第38話
第二試合は芸術。秀麗からは勿論、響奏。対する絢爛からは、万葉渚。
会場には色とりどりの花が揃えられている。中には口らしきものがパクパクしているものまで……。何となく嫌な予感がする。
「芸術枠の試合は、日本人の美の心、華道です! 会場に用意された花々を使って自分なりのセンスを表現して下さい!」
制限時間である三十分が経ち、現在優勢の絢爛学園から披露。
渚が花にかかっていた黒布を取り払い、その美しさが露わになる。
「タイトルは〝春の息吹を待つ妖精〟」
会場から、おぉ――! という声が溢れる。わざと長方形の剣山の左側に花々を寄せ、水盤の水を見せて小川をイメージ。新芽のついたハゼを主材に、開いた冬の花とチューリップの蕾を混ぜた一作。
「美しいですね! 続いては秀麗学院です。どうぞ!」
司会の言葉と同時に、奏が布をバッと空に投げる。彼の作品を目にするや否や、客席に座る人たちの表情が一律に固まった。
「タイトルは〝美しさの中に咲く一輪の食いしん坊♪〟」
丸い剣山を使い、とにかく色とりどりのお花を低い位置で立てる。そして中央でその存在感を放っているのは、マ○オのパックンのような得体のしれない食虫植物。偶然会場に迷い込んだ哀れなハエがパックンの前を通りかかった! 瞬きをしていたらその瞬間を見逃してしまっていただろう。牙の生えた大きな口を広げ、小さなハエをぱっくんしてごっくん。何か蠢いているものが茎の上から下へと移動いている。
パックンは再び大きな口を開いて、ゲップー。
「…………………」
弱肉強食って怖い。
結果は火を見るより明らかだった。控室に戻って来た奏は笑顔で、
「ごめん、負けちゃった♪」
隼に頭をカツンとやられました。
「いったーい! だって音楽以外興味なかったんだもん!」
涙目で訴える奏に、隼が蛇のように睨みつけた。
「可愛い顔したって無駄だからな!」
タイトルのセンスは悪くなかったと思うのだが、そんなことを言っても仕方ない。
これで二敗。いくら総合点で判断されるとはいえ、そんなのは相手といい勝負をしてこそ言えるもの。次は勝ちたい。
「おっし! じゃあ行って来るぜ!!」
隼が腕を捲って自信満々に控室を後にする。次は第三試合、スポーツ対決である。
「第三試合はスポーツ! 種目はこれだ!!」
隼と港がグラウンドに立つ。スポーツに限っては外で行われる。雨だったらアリーナ(秀麗学院の施設で、室内の体育はここで行います)が使用されることになっていたが、晴れていて良かった。
観客は直に外で見学してもいいし、会場内のスクリーンで見学してもいいことになっている。でも、お金を払って見に来る人たちだ。九割方外へ出た。
「……これはまさか」
隼が声を漏らす。
グラウンドにパッカパッカと係の人に引っ張って来られたのは二頭の馬。フェンスに括りつけられているのは的。
「もうお分かりの通り、スポーツの種目は流鏑馬。それではまずお二人には狩装束に着替えていただきましょう!」
渡されるまま二人はそれを受け取り、仮設の更衣所で着替えて出てきた。隼はカッコよく、港は何となく可愛く見える。前髪をピンで留め、いつも通り後ろ髪は一つに括っていた。
今回も優勢の絢爛学園から。港は白い馬に跨ると、鏑矢を受け取った。矢の束は腰に固定し、一本の矢は弓と一緒に手に携える。約二〇〇メートルあるグラウンドの端から端までの間に三つの的を射る。
「オレ乗馬の経験もあるし、弓道得意なんだ。この勝負、貰うぜっ!」
係の人に支えられ黒い馬に跨る隼を一瞥して、港が一歩前に出る。馬の口元の手綱を係の人が小走りのまま引っ張り、手を離す。すると、馬はスピードを上げて駆けり始めた。
港は弓を構えて打つ! 素早く矢を替えて打つ! もう一度打つ!
結果は、一番最初の的にギリギリ矢が刺さった程度。やはり動きながら的を狙うのは相当難しいらしい。
港は悔しそうに歯噛みする。次は隼の番だ。
「俺だって乗馬くらいしたことあるってーの! それに、俺が数々のスポーツで養った動体視力を舐めんなよ!?」
隼も負けじと虚勢を張って、黒い馬に乗りスタート。どちらの馬も想像以上に速い。
三本の矢を打ち終わって結果、最初と最後の的に矢が刺さっていた! しかも最後のはしっかりと的に食い込んでいる。
「第三試合の流鏑馬、勝利したのは秀麗学院の高崎隼だ!」
グラウンドに歓声が響く。これぞまさにダークホース。
隼は制服に着替えてから上機嫌で控室に入って来て、あたしの前でガッツポーズ。あたしはささやかながら拍手をプレゼント。
「あれ、雅は?」
隼が控室を見回すが、雅と昴の姿が見えない。
「あ、もう会場に行ったよ。次は料理対決だからね」
徐々にあたしの順番が迫って来る。心臓がドックンドックンと大きく脈打っていた。




