かしこまりました」

 要求に対しミルドはぺこりと頭を下げたのち、おもむろに魔力の光を灯した人差し指で宙に紋様を描き始める。

 一秒にも満たない僅かな時間で描かれたのは、手のひら大の小さな魔法陣。

「繋げ。【コール】」

 完成した術式に軽く触れながらミルドが唱えれば、遠方の相手と会話を成立させる魔法【コール】が発動する。

 魔法陣の中心にあらかじめ示し合わせた連絡印を書き込むことでそれに対応した相手と音声のパスを繋ぐ仕組みだ。

 青く輝く魔法陣がしばらくの間、応答を待つように淡く点滅を繰り返していると。

『……珍しいですね。ミルドの方から連絡をしてくるなんて』

 接続が完了し緑色へと変化した紋様から、随分と久しい声が聞こえて来た。

 心なしか、だいぶ弱々しく感じるのは気のせいだろうか? 気力がないというか、やつれてるというか。

「あなたに少し尋ねたいことがありまして。今にも死にそうな声ですけど、具合でも悪いのですか?」

『まだこの通り生きてますのでご心配なく。でもまあ、死ぬほど疲れているのは確かですね……はぁ』

 女神の空虚な溜息が静かな玉座の間に響く。

 あまりに痛々しく、聞いてるこっちが滅入りそうだ。ジラルなんか「お労しや」とか呟きながら沈痛な表情で俯いちゃってるし。

 紋様の向こう側から澱んだ空気が流れ込んできてる気がする。妾は無言で室内の気流を操作し、換気用の大窓を開けた。

 そして一向に気にする様子もなく会話を続けるのがミルドである。

「フォルトゥナは相変わらず仕事熱心ですね」

『あなたは息抜きに全力過ぎです。今の職場は魔王城でしたっけ? そこでは真面目にお仕事できていますか?』

「ええ、もちろん」

 ミルドは自信と達成感に満ちた表情で。


「今日は秘密裏に玉座を絶妙に傾けることに成功しました」

「お前の仕業かよ!?」


 飛び降りて玉座の背中側に回り込んでみれば、底面と床の間に折り畳まれた羊皮紙が。

 玉座って床に固定されてなかったのか……くそっ重たい!

 何これ全然持ち上がらないんだけど。あいつどうやって挟んだんだよこれ!?

 あーもうこれ一人じゃダメな奴だ。ジラルにも手伝ってもらおう。

『……あなたも相変わらずなようですね。それで、私に何か用があったのでは?』

「ああ、そういえばそうでした」

 妾たちが玉座の下敷きになった異物と格闘している間に、ようやく会話は本題へと入ろうとしていた。

 それにしてもこの玉座一体何でできてるのか。仮に身体強化魔法を使ったとしても、この重さではせいぜい数ミリ、それも一瞬しか浮かせられないだろう。

 おまけに直接かかるタイプの魔法は全部レジストされるレジェンダリー仕様なおかげで軽くすることもできない。

 よって事に当たるのは妾とジラルの二人。重要なのはタイミングだ。妾が一瞬だけ持ち上げてその隙にジラルがスッと取り去る。

 うん、イメージは完璧。あとは実行に移すのみだ。

「実はうちの魔王様が勇者様の旅の進捗について知りたいとおっしゃっていまして。不都合がなければ把握できているだけの情報でも助かるのですが」

『勇者の動向、ですか……』

「準備はいいなジラル」

「万端にございます」

「ではいくぞ! せーのっ」

 全身に魔力を漲らせた妾が、渾身の力を込めて玉座を僅かに床から浮かせ。

 スタンバっていたジラルが圧から解放されて開きかけた羊皮紙へと手を伸ばす。

 よし、勝った――


『進捗も何も、勇者は未だに出発していませんよ?』

「何だってぇぇぇぇぇぇぇええええええ!?」

「ギャァァァァァァァアアアア!!」


 あ、すまんジラル。驚きのあまりつい手を放してしまった。

 妾は手を挟まれたジラルを羊皮紙ごと玉座の脇へと短距離転移で退避させる。うん、指はちゃんとついてるな。大事無いようでよかった。

 あれ、最初からこうすればよかったんじゃね? 何で妾はわざわざ持ち上げようとしてたんだろう――

「ってそんなことはどうでもいい!」

 そんなことより、今聞き捨てならないセリフが聞こえたぞ!

