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二次元コンプレックス  作者:
第二章 「料理はセンスが大事です」
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第10話

「……ひ、ひはいひはい!」


 叫ぶのと同時に、ぱっと目を開いた。すると、そこにはあたしの王子様が……!


「やっと起きたか」

「ひやひ!」

 あたしはバッと上体を起こして、辺りを見回した。調理室から少し離れた廊下にもたれ掛かっていた。隼たちも薄らと目を開けている。


 みんな無事だったんだ……。


 ほっと胸を撫で下ろしてから、あたしは首を傾げる。


 ちょっと待て。さっきからあたしの発する日本語おかしくないか?


 口を動かそうとすると痛い。それに違和感。試しに王子の名を呼ぶことにした。


「ほうほうひやひ!」


 …………誰それ。


 あたしは自分の顔を触った。


「――――――――――――っ!?」


 そのままトイレに直行。鏡の前に立って、白目を向いた。


 ♪ア○パンマンは君さ~、元気をだして~、ア○パンマンは君さ~、力のかぎり~、ほらキラめくよ~君はやさしいヒーローさ~アハハ、アハハハハハ――


 そこに雅登場。トイレに入って来て早々、彼の引きつった顔が鏡に映った。


「お、お前……頼むからそのキモイ変顔やめろよ……」

「はへがほんはひひはんはお(誰がこんなにしたんだよ)!」


 鏡に映るあたしの顔。何て醜いの!? 最初から可愛いわけじゃないけど、両頬が真っ赤に腫れて膨れている。ジャ○おじさん、早く新しい顔に取り替えてよ!!


「……何言ってっか分かんねぇよ」

「はっはほはふほひはんふへへほいほ(さっさとジャ○おじさん連れて来いよ)!」

「……いや、だから分かんねぇって」


 その後もあたしは、ぎゃーぎゃーと雅に理解されない言葉を吐いてから、みんなのいるところに戻った。


「お、遥、大丈夫だったか?」

 隼はすっかり元気になっていた。腕を伸ばしたり屈伸をしたり、ストレッチをしていた。


「それにしても凄かったね……」

 麗が弱々しく苦笑する。隼ほどではなかったが、麗も奏も普段に近いくらい戻っていた。


「先輩、本当にスリリングでしたよ。まさか料理一つでニアリー死体を四体も作成するなんて。しかもその四体の内の一体はご自身なんですから、ホント笑っちゃいますよ。どんだけ捨て身なんだか。あははは」

 奏は可愛い笑顔を見せてから、その顔をあたしの目の前三センチに近づけてきて囁いた。


「次こんなことしたらタダじゃ済まねーぞコラ」


 ピシッ。


 石化した上、脳天から罅が入った。


「さて……」

 雅が息を吐いてから、腕を組む。

「一体何があった?」

 あたしは上手く話せないので、隼が語ることになった。

「聞け、雅! 話せば長くなるが、聞くも涙、語るも涙だ」

 雅の片眉が吊り上った。


「お題はギリシャ料理だった。作るのなんて朝飯前だとほざいた西條遥くんは、魚介類を鍋にぶち込み、蛇の抜け殻やら雀の嘴やらを砕いて、ミドリムシとミジンコを百種のスパイスとブレンドし、それらも鍋に放り込んだ。それから数分後、急に眩暈がし、動悸息切れが激しくなり、体が痺れ、窓目がけて倒れ込んだ、というわけだ」


 雅が口元を引きつらせる。


「お前は一体何がしたかったんだ……。つーか、笑い涙だな」

 雅は皮肉をたっぷり込めた。

「ほへはひはひははぁ(おれは被害者だぁ)!!」


 もはやガチで涙目。そして鳥肌。


 訳も分からず磨り潰したり、ゴリゴリ砕いてたアレが、蛇の抜け殻とか雀の嘴とかで、綺麗な色の調味料だと思って、珍種のスパイスとブレンドしていたアレがプランクトン!? そんな変なもん用意すんじゃねーよっ!!


 小学校の緑色のプールで採取し、顕微鏡で覗き込んだプランクトン。ミドリムシは食べられると聞いたことがあるが、ミジンコって手がニョッとしてて目ん玉らしきものもあるアレですよね……? あたしちょっと味見しちゃったんですけど……。


「お、おい、遥! 大丈夫か!? また病院行くか!?」


 口から泡を吹き出して白目を向くあたしに、隼が必死に語りかけてくれてました。



 翌日。まだ若干頬は腫れていた。正直、泡を吹く直前からの記憶がない。


 隼に訊いてみると、昨日あたし以外の四人が決死の覚悟で調理室を元の状態に戻してくれたようだ。そして、泡を拭きとられたあたしを雅が背負い、寮まで運んでくれたらしい。


「でもさー、あんなに赤く腫れるまで顔叩き続けるなんて酷くない?」

 あたしが吐いた台詞に、隼は笑って言った。

「俺、その時もう記憶あって、お前の頬をペチペチ叩く雅見てたけど、全然目覚まさない遥を心配してイライラしてるように見えたぜ? 雅ってああ見えて、仲間想いだからな」

「そっか……」

 あたしは雅の席を見つめた。


「あ、雅!」

 隼が教室に入って来た雅に気付いて声をかける。彼は自分の席を通り過ぎ、隣の席に座るあたしに顔を近づけた。


「お前……」


 えっ!? 何何!? ちょっ、ちょっとこんな所で告白なんて、あたしどうしたら……!?


「オールマイティー枠で出ろ」


 あたしは目を瞬いた。


「は?」

「料理で死人が出ると困る。かといってお前には知識やスポーツ、芸術のセンスがあるとは到底思えない。だったら、何が出るか分からないオールマイティー枠の方が有利だ。勝率は五分だからな。決定!」


 雅の人差し指のせいで寄り目になったあたし。どうやらコンペには何が出るかお楽しみのオールマイティー枠で出ることになったようです。


「…………………」


 どうなることやら。

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