Show Time
「おい! 大久保はどうした!? ショータイム始まるぞ!」
「倒れた美月連れて行っちゃいました……」
「何!?」
「どうしましょう……九条先輩?」
「仕方がない。大久保抜きでこなすしか……」
鳴り止まない拍手。
あんな緊急事態に陥ったが、それでも何事も無かったかのように幕を閉じた。
舞台は大成功だった。
しかしこれだけの拍手にもなかなかショータイムの幕は上がらない。
皆、拍手をしながら首を傾げている。
(何かあったのかな……?)
「九条先輩、幕開けます」
「あぁ。今、行く」
幕が上がった。
少しまばらになっていた拍手が一気に蘇る。
(でも、あれ……?)
九条の女形から始まったショータイム。
客は皆、九条の女舞に酔いしれている。
しかし真由にはその構成が変わっている事が分かった。
(最初は大久保の剣扇舞だったのに……)
真由の脳裏に違和感を残して、ショーは続く。
九条が女物の着物を脱ぎ捨てると、一気に男物の洋装へと姿を変えた。
舞台の平安時代から時空を超えて現代にタイムスリップする『Time』――それは前回の文化祭でも披露した九条の代表曲であった。
(何この怒濤の九条先輩メドレー……どんな構成変更?)
もう稽古通りのショータイムではない事はよく分かった。
(さぁ、次は何が来るの?)
暗転。そして次の曲が流れ、ライトが舞台の中心を照らし出した。
「……え?」
前回好評だったが、今回は篠宮の不在で却下されたその曲。
「そんな……」
(あたしは幻でも見ているのだろうか……?)
真由は自分の目を疑う。しかし……。
「キャー! こうたー!!」
客席から飛んだ歓声に、それが幻じゃないと知った。
「……し、のみやくん……?」
真由が初めて篠宮を見たのもこの曲だった。
そしてその時受けた衝撃も、当時のまま全部思い出す。
頭はどんなに混乱していても、その姿から目を離す事は出来なかった。
(やっぱり……)
(やっぱりあたしは、篠宮くんが……)
「、ッ……大好きだよぅ」
胸の奥深くに秘めていた想いが、涙となって一気に溢れ出した。




