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二次元コンプレックス  作者:
第五章 「パーティーは余興が命」
35/42

第34話

『二六階で藤堂猛と四宮司が降りたぞ。珍しいことに秘書の同行はなしだ。悪いが、様子を見てくれ。俺もすぐに向かう』


 無線で耳から佐祐の声が響いた。どうやら彼は余興に参加するフリをして、藤堂猛と四宮司の行動を監視しているようだ。胸元のバッジを取り、非常階段から上を目指す。今エレベーターはビップ以外使用できない。


「了解した」


 朔夜は短くそう伝えると、二七階へ向かう階段を下りる速度を速めた。あたしはそれに付いて行こうと必死になるが、やはり足首が痛い。朔夜はそれに気付き、一瞬振り返った。


「ここは私が行くから、君は下の階を目指せ。もしかしたら違う階へ移動することも考えられるからな」


 あたしが頷いたのを確認すると、彼女の背中はすぐに見えなくなった。


 出だしは好調だったのだが、艶華はとっくに姿が見えなくなり、渚にも簡単に抜かされてしまい、今では桜子や凛たちとほぼ同じ場所を走っていた。


 あたしが二四階のフロアに入った頃、再び耳元から声が聞こえてきた。今度は朔夜の声だ。


『とんだデマだったな。藤堂猛は潔白だ。四宮司と酒を飲みながら何を話しているかと思いきや、奴らの息子自慢だ。俺の息子はここが凄いとか、どこが凄いとか。流石学生時代からのライバルだな。毎回会う度に違うタイトルで息子比べをしているようだ。くだらない。そりゃ誰にも聞かれたくないわけだ。恥ずかしいからな。――どうやら四宮司が藤堂グループに有利な政策を打ち出しているように見えたのは、マグレのようだ。藤堂グループに有利ということは、日本の大企業にとって有利という意味にもなるからな』


 二六階を通った時、朔夜の姿は見つけられなかった。恐らく彼らが話している部屋を見つけ、ドアの隙間から薄型の盗聴兼録音器を滑り込ませ、中の話をトイレかどこかで聴いていたのだろう。


『了解した。まあ何にせよ、賄賂の事実がなくて良かったよ。二人ともお疲れさん』


 佐祐の任務終了の連絡が入る。あたしは原作通りの展開にほっと一息。なんにもしてないけどね。


 ペースを若干上げつつ二一階にやって来た。フロアに足を踏み入れた直後、あたしの視界に藤堂猛の姿が飛び込んできた。彼は国定戒に招き入れられ、とある部屋に入る。


 今度は何だ?


 余計なことだとは思ったが、あたしはその部屋の前で止まり、覗き窓から中を覗き込む。そして瞳孔を開き、息を呑んだ。


「あれって――――!?」


 あたしが驚き数歩後退すると、誰かとぶつかった。急いで振り向くと、そこには息の乱れた雅が立っていた。


「西條……? お前こんなところで何やってんだ?」


 雅は途中で昴を引き離し、トップを独走していた。彼はあたしの様子に怪訝な表情を見せ、部屋の覗き窓から中を見た。


「……親父?」


 覗き窓から僅かに見えるのは、ドラマとかでよく札束が入っているアタッシュケースを国定戒が藤堂猛に見せているシーン。ケースの中身までは確認できないが、明らかにただならぬ空気がその場に流れていた。


 あたしは言葉を失っていた。原作では贈賄の事実はなかった。実際噂になっていた四宮司との関係は疾しいものではないと突き止めた。しかし、今目の前に映った光景は一体――?


 どうして原作にない設定が織り込まれているのかと考えて、ハッと気付いた。


「――あたしが足怪我して〝西條遥〟より階段を下りるスピードが遅かったからだ……」

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