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若干、親と気まずい思春期な俺は、食卓についても両親との会話はほとんど「うん」か「へー」だけで、全く成り立ってなかった。別に悪い事をしたわけじゃないが、親とちゃんと話すのが照れくさいというか面倒というか。そういう時期は誰にだってあると思う。
「行ってきまーす」
準備を終えて、さっさと家を出る。
丁度、みんなが登校する早くも遅くもない時間で人が多い。田舎の学校だから征服も普通の学ランとセーラー服だし、中学校もほとんど同じ制服。正直ダサいけど、もはや見慣れてるから何とも思わない。
今日の体育はサッカーか、と憂鬱になりながらジャージを入れる鞄を振り回していると、視界に一匹の真っ白な猫が映り込んだ。
長毛で、野良猫とは思えないほどふわふわしている。綺麗な青い瞳。首輪はしていないけれど、飼い猫かなーなんて思いながら通り過ぎようとした。
《猫ユウシャ様でございますか?》
また朝と同じように俺の頭の中に柔らかい女の子の声が。
足を止めて猫に視線を戻すと、白猫は俺を見つめて尻尾をゆっくりと左右に揺らしていた。口を開くが「ニャー」とは聞こえない。
《猫ユウシャ様ですね! よかった、私の声が聞こえて》
「な、何を言ってるんだ……?」
俺は周囲を見回し、人が丁度いない事を確認して白猫に近寄る。
「もしかして……朝の声って君?」
《違います。朝、貴方様にお声をかけられたのは猫神サマです。私は迎えの者としてここに送られて来ました。さあ、参りましょう!》
そう言って白猫は学校とは違う方向へ歩き始めた。
「ちょ、ちょっと!」
無視するべきか行くべきか、迷いに迷ったがどうしても気になったので俺は白猫の後を着いて行く事にした。遅刻して先生に怒鳴られるのを想像して。
辺りは田んぼと畑ばかりで、白猫は農道をどんどん進んで行く。ここは通って大丈夫なのかと心配になりつつも追いかけるが、いつの間にか山の方へと向かっていて、さすがにマズイのではないかと不安がこみ上げる。