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闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
彷徨う心
92/126

present for……

 教室の廊下側、一番後ろの席。

 ファンレターに手作りのお菓子、高級ブランドまで……。

 昼休みになると、藤代の席には続々と女子が訪れてはプレゼントが増えていく。

 それは文化祭が終わると恒例の光景だ。彼女の紗弥加も隣でそれを見て『すごいねー』と微笑んでいる。

 美月はその様子をぼんやりと眺めていた。


(相変わらず幸せそう……)


「いつまでそうやって遠くから見てるつもりだよ?」


 隣の席から声を掛けられる。


「あんたには関係ない」

「渡してやろうか?」

「絶対、嫌!」

「なんで? あいつなら絶対受け取るぜ?」


 美月は鞄の中に潜めたプレゼントの小箱をぎゅうっと握り締めた。そしてそんな美月の姿を見て呆れたように笑う篠宮を、キッと睨む。


「おーい! こうたー! お呼びだぜー」


 藤代が篠宮を教室に響き渡る大声で呼ぶ。教室の出入口には可愛らしい女の子が二人立っていた。


「俺にだって」

「あーはいはい。良かったですね」


 美月の棒読みな返事を気にもとめずに、篠宮は軽い足取りで教室を出て行った。


(ウザイ! なんであんな奴が人気なのか)


 それでも篠宮の背中を目で追う。そわそわした様子で待つ相手の女の子と目が合った瞬間、その子は頬を赤らめた。


「カーッ! あんな可愛い子がなんでしのみや!」

「もう……美月ちゃんはすぐそうやって女のコの事ばっか。羨ましがってどうすんのさ」

「あ、まゆ。そんな事より、小澤くんに渡せた?」

「え? ……うん。さっき生徒会のみんなに会ったからその時一緒に、ね?」



 ***



「はい、これ熊谷。おつかれさま〜」

「わーい! ありがとー」

「はい……小澤くんもおつかれさま」

「…………」

「……小澤、くん?」

「あ、ごめん。まさか貰えると思ってなかったから……」

「そんな訳ないじゃん」

「ホント、すごい嬉しい」


 小澤がくしゃりと目を細めて笑う。


(そんな風に笑わないで……そんな嬉しそうな顔しないでよ。どうしていいか分かんなくなるから)


「ありがとう……」


 本当に嬉しそうにお礼を言う小澤に、真由の心はチクチクと痛んだ。



 ***



「ふーん?」

「何よー、その顔……」

「いや? 今年は小澤くんにプレゼント貰ってもらえないって愛ちゃん達が話してたからさ?」

「え……?」

「好きな人がいるから受け取れない、って全部断ったらしいよ?」


(……なんで、そんな?)


「ホント、どっかの誰かさんとは大違い」

「何の話だよ?」

「あら、噂をすれば」


 篠宮が席に戻ってきた。


「なぁこれ」

「……何?」


 美月が思いきり怪訝そうな顔で篠宮を見る。

 それもそのはず。篠宮はピンクの可愛らしい包みでラッピングされたプレゼントを美月に差し出していた。


「あの子達が美月に渡してくれって……」

「え、嘘!?」


 美月が視線を移すと、さっき篠宮を呼び出した彼女達はお辞儀をして慌てて去っていく。

 それは先日の文化祭で、美月に助けられた子であった。


(またよりにもよって女子のファンなんて……)


 美月の男性恐怖症が治るようにと無理に立たせた舞台で、逆に女の子に人気が出てしまった事に、真由はショックを隠せない。

 そんな気持ちを微塵も知らない美月は、嬉しそうにプレゼントを開けている。


「ヤバい! 手作りチョコ貰っちゃった!」

「もう、女のコに貰って喜ばないでよー」

「あのー美月ちゃん……あたし達のも受け取ってもらえる?」

「えッ? いいの!?」

「朔弥様すっごいカッコ良かったよー」

「えーうそーありがとう」

「あたし達、朔弥様のファンっていうか」

「もうお前ら……!」

「「きゃあああ」」


 美月が集まった女子をいいこいいこすると、悲鳴のような歓声が上がった。


「なんで男の俺がプレゼント渡すパシりなんか」

「まぁまぁ、これはあたしから正真正銘篠宮くんに……」

「え、マジで!? うわぁ……マジで!? これ野々村さんの手作り!?」

「うん、一応……」


 篠宮が照れくさそうにはにかんで喜ぶ。

 他の人にあげたものと変わらないお菓子でも素直に喜んで貰えるのは嬉しかった。

 真由の胸がふわりと暖かくなる。


(やっぱり好きだな、このカンジ)


(なのに、なんで……こんなに苦しいんだろう?)

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