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二次元コンプレックス  作者:
第五章 「パーティーは余興が命」
33/42

第32話

 じきにパーティーが始まった。漣ホールディングスのCEOの挨拶があり、それから流麗なクラッシック生演奏と共に立食がスタートする。奏はソロでもバイオリンを演奏していて、やっぱり凄いんだなと感心した。


「さっき藤堂がここに来てただろ。早速バレたのか」


 昴が料理が盛られたプレートを運んできて、あたしの前に差し出す。


「うん……」


 あたしはそれを受け取って、楽しく立食する群衆を見て目を丸くした。


「あの人は!?」

 あたしが指差す方向に昴も顔を向ける。


 雅と話す超絶美人。スタイル抜群。胸元が広く開いた黒いドレスから、白く滑らかな肌が露出する。こんなに敵多かったっけ? と思いながら、艶なりの女性に目が釘付けになる。きっと三次元には、あれほどの人はいないだろうと思う。


「ああ、あの人は藤堂の姉で、確か名前は(つや)()さん……だったか」


 雅のお姉さん!? あれだけの美人が身近にいるから、桜子さんとか凛さんとか何とも思わないわけね。何か納得。


 昴の持ってきてくれたプレートを完食し、あたしは立ち上がった。


「湿布のお陰で大分良くなったから、あたしもあの中に入ってくる」

「おい、平気なのかよ」


 昴があたしを支えてくれようとするが、手で制止した。


「一人で大丈夫だから。ありがとう。昴もあたしのこと気にせず、回ってきなよ。あたしもいつまでも足かせになってるのも嫌だからさ」


 そう言って、あたしは痛む足を我慢して一人で会場の群衆の中に混じってから、入口と反対の壁へと向かった。


 座って会場を見渡している時からずっと気になっていた。全身黒の飾り気も何もないドレス。髪はボサボサ。明らかに悪目立ち。


「……先生、こんなところで何してるんです?」


 あたしは月影朔夜に話しかけた。彼女はさして驚いた顔もせず「驚いたな」と呟く。


「こう見ると本当に女の子だな」

「自分で言うのも何ですが、先生よりよっぽど女らしいと思います」


 あたしはそう断言してから、プレートを持って朔夜の方に向かってくる男性に目を向けた。黒のジャケットの中に黒ベストを着用し、ワインレッドのネクタイが少しだけ顔を出す。整えられた顎鬚がダンディーな印象を与える。薄らと茶色に色づいたレンズのメガネをかけており、見た目は四十半ばくらいだろうか。恐らくこの男性の招待で朔夜はこのパーティーに参加しているのだろう。


 その男性はあたしの前に来るなり、口を開いた。


「君が西條遥くん……いや、ちゃんか。俺は藤堂グループに勤めている坂上(さかがみ)()(すけ)だ。君のお仲間だ。今日は宜しく頼むぜ、御嬢ちゃん」


 この人が藤堂グループで情報を集めてくれている諜報員か。


「そう言えば言い忘れていたが、藤堂猛と仲の良い政治家だが、ほら早速だ」


 あたしは朔夜の見る方向に視線を合わせた。男性が二人話している。どちらにも付人らしき人が横にいた。


「左でワイングラスを持っている男が藤堂猛。その後ろにくっ付いているのが、秘書の国定戒。藤堂猛と話している政治家が四宮(つかさ)。その後ろにくっ付いてるのは奴の秘書だろう」


 四宮司……。どっかで聞いた苗字だなと思い、思考を巡らせて空を喘いだ。


「四宮って、絢爛学園に通う四宮静の父親ですか!?」


 あの朴訥で存在が薄いこと自体がキャラになっている男。正直すっかり忘れてた。


「おっ! 御嬢ちゃんよく知ってんな。その通りだ。奴は藤堂猛の大学時代の同期で、学生時代から競い合っているライバルだそうだ」


 ライバル……。


「ライバルが、賄賂とは言え協力関係なんて結びますかね?」


 あたしが腕を組むと、佐祐も、そこなんだよ! と同調した。


「贈賄の事実があったとして、動機が分からないんだ。経営者と政治家としての出会いだったら頷くこともできるんだが、二人の関係が大学の同期から始まっていて、今もそれは崩れていないように見える。だから、俺も不思議に思ってるのさ」

「じゃあ、贈賄なんてしてないんじゃないですか?」


 あたしがそう答えると、佐祐は笑ってあたしの頭にぽんぽんと手を載せた。


「それならそれでいいんだ。ただ俺たちはその証拠を見つけて上に報告しなきゃいけないから、それまではこの案件から手を引けないんだよな」


 まあそうだよな、と思っていると、朔夜があたしに小型イヤフォンと小型マイクを差し出した。


「このパーティーの間はそれを身に着けていろ。何かあったらすぐ連絡するんだ」


 あたしが頷き、手渡されたものを装着すると、会場の明かりが徐々に落ちていった。


「どうやら余興が始まるようだぜ」


 佐祐の言葉に、あたしの目がステージに移った。

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