表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇に恋して  作者: 冴島月ノ助
月夜美
85/126

続第八景・moonlight……?

 屍食鬼がその長い爪を一気に振り下ろした。


「嫌ああああぁぁぁぁ!!!!」


――ガキーーン!!!


「…………」


 断末魔の叫びが轟いた体育館に静寂が訪れる。誰もがその風景に息を飲んだ。


「お怪我はありませんか?」


 瞬きするほどの一瞬。

 大久保が屍食鬼の腕を押さえ込み、その隙に美月が彼女を奪還して抱き寄せたのだ。

 自分を抱きかかえ微笑む美月に彼女は顔を赤く染めて頷いた。


(さっきは美月ちゃんの悪口言ってたくせに!)


 皆、状況が飲み込めなすぎてポカーンとその成り行きを見ているしか出来ない。


 大久保は未だに屍食鬼と対峙したまま。

 その間に美月は流れるような手つきで彼女を席に座らせた。最後にはふわりと微笑んで髪を撫でるオプション付きで。

 しかし次の瞬間、キッと屍食鬼を睨むとその空気は一瞬にして凍てついた。

 傷だらけになりながらも戦う美月の姿が真由の脳裏を霞める。


「……ッ、!」


(美月ちゃん! やめて!)


 言おうとしたところをカイトに制された。


『何するの!? 離してよ!』

『ちょっと待って。みづき先輩、何かしようとしてる』

『え……?』


 確かに、美月の目は何かを企んでいる時の目をしていた。



 ***



「早くみんなを逃がさなくちゃ!」

「でもこの人数……いきなり騒ぎ立てれば混乱を呼ぶだけだ!」


 いきなり学園に現れた屍食鬼に、舞台裏は騒然としていた。


「アイツ等、勝手に突っ込んでいきやがって」


 九条は珍しくチッと舌打ちをして呟く。何とか生徒達を巻き込む最悪の事態は避けたい。


(考えろ! 考えろ! この状況、どう乗り切るが最善か……ッ!)


「もう少し様子を見てみましょう」

「オイ! 康太! この状況で何呑気な事言ってんだよ!!」

「あいつらもただ飛び出しただけではないと思います」

「何か秘策でもあるって言うのかよ!?」

「分からない! でも……」


 篠宮の視線の先。美月がニヤリと小さく笑った。



 ***



「怨霊の残党が、まだ残っていましたか……」



『『……え?』』



 ぼそりと、でも確かに美月はそう言った。


(美月ちゃん……いきなりこの状況で何言って?)


「ヨコセ……オ前ノチカラ、ヨコセッ!」


 対峙していた大久保を思いきり投げ飛ばした屍食鬼の目は、完全に美月をロックオンしていた。


「オイ! 逃げろ! こいつの狙いはお前だ!」


 大久保の言葉が聞こえているのかいないのか。美月は逃げようともしない。

 その隙に屍食鬼は美月目掛けて飛びかかってきた。


「きゃあああ!!!」


 誰とも分からぬ悲鳴。

 美月は最初の攻撃をヒラリとかわすと、相手の後ろに回り込み間合いを取った。そしてカイトが咄嗟に投げた木刀を受け取る。


「生命の水のおかげで、朔弥は命永らえました。ツクヨミ様のおかげにございます」

「お前……何を?」

「この命を懸けて、朔弥はツクヨミ様と共に戦います!」


 振り向き一気に間合いを詰めた屍食鬼の腹部に木刀を思いきりぶち込む。

 そして隙の出来た顔面をすかさず大久保が回し蹴りで蹴り上げた。

 完全に不意をつかれた屍食鬼は体育館後方までぶっ飛ぶ。


「おぉ……」


 客席のどこからともなく感嘆の声が上がった。



 ***



「……話を、引き戻したな」

「えぇ、かなり強引ですが……」


 開いた口が塞がらない、という表現がふさわしいと思う。

 あんな化け物がいきなり目の前に現れたら、誰か一人くらい逃げ出してもいいはずだ。しかし会場の誰一人逃げようとしない。

 それ以上に観客は見入ってしまっている。

 それはあそこに立っているのが、紛れもなく朔弥そのものだからだ。

 美月は朔弥として立つ事で、リアルをもフィクションに仕立てあげようとしている。


「九条先輩! 舞台を続けましょう!」

「康太! お前何言って――」

「篠宮。彼女を信じて任せても、いいのか?」

「あいつの物語はなしの構成能力は俺が保証します」


 篠宮の強い目に、九条は意を決したように頷いた。


「よし! ショタ五だ!」

「え……?」

「これは舞台だ。客にリアルだと悟られるな! まずはその事を大久保に知らせる。BGMでショタ五を流せ! 勘のいいアイツなら気づく」

「はい!」

「音楽も照明も出来る限りを尽くして二人をフォローするんだ!!」

「「「はい!!」」」


(頼んだぞ……眼鏡さん)


 握った拳に自然と力が入る。


 さぁ、まだ誰も知らない第二章の始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