「勇者がまだ出発してないだと!? 祝福受けてから十日だぞ十日、旅の準備に親しい者への挨拶を考慮したって長くて三日もかからないだろ!」

 受けた衝撃はジラルに勇者が来るまであと半年かかると言われたとき以上だった。

 思わずミルドと魔法陣の間に割り込み聞きただすと、女神は再び疲れ果てたような声で語る。

『実は、一週間経った段階で出発する様子が欠片もなかったので私からも直接促してはいるんですが……「俺にはやるべきことがある」って言って、私の話全然聞いてくれないんですよね。今日も使命そっちのけで山に行ってしまいました』

「女神の言葉をガン無視って、それは明らかに人選ミスだろ……」

『私もそうは思ったんですけど、聖剣が選んだ者を勇者とする決まりですから。その実、何故か聖剣との適正は間違いなく歴代勇者の中でもトップクラスです。それはもうあり得ないほどに』

「ぐ、具体的には?」

『並みの魔族なら鞘から抜いた際に漏れる余剰聖気で滅びます』

「何それ超怖い!?」

 抜いただけで死ぬとかトンデモ兵器すぎる。反則なんてレベルじゃないぞ。

『聖剣側にリミッターを施したのでその点は大丈夫です。ただ、予定外のトラブルだったので聖剣の仕様変更にもだいぶ時間と労力を取られまして……』

「……苦労をかけるな」

『いえいえ、これも私の役目ですから』

 殊勝な言葉の裏側に、頬のこけた女神の笑顔が見えた気がした。

 ……今度、神界宛に菓子でも送るとしよう。

 しかし、女神の疲労の種も勇者だったとは。

 誉れ高い使命に情熱を持たない姿勢といい、益々もって度し難い奴だ。

 こうなったら、取るべき手段は一つ。

「直接、勇者と話をつける必要があるな」

 するとミルドがギラリと目を光らせ。

「カチコミですね」

「そーじゃない! 話をつけるって言っただろ!」

 物騒な単語に反応した女神は慌てたように。

『カチコミ!? 流石に魔王がスタート地点へ攻め込むのはルール違反では――』

「疲れてるのはわかってるけど、もう少し人の話聞かない!?」

 最後に指の治療を終えたらしいジラルが。

「えーつまり、魔王様直々に勇者殿を説得しに行くと?」

「だから違――ってその通りだよ! 流れで否定しかけたわ!」

 あ、ヤバい、過呼吸になりそう。

 肩で息をしながら玉座に寄りかかり、どうにか呼吸を落ち着かせる。

「ぜぇぜぇ……と、とにかく、勇者にはさっさと村から出発してもらう。これではいつまで待っても来るとは思えん」

「しかし、説得するだけなら我々でいいのでは? 何も魔王様が行く必要は……」

「ガリアンは訓練で忙しい。ジラルだけだと押しが弱そうだし、ミルドを一人で行かせたら下手すれば国際問題になりかねない。ここは最高責任者である妾も同行すべきだろう」

 実際に手綱を握れるかはともかくとしてな。

 という本音の部分は微塵も口にはせず、尤もらしい理由を述べる。

「で、本当の理由は?」

 ……ふっ、やはりミルドに隠し事は出来ないらしい。

 良いだろう、この際だからハッキリ言ってやろうじゃないか。

 妾はスゥっと息を吸い込んで。


「いい加減ただ待つのも飽きたんだよ! 妾にも出かけさせろぉー!!」

 半ばヤケクソ気味に叫ぶのだった。


 というわけで、妾はジラルとミルドを連れて玉座の間から長距離転移した。

 目指すはロドニエ王国最西端。

 勇者め、首を洗って待っているがいい!

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