第二章第二景・解放
「モラッタアアア!!」
世界まるでスローモーションのようだった。
身体は金縛りにあったみたいに動かない。真由には、ただ見ている事しか出来なかった。
それはきっと、時間にしたらほんの一瞬。
「嫌あああああ!!!!」
屍食鬼の長い爪が、大久保の胸を貫いた。
「捕まえた」
大久保がニヤリと笑う。その手はしっかりと屍食鬼の腕を掴んでいた。
「クソ! 離セ……ッ!!」
「都を守るためなら、この命……いくらでもくれてやる!」
その身体で屍食鬼の動きを封じた大久保。
屍食鬼が振り向いたそこには、美月が静かに佇んでいた。
「朔弥! 今だ!!」
閉め切った体育館にどこからともなく風が吹く。美月の髪にふわりと風が抜けた。
***
「照明落とせ!」
「えッ……?」
「いいから! 早く!」
「、でも……」
「これでいいんスか?」
「あッ、ちょっ! 夕樹!」
――バチン……ッ!
***
「きゃあ!」
体育館が突然真っ暗になる。
「ウ゛ウゥゥ……ア、ァア……ぁぁ」
「な、何……!?」
「一体何が起きてるの!?」
――バチン……ッ!
真っ暗だった体育館に照明が戻る。
「……ッ!?」
そこにはもう禍々しい化け物の姿はなく、いつの間にか普通の少年が立ち尽くしていた。
その事に一番少年自身が驚いているみたいだった。
「その魂、解き放たせていただきました」
美月がニッコリ笑う。
「「「おぉ!!!」」」
感嘆の声と、鳴り止まない拍手が体育館を包んだ。
「フ……やりやがったな」
ニヤリと満足そうに笑った大久保は、膝から崩れるように倒れる。
「ツクヨミ様!? ツクヨミ様ッ!」
美月は慌てて大久保を抱きかかえた。美月の膝の上で、大久保が力なく微笑む。
その頬に、美月の瞳から零れ落ちた涙が伝った。
***
「うん。いいシーンだな……」
「九条先輩。何、関心してるんですか」
「相原こそ何してるの?」
「え……?」
「出番だよ」
「はい?」
そして九条は相原の目の前に竹筒を差し出した。
「これ……」
「これでツクヨミを蘇らせないと、ね?」
「先輩も懲りない人ですね……」
「脚本をあれだけ無視されたまま、終わらせられないだろ?」
「ツクヨミ様ッ! ツクヨミ様……ッ、嫌ですッ……ツクヨミ様ぁ!」
朔弥の悲痛な叫びが響いた。




